「地震調査研究推進本部30周年特別シンポジウム」を開催しました

10月14日(火曜日)
科学技術・学術

  10月14日、「地震調査研究推進本部30周年特別シンポジウム」を開催し、地震本部本部長代理として、増子文部科学事務次官が出席しました。

  本シンポジウムでは、地震調査研究推進本部(地震本部)(※)のこれまでの成果を振り返るとともに、巨大地震に備えた今後の地震本部のあるべき姿を考えました。

  講演では、地震本部地震調査委員会の平田直委員長(東京大学名誉教授)が、南海トラフ地震の発生確率の見直しやN-netの整備など近年の成果を振り返りつつ、AIや歴史地震学との連携等も含め、科学的知見を社会に活かすための今後の展望を述べました。
  また、同委員会の小原一成委員長代理(防災科学技術研究所フェロー)が、巨大地震との関連が示唆されるスロー地震と高感度地震観測網(Hi-net)等について最新の知見を紹介しました。
  続いて、同委員会の西村卓也委員(京都大学教授)が、日本列島で発生する内陸地震を対象に、測地・地殻変動データを用いた長期予測手法とその試算結果の妥当性について解説しました。
  また、地震本部の篠原雅尚専門委員(東京大学教授)が、光ファイバーセンシング(DAS)技術の海底地震観測への適用可能性について展望を述べました。

  パネルディスカッションでは、「防災に貢献する南海トラフの地震活動の観測・研究」をテーマに、次のような議論を行いました

  • 地震本部30年の振り返りとして、研究開発を継続して積み重ねてきたことが重要であり、地震観測網の充実により地震に関する詳細なデータが得られるようになったこと。それにより、例えば、スロー地震といった重要な発見にもつながったこと
  • 地震本部のもとで、今後、関係機関が連携を深め、住民の防災意識の変容も図りつつ、あらゆる主体が防災に取り組んでいけるようにしていくことが重要であること
  • さらに、会場やオンラインから寄せられた質問にも答え、南海トラフ地震の発生確率については、地震という現象そのものに不確実性があり、先月発表した発生確率の見直しによって、その不確実性を科学的に示せるようになったことが重要な進展である一方で、今後は、確率について、一層分かりやすく国民に伝えていくことが重要であること

  文部科学省では、シンポジウムの議論や意見を踏まえ、今後、地震本部のあり方をしっかり検討するとともに、より一層、地震調査研究の着実な推進と、その成果の分かりやすい発信に努めてまいります。

(※)地震調査研究推進本部(地震本部)とは
  地震本部は、阪神・淡路大震災をきっかけに平成7年、文部科学省に設置され、今年で30周年を迎えました。地震本部では、地震に関する調査や研究を政府一体となって推進し、その成果を社会に伝えるために、これまで、主要な活断層で発生する地震や海溝型地震を対象に、地震の規模や一定期間内に発生する確率などの予測、ある地点の揺れやすさや強い揺れに見舞われる確率を地図で表した全国地震動予測地図の作成とともに、正確に地震や津波の情報を得るための観測網の整備や予測技術の高度化等に取り組んでおり、これらの成果は国や地方公共団体の防災対策にも活用されています。

▼地震本部ウェブサイト
https://www.jishin.go.jp/別ウィンドウで開きます
▼「地震調査研究推進本部30周年特別シンポジウム」ウェブサイト
https://www.jishin.go.jp/resource/seminar/251014_30symposium/別ウィンドウで開きます

パネルディスカッションの様子

増子宏 地震本部本部長代理(文部科学事務次官)による開会挨拶

平田直 地震調査委員会委員長(東京大学名誉教授)による基調講演