資料3 全国体育系大学学長・学部長会資料

スポーツ立国戦略」の策定に向けたヒアリング(資料)

全国体育系大学学長・学部長会会長
びわこ成蹊スポーツ大学学長
飯田  稔

1.体育系大学教育の現状

1) 体育系大学・学部・学科設置の急増 

 全国体育系大学学長・学部長会の平成22年度における会員登録は24大学、学部であり、そのうち9大学(37.5%)が平成15年以降に設置されている。これらの24大学・学部で学ぶ学生総数は30,000人を超えている。未加入の新設大学・学部、学科・コース、そして国公立大学教育学部体育学科を加えると相当な学生数にのぼると見込まれる。
 また、スポーツ産業の拡大発展に伴って、なかでも「スポーツマネジメント」や「スポーツビジネス」学科やコースがここ10年間で50近い種々の大学に新設されている。体育系大学・学部だけでなく経済学部や経営学部の中に開設されているのが特徴的である。

2) 体育・スポーツの指導者養成機関としての役割

 各大学へは、50~70%の学生が体育教員を希望して入学してくるが、卒業後、実際すぐに教職に就けるのはその中でも僅かで常勤で4%前後、非常勤を入れても20%弱である。自治体や企業のスポーツ関連に進む者は20~30%で一般企業が最も多いのが現状である。
 その他は、大学院進学、警察や消防関係の地方公務員が目立つ。体育・スポーツの指導者養成機関として一定の社会的役割は果しているが、学生の卒業後の受け皿は十分とは言い難い。

3) 優秀なスポーツ選手の育成

 オリンピックやW杯の日本代表のほぼ半数は大学生が占めると言われている。多くの学生が大学の運動部に所属し、国内外の競技大会で活躍している。優秀なスポーツ選手を育成するための指導体制、施設、トレーニングプログラムなど、大学の人的、物的資源は有効に活用され、効果をあげている。

4) 地域・社会貢献

 教育・研究と並んで地域・社会貢献が大学の使命として重視されるようになった。大学のスポーツ施設の公開、公開講座や講習会、研修会の開催など地域貢献に果たすスポーツの役割は大きく、ほとんどの大学が自主的に実施している。また、大学教職員、学生がスポーツ団体や地方公共団体が開催する競技大会や講習会に役員、監督・コーチ、審判、運営関係者として参画し、社会に貢献していることも大学の機能として特筆される。

5) スポーツ関連研究の促進

 体育系大学教員は、日本体育学会(会員6,000人)や専門分野の関連学会に所属し、その研究成果を学術雑誌や紀要等で発表し、研究業績の評価を毎年学内外で受けている。医学、生理学、心理学、バイオメカニクス等の自然科学及び社会、経済、文化、教育等に係わる人文・社会科学の研究方法を用いて、スポーツに関する基礎的、実践的な研究をとおして、新しい知見を広く提供し、スポーツの発展に貢献している。

2.  体育系大学教育の課題・要望

1) 小学校体育専科教員の採用

 わが国における子どもの体力・運動能力の低下が各種の調査研究から明らかになり、小学校体育のあり方が問題となっている。その改善策の一つとして小学校に体育専科教員の配置・採用が提言されている。児童期における体育・スポーツ活動に専門的、質の高い指導者を配置することによって、子どもの体力・運動能力の向上を図るのみならず同時に体育系大学専攻生の就職の受け皿ともなることが期待されることから、文部科学省の高等教育局や初等中等教育局も連携して、その早朝実現に向けて検討願いたい。

2) 早期の一貫指導システムの構築

 体操、フィギュアスケート、水泳などの競技種目で児童等の早期からの一貫指導が功を奏している。指導者、施設、トレーニングプログラム、クラブ育成を含む一貫指導システムを構築し、トップアスリートを目指しタレント育成も国際競技力の向上に不可欠である。

3) 優れた選手の所属大学等への育成支援

 各大学は、オリンピック等の国際試合で多くの優れた選手を送り出しているが、人的、物的資源の両面でそれぞれ多額の経費をつぎ込んでいる。選手個人に対する顕彰は無論のこと、その基盤となっている大学等に現在Jリーグで行っているようなトレーニング費用(選手育成金)支援策を講じることの可能性について検討して欲しい。

4) 優秀なスポーツ選手等のセコンドキャリア支援

 優秀なスポーツ選手、指導者等が生涯にわたりその有する能力を幅広く社会に生かすことができるようにすることが重要である。そのためには、大学においては再教育や資格賦与に対応する競技・指導実績や経験年数などを考慮した入学資格や修業期間の見直しや柔軟な教育制度整備等の推進を願いたい。

5) 「スポーツ基本計画」の名称について

 『体育』という名称を無視できないとする大学教員も多く、「体育・スポーツ基本計画」とする案が提案されている。

6) 「スポーツ基本計画」法案とスポーツ庁の設置の早期実現を希望しています。

 

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スポーツ・青少年局企画・体育課

(スポーツ・青少年局企画・体育課)

-- 登録:平成22年05月 --