研修は、対象者によって研修内容や効果的な研修方法が異なるため、研修の対象者を明確にしておくことが必要である。研修の対象などの視点から以下の3つの区分が挙げられる。
「図書館サービス業務に携わる職員」及び「管理職」に対する研修を、司書資格の有無、職務内容、採用区分などを考慮して以下のとおり区分した。
図書館での経験年数等に応じて、研修内容の専門化、高度化等を図っていく必要がある。
行政機関(国、都道府県、市町村等。公立図書館を含む。)が実施する研修のほか、複数の地方公共団体による広域的な取組等も考慮して、以下のとおりとした。また、図書館関係機関(図書館協会等)の主要な研修についても、行政機関に準じた体系区分に位置付けて区分した。
地域の情報拠点としての図書館を目指して、図書館職員の資質・能力の向上を図るため、今後、以下の点に配慮して研修を充実させることが重要であり、国や地方公共団体においては、このための施策を積極的に推進することが求められる。また、民間団体等による取組も期待される。
千葉県立図書館(中央図書館、西部図書館、東部図書館)では、県内市町村立図書館等職員の資質向上を図るため、県公共図書館協会と連携協力して、公共図書館職員研修を実施している。また、県教育委員会でも、研究協議会や研修を実施している。
県公共図書館協会事務局が中央図書館内にあり、県立図書館・協会・県教育委員会は実施する研修の内容や開催時期が重複しないよう、連絡調整を行っている。研修対象は、勤務経験年数や役職によって区分され、新任職員(0~2年)、中堅職員(3年以上)、職員全体、館長向けの研修があり、それぞれ分野別に展開している。
このように、県立図書館では研修事業に力を入れており、豊富な研修プログラムを実施している。研修の企画・運営は、図書館職員が担当しており、若い職員にとっては、経験豊かな職員からの専門的知識や経験の継承や、自身のスキルアップにつながっている。
平成18年度の研修参加者数は963人であり、県内公共図書館の専任職員760人が、年間1人1回以上参加していることになる。
我孫子市民図書館で行っている研修は、主に、図書館業務を修得するための基礎的な研修、
図書館サービスを全体的にレベルアップするための研修の2つに区分される。
デジタルライブラリアン研究会(代表:糸賀雅児(慶應義塾大学教授))では、最新の情報技術(IT)を使いこなすスキルと経済の低成長時代に見合った図書館経営センスを身につけた人材の育成と確保に向けて、図書館長を含む現職の図書館職員等を対象に、「デジタルライブラリアン講習会」を開催している。
この講習会は、「公共図書館コース」「大学図書館コース」「(県別)短期集中コース」の3コースを設定している。このうち、平成18年5月に開催された「公共図書館コース」について、実施概要及び研修プログラムを紹介する。
テーマ | |
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第1週 | ハイブリッド図書館のめざすもの
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第2週 | 図書館におけるインターネットの可能性
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第3週 | 公共図書館におけるデータベース活用法
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第4週 | 図書館による情報発信(1)
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第5週 | 図書館による情報発信(2)
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第6週 | プッシュ型メディアによる図書館の情報発信
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第7週 | 地域電子図書館とデジタルライブラリアンの役割 <ワークショップとプレゼンテーション>
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修了レポート提出 |
「図書館司書専門講座」は、文部科学省と国立教育政策研究所社会教育実践研究センター(以下「国社研」という。)が共催し、勤務年数が概ね7年以上で指導的立場にある司書等を対象に実施している。研修期間は2週間で、講義、事例研究、研究協議、レクチャーフォーラム、演習等の様々な研修方法を採り入れており、このうち「図書館サービス計画の企画・立案」の演習には3日間(14時間30分)を当てている。この演習では、実際の公立図書館をモデル図書館として位置づけ、その現状を踏まえて図書館サービス計画を策定するものであり、図書館サービス計画の企画・立案に関する知識・技能が効果的に習得できるよう工夫している。
八洲学園大学は、E-ラーニングを用いた通信制大学として、主に社会人を対象にした授業を実施している。同大学の学習形態は、テキストによる学習を行いレポートを提出する方式(テキスト履修)と、大学で行っている授業をインターネットで配信して自宅・職場等で受講する方式(メディアスクーリング)があり、この2つを組み合わせて行っている。
ここでは、インターネットを活用した遠隔教育の手法として、メディアスクーリングについて紹介する。
(八洲学園大学 高鷲忠美教授の事例発表による)
図書館司書専門講座では、研修開始時と研修終了後にアンケート調査を実施し、翌年度の講座の企画・運営に反映させている。アンケート調査は、事前アンケート、事後アンケート、科目別アンケートの3種類を実施している。各アンケートの主な項目は、次のとおりである。
これらのアンケートの結果は、項目ごとに集計し、集計結果を分析しやすいようグラフ化し問題点を整理している。また、研修終了後、国社研職員による検討会を開催し、研修の運営や研修内容、演習課題設定等について、問題点・課題を報告しアンケート結果も踏まえて検討を行い、次年度の図書館司書講座や他の研修への改善策として活かしている。
具体的な改善の例として、平成18年度のアンーケート結果から「図書館サービス計画の企画・立案」の演習で時間不足を感じている参加者が多数いたため、演習内容を簡素化するか演習時間を確保するか検討し、他のプログラムとのバランスを考慮しつつ、演習時間を1.5時間増やすこととした。その結果、平成19年度の講座では、演習の評価は高く、時間不足の指摘はほとんどなかった。
文部科学省、国立大学法人筑波大学等の共催で毎年実施している「新任図書館長」研修では、研修の修了条件として、レポートの提出を義務づけている。平成19年度のレポートの作成要領を以下に紹介する。
ビジネス支援図書館推進協議会(会長:竹内利明(電気通信大学教授))では、図書館員のビジネス支援スキルを高める講習会として、「ビジネス・ライブラリアン講習会」を毎年開催している。
この講習会では、毎回、修了レポートの提出が義務づけられ、審査を経た上で、一定の水準以上であると評価された者に、「ビジネス・ライブラリアン講習会修了証」を交付している。現在、全国の図書館員約100名にこの修了証が交付されている。
修了レポートは、4,000字程度で、講習内容に即したものであること、また、実践報告書ではなく、講習会で得たものを基礎として独自の発想や考え方を取り入れた内容とすることが求められている。
レポートの評価は、講習会の講師により、テーマの設定、全体構成、論旨、展開、結論(意見・主張)、先行文献、記事の採取等の観点から総合的に行われる。
第4回講習会(平成18年9月開催)修了レポートのうち、特に優秀であると評価されたものが、財団法人高度映像情報センターの調査研究報告書の中で公表されている(『地域を支える公共図書館-図書館による課題解決支援サービスの動向-』)。
全国の公共図書館にビジネス支援サービスが浸透してくる中で、それぞれの地域の特性を生かしたモデルの構築が必要となってきている。ビジネス支援図書館推進協議会では、研修レポートに、実効性のある斬新な発想力を基にしたビジネス支援モデルを求めており、優秀なレポートを様々な機会を通じて公表することにより、今後も、ビジネス支援サービスの全国的な普及と質の向上を支援していく予定としている。
-- 登録:平成21年以前 --