第3章 6取組課題候補:法務情報提供

6. 取組課題候補4:法務情報提供
(1)  課題実施の意義と背景
 ここでは、取り組むべき課題の範囲は「法」に関する全般であり、主要な利用者は、研究者や専門家ではなく一般市民を想定している。「遺産・相続」、「個人破産」等地域住民が抱えるであろう「法」に関する日常課題全般について、資料・情報提供することは、地域住民の日常生活上の基礎情報と言える。また、法改正が常に起こりうるため、日常課題に対応した最新の法律情報を得るためには、逐次、情報収集と整備を行う公共図書館が非常に有効と言える。更に、裁判員制度注釈28の導入によって、国民が裁判員に任命された場合、法務知識を獲得する事が必要となっていることも、地域の情報拠点としての公共図書館が果たす役割を高めるものと言える。
 以上を踏まえると、本課題は、資料を組織化し選定・提供する公共図書館の特長が活用でき、ネットワークを有効に活用できるテーマであり、個人の日常課題解決にも寄与するテーマであると言える。医療情報提供と同じく、結果として、自立した個人が形成されていくことが期待される。一方、公共図書館側から見ても、利用者の「法」に関する資料・情報ニーズの高まりを感じつつ、提供サービスとしては未確立の段階であり、具体的にどのような法務情報提供の在り方があるのか、実践と検討を進める意義があると言える。

注釈28  平成16年5月に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立・公布され、平成21年5月までに、裁判員制度が開始予定。裁判員が専門的な法律の知識がないことを前提としているが、裁判員としての職務遂行や刑事裁判の手続に関しての知識等、必要な範囲での裁判に関する知識は必要とされている。(出典:あなたも裁判員!/法務省ホームページ)

(2)  詳細課題一覧
法務情報提供として、取組可能な詳細課題は以下のとおり。
日常生活における悩みや問題に関する法務情報の提供
トラブルやアクシデントに巻込まれた時の損害賠償や保険請求に関する仕組、手続(例:散歩中の犬に噛まれたときの対処、隣人とのトラブル)
個人の家族関係の変化に伴う悩み・疑問に対応した法務情報の提供(例:離婚した場合の親権の問題、遺産・相続の進め方)
雇用関係に関する悩み・疑問に対応した法令関連情報や判例情報の提供(例:不当解雇と感じた時の必要な手続や判例の情報収集ニーズへの対応)
商品・サービス購入に伴うトラブル・アクシデントに対応するための法的手段や行政手続に関する情報の提供
個人の経済環境の変化に伴う悩み・疑問に対応した手続や関連する法務情報の提供(例:自己破産時の対処)
公的機関が公開している法律相談事例等の情報の提供(例:独立行政法人中小企業基盤整備機構作成のJ-Net21の「Q&A道場」に見られる相談事例を紹介、あらかじめ法律相談事例をまとめたリンク集、一覧リスト等を作成しておく。)
地域コミュニティの維持・確保に関連した法務情報の提供
地域の環境維持のための法的手段、手続に関する情報提供(例:マンション日照権問題、景観の維持等)

   ただし、「法務情報提供」を推進するにあたっては、「医療情報提供」と同様に以下の事項について留意する必要がある。
本取組課題における留意点
公共図書館の機能は、あくまでも、「法」に関する資料・情報の提供による利用者の判断を支援することであり、法律上のアドバイスや訴訟、和解等に関する判断を行わない。
「法」に関する問い合わせは、問い合わせ内容も問い合わせ行為そのものも利用者の個人的活動であり、応答内容については十分なプライバシー保護の視点が必要である。

(3)  公共図書館の役割と効果
 公共図書館が、関係機関と連携しながら「法」に関する地域の情報拠点となることは、地域住民一人一人の日常生活の維持さ、及び地域コミュニティ全体の安定に寄与すると言える。

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