第6回国際成人教育会議「行動のためのベレン・フレームワーク(仮訳)」(2009年12月4日)について

第6回国際成人教育会議「行動のためのベレン・フレームワーク」(2009年12月4日)の日本語(仮訳)です。

ユネスコロゴ

第6回国際成人教育会議
2009年12月4日、ベレン
原文:英語

生存可能な将来のための成人教育の力と可能性の利用行動のためのベレン・フレームワーク (Belem Framework for Action)

 

序文

1.  ユネスコ加盟国の156カ国、市民団体、社会的パートナー、国連機関、政府間機関、民間部門の代表は、第6回国際成人教育会議(CONFINTEA VI)の参加者としてCONFINTEA V以降の成人教育の進展を評価するために、2009年12月にブラジルのベレンに集まった。成人教育は教育を受ける権利にとって不可欠な要素と認識されており、我々はすべての若者と成人がこの権利を行使できるよう新たな一連の緊急の措置を計画する必要がある。

2.  我々は1949年から行われている5回の国際成人教育会議(CONFINTEA I-V)で定めた成人教育の基本的役割を繰り返し、緊急の問題として、より速度を速めて成人教育問題の議題に取り組んで行くことを全会一致で約束する。

3.  我々は1976年成人教育の発展に関するナイロビ勧告(Nairobi Recommendation on the Development of Adult Education of 1976)において最初に定められ、1997年のハンブルグ宣言においてさらに発展した成人教育の定義を支持する。これは、成人教育が「自らが所属する社会において成人とみなされる人々が、公か否かを問わずその能力を開発し知識を深め、技術的または専門的資質を向上させ、自身および社会のニーズに応えることのできるように自らを変えることのできる継続的な学習プロセス全体」を意味している。

4.  識字能力は、若者にとっても成人にとっても、総合的、包括的、統合的な生涯および生活全体にわたる学習を積み上げるための最も重要な基礎である。世界的な識字能力に関する課題の大きさを考慮し、我々は、万人のための教育(Education for All)(EFA)、国連識字の十年(United Nations Literacy Decade)(UNLD)およびエンパワーメントのための識字事業(Literacy Initiative for Empowerment)(LIFE)に正式に記されている現在の成人における識字能力に関する目標と優先順位が、可能な限りの、あらゆる手段を用いて必ず達成されるよう、たゆまぬ努力を続けることが不可欠だとみなしている。

5.  若者と成人の教育は、個人、特に女性が複数の社会的、経済的、政治的危機および気候変動への対処を可能にする。したがって我々は、男女共同参画(gender equality)(女性差別撤廃委員会(CEDAW)や北京行動綱領(the Beijing Platform for Action)など)を含む、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals)、万人のための教育(EFA)、および持続可能な人的、社会的、経済的、文化的、環境的開発において国連が議題を達成するよう、成人教育が重要な役割を果たすことを認識している。

6.  したがって、我々は、すべての人々が生きていけるような将来のために、成人教育の力と可能性を利用する指針とすべく、この行動のためのベレン・フレームワークを採択する。

生涯学習に向かって

7.  生涯学習は、世界的な教育問題とその困難な状況に対処するための不可欠な役割を担っている。「ゆりかごから墓場まで」の生涯学習は、包括的、人道的で人々の開放に役立つ民主的価値を基盤とするあらゆる様式の教育哲学であり、概念的な枠組みであり、組織化の原則である。それは知識を基盤とした社会のビジョンのすべてを網羅する統合的なものである。我々は、21世紀教育国際委員会が推奨する学習の4つの柱である「知るための学習」「行うための学習」「なるための学習」「共に生きるための学習」を再確認する。

8.  成人教育は生涯学習プロセスの重要な構成部分であり、公式から非公式、略式の学習に至るすべてを包含するものと認識している。

 成人教育は、若者、成人、年配者の学習ニーズを満たすものである。成人教育は、一般的問題、職業的問題、家族の識字能力および家庭教育、市民権その他多くの隣接分野など広範囲にわたる内容をカバーしており、優先順位は国や個人のニーズによっても異なる。

9.  我々は、世界的な問題や教育上の問題への対応において生涯学習が重大な役割を果たすことを確信しており、それによって鼓舞されている。また、成人教育によって人々がその権利を行使し、さらに高め、運命を決めるために必要な知識や才能、スキル、能力、価値を身につけることができると確信している。成人教育はまた、貧困を軽減し、平等で許容可能、持続可能な、知識に基づく社会を構築するための公平さと包括性を達成するためにも不可欠である。

勧告

10.  CONFINTEA V以降の達成と進展を認識している一方で、いまだに対峙している問題があることも熟知している。付属の調書に概説されているように、成人と若者が教育を受ける権利を実現することは、政策、統治、資金調達、参加、包括性、公平さ、質に関する考慮で左右されることを認識し、以下の勧告を遂行することを決意している。識字能力によって直面する課題を鑑み、成人の識字能力に関する勧告を前面に置くこととした。

成人の識字能力

11.  識字能力は、若者と成人があらゆる段階で学習することを可能にする、欠くことのできない基盤である。識字能力を身につける権利は、教育を受ける権利に内在しており、個人的、社会的、経済的、政治的な力を持つためにも、欠くことのできない要素である。識字能力は生活、文化、経済、社会において、発展し、複雑化する問題に対応する能力を構築するための欠かせない手段である。

 識字能力の問題の規模と持続性、および識字能力の欠如によって人的資源や可能性が共に無駄になることを考慮すると、識字率低下のサイクルに陥ることを防ぎ、そのサイクルを打ち破って識字率100%の世界を作ることを最終的な目標とし、2015年までに文盲率を2000年の水準から50パーセント減少させる(EFAの第4の目標およびその他の国際公約)ための努力を強化することが不可欠である。

 目標を達成するために、我々は以下を表明する。

    (a)すべての調査およびデータ収集において、継続して識字率を認識させる。

    (b)課題を達成するために、進展状況、障害、脆弱性などの重要な評価に基づき、明確な目標と期限を備えたロードマップを作成する。

    (c)内外のリソースと専門知識を動員、増加させ、より大きな規模、範囲、対象で質を高めた識字率向上プログラムを実行する。統合的かつ中期的プロセスを醸成して個々人の持続可能な識字率達成が保証されるようにする。

    (d)参加者の実用的かつ持続可能な知識、スキル、能力の獲得につながり、それ達成することが適切な評価方法と手段で認識され、参加者に生涯学習者として学習を継続する力を与える。学習者のニーズに関連し、適合した識字教育を開発する。

    (e)全般的には農村の人々を重視しながら、女性および非常に不利な状況にある人々(先住民族や囚人を含む)への識字教育に焦点をあてる。

    (f)識字能力に関する国際的指標と目標を確立させる。

    (g)EFA グローバル・モニタリング・レポート(EFA Global Monitoring Report)に特別のセクションを設けることにより、特に各国レベルとグローバル・レベルでの識字率向上へ投資と十分なリソースについて、系統的に検討し、進展を報告する。

    (h)強化された識字環境により支援される基本的な識字スキル以上の継続的教育、訓練、スキルの開発計画を行い、実行する。

政策

12.  成人教育に関する政策と法的手段は部門全体および部門を超えたアプローチに基づき、生涯学習の観点から学習と教育におけるすべての構成部分を対象とする。それらをつなぐ総合的、包括的かつ統合的なものとする必要がある。

 目標を達成するために、我々は以下を表明する。

    (a)費用を全額算定した政策、十分に目標を定めた計画、成人の識字能力、若者および成人の教育ならびに生涯学習に対処するための法制を開発し実施する。

    (b)MDG、EFA、UNLDおよび他の全国的・地域的開発計画、ならびにLIFEの活動がある場合にはそれとも統合された、成人教育のための特定の具体的な行動計画を立案する。

    (c)成人教育が確実に「一つの国連(ONE United Nations)」イニシアチブに含まれるようにする。

    (d)成人教育に積極的に活動しているすべての利害関係者が関与する監視委員会のような適切な調整メカニズムを確立させる。

    (e)同等の枠組みを設置することにより、あらゆる様式における学習の認知、検証、および資格認定の仕組みとメカニズムを開発し、改善する。

統治

13.  優れた統治は、効果的で透明性が高く、説明責任が明確かつ平等な方法によって成人教育の実施を促進する。すべての利害関係者が参加し、その意見を示すことは、すべての学習者、特に最も不利な状況にある学習者のニーズへの対応を保証するために不可欠である。

 目標を達成するために、我々は以下を表明する。

    (a)成人教育の政策とプログラムの開発、実施、評価において、すべての行政レベルにおける公的機関、市民社会組織、社会的パートナー、民間部門、地域社会、成人の学習者、および教育者の組織の関与を創り出し、維持するメカニズム

    (b)市民社会組織、地域社会および成人学習者組織が適宜、政策やプログラムの開発、実施、評価に、建設的かつ情報を与えられて関与できるよう支援するための能力構築手段の保証

    (c)部門間と省庁間における協力の推進と支援

    (d)プロジェクトやネットワークを通じた、ノウハウや革新的取組みを共有するための国際的な協力の醸  成 

資金調達

14.  成人教育は、より民主的、平和的、包括的、生産的、健康的かつ持続可能な社会を創造することにより社会的利益をもたらす、価値のある投資である。質の高い成人教育の提供を保証するためには重要な財務投資が不可欠である。

 目標を達成するために、我々は以下を表明する。

    (a)CONFINTEA Vの勧告の達成に向かう進展を加速させ、GNPの最低6%を教育に投資することを目指し、成人教育への投資の増加を働きかける。

    (b)既存の教育リソースと予算をすべての政府部門において拡大し、統合された成人教育戦略の目標を達成する。

    (c)EU生涯学習プログラムに基づいてとられた措置に沿って、識字率向上と成人教育のために、国際的に新たな資金調達プログラムの考慮、また既存プログラム開放の解放を行う。

    (d) 新たな資金調達源獲得を奨励するために、たとえば民間部門、NGO、地域社会、個人から平等と包括性の原則を損なうことのない誘因策を策定する。

    (e)女性、農村の人々、障害のある人々のための生涯学習への投資を優先する。

 これらの戦略の支援において、国際的な開発パートナーに以下を呼びかける。

    (f)EFAにおけるすべての目標の達成、特に目標3と目標4(若者と成人の学習、成人の識字能力向上)を妨げる財政的なギャップを埋めるための確約を果たす。

    (g)成人の識字能力向上、学習、教育のための資金と技術的な支援を増加し、債務スワップや解約など、代替金融メカニズムを用いることの実現可能性を探る。

    (h)教育部門に対し、成人の識字能力についての信頼性の高い行動と投資を含むファストトラック・イニシアチブ(FTI)に計画を提出するよう要求する。

15.  包括的教育は、人的、社会的、経済的発展実現の基礎である。すべての個人が自分の可能性を開発できるようにすることにより、共に調和し、尊厳をもって生きることが大きく奨励される。年齢、性別、民族、移民資格、言語、宗教、身体障害、都市から離れた地方に済んでいること、性的同一性または性的指向、貧困、移動、投獄などによる排除があってはならない。複数の不利な条件による累積的影響と闘うことは特に重要である。すべての人々の意欲を高め、権利を手に入れることのできるような手段を講じるべきである。

 目標を達成するために、我々は以下を表明する。

    (a)学習する文化を高め、参加しにくい環境を排除することにより、成人教育へのより平等なアクセスと参加を推進し、容易にする。

    (b)念入りに計画され、目標の定められたガイダンスや情報、成人学習者週間や学習フェスティバルなどの活動やプログラムを通じて、成人教育へのより平等な利用と参加を促進し支援する。

    (c)特に、成人になったばかりの時期に複数の不利な条件が重なることが予想される集団を特定し、対応する。

    (d)複数の目的を持ったコミュニティ・ラーニング・スペースやラーニング・センターを創り、女性特有の需要を考慮した女性向けのすべての種類の成人教育プログラムの利用と参加を促進する。

    (e)現地の文化、知識、方法論を認識し、その価値を評価する関連のプログラム、方法、資料を開発することにより、様々な現地言語の読み書き能力の開発を支援すると同時に、より広いコミュニケーションのために第二言語の教育を十分に発達させる。

    (f)すべての教育政策とアプローチにおいて不利な状況にいる集団(たとえば、先住民、移民、特別なニーズのある人々や農村に住んでいる人々)に系統的に焦点をあてることを財政的に支援する。無料の、または政府が補助金を出すプログラムや奨励金、手数料免除、勉強のための有給休暇のような奨励策のあるプログラムも含まれる。

    (g)刑務所内において、適切なレベルの成人教育を提供する。

    (h)市民社会組織、労働市場の利害関係者、学習者および教育者とのパートナーシップにおける、利害関係者と責任を識別するメカニズムを含む、相対的なかつ統合されたアプローチを採用する。

    (i)開発の取り組みを重要な焦点として、移民と難民に対する効果的な教育対応策を開発する。

16.  学習と教育の質は、継続的な注意と開発を要する、相対的かつ多次元的な概念であり、取組みである。成人学習の質を高める文化を醸成するには、関連するコンテンツとそれを届ける手段、学習者を主体としたニーズの査定、複数の能力と知識の取得、教育者の専門化、学習環境の充実、個人やコミュニティへの権限付与などが必要である。

 目標を達成するために、我々は以下を表明する。

    (a)結果と影響の測定を考慮に入れ、成人教育プログラムのカリキュラム、学習素材、教育法における質の基準を開発する。

    (b)提供者が多様かつ多数であることを認識する。

    (c)高等教育機関、教師による団体、また市民社会組織とのパートナーシップの確立などを通じて成人教育の教育者の研修、能力開発、雇用条件および専門化を改善する。

    (d)様々なレベルで成人の教育結果を評価する基準を開発する。

    (e)正確な質の指標を設定する。

    (f)データと優れた取組みの収集、分析、普及を行うための知識管理システムによって補完された、成人教育の系統的かつ学際的なリサーチへの支援を増大させる。

行動のためのベレン・フレームワークの実行を観察

17.  我々は、国内外の両方で成人教育を新たに活気づかせようとする全体の意思を強みとして、以下について説明責任を負い、観察することを表明する。我々はまた、成人教育の政策決定者に向けた、有効的で信頼性が高く、かつ十分な量と質を備えたデータが必要であることを認識している。行動のためのベレン・フレームワークの実現には、パートナーと協力して、国家レベルまたは国際的レベルで定期的な記録と追跡のメカニズムを設計し実行することが最も重要である。

 目標を達成するために、我々は以下を表明する。

    (a)識字率の推移と成人教育のための、比較が可能な一連の指標を開発するプロセスへの投資を行う。

    (b)成人教育プログラムへの参加と進展に関するデータと情報を定期的に収集、分析する。性別やその他の要因別に分解して長期にわたる変化を評価し、良い取組みを共有する。

    (c)CONFINTEA VIに対するコミットメントの実施を評価するために、定期的なモニタリング・メカニズムを確立する。

    (d)3年ごとに進捗報告書を作成し、ユネスコに提出することを勧告する。

    (e)明確なベンチマークと指標を備えた、地域のモニタリング・メカニズムを開始させる。

    (f) 2015年のEFAとMDGの予定表と時期を合わせて、CONFINTEA VI の中期レビューのための国ごとの進捗報告書を作成する。

    (g)成人の識字率向上、成人教育および生涯学習の分野でMDGとEFSをフォローアップするために南南協力を支援する。

    (h)異なる学問分野、および農業、医療、雇用などの部門を超えた成人教育における協力がどのようにおこなわれているかを観察する。

 国際的レベルでのフォローアップと観察を支援するために、ユネスコとその組織に対し、以下を求める。

    (i)データや良い取組みの事例を収集するために、加盟国自身が寄与するオープン・アクセスのナレッジ・マネジメント・システムを設計および開発することにより、加盟国に支援を提供する。

    (j)非公式や略式の学習を通じて取得されたものを含め、すべての学習の成果に関するガイドラインを開発し、その成果を認識・検証できるようにする。

    (k)成人教育の実績について定期的に評価し進捗状況を報告するために、ユネスコ生涯学習研究所を通じたユネスコ統計局とのパートナーシップにより、生涯学習の進展に関するグローバル・レベルでの観察プロセスを調整する。

    (l)これを基盤として、成人教育に関するグローバル・レポート(GRALE)を定期的に作成する。

    (m)1976年成人教育の発展に関するナイロビ勧告を2012年まで検討し、更新を続ける。

 

付属資料

調書

世界的な教育問題と課題への対処

1.  現在の文化的、経済的、政治的、社会的な課題への対応において、成人教育は非常に重要な役割を担っている。グローバル化した世界では、多くの可能性、特に、地理的な境界を越えた、豊かで多様な文化から学習する可能性への道が開かれている。しかし、不平等の拡大が、我々の時代の支配的な特色となっている。世界人口の多くが貧困の中で暮らしており、43.5%の人々は1日2米ドル未満で生活している。世界の貧困層の大半は農村地域に住んでいる。南半球における若年層の増大と北半球における高齢化を伴った人口学的な不均衡は、貧しい地域から豊かな地域への大規模な移動(国内の移動および国境を越えた移動)と大量の流民の流入によって悪化している。食料、水、エネルギーは平等に行き渡っておらず、長期的には、生態学的な退廃によって、生存そのものが脅かされている。重大な欠乏に加え、能力の欠如も頻繁に観察され、社会が有効に機能する妨げとなっている。今日の子供たちのうち、おびただしい数の若年層が失業に直面すると予想されている一方、社会に何の関係も持たず、社会的、経済的、政治的に「隔たりがある」と感じる若者がますます増えている。

2.  我々は、生産市場と労働市場の構造的なシフト、日常生活における不安と懸念の増大、相互理解実現の困難、そして今や深まりつつある世界の経済・金融危機に直面している。同時に、グローバル化と知識経済によって、新たな労働環境、社会組織形態、コミュニケーション・チャネルに対して我々のスキルや能力を適合させるよう強いられている。これらの問題や、急を要する我々の全体的、また個人的な学習需要は、この分野における我々の信条と仮定、および確立された教育制度と哲学の基盤に疑問を投げかけている。

3.  多くの国では、成人の識字率が依然として大きな問題である。7億7,400万人の成人(そのうち3分の2が女性)が基本的な読み書き能力を欠いているが、効果的な識字率向上と生活スキル取得のプログラムの提供は不十分である。欧州では、労働力のほぼ3分の1が中学校低学年程度の能力しか持っていないが、新たな仕事の3分の2は、中学校高学年以上の資質を必要としている。南半球の多くの国では、人口の過半数が小学校レベルの教育さえ受けていない。2006年には7,500万人の子供(そのうち過半数は女の子)が早期に退学したか、一度も学校に通わなかった。子供たちの半数近くはサハラ以南のアフリカの出身であり、80%以上が農村の子供たちである。教育カリキュラムの社会的関連性の欠如や数の不足、一部の場合には教育者の訓練の不十分さや資料と方法の不足など、既存のシステムは、さまざまな障壁によって社会の格差に対応出来るような質の高い学習を提供する能力を損なわれている。

4.  これらの課題に対応するために、国際的に協調した努力が続けられており、万人のための教育(EFA)の6つの目標(2000年)の達成に向け、政府主導による国連機関、市民社会組織、民間の教育提供者、寄付者との協力を通じて進展が見られた。普遍的な初等教育のための資源は、EFAファストトラック・イニシアチブを通じて増加させることができた。国連識字の十年(UNLD)(2003~2012年)は、世界的な提唱と自覚を促す活動を通じてEFAの識字率向上の目標達成を支援している。エンパワーメントのための識字事業(LIFE)は、識字ニーズが最も大きな国々を支援するためにUNLD内で世界的な枠組みを提供している。ミレニアム開発目標(2000年)のうちの2つ、普遍的な初等教育の達成とジェンダーの平等は、明示的に教育に言及している。しかし、これらの努力はいずれも、基本的な識字能力と生活スキル以上の成人教育について、指定された役割を果たすものではなかった。持続可能な開発のための教育の十年(2005~2014年)で、成人教育が非常に明確な役割を果たしうる広範なマンデートが設定されているのは励みとなることである。

5.  成人教育は、我々が直面している課題に対する、非常に重要かつ必要な対応策である。成人教育は、公式、非公式、略式の学習を統合し、若者と成人の学習者両方に対して明示的または黙示的に対処する生涯学習・教育の相対的・包括的システムの重要な構成部分である。結局、成人教育とは、活動的な市民としての成人のニーズに対応する魅力的な学習環境および学習プロセスを提供することであり、複雑かつ急速に変化する文化、社会、経済の中で - 職場で、家庭で、地域社会で、社会生活の中で - 生活を構築・再構築することのできる自信を持った、自律した個人を育てることである。人生において職を変える必要、移動や移民といった状況での新たな環境に対する適合、起業家的イニシアチブの重要性、生活の質の改善を維持する能力その他、社会経済的環境への対応にはすべて、成人の生涯全般に渡る継続的学習を必要とする。成人教育は、特定の能力を提供するだけでなく、自信、自尊心、アイデンティティと相互支援の確立などを高めるための重要な要因でもある。

6.  現在6年ごとに推定されている成人人口の平均的教育レベルは上昇しており、それに応じて長期経済成長は3.7%、一人当たり所得は6%増加している。それにもかかわらず、成人教育は、単なる社会支出や金融支出の項目を大きく超える意味を持つ。成人教育は将来の希望への投資である。

CONFINTEA V以降の成人教育の進展

7.  CONFINTEA VIの準備のために加盟国154カ国が提出したレポートと、地域での準備会議中に行われた効果的な取組みについての話し合いによると、生涯学習の観点から、成人教育において幾分の進展と革新があったことが示されている。2000年に導入された欧州連合の継続的生涯学習戦略の例および加盟国における関連の国家政策とは別に、南半球のいくつかの加盟国が、包括的な成人教育政策と法制を導入した。憲法の中に成人教育を正式に定めた国さえあった。政策の枠組みを指針とする成人教育に対する系統的アプローチが開発され、画期的な政策の改定が行われた。

8.  一部の加盟国では、識字率向上の計画、プログラムおよびキャンペーンが再開され、加速している。2000~2006年の期間には、世界的な成人の識字率は76%から84%に上昇し、特に発展途上国において進歩が見られた。一部の政府は、市民社会と協力して積極的に、幅広い内容や目標、ターゲット・グループのあるフェール・フェール(faire-faire)のようなアプローチによって、非公式な学習機会を積極的に提供しようとした。非公式な教育の提供は多岐にわたっており、人権、市民権、民主主義、女性の力、HIVの感染予防、健康、環境保護、持続可能な開発などのトピックをカバーしている。成人学習者週間や学習フェスティバルのような提唱イベント、学習都市、学習地域といった総合的な動きは、成人教育に大きく貢献している。

9.  加盟国間でも、ジェンダーに敏感な成人教育の提供、特に女性に関する成人教育の提供のメリットを確信する徴候が見られ、認識が高まっている。情報通信技術や開放的な学習、通信教育などが歓迎され、ごく最近まで排除されていた学習者の固有のニーズに徐々に対応できるようになっている。多言語、他文化の国においては政策で母国語の学習に対応することが増えている。ただし包括的な政策を実施している国は少ない。

10.  成人教育プログラムのための情報、文書化、観察、評価のシステムが導入された。品質保証団体や手順など、学習の認知、検証、認定の効果的な手段とシステムが徐々に設置されている。公式、非公式、および略式の学習と教育におけるシナジーが創り出されると、既存のリソースと能力をより効果的に使用できるため、個人の学習者と教育システムの両方にとってより良い結果を生み出すことが証明された。

11.  成人教育は、国家が重要な市民社会機関、企業部門、労働者協会と提携して、断固としたイニシアチブを実施することによって盛んになる。官民のパートナーシップは社会的信用を得てきており、南南および三角協力は持続可能な開発、平和、民主主義のための新たな形態の成人教育形成に目に見える結果を生み出している。地域や超国家の機関、政府代理機関は、国家に影響を与え、国家を補完し、変化を主導する非常に重要な役割を果たしている。

成人教育の課題

12.  このような進展にもかかわらず、CONFINTEA VI のために作成された成人教育に関するグローバル・レポート(GRALE)は、既存の問題と共に新たな社会的・教育的な難問が出現していることを示しており、そのうちの一部は、今ところ、国内的にも、地域的にも、世界的にも悪化している。極めて重要なのは、CONFINTEA Vをきっかけにして成人教育を再構築し、強化するという期待が実現していないことである。

13.  生涯学習における成人教育の役割と地位は、継続して控えめである。同時に、教育以外の政策分野では、成人教育が広範な経済的、社会的、人的発展に提供することのできる際だった貢献を認識し、統合することができずにいる。成人教育の分野は依然として断片的で、提唱される努力は数多くの領域に分散されており、全く異種の要素を含むという成人教育の、まさにその性質が原因で、一つの社会政治的分野に帰属することが難しいために、政治的な信頼性が希薄化している。成人教育がしばしば政府機関の議題にのぼらないのは、省庁間の協力が少なく、組織的構造が弱体で、教育(公式および非公式)部門とその他の部門のつながりが弱いためである。学習の認識や認定に関しては、国内のメカニズムと国際的な努力は共に、公式に認定されたスキルや能力を過度に重視しており、非公式、略式、経験的な学習を含めることはほとんどない。外部(高等教育の分野や機関からの)からの参加やインプット、若者や成人教育者の他の組織の関与なしに孤立して政策が策定される場合には、政策と実行のギャップが拡大する。

14.  成人教育が我々の未来に有効な貢献をすることを可能にするほど先見性のある十分な財政計画は、確立されていない。さらに、現在も今後も強まりつつある意思決定分権化のトレンドは、必ずしもいつも、すべての階層への十分な財政配分や予算策定権限の適切な委譲を伴っているわけではない。成人教育は、国際的な寄付者の支援戦略で重要な位置を占めておらず、寄付者の調整や協調努力の継続的な対象となっているわけでもない。債務免除は、これまでのところ、成人教育に大きな利益をもたらしている。

15.  私たちは成人教育プログラムの多様性増加における証人となっているが、そのようなプログラムを提供する際、現在は主に職業的または専門的な教育や研修に重点が置かれており、成人教育のすべての側面(経済、持続可能性、地域社会、個人)の発展に対応する、より統合されたアプローチが欠けている。性別主流化のイニシアチブがいつも、女性の参加拡大に関するプログラムの増加につながるとは限らないように、成人教育プログラムが、先住民や農村人口、移民に対して対応していることはまれである。年齢、性別、文化的背景、経済状況、独特のニーズ(障害を含め)および言語など学習者の多様性は、プログラムの内容や取組みに反映されていない。母国語を推進する。一貫性のある複数言語政策を採っている国はほとんどないが、そのためには、特に先住民やマイノリティ言語の人々の識字環境を作ることが不可欠である場合が多い。

16.  成人教育は、最も広い意味において言及されるだけであり、多くの国際教育の議題や勧告では控えめにとりあげられ、しばしば基本的な識字能力の取得の類義語と見られている。識字能力の向上が計り知れない重要性を持っていることは明からであり、膨大な規模の識字に関する問題がいつまでも存在していることは、近年発動された手段や取り組みが不十分にしか採用されていないとの告発を招いている。高い文盲率は常に、政府や国際機関が政治的、財政的に十分なことを行ったかどうかについて疑問を呈する。

17.  教育者の専門化と研修の機会の欠如は、設備、資料、カリキュラムといった学習環境が貧困であるのと同様、成人教育の質に悪影響を与えてきた。適切な内容、教授法、提供方法およびインフラ支援を決定するための計画プロセスにおいて、ニーズの評価やリサーチが系統的な行われたことはほとんどない。観察、評価、フィードバックのメカニズムが成人教育の質において一貫した特徴となっていることもない。それらが存在する場合でも、その洗練度は、提供する量と質を均衡させなければいけないという制約を受けている。

18.  この調書は、行動のためのベレン・フレームワークにおいて上記に概説されている勧告と、戦略の基盤となる根拠を提供するものである。

お問合せ先

総合教育政策局地域学習推進課

(総合教育政策局地域学習推進課)

-- 登録:平成22年04月 --