家庭教育支援の推進方策に関する検討委員会(第4回)議事概要

日時

平成28年10月24日(月曜日)14時00分~16時00分

場所

文部科学省生涯学習政策局会議室

出席者(敬称略)

委員

伊藤亜矢子、稲葉恭子、大野トシ子、岡田淳子、川口厚之、西館慎、水野達朗、山野則子、吉見和子

オブザーバー

小林厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課少子化総合対策室室長補佐

文部科学省

神山大臣官房審議官(生涯学習政策局担当)、里見政策課長、高橋男女共同参画学習課長、関家庭教育支援室長、髙橋家庭教育支援室室長補佐

議事概要

(1)第3回議事概要(案)について、承認

(2)事例発表(水野委員、稲葉委員、大野委員、伊藤委員)
   以下質疑・意見

<水野委員事例発表(資料3)>
○ ペアレンツキャンプが支援した家庭の多くが最初に相談した窓口は公的機関であるということだが、具体的にこの公的機関からペアレンツキャンプへ相談がくるような流れがあるのか。また、復学に当たり学校との連携の部分でどのような取組をされているのか。もう一点、大東市と関わるきっかけは何であったのか。

○ 公的機関から民間機関であるペアレンツキャンプへの紹介は例がなく、保護者がホームページ等を検索してくるケースばかり。学校との連携については、ペアレンツキャンプのカウンセラーが保護者と学校に行き、細かい話まで保護者と校長、教頭、担任と我々民間機関の人間で打合せし、学校との橋渡しをしている。大東市とペアレンツキャンプとの関わりについて、民業としてのペアレンツキャンプと大東市教育委員会との関わりはないが、私自身が大東市で教育委員をしているという関わりがある。

○ ペアレンツキャンプでは、支援の終了というのはどの時点なのか。また、発表における、民間、行政それぞれのターゲット層のすみ分けの把握について、それぞれどういうところを指しているのか。

○ ペアレンツキャンプの不登校支援に関しては、復学は通過点ととらえており、支援者としても難しいのが継続登校である。我々の支援では、一旦復学を目指して、その後も子供自らが学校に行くような支援を約1年間サポートする。訪問カウンセラーの支援は、継続登校の最中には徐々に薄めていき、保護者へカウンセリングスキル、コーチングスキルについてアドバイスし、カウンセラーがいなくとも子供を導いていけるようにし、支援を終了する。ターゲット層のすみ分けについては、例えば民間のフリースクールの強みはどこか等、民間手法がどういうものがあるのかをある程度収集・把握して研究し、行政で使えるものは使っていくというイメージである。

○ 深刻なケースの支援で学校に行った際の学校側の受入れ度はどのようなものか。また、学校等公的機関を飛ばしてペアレンツキャンプの方に直接相談されるというケースはあるのか。

○ 学校によって対応は様々であるが、学校の困り感というのも察知しながら話をしていくことで、関係性を作っていく。公的機関を飛ばして民間機関に相談というケースは、ペアレンツキャンプに関してはほぼなく、やはりまず公的機関、学校、スクールカウンセラーに相談している。直接相談に来るケースに関しては、一旦学校の先生やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーに相談した上で、こちらもう一回お問い合わせくださいと伝えている。

○ 学校の対応は様々ということだが、受け入れられる割合はどれくらいか。また変化はあるか。

○ 7割が肯定的、3割が否定的といった印象。ただし、当初否定的であっても、支援の中で徐々に雰囲気が変わってきて、学校側と民間機関が連携・協力できるケースもある。

<稲葉委員事例発表(資料4)>
○ 運営資金面では、どのようなかたちで運営されているか。

○ 運営資金はメンバーからの寄附で運営している。助成金は3年程度で切れてしまうので、自分たちで対価を得て、それを回して運営することで持続可能なNPOになり、スタッフ全員がそうした共通理解で動いている。

<伊藤委員事例発表(資料5)>
○ もっと気楽にスクールカウンセラーと地域の支援者たちが話す機会があれば、地域の見守りが充実してくると思うが、行政にどのように関わっていけばよいか。

○ スクールカウンセラーは勤務日が少なく、エンドユーザーまでの広報が学校での相談室だより等に限られるため、是非行政や家庭教育支援関係者で広報していただきたい。

○ スクールカウンセラーの動きで効果的と考えられるのが、課題を抱えている子供の相談対応と並行してその保護者の相談対応をし、それを統合し問題解決に当たっていくところで、保護者との面談が非常に重要と思う。また、スクールカウンセラーと学校の教職員集団をつなぐ役割を担う人も必要と考える。

○ 保護者面談は重要であり、非常に数も多くなっている。またコーディネーター・つなぎ役の存在も重要。当初に比べると学校側のスクールカウンセラーの活用は進んできており、支援会議や教育相談の会議、生徒指導会議といった場にスクールカウンセラーが参加し、生徒指導から教育相談、特別支援まで、スクールカウンセラーが全校の状況を把握できる形でやっている学校も数多くある。

○ スクールカウンセラーは勤務時間が限られているため、新たなケースが入るとすぐには対応できない。そうした部分をスクールソーシャルワーカーと協力しながらカバーしていく必要がある。

○ 保護者に電話をするときも教員とスクールカウンセラーが一緒に掛けるなど、密接に役割分担をしながら、協働で動いている。そのため、個別面接が何回も必要なケースは、教育センター等公的な機関との役割分担も必要。学校の中にいるということを最大限生かして、学校のコミュニティー自体の力を上げることにスクールカウンセラーの活動が集中できるよう、学校側も理解しながら協働できると非常に効果が高い。ただ、人数も時間数も地域差があり、このあたりは行政の理解と協力により充実していくことが大事であると思う。

○ 私たちの地域でもスクールカウンセラーを通り越して我々家庭教育支援チームの方に相談がくるということがあるが、やはりスクールカウンセラーの勤務時間が週に1回ということで、「今相談したい」というときに時間が合わないということが多いようだ。その点、行政でスクールカウンセラーが常駐できるようなシステムを作ることはとても大事であると思う。

○ スクールカウンセラーの養成プロセスの中で学校での動き方をどれだけ伝えられるかという課題がある。日本では臨床心理士会がバックアップし、スクールカウンセラーの組織化をしているが、他国の例では、スクールカウンセラーに特化して、自らの役割や活動方法を非常に活発に共有するシステムができている国もある。スクールカウンセリングの専門性を高めていくようなシステムの発展が重要と考える。

<大野委員事例発表(資料6)>
○ 児童委員・民生委員が携わる子育てや子供に関連する分野で、得意とすることはあるか。

○ 児童委員・民生委員は、情報を持っているものの、守秘義務があり自ら出向くことはできないので、「ひよこサロン」、「ちょっとぽっとタイム」といったサロンを開催し子育て支援活動をしている。そうした活動を通して相談があった場合には、親身になって対応している。

○ 3年前まで主任児童委員をしていたが、主任児童委員がどういう役割を持っているかについて民生委員も余り認識がない場合があり、主任児童委員と民生委員の立ち位置、人間関係というのは重要であると思う。重篤な問題になる手前のケースを発見し、それを子育て支援センターの相談員に相談し、学校側につなげようと思っても、なかなか学校側から相談員に連絡がない限りは動けないというところがあるので、例えば小学校ごとに主任児童委員が配置されると、子育て支援センターの相談員、学校、スクールカウンセラー、それから主任児童委員がつなぎ役として連携して活動できるのではないかと思う。

○ 山口県の場合は、コミュニティ・スクールの学校運営協議会の委員の中に自治会長や主任児童委員、民生委員・児童委員を加えるところが多くなっている。コミュニティ・スクールになる前は、民生委員・児童委員あるいは自治会長の存在が余り学校からは見えず、協力体制の構築も難しかったが、気楽に学校に来られる機会が増えることでお互いの顔と顔がつながり、連携・協力するシステムができてきた。

○ 主任児童委員が軸になり民生委員と一緒に学校訪問を実施した。受け入れている学校へ年2回ほど主任児童委員と民生委員が出掛け、学校側が問題を抱える子供の情報等を、信用し公表してくれた。守秘義務をきちっと守って、民生委員、主任児童委員が地域の中で学校側から問題を聞いて、丁寧に地域の見守り、保護者の支援を行い、翌年にはその数が半減できたということがあった。主任児童委員、民生委員が地域で力を発揮しているという例である。

○ 貧困や家族関係の問題等、学校では直接支援しにくい領域について、私たちの地域では学校の方から主任児童委員の方に問題提起がある。主任児童委員は、それを地域の民生委員の方に伝えて、地域の民生委員さんがいろいろな情報把握や日常的な見守り等の活動をしている。

○ 様々な形があるとは思うが、学校と民生委員・児童委員、主任児童委員の連携は非常に重要と感じた。

○ 学校生活から見た子育て・子育ちの困難について、これから家庭の教育力の低下というのをどう定義付けるかという点を問題提起したい。例えば、意識が高い親ほど、子供を塾等に通わせるなど教育のアウトソーシングをする。この場合、親の意識は高いけれども、家庭の教育力は低下してしまうというとらえ方をするのか、又は低下とはいえないというかたちで議論を進めていくのか。

○ アウトソーシングをしてしまうと、家庭が意識しているところだけが重点化され、子供に必要な学びとしてどうかという問題がある。ただ、親の意識としては、教育をしなければという思いがあり、その点で「教育力の低下」といってしまうのはどうか。むしろ、子供が多様な体験をする場が少ないことや、学校教育が進学一辺倒になってしまうこと等を含め、社会が子供を育てるのに十分な状況になっていないという視点を持つことが重要。
  多様な場で広く子供が育つことができるような教育力というふうに捉えて、家庭において親だけが子供に教育を行うというベクトルだけが浮かび上がらないような工夫が必要と考える。

○ 指定管理で子育て支援センターと広場を運営しているが、0歳から18歳まで異なる年齢の子供たちが毎日来る中で、普通の児童館にはない、良い子供の育ち、親の育ちの場になっていると感じる。またNPOの活動では、お互いに母親であり親であるという立場から応援でき、行政にある固さがなく、また地域でつながっているので、重篤と思われるケースは各行政機関、健康センター等へつないでいるほか、逆に相談を受けたりもしているので、そうしたつながりで家庭の応援ができればと考え取り組んでいる。

○ 家庭に求められるものが非常に多いような社会になっており、子育てや家庭教育を行う上でも、孤立化であったり、個人情報の絡みであったり、近隣との関わりの薄さ等により行いにくくなっているような状況があると感じているところ。

○ 平成23年度の「つながりが創る豊かな家庭教育」の取りまとめのときから家庭の教育力の議論をしており、家庭生活や社会環境の変化の影響によって、子供の育ちが難しくなっているという面を十分理解する必要があり、子育ては社会の問題であるということを示したが、今、家庭に求められるものが更に多くなってきているように思う。

○ ますますライフスタイルや生活経験が多様化し、日本の学校文化に不慣れな家庭等も増えている状況にある。そのような中、学校と子供をつなぐものとして家庭教育に求められるものは大きくなり、一方で、家庭の中で大事にされている教育が何かということも非常に多様化していると考えている。そういう意味でも、家庭と社会とのつながりを大事にしていかないと、個々の家庭がそれぞれに子育てを頑張っても、社会の中で家庭が孤立してしまうことが起こり得るのではないかと、学校現場にいて感じる。

○ 社会全体で豊かなつながりの中でいろいろな人が家庭に関わり、支援していく体制づくりが重要と考えている。

○ どこまで家庭教育が担うべきかが分からないという意見もあり、家庭教育と学校教育と地域教育の担い分けがこれからの課題、テーマであると感じる。

○ 学校が家庭はそこまですべきだろうと思っていることと、家庭が思っていることの違い、あるいは学校はここまでするべきと、家庭が思っていることと学校が思っていることとの違いはあるのか。

○ 教員の立場で言うと、もっと家庭の方でしっかりやってほしいというのは一般的に思っているし、家庭では逆のことを思っている。ただし、お互いどこまでやっているかを知らずに思っているところがあるので、学校側ではどこまでやっているか、また、家庭ではこんなにやっていますというところをお互い共有できたら、その部分でうまくつながっていけると思う。また、保護者同士のつながりについて、保育所までは送迎で保護者同士が会う機会があるが、学校へ行くようになるとそのような機会もなくなり、対面のつながりが減るということがある。学校へ行き出すと、保護者も働き始めることも多いので、小学校へ上がる際に家庭の変化があり、そこを丁寧に支援していくことをもっと考えていく必要があると感じる。最近はSNSの狭い世界で、その中の情報が全てだと感じてしまう保護者も多く、広く保護者が集まることができる広場やセンターがあれば、そこでいろいろな情報を得ることができるので、そうした機会をつくる支援も今後必要と考えている。

○ 家庭教育支援チームが、中間支援者として、訪問の中で相談が出たら「これは地域の人に言うのは恥じゃないよ」や「これはまあまあ家庭でやるべきではないか」ということを、話の中で広げていって、地域における教育、家庭教育、学校教育の担い分けを中間支援者である家庭教育支援チームの訪問員が担っていけるような計画をしている。

○ 保護者と、家庭と学校と地域がそれぞれまずお互いに知る、お互いに見えるということが必要で、地域が背負うにも、保護者がどれぐらい背負っているかが見えないとなかなか手を出せない。そこでどうやって共有の場を作っていくか。コミュニティ・スクールはその一つの答えかもしれない。ただ、コミュニティ・スクールは校長先生、教頭先生の担当になってしまっていて、先生方一人一人の動きなどが地域と共有されないということもある。その共有がうまくいかないと、親がサボっているというふうに見えたり、先生が厳しいというふうに見えたりしてしまい、その間を大東市ではうまく家庭教育支援チームがそこをつなごうとしているという、すばらしい取組だと思う。

○ 場を共有するだけでなく、関係者の見えているものが違うようであれば、そうした部分を埋めていく必要がある。

○ 家庭の目指す方向性や、学校観、教育観等は多様であり、それをコミュニティ・スクールのように共有化していくのか、あるいは学校という制度がホームスクーリングなどの多様な形態も含めてもうちょっと違ったものになっていくのか。その中で、子供にとって何が必要かという視点が家庭教育にも必要と感じた。子供の育ちを支えるものとして何が必要かという視点を持っていないと、一般論になっていくときに、現実に必要なこととのミスマッチが起こりやすくなってしまうと思う。

○ 場を共有するだけでなく、関係者がそれぞれどのような景色を見ているかということを共有することがスタート。また、子供を主語に、子供にとって何が大切かという視点を持つという大事な指摘を頂いた。次回は、これまでの議論を踏まえた報告をする予定。

お問合せ先

生涯学習政策局男女共同参画学習課家庭教育支援室

(生涯学習政策局男女共同参画学習課家庭教育支援室)

-- 登録:平成28年12月 --