家庭教育支援の推進方策に関する検討委員会(第3回)議事概要

日時

平成28年9月30日(金曜日)10時~12時

場所

文部科学省5F3会議室

出席者(敬称略)

委員

伊藤亜矢子、大野トシ子、奥山千鶴子、川口厚之、鈴木みゆき、西館慎、松田恵示、水野達朗、山野則子、吉見和子

事例発表者

猪木直樹 全国国公立幼稚園・こども園PTA全国協議会会長

オブザーバー

小林厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課少子化総合対策室室長補佐
中野国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター総括研究官

文部科学省

有松生涯学習政策局長、神山大臣官房審議官(生涯学習政策局担当)、高橋男女共同参画学習課長、関家庭教育支援室長、髙橋家庭教育支援室室長補佐

議事概要

(1)座長代理の指名

(2)第2回議事概要(案)について、承認

(3)平成29年度家庭教育支援関連概算要求について、事務局から報告

(4)事務局から資料3に基づき事例発表のスケジュールについて説明の後、事例発表
(奥山委員、吉見委員、松田委員、猪木会長)
以下、質疑・意見。

<奥山委員事例発表(資料4)>
○ 循環型の人材育成に関連して、利用者がスタッフや地域の家庭教育支援の担い手になっていくよう具体的にどのように声掛けをするのか。

○ 利用しているときから、親子ボランティアという形で、利用者でもあり参画者でもあるという仕掛けをしておき、保護者に声掛けして、いろいろなイベントも一緒に手伝ってもらうようにしている。先輩のお母さんたちが、問題をどう乗り越えてきたかとか、幼稚園、保育園を選んだときの観点などを伝えることで、「自分はこうしよう」と決めていくことができる。現在、おやこの広場びーのびーののスタッフは、8割が利用者だった者。ただ、困難を抱えた家庭のサポートも行うどろっぷや、どろっぷサテライトは職員体制で実施している。

○ 子育ての相談は、未就園児のお母さんからが増えており、就学や養育に不安を抱えている。ここに早期に関われると効果的。湯浅町では、スタッフが訪問している中でアプローチし、県主催の子育て支援サポーター養成講座を受け、支援者になった者が2名おり、非常にアクティブに活動している。こうした支援者側の循環を意識して、支援者を確保していくことが重要と感じる。

○ 学校支援のチームと利用者支援事業の担当者が十分連携をして、見通しを持ってやり取りをすることが大事で、子供も乳幼児から小学生、また兄弟もいるので、支援者側のネットワークが非常に問われていると感じる。

○ 教育委員会や保健所と連携したNPOでの活動について、課題や難しさはどういったことがあるか。

○ 保護者が、情報の不足や不慣れなためにできないだけか、それとも大変な困難を抱えているのかを、しっかりアセスメントできる人が重要である。
利用者支援事業は、市町村の事業であり、市町村がNPOに委託してもやっていけると判断したNPOが受託しているため、どろっぷには担当保健師が3人つき、月に1回ケース会議を実施し、要保護児童対策地域協議会のメンバーにもなっている。このように、行政との連携の下活動するスキルを持ってきているNPOも増えている。

<吉見委員事例発表(資料5)>
○ チーム員が一致団結しながら活動されているようだが、工夫されている点、気を付けている点、また取組の内容で他の取組に役に立つようなことがあるか。また、活動推進上の課題として、福祉部門との連携の部分の難しさなどはあるのか。

○ チーム員の連携について、毎週木曜日に、全員が顔を合わせていることが、とても重要なことであると考える。チーム員全員がいろいろな属性をそれぞれ持っており、他の場面でも活動しているため、そこで研修や支援してきたことなども持ち寄り、対応を協議できることが強みとなっている。
福祉部門との連携の難しさについて、保育所に行く前の1歳になった子供の訪問を計画した際、福祉の方から個人情報保護の観点から名簿を提供できないと言われ、活動内容を紹介し理解を求めたものの難しく、最終的には市の生涯学習課長(教育委員会)に取り持ってもらい入手できたということがあった。

○ 訪問型支援について、個人情報保護の課題で弁護士にも相談したところ、事業主体が、町(首長部局)と町教育委員会の2者になれば、問題はないとアドバイスを受け、それまで事業主体を教育委員会だけとしていたものを、町長まで話を上げて、事業名も「子育て・家庭教育支援事業」と頭に「子育て」を入れ、事業主体に町(首長部局)も入れることにより、個人情報の部分が解決できたということがあった。
  訪問支援に当たっては、警戒されることもあるので、参観日や保護者の講演会等に訪問員が行って、少しコンタクトを取り信頼を得ることも効果的である。

<松田委員事例発表(資料6)>
○ 地方公共団体によって取組への熱意に差があるのではないかと思うので、地方公共団体への働きかけ方はどうしたらよいか。また、現在は「学校インターンシップ」という取組があるが、それとの関係はどうなっているか。もう一つ、現在教職課程の中では、養成・採用・研修というシステム作りが大切と言われているが、「パスポートクラブ」に入った学生が、その後、取り組んできた市町に行政として入っていったことは今まであるのか。

○ 地方公共団体との関係について、やらないといけないニーズに対応するだけでなく、課題発見型、問題発見型といった、生み出すような構えで協働していくことが必要であるが、行政はそうしたベースがないため、窓口の人の熱意によってしまうという面があるように思うので、行政職員に対しての研修は必要。
  学校インターンシップについて、「こどもサポーター」を全学の1年生に取らせて、1年生のうちに100時間の地域での活動を行って、それを単位化し必修にすることについて検討しているところ。まだ7年目であり、教員になっている者が多いため、行政の現場で社会教育に携わっている者は少数であるようだ。

<猪木会長事例発表(資料7)>
○ 幼稚園・こども園のPTAは、在園児の保護者の多くが入るという意味でいろいろな可能性があると思うが、逆に言うと、その園内に限られてしまうところもあると思う。地域との連携について、発表中にNPOや地域商店街との連携があったが、家庭教育支援チーム等との連携の事例や、こういうことがあれば連携しやすい、ということがあるか。

○ 例えば、運動会に未就園児の保護者を招待するなど、それぞれの幼稚園では未就園児とかかわりを持つことを計画している。また、子育て支援のNPO団体との関わりを持とうとしたりしており、そこで活躍されている方が、その幼稚園の卒園生であった等で関係がスムーズにいくということがある。
  幼稚園のPTAは、表に出ていないが人材が豊富であり、地方議員や子育て支援のNPO団体等とのコネクションを通し、幼児教育の大切さを行政にアピールするなど、そういう部分を大いに活用していきたい。

<全体討議>
○ 生まれてから亡くなるまで切れ目のない支援が必要があると考えており、民生委員は、高齢者から子供にも目を向けなければいけない時代になってきている。乳児家庭全戸訪問の際に民生委員も同行させてほしいとお願いをしているが、実現は困難な状況。実際に訪問した際に、家庭から「どうして私のところに来たのですか」という質問はあったか。

○ 「なぜ私のところに赤ちゃんが生まれたのが分かったのか」と言われたこともあるが、「実は、教育委員会の関係で、このブックスタートの絵本を届けに来た」と伝えると納得され、和やかにお話ができたということがある。

○ 個人情報の問題については、市・町も事業主体になるかどうかが重要である。力を入れて取り組もうとすると必ず個人情報は必要となってくるものであり、首長の考えや、また担当者が意識を持ってつながろうとするかも、非常に大きいと思う。

○ 私の活動している千葉県民生委員児童委員協議会の中に浦安市があるが、フィンランドの子育て支援「ネウボラ」に市長が熱心で、日本版「ネウボラ」をつくろうと自らが訪問、視察をするなどしている。浦安市ではこの切れ目のない子育て支援事業を進めるために予算を計上している。是非これらが全国に広がっていくよう、全国民生委員児童委員連合会とも関わりができるよう努めていきたい。

○ 保健、児童福祉と教育委員会の縦割りについて、お互いそれぞれがやることということではなくて、話合いの場をしっかり持っていくことが重要であり、まずそこが第一である。国も、幼児教育と保育で、今は定期的に会合を開催しているところで、そうした試みが必要。

○ 商店街等入りやすいところにNPO等の窓口があることで、敷居が低くなり、支援者も困難を抱えた家庭が見え、横のつながりもでき、縦のつながりもできてくるということで、フォーマル、インフォーマル、循環型として機能する可能性があると思うが、縦軸を維持することが難しいということがあるのかと感じる。活動されていて、縦軸を強化するための取組等はあるか。

○ 民生委員という立場では、守秘義務を持って活動するため、どこにこういう人がいるかを御近所で分かっていても、自分たちから決して行くことはできないので、難しいところと感じる。そのため、「相談に乗る」という考えの下での活動になる。

○ 福祉と教育の連携であったり、学校教育と生涯学習の部分とも関係してくるかとは思うが、私たちも、発達段階ごとにそれぞれ子育て支援と家庭教育支援という言葉の違いにもあるように、この部分で課題を抱えている。ただしその中でも、関係者で話し合う場を作ることにより、連携や縦のつながりが少しずつ出てくるのではないか。

○ 教育委員会の指導主事は、相談のあった個々の事例について、個別支援と集団指導との兼ね合いを、学校の管理職や教職員と調整する役割を担っている。就学前に行われた様々な支援をどう学校教育でいかすのかについては、個別対応ありきということではなく、当該学校における集団指導をベースに個別支援をどう組み合わせるのかが調整の柱となる。学校で行われる様々な教育活動を特定の個人を意識して眺めるか、集団の活動としてとらえるかによって、見える風景は違ってくるように思う。

○ 大阪府立大学では、福祉を学んでいる学生と臨床心理士を希望する学生と教師になる学生が一緒に学校等へ入っていくコラボレーション教育プログラムを、文科省の大学GPをきっかけに始めている。その成果により、卒業生で生活保護のワーカーになった人と、教師になった人、児童相談所に行った人と、スクールソーシャルワーカーとなった人たちと議論していて、それぞれ違う職種になっているが、共通点があった。自分ではないほかの専門職がどの風景を見ているかを意識して話している。それがコラボレーションのポイントだと感じた。相手のプロセスがわかるようになる。
  専門性や立場が異なれば視点も異なってくるわけで、プロセスや学びを共有することが必要であるが、その場をどうやって作っていくかが重要である。

お問合せ先

生涯学習政策局男女共同参画学習課家庭教育支援室

(生涯学習政策局男女共同参画学習課家庭教育支援室)

-- 登録:平成28年11月 --