公民館が紡ぐ地域ネットワークづくりと家庭教育支援
1 | 自治体・団体名: | 大阪府貝塚市,貝塚市教育委員会 |
2 | 自治体・団体の概要 大阪府貝塚市は,大阪府南部に位置する人口9万人の衛星都市である。戦後まもなくからの公民館活動が活発な地域で,現在3館体制として,市民の交流,学習,文化活動の拠点となっている。さまざまな課題,対象別の講座から自主学習グループが生まれ横に結びつき,「子育て」から「老い」にいたる地域づくりのネットワークがつくられてきたのも特徴的である。 「北小学校ふれあいルーム」は,地域住民の声から生まれた地域と学校の交流の場である。1991年の発足から今日まで,「自主運営」「自主創造」をモットーに地域住民が主となり,活動の輪を広げている。「学社融合」の大切さを学んだ地域住民が,学校・地域・家庭の連携に取り組んできた。 北小学校区は,「願泉寺」を中心とした貝塚寺内町の膝元であり,地域の歴史は古く,子どもから高齢者までがともに暮らす3世帯,4世帯も少なくない。 しかし,少子・高齢化は急速な勢いで進行しており,1959年には,1,371人が在籍した北小学校児童も現在は,397名となっている。 |
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3 | 保育つき講座 1975年に,公民館事業として,「保育つき講座」をおこなった。子育て真っ最中の親たちが,孤立することなく子どもを育てていく環境をいかに整えていくのか,母親だけが子どもを育てていくのではなくて,社会全体で子どもをどう育てていくのか,といった観点を持ってはじめられた。しかし,1回目の講座は全く人が集まらなかった。「保育つき講座」といっても,「いったい,それはなんや」つまり,市民には経験もなく,意味するところがわからなかったのである。そこで,職員が団地を一軒一軒訪ね歩くなど,職員のはたらきかけがあって講座が続けられたのが初期の段階であった。 1982年筆者も赴任後すぐに,保育つきの「子育て講座」の担当になった。そこに参加してくる母親たちは,「夫が帰ってくるまで,ふと気がつくと誰とも話していない。このままでは私は赤ちゃん言葉になってしまうのではないか。」「乳飲み子をかかえて,今日一日地面の上を歩かなかった。」とか,子育て不安や子育てノイローゼに,1歩間違えると陥りかねないような状況を切々と語った。保健師や保育士など子育て専門職員からも,「赤ちゃんをあやしてね」と言うと,親から「あやすってなんですか,と聞かれるのです」といった話をたびたび耳にした。 公民館講座で,専門の先生の話を聴くだけでは,実際の生活の中のさまざまな問題や悩み・とまどいは解決しない,どうすればいいのだろうかという担当者としの思いがふくらんでいった。実際の生活に即して学び,いろんな疑問や問題を自ら解決してゆけるような講座にできないものかと考えた。そのためには,講座が承りではなく,自主的に学べるような仕組みが必要だと思った。 とかくこうした講座では,すごく活発に何でもてきぱきとこなす人もいる。そういう人ばかりではなくて,引っ込み思案だったり,なかなか人との関係がうまく持てなかったりする人もいる。隣に座っている人がどのように感じるかはおかまいなしに,暴言を吐いたりするということも経験した。しかし,職員があきらめずに「司会をやって」とか,ニュースにのせるので「あなたの声を聴かせてくれない」とか,次には「ニュースをつくってみない」とか,じょじょに市民が企画・実施する側になっていく機会をもつことをふやしていった。こうした公民館職員の働きかけもあって,1980年代には,公民館の保育つき主催講座の終了後に,自主グループ,子育て自主サークルが誕生していった。 |
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4 | 「貝塚子育てネットワークの会」結成 1988年,公民館創立35周年を迎えた際には,講座終了後のグループや地域のなかでの自主的な子育てサークルなどが複数できていた。一方,自主グループから,職員に対して「活動場所に困っているんやけど,どうにかならへんやろか」「みんなの協力を得るにはどうしたらいいやろか」といった相談が,持ち込まれるようになってきた。職員は,「どうしたらいいかな」といっしょに話し合いを重ねた。ふと,あるとき大事なことに気づく。 AグループとBグループの悩みが共通していること(当たり前のことだが)が,見えてきた。Aグループでは,あることに悩んでいたが,Bグループでは,その悩みを持ちつつも,さまざまな知恵と工夫で乗り越えたということがある。AグループとBグループがこれまで以上に交流したり,お互いに学習するような場面があったなら,Aグループの課題は解決に向かうのではないかということに気がついて,出会いと交流の場を仕掛けていこうと思ったのである。 さらに,1980年代後半には,中学校・高校の現場は,「荒れ」に直面していた。先生方,親たちと学習をはじめると,子育ての問題がさまざま出てくる。そこで,子どもが小さいときから,親が本音で語り合ったり,学びあったりする環境のなかで,子どもを育てていく仕組みづくりが大事だということにも気がついた。 こうして1988年,公民館創立35周年記念事業をきっかけに,子育てグループが集まり,交流したことをきっかけに「貝塚子育てネットワークの会」(以下「会」)が誕生した。 |
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5 | 子育てネットワークの活動 貝塚市の「子育てネットワークの会」の特徴は第1に,乳幼児のサークルの集合体だけではなく,乳幼児を持つ人から中高生を持つ人(茶髪から白髪まで)の結びつきを持っていることである。第2は,社会教育機関である公民館と共同しながら,子育てネットワークづくりを進めていることにある。 現在は,「乳幼児部会」「幼稚園部会」「小学生部会」「中高生部会」の4つの部会からネットワークの会が成り立っている。「乳幼児部会」は,いくつかの子育てサークルの集合体である。子育てサークルでは,たとえば,「価値観が違うお母さん同士がいて,うまく折り合いがつかない,どないしよう」「家庭のことばかり言う人がいて,どんなふうにかかわっていったらいいか」など,さまざまな問題が生じる。こうした問題を交流したり,これからの方向を見い出したり,ほかのサークルから学んだりということで「乳幼児部会」が大きな役割をはたしている。 各部会と公民館が共催で,学習会・講座を1カ月に1回程度もたれている。学習会・講座の内容としては,例えば「乳幼児部会」の「子育て広場」という講座では,「なぜ起きるいじめと虐待」「先輩おかあさんにきく」「心を育てるって何?」といった内容を取り上げている。「乳幼児部会」では,各子育てサークルのリーダーが集まってくる運営会議をもっている。ここで,先ほど紹介したサークルの悩みとか愚痴を言い合うと同時に,「子育てひろば」の企画をおこなっている。つまり,「子育てひろば」という講座を通して,親たちが自分の思いを具体的に表現しながら,公民館と共同で学ぶ場をつくってきた。 やがて,その取り組みは,貝塚の外へとひろがり,他地域,他職種の人たちから注目されることとなり,1995年,子育て支援のNPO「こころの子育てインターねっと関西」の設立,発展へと貢献した。又,19年の活動のなかでは,親たちは支援される存在としてではなく,自らが子育て仲間として,子育ての先輩としてアドバイザーとなり,市民活動のリーダーとして育っていった。 19年間の会の活動を支え,家庭教育支援における公民館職員,市民リーダーの果たした役割としては,以下のとおりである。
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6 | 学びと実践のキャッチボール「地域に遊び場をつくる」 子どもたちが大きくなって,幼稚園や学童期になると,親の悩みもさまざまに変化してくる。あるとき,子どもの遊びが「会」の大きな関心ごとになってきた。例えば,キャッチボールするのにも,キャッチボールできるような場所がない。車の往来が激しいし,児童公園も子どもが伸び伸び遊べるような場所になっていない。憂いていても何の解決にもならない。もう少し遊びを突き詰めて考えていこうということで,東京でおこなわれていた「プレーパーク」という実践に注目し,子どもの冒険遊び場づくり ![]() 同時期に,公民館で学んでいた「安心して老いるための会」の人たち,女性問題を学んでいた「学習グループ連絡会」等の人たちも学んだことを「支えあい,助け合い」の地域社会を実現すること,地域社会や実際の生活の中で学んだことを生かすことを模索していた。そこで,公民館が仲介・調整役コーディネーター)となって,学校や地域の団体に出会いと交流,学びあいを働きかけた,公民館活動と地域・学校との「融合」から生まれたのが「北小学校ふれあいルーム」である。 |
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7 | 公民館活動と地域活動との融合へ-北小ふれあいルーム- 1999年11月14日“北校区ふれあいまつり”が開催された。“子どもと高齢者を始め,地域の人や活動の出会いと交流の場所づくり”というまつりのテーマを遂行すべく単発的な開催でなく,今後も継続していきたいという地域の要望が出された。幸い,北小学校の余裕教室利用の検討の話とがマッチングし,平成11年4月に「ふれあいルーム」開設の運びとなった。ふれあいルームは,現在,北校区福祉委員会が行う事業として位置づけ「ふれあいルーム」運営委員会の自主運営のもと活動団体は26団体に達し,日を追うごとに活況を呈している。
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8 | 担当課連絡先 大阪府貝塚市教育委員会社会教育課 〒597-8585 貝塚市畠中1丁目17番1号
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櫛田幸子氏提供「資料」 |
ふれあいルーム運営委員会委員長 櫛田 幸子
北校区ふれあいルーム
私たちの学校,私たちの町づくり
-世代間交流で咲かそうそれぞれの花-
1、 | 北校区ふれあいルームについて 平成10年11月14日“北校区ふれあいまつり”を開催しました。 その大きな狙いであった“子どもと高齢者を始め,地位の人や活動の出会いと交流の場所づくり”というテーマを遂行すべく単発的な開催でなく,今後も継続していきたいという大きなうねりを感じられました。さいわい,北小学校の余裕教室利用の検討の話とがマッチングし,平成11年4月に「ふれあいルーム」開設の運びとなりました。 現在,北校区福祉委員会が行う事業として位置づけ「ふれあいルーム」運営委員会の自主運営のもと活動団体は26団体に達し,日を追うごと活況を呈しております。 |
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2、 | 目的 北小学校の余裕教室と校庭を活用し,子どもからお年寄りまでの地域の人々のふれあい,交流をすすめ,子どもの健全育成をはかるとともに,お年寄りの居場所づくりとして活用して住みよい地域づくりを,めざすことを目的とする。 |
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3, | 事業 -何をするか-
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4、 | 活動内容(以下の表のとおり) |
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5, | ふれあいルームがめざすもの 平成18年度北校区ふれあいルーム
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