2‐2‐2 ボランティア活動に対する国民の意識の概況
(1)ボランティア活動の現状
1.ボランティア活動の経験と興味・関心
1.ボランティア活動の経験
最近5年間で何らかのボランティア活動に参加したことのある人の割合を見ると、約3人に1人(「定期的・継続的なボランティア活動に参加したことがある」(9.2パーセント)、「単発的なボランティア活動に参加したことがある」(21.5パーセント)の計)であり、この割合は国民生活選好度調査での結果とほぼ同じである。
また活動に参加したきっかけは、「自分の自発的な意思で」(49パーセント)が最も多い。また、自治会や子ども会、学校などで参加の機会を与えられた、あるいは友人・知人の勧めで、という人も比較的多い。
図表2_16 最近5年間のボランティア活動の経験または興味・関心
図表2_17 ボランティア活動に参加した直接的きっかけ
(注)回答者はボランティア活動に参加したことのある人612名。
2.ボランティア活動への興味・関心
今後のボランティア活動への参加に興味・関心がある人は8割以上に上る。ただし、その半数以上はどういった内容のボランティアを行いたいのかがまだわからない状態にある。
今後行いたい活動内容が具体的に、またはなんとなくある人の8割以上が、活動をできる範囲で無理なく行いたいと考えており、気軽さがボランティア活動の重要な要素であることが窺える。
また、現在興味・関心のあるボランティア活動について尋ねると、社会福祉や自然・環境保護に関する活動が多く挙げられた。その一例を次ページの表に示す。
図表 2_18 ボランティア活動参加への興味・関心
図表 2_19 ボランティア活動参加へのスタンス
(注)回答者は今後のボランティア活動参加に興味・関心のある人565名。
図表 2_20 興味・関心のあるボランティア活動の内容(自由記述)
公共施設での活動 |
- 近所の小学校の、図書の時間の、本選びのアドバイザー・朗読(司書がいないため)。そこから発展して、定期的に「音楽とお話の会」(朗読の合間に、話の筋に合った生演奏を入れる)を開いている。
- 博物館などでの説明や、史跡の案内。また、学校の体験学習の手伝い。
|
青少年の健全育成 |
- 子供に関するボランティア。遠足の付き添いとか、里親としての子供一時預かりなど。
- 青少年の健全育成を目指し,将棋の普及を通して異世代交流の場を作りたい。
|
体育・スポーツ・文化に関する活動 |
- 現在スポーツ少年団と家庭婦人のクラブでバドミントンを指導している。
- 今の所、自分たちが行っている『音楽のボランティア』に関心がある。
|
学習活動に関する指導・助言 |
- 現在も週2回、会社OBを相手にパソコン教室を開いている(無料のボランティア)。今後も老人向けのパソコン教室を必要な場所に出かけ、継続したい。
- 英会話の能力を活かしたもの。
|
自然・環境保護 |
- 現在ペットの犬を飼っており近くの公園に散歩によく行くので、一日1回散歩がてら公園の清掃を行っている。
- 市で行った環境大学を受講し、市のエコ・リーダーの資格を取得したので、今年度は環境フォーラムに入って、市内の緑化など積極的に参加したい。
|
国際交流 |
- YMCAの留学生支援プログラムにもう10年以上参加している。特に決まった活動はなく個々に任されている。留学生は大学生で20~30代。たまに会う程度だが、色々な支援をする。とりあえずこのまま継続の予定。
- 海外の方と交流を深めたいので特に通訳等のボランティアに興味がある。
|
社会福祉 |
- 現在、視覚障害者への音訳ボランティアをしている。今後、児童への本の読み聞かせ、パソコン点訳に、関心がある。
- 老人ホームに入居している人達を買い物にショッピングモールに連れていってあげる。
|
保健・医療・衛生 |
- カウンセリングの勉強を続けているが、それを活用できる様なボランティア活動(心の悩みを持っている方の心理相談等)。
- 赤十字の救護活動。
|
自主防災活動・災害援助 |
- 震災など災害時に、片付けや心のケアなどをするボランティア活動。
- 防犯や防災などの地域関連。
|
募金・チャリティバザー |
- クリック募金、書き損じハガキや使用済プリペイドカードの寄付などの間接的なボランティア。
- フリーマーケットが好きなので、チャリティバザーなどに興味があります。
|
(2)日常生活の中での助け合い
1.日常生活の中での助け合いの経験
見知らぬ人や友人・知人が困っているときに、手助けをしたいと思っている人は8~9割に上る。しかし、その意識に比べると実際に手助けしている人の割合はやや低くなる。ボランティア活動ほどではないが、日常の助け合いについても、意欲はあるもののまだ行動に移していない人たちがある程度存在する。
図表 2_25 日常生活の中での助け合いの経験
2.「ちょぼら」の認知度と必要性
「ちょぼら」という言葉は、全体で56.8パーセントの人が見聞きしたことがあると回答している。
「ちょぼら」の実践がボランティア活動の関心の高まりにつながることについては、約8割の人が肯定的に考えている。その理由として、ボランティアよりも身近なもので実践しやすい、あるいは相互扶助の重要性などが挙げられている。その一方で、「ちょぼら」自体は常識的行為であり、ボランティアとは全く別のものであるという意見も見られる。
図表 2_26 「ちょぼら」の認知度
図表 2_27 「ちょぼら」の実践とボランティア活動への関心の高まりとの関連
(注)回答者は、過去5年間にボランティア活動の経験がある人、及び今後のボランティア活動参加に興味・関心のある人823名。
図表 2_28 「ちょぼら」の実践とボランティア活動への関心の高まりとの関連 その理由(自由記述)
「大いに思う」理由 |
- 「ボランティア活動」と言われると身構えてしまう人でも、日常生活の中でできる小さな親切なら多くの人に受け入れられやすいと思うので。
- 「ボランティア」というと、組織に属さなくてはいけないような感じがするが、実際には、身近なちょっとしたことでも、その一つ一つがボランティアであると思うから。
- 相互扶助の気持ちが大事だと思います。普段から助け合いの習慣を身に付けること。
- ボランティア活動をするときに、された側からの反応に励まされることがあると思います。ちょっとしたボランティアの方が素直な感謝の言葉をいただけたりして、ああ、人の役に立っているなと感じ、それがボランティア活動に繋がるのではないかと思います。
- 人は、生きていく中で誰も自分以外の人と何らかの関わりをもって生活をしています。自分は気づかなくても、自分以外の人に助けられて日常の生活を送っていると思います。ですからその御返しをその方にはできなくても他の方で困っている方があれば、できる手助けは積極的にしたいものです。
- これが本当の日本人の姿だからです。
- それぞれの持っている技術、資格、特技は社会に還元すべき。
|
「まったく思わない」理由 |
- ちょぼらは社会人の常識的行為でありとりたててボランティアという意識はない。
- ちょぼらと呼んでいる行動は、家庭においてのしつけや学校での教育で出来て当たり前の行為であり、人間として行うべき常識です。これをボランティアであるという認識は私はもっていない。地域の大人が日頃行っていれば子供達も自然とそれに習うモノです。それはボランティアではありません。常識です。それができない大人社会の責任は大きいです(特に大都会の)。
- ボランティアの定義の問題。日常生活に付随する助け合いは、当たり前の事であり、ボランティアとは呼べないのではないか。これをボランティアとして捉えなければいけなくなった日本の社会がどこかおかしい。バスや電車の中で身体の不自由な人や具合の悪い人に席を譲るなどは、日常生活の中の「おたがいさま」の部分であり、当たり前の事です。当たり前の事が当たり前で無くなっている事こそを改善しなくてはなりません。次元が違いすぎるので、関心の高まりにつながるとは思えません。
- ボランティアなどという言葉を使うからいけないのではないでしょうか?例えば、PTA、自治会の役員、子供会の役員など、子供がいれば当たり前にしているものは、ボランティア活動とは言わないのも不思議です。例としてあがっているものは、時間とお金に余裕がある人以外はなかなか出来るものではないと思います。「普通の生活の中での思いやり」とボランティアが別物のように扱われ、イメージがかけ離れてしまっています。
- ボランティアの内容は人によって合うものが違うので、暮らしの中でのちょっとしたボランティアの実践だけでは活動への関心が高まるわけではないから。
|
3.日常生活の中での助け合いの阻害要因
「日常生活の中での助け合い」を行いにくくする要因としては、「声をかけた相手が、どう思うか気になる」、「初めての人には、声をかけづらい」が多くなっている。
図表 2_29 日常生活の中での助け合いの阻害要因
(3) ボランティア活動に必要な条件や環境
1.魅力を高めるための条件
ボランティア活動を魅力あるものにするために必要なこととして、「日常生活の中で無理なくできること」、「人間づきあいに煩わされないこと」、「特別の知識・技能がなくてもできること」、「個人だけで気軽に参加し活動できるようになること」などが多く挙げられ、ここでも気軽さ・手軽さが求められていることがわかる。
過去のボランティア活動経験の有無別に見てみると、「人間づきあいに煩わされないこと」(経験あり45.4パーセント;経験なし53.5パーセント)、「個人の様々な能力を生かすボランティアの場が開発されること」(経験あり37.9パーセント;経験なし28.9パーセント)で両者に比較的大きな差が見られる。
図表 2_30 ボランティア活動の魅力を高めるために必要なこと
a)全体
b)活動経験別
2.社会的関心を高めるための条件
活動に対する社会的関心の向上に必要なこととしては、「日ごろの助け合い(ちょぼら)の意義や重要性をもっとPRする」(49.2パーセント)が最も多く挙げられている。また、「社会的活動が職場や学校できちんと評価される」(36.6パーセント)、「学校教育や社会教育の場でもっと日ごろの助け合いやボランティアについての教育を行う」(35パーセント)など、職場や学校の役割に期待する意見も多い。ボランティア活動経験の有無による差はほとんど見られない。
図表 2_31 ボランティア活動に対する社会的関心を高めるために必要なこと
3.地域で充実すべきサービス
地域においては、ボランティア活動に関する情報収集が手軽にできることが最も望まれている。研修や体験の場の提供に対する要望も多い。
活動経験の有無別では、経験なしの人で「自分にボランティア活動が適しているか相談にのってくれる人」を望む割合がやや高いほかは、ほとんど差は見られない。
図表 2_32 地域で充実すべきサービス
4.気軽に活動できる雰囲気作りに向けて
日常生活での助け合いやボランティア活動が気軽に行えるようにするために、どのような方策が考えられるか、またはどのような課題が存在するか、ということを自由回答で記述していただいた。代表的な意見を項目ごとに以下に示す。
図表 2_33 気軽に活動できる雰囲気作りに向けての意見(自由記述)
情報不足 |
- なんとなく、ボランティアをしてもいいかなと思っていても、なかなか情報が入りにくく、情報を集めるのが面倒で結局ボランティア参加をあきらめてしまう。もっと情報が入ってくればやる人も増えるのではと思う。
- ボランティアについての情報をたくさん発信する。時間に縛られない方法を考える。(時間の制限で出来ないことが結構ある)ボランティアは、無償が基本だけれども、交通費程度は受け取れると良い。
- 基本的にはPRが必要だと思います。たとえば、短時間でも出来るボランティアを紹介するとか、どんな内容のものがあるのかとか・・・。上記にもあるように、情報を広く公開することが大切だと思います。インターネット上で見ることができたら便利ですね。それも、ただ、どこそこでやっています。とか、こんな内容ですと活字だけでなく、実際の写真を載せたり、経験者の話とか、具体性が必要だと思います。ただ連絡先だけを知らせても、気に留める人は少ないと思います。幼児期からの指導も欠かせないと思います。
- 「○○をして欲しい」「○○を手伝って欲しい」等の情報がやりとりできる場があれば良いと思います。
|
気軽さが重要 |
- ボランティアというとちょっと重い感じがして近寄りがたいイメージがあるので誰でも出来る、気軽に取り組めると言う事をもっとみんなに普及すると良いと思います。
- ボランティア団体については、一人でも気軽に誰でも参加できるような雰囲気を作って欲しい。今はまだ敷居が高い面がある。
|
体験機会が重要 |
- 一人で参加するのが踏み出せないでいる人に、グループで、或いは、地域で、いろんな機会を捉えて気軽に参加できる体験の機会を作ってくれたらもっと参加してくれる人が増えるのではないかと思う。遣ってみたいと考えている人は多いが、きっかけがないことが多いのではないか。
|
気軽に人の手を借りられる社会が必要 |
- 「気軽」という単語が設問に使われていますが、国民意識の中にもっと人手を気軽に借りることから、始めなくてはいけない。今日まで、人の世話になる。人手を借りると言うことが、ややもすると卑屈になる要素であるかのような考え方が、風土、民族的にあるのかも知れない。手を貸すことに焦点をあてることより、手を借りたい意志が気軽に他人に対して表出できる社会的認識がもっとも大切なことであろう。
|
持っている技術・技能を活かせることが重要 |
- 個人の知識・経験・興味など人それぞれの能力や技能を生かして活動を行うことです。その時出来ること出来ないことの意思表示が気軽に出来て、それに対して理解出来るグループの雰囲気も大事だと思います。出来る仕事を出来る(したい)人が出来る時に、楽しくする。この一つでも欠けたとき、活動自体がメンバーの苦痛となり重荷となってくると思います。
|
地域での情報発信 |
- 地域で、どのような活動があるのか知らないことが多いので、広報誌などで、具体的に活動内容や、参加方法や紹介して欲しい。
- 地域でのボランティア活動についての情報がないので、活動自体あるのかさえわからない。
|
地域密着 |
- 地域ごとに大人たちを中心に子供たちにボランティアの精神をうめこむ。
- 地域のコミュニティーが参加しやすい。
|
普段からの心掛けが重要 |
- 普段からの近所づきあいをしておくことが気軽にボランティア活動に関心を引くことになるのではと思量します。
- 自分にできることで、無理せず少しずつ始めればいいと思う。近所の人との挨拶もゴミ拾いも、みんなちょぼらだと思います!仕事に育児に、今は生活にも必死な人が多いと思うので、にこやかに挨拶できるだけでも、心に余裕が生まれていいのでは?と思っています。
|
中途半端に出来ない |
- ボランティアの必要性は認識しているが、中途半端にはじめようとすると返って迷惑をかけてしまうようなことが心配(自分の余裕時間内でないとむずかしいので)。
- 定職を持ち、かつ休みや帰宅時間も不規則なため定期的な活動は趣味の講座などにも一切参加できずにいる現況では、ボランティア活動も興味はあっても責任を持って参加できません。短時間・不規則な参加形態でも行えるような活動があったら社会人でも参加できるのではと思います。また普通に生活していて情報が入ってきません。メルマガなどで情報を得られる環境があるといいです。個人的には、読書が好きなので、たとえば視覚障害者や老年者の方への、本の朗読や録音のようなボランティアがあったらやってみたいと思っているのですが・・・。
|
きっかけがない |
- なかなかきっかけが難しいと思います。
- 一緒に始められる人や、始めるきっかけがなく、気持ちばかりが先行してしまいます。窓口みたいなものを作ってもらえれば、始めやすいのですが・・・。
|
学校教育との連携が重要 |
- 学校教育で積極的に教えていくことが必要と思う。
- 学校教育の中でボランティア活動が教育単位として認められるようになればさらに活発になるのではないでしょうか。
|
身近な組織での接触機会の増加 |
- 段階的に進めて行くのが望ましく、差し当たっては、学校関連の児童の参加を促し父母のボランティア参加に広めて行くと良いと思う。が、これは子供を持つ親の立場からの提言であって、子供を持たない大人全ての人には当てはめられないので、職場の理解(雇用者の理解)が第一段階として必要な事だと思う。
- もっと会社や学校でボランティアに関してのプログラムが組まれ(例:ボランティア休暇、学校では成績に組み込む)励行されることです。実際はあまり行われていないかと思うので・・・。
|
プロモーションの提案 |
- 口コミの有効性も考慮されたい。
- スーパーなどでよくあるようにスタンプ方式にすればいいと思う。スタンプって不思議だけど何となく全部貯めたくなるような衝動にかられるから、スタンプを貯めるためにボランティアを始めるっていうのもいいと思います。初めはスタンプ目当てでもボランティアに興味を持つ人も出てくると思うので。
- ボランティアバンク(仮称)設立し、(ネット上で管理者もボランティア)ボランティアを受けないものの登録ボランティア活動できるものの登録(活動できる日時、内容など)。
- ボランティアということだけが前面にでるのではなく、その活動に必要な人ならば遠慮なく声を掛け誘うなど、その人の自尊心や、能力をくすぐることが出きれば、十分な参加する動機付けになるのではないでしょうか。その結果がボランティアであっても活動をしていただける人は沢山いると思う。
|
その他 |
- 知らない人に声をかけることが危険なことになる可能性がある社会を変えないと、子どもにも気軽に勧めることは難しいと思います(親切心を利用する犯罪が多すぎて、自分も怖いし子どもにも注意する心を持ってもらわないと、不本意ながら思います)。
- ほんとはボランティアという言葉すら使わずにすむほど、「ふつうに」浸透するのが良いんでしょうが・・・。
|
PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、まずダウンロードして、インストールしてください。