事業成果報告書(高知県)

教育委員会の学校サポート体制の整備に関する実践研究

業務の遂行方法の改善に関する実践研究

1.事業の実施報告

(1)実践研究のねらい

これまで本県では、新しい職を活用した研究モデル校の実施、部活動での地域指導者や補習での大学生など外部人材の活用、学校事務の共同化、多忙化や学校組織の見直しに関する研究などに取り組んできたものの、それぞれの研究成果を県全体に波及し実際の教育活動に活用する段階で、それが十分な効果を上げるに至っていないことが課題である。この問題は、今後、各県が外部人材活用の調査研究等を進め、その成果を全国に普及していく際にも必ず生じてくる問題であり、その点を見越して先手を打つためにも、既に問題を抱える本県がこの課題に取り組む意義が大きい。そのため、各学校の組織状況に応じた学校マネジメントの実施や業務の遂行方法について、これまでの研究成果を踏まえた研究を行うことで、教職員の多忙感の解消、教職員の意欲や働きがい、効力感等を高め、質の高い教育活動の実施を図る。

(2)実践研究の実施状況

教育委員会の学校サポート体制の整備に関する実践研究

教員の勤務負担軽減等に係る研究事業小中学校サポート委員会の設置(平成23年2月2日)

保護者や地域の方からの学校への様々な要望に対して、学校や教育委員会が組織的に対応することで、教員の勤務負担を軽減し児童生徒に向き合う時間を確保するとともに、教員が心身ともに健康な状態を維持し、児童生徒の指導に当たることで、より質の高い教育を提供することを目的として、平成20・21年度に引き続き小中学校サポート委員会を設置した。

第1回小中学校サポート委員会(平成23年2月10日)

  • 委員の委嘱
  • 小中学校サポート委員会設置要綱の説明
  • 委員長、副委員長互選
  • 事例に基づく研究協議

平成22年度に高知市内の学校及び市教育委員会が対応に苦慮した事例2件について、市教委からの質問を中心に研究協議を行った。保護者の深層心理の理解や学校としての対応の仕方等について、各委員から専門的な立場での助言があった。

第2回小中学校サポート委員会(平成23年2月28日)

  • 事例に基づく研究協議
  • 外部調停機能について協議

高知市内の学校での事例について、学校としての対応の仕方や予防策について協議を行った。また、外部調停機能について、研究内容を他の市町村に普及し、保護者等から寄せられる要望等に対して、県内の学校や市町村教育委員会が組織的に対応していくための指導・助言等の支援を行う組織の在り方ついて、各委員から意見や助言があった。

第3回小中学校サポート委員会(平成23年3月2日)

  • 事例に基づく研究協議

学校籍の委員の所属校において、想定される事例について学校の教職員を交え、初期対応の重要性や要望を寄せる者の心情理解など、委員から具体的な対応の仕方について助言があった。

○業務の遂行方法の改善に関する実践研究

  • 学校組織マネジメント校長研修会(中学校長対象)(平成22年8月9日~10日)
  • 学校経営診断の実施(公立全中学校教職員対象)(平成22年11月22日~12月7日)
  • 分析結果についての学校訪問アドバイス19校(平成23年2月15日~16日、21日~22日)

業務の遂行方法の改善については、公立全中学校の教職員に対して学校経営診断を実施し、教職員の意識、効力感、多忙感等を基に組織状況を把握した。さらにその結果に基づいて、川崎市の学校経営診断研究会のメンバーが19校を対象として学校訪問を行い、学校マネジメントについて管理職に校内の組織改善、業務の見直し、マネジメント手法の助言等、組織的・機動的な学校の組織運営を実現するための手立てなどの具体的な実行策をアドバイスした。

2.実践研究の成果

○小中学校サポート委員会

教育委員会の学校サポート体制の整備については、医師・弁護士・臨床心理士・元警察官・現職管理職などによる第三者委員会としての小中学校サポートチームを設置し、専門的な見地から学校に対して支援や助言を行い、初期対応の重要性や要望を寄せる者の心情理解など、適切な対応方法について確認できた。平成20・21年度から継続して、高知市教育委員会と協力して学校及び市教委員会で対応に苦慮している事例について協議を行うことで、学校においては、専門的なアドバイスにより自信を持って対応できるようになるとともに、教員が精神的に落ち着くなど効果が高まっている。
さらに、新しく委員となった現職管理職の学校を会場として、教職員対象の事例研究会を行うなど学校単位での取組も充実してきている。外部相談機能については、他県の実施状況等をもとに、調停機能の在り方も含めて協議を行った。今回の研究内容を他の市町村に普及し、県内の学校や市町村教育委員会が保護者等からの要望等に対して、組織的に対応できるように支援するための組織づくりに当たっての助言が得られ、来年度からの取組に備えた。

○学校経営診断

学校経営診断の結果から、学校の組織の傾向が明らかとなり、学校として取り組むべき方向性が明らかとなった。また、管内19校に川崎市の学校経営診断研究会のメンバーが訪問し、管理職に対して校内の組織改善、マネジメント手法などを助言することで、管理職がそれぞれ組織的・機動的な学校の組織運営を実現する実効策を考える手立てとなった。
多忙感については、組織状況と照らしてみると、同じ多忙感の中でも、同時にやりがいを感じている組織とそうでない組織があることが明らかになった。また、多忙要因の中でも、強いストレスに結びつく要素とそうでない要素があることも明らかになった。詳細なデータについては、さらに精査を行って、提出することとしたい。

3.今後の取組予定

  • 各学校の学校経営診断分析結果を教育委員会関係課で各校の情報を共有し、相互連携しながら学校訪問や施策の見直しに活用する。
  • 今回の外部相談、調停機能の研究をもとに、学校における保護者・住民等の外部からの意見、要望等のうち、学校現場において解決が難しい事例について対応する市町村教育委員会を支援し、事例の解決に向けた指導・助言等を行い、教職員の心理的負担等を軽減するためのサポートチームを平成23年度中に県教育委員会に設置する。

お問合せ先

初等中等教育局 参事官(学校運営支援担当)付

電話番号:03-5253-4111(内線3704)
ファクシミリ番号:03-6734-3727
メールアドレス:hyo-ka@mext.go.jp

(初等中等教育局 参事官(学校運営支援担当)付)

-- 登録:平成23年08月 --