宮城県石巻市内の6校(石巻中・石巻小・山下小・門脇中・門脇小・大街道小)の事務職員が、的確かつ効率的な事務処理体制の確立を目指し週1日~2日、1日4時間程度、主に次の4つの事務処理を学校事務の共同実施(以下「共同実施」という。)で行う実践的な研究である。
また、その波及効果として、従来、教員が担当してきた事務の負担軽減を図り、教員が児童生徒と向き合う時間を確保することにより、きめ細かな児童生徒理解と学習指導の推進を企図している。
1.アンケートの実施
共同実施を実践研究するに当たり、6校で3回の打合せ会を開き、上記4点の事務処理について学校及び教員にアンケートを行った。特に、宮城県教育委員会が平成21年9月に実施した学校現場へのアンケートで最も負担感を感じるとされた会計処理の改善を行うため、学校徴収金事務について精査を行うとともに、アンケート結果の分析及び共同実施できる事務処理について検討した。
2.学校徴収金の出納事務
学校徴収金の収入処理については、石巻小学校・大街道小学校・門脇小学校の3校で共同実施の実践研究を行った。特に、石巻小学校においては、10月の集金より計5回の共同実施による実践研究を実施した。その内、第8回目は大街道小学校と同時に実施し、事務職員が半数ずつに分かれて収入処理を行い、スケールメリットの実践研究も行った。学校徴収金の支出処理については、石巻小学校において2学期の支出処理を行った。
3.学校事務・教科書事務
共同実施6校の児童生徒名簿の様式を統一し、指導要録学籍欄作成及び教科書事務に活用できるエクセルデータを作成し、エクセルを活用する研修も行った。
4.就学援助
2学期分交付申請及び3学期分交付申請の相互審査を行った。
5.先進地研修視察
平成22年10月5から2日間の日程で、当教育委員会職員と委託先である石巻市教育委員会担当職員が、事務の共同実施の先進地である宮崎県五ヶ瀬町及び宮崎県小林市を視察した。
収入処理の場合1人1回当たり65分~230分であった。
支出処理の場合1人1回当たり45分~200分であった。
上記の結果、当初想定していた軽減時間数より教員の実感時数が多く、共同実施により学校徴収金の事務処理を行うことは、教員の勤務負担軽減に十分寄与すると思われる。
石巻中学校へ入学する児童生徒の必要データを、石巻小学校及び山下小学校からエクセルで送付し、生徒名簿及び指導要録学籍に反映させた。これにより、教員の生徒名簿の作成及び1年生の指導要録における学籍の記入時間が軽減されたと思われる。
相互審査を行ったことにより、2学期分の交付申請及び3学期分の交付申請において、申請内容の誤りがなくなった。
学籍事務・教科書事務・就学援助事務について、教育委員会事務局担当者と学校事務職員との検討会を開催して情報交換を行い、改善項目を確認して平成23年度から事務手続きに反映させることとした。
12回の打合せ会を実施したが、論議をしてゆく中で、学校事務職員のOJTも図られた。
平成23年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」は、「東日本大震災」と称されるように本県に大きな被害をもたらした。中でも、本事業の委託先である石巻市は、児童生徒の中にも犠牲者が多く、施設が壊滅的なダメージを受けた学校も少なくない。「学校再建」「学校復興」が、本県教育委員会、そして石巻市教育委員会を始めとする市町村教育委員会の最優先かつ最重要課題である。
こうした状況の中で、本年度取り組んだ当事業は、「学校再建」「学校復興」に向けても次の点で大きな役割を果たすものと考える。
(1)従来、教員が担当してきた事務の負担軽減が進めることにより、教員が児童生徒に向き合う時間をより確保し、児童生徒に対するきめ細やかな指導・支援の充実を図ることができる。このことは、被災地域の児童生徒の心のケアにも密接にかかわることである。
(2)共同実施の実践研究における成果の一つである学籍事務・教科書事務等におけるエクセルデータを活用した事務処理を、石巻市内各学校に広め、学校再建に向けた有効な取組としていきたい。
(3)学校事務処理体制の改善を推進し、組織的な学校運営の充実を図る。
(4)宮城県教育委員会と石巻市教育委員会との連携を一層深め、学校事務の共同実施の在り方に関する実践的な研究を推進するとともに、教員の多忙感の解消と児童生徒と向き合う時間の確保についてもさらに実践的に検証を進めていきたい。
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-- 登録:平成23年08月 --