文部科学省では、平成21年2月13日(金曜日)に、「総合的な学習の時間フェスタ2009 ~ だから”総合”は やめられない! ~」を開催しました。この催しは、シンポジウムや事例発表、ポスターの展示を通じて、新しい学習指導要領の下での総合的な学習の時間の実施を前に、総合的な学習の時間の意義や可能性を確認するものです。催しは、事前に応募いただいた約600名の方にご参加いただき、大変盛況なうちに終えることができました。 催しの概要は以下のとおりです。
<総合的な学習の時間の重要性をあらためて指摘>
文部科学大臣から、日本が活力を持ち続けていくためには人材育成が重要であり、教育基本法の理念を具体化し、教育振興基本計画を着実に実施することが重要であることの説明がなされ、重点的に取り組む7つの事項をまとめた「新しい日本の教育 今こそ実行のとき!(※国立国会図書館ホームページへリンク)」や「「心を育む」ための5つの提案」が示された。
また、総合的な学習の時間については、教育課程全体の見直しの中で授業時数が削減されたものの、「生きる力を育成する上で、極めて重要な役割を果たすものであることは何ら変わりがない」と、その重要性について指摘があった。
パネリストとして、大山夏生氏(岐阜県山県市立高富小学校教諭)、北城恪太郎氏(日本IBM株式会社最高顧問)、黒上晴夫氏(関西大学教授)、高橋仁子氏(福島県三春町立三春小学校学校運営協議会副会長)の四氏を迎え、田村学・文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官のコーディネートの下で、「実社会や実生活で求められる能力の育成」、「地域や社会と一体となって取り組む総合的な学習の時間」という二つの論点から、新学習指導要領の下での総合的な学習の時間の在り方についての意見交換が展開された。
<学習指導要領改訂が活動の見直しのきっかけに>
はじめに、総合的な学習の時間の改訂の内容について、黒上氏から教科との関係を踏まえた計画が組まれるようになる可能性が指摘されたほか、大山氏からは、総合的な学習の時間を通じて資質や能力を付けるべきことや活動を探究的なものにすべきことが明確になったことでこれまでの活動を見直すきっかけになるなどと改訂の内容を評価する発言があった。一方、北城氏からは、総合的な学習の時間の目標として、自ら課題を見付け、考えることが掲げられていることは重要だとしつつも、その重要性について保護者などの理解を得られていないのではないかとの指摘も寄せられた。
<企業が求める力、総合的な学習の時間で身に付いた力>
「実社会や実生活で求められる能力の育成」について、北城氏からは、企業に対する調査の結果をもとに、企業の求める能力として、熱意、実行力、協調性、コミュニケーション能力、課題解決能力、論理的な思考力などが挙げられ、それらを育むことが総合的な学習の時間で求められているとの説明があった。これらに関わって、大山氏からは、総合的な学習の時間の実践をもとに、人とかかわる力やものごとを調べる力が児童に付いてきているとの説明があった。また、黒上氏からは、調べ学習をした後は教科学習への取り組み方が変わってくるなど、学習意欲の高まりについても指摘があった。
<学校が地域を活性化していく可能性>
「地域と一体となって取り組む総合的な学習の時間」について、高橋氏からは、総合的な学習の時間がきっかけとなってできた学習を支援する組織について紹介があった。また、その成果として子どもと地域の人との関係ができたこと、学習を支援する人たちも地域が身近なものになったとの説明があった。このことについて、黒上氏からは、学校が地域を活性化していく可能性について指摘があった。また、北城氏からは、地域の連携の輪を広げるために、経営者などを学校に呼んだりするなど、教員がコーディネーターとしての役割を果たしていくことが提案された。
<学力調査により学力との関係を説明する工夫>
続けて、会場から教育が基礎・基本の力を付けることに関心が向きすぎているのではないかとの意見が寄せられたことについて、北城氏からは各教科で自ら考える活動を充実させることになったことをもって総合的な学習の時間が拡大したと理解してはどうかとの指摘があり、黒上氏からは学力調査により総合的な学習の時間の取組と学力との関係を説明していく工夫の指摘があった。
横浜市立大岡小学校、広島県三次市立塩町中学校、熊本県立鹿本高等学校の児童生徒及び教員から総合的な学習の時間の取組の発表があった。
大岡小学校からは、「マークを作ろう大作戦」として、地域の商店街と連携を図って、商店街のキャラクター作りを行った事例が発表された。
塩町中学校からは、「今の自分と未来の自分~夢をつなぐ塩中の“総合的な学習の時間”」として、三次市の障害者関係の施策に関するグループ研究の取組を中心に発表があった。
鹿本高等学校からは、同校の「総合的な学習の時間」について、とりわけ、自分の進路を考えるに当たって、総合的な学習の時間がどのように生かされたかについて発表があった。
事例発表を行った児童生徒及び教員をパネリストとして、嶋野道弘氏(文教大学教授)のコーディネートの下で、事例発表を踏まえた意見交換が行われた。
<学校全体として取り組む>
各学校の総合的な学習の時間への取組方として、小学校教員からは、同校では学級ごとに単元計画を作っているが、学校教育目標や育てようとする資質・能力などを学校全体の方針としてまとめたことで児童に同じ力を付けることができていること、また、学校に新しい取組をしていこうという風土があることが紹介された。中学校教員からは、学校として生徒にどのような力を身に付けさせるかを中心に、各教科の指導の状況や生徒の様子を共有する工夫が紹介された。また、教科学習で学んだことが総合的な学習の時間で使えるものになっているかを点検する中で、教科指導の研究も進んできたとの説明があった。高等学校教員からは、総合的な学習の時間を推進する組織があることや、複数の教員が関わることで生徒が自分の興味のあるクラスを選択することができるようになっていることが紹介された。
<総合的な学習の時間を通じて教科の意義を知る>
続けて、会場から仮に総合的な学習の時間がなくなったらどうなるかについて質問が寄せられたことについて、小学校児童からは総合的な学習の時間で培われた商店街とのかかわりがなくなるため、その商店街が自分にとって特別なものではなくなってしまうとの意見があった。中学校生徒からは総合的な学習の時間を通じて教科学習が何に役立つのかが分かったことから、総合的な学習の時間がなくなったら教科の学習が有意義であることが分からなくなり「勉強する気がなくなる」との意見があった。高等学校生徒からは、総合的な学習の時間を通じて自分の進路を考えてきた経緯をふまえ、総合的な学習の時間がなかったら「今の自分はここにはいない」との意見があった。
<学ぶ姿が地域とのつながりを広げる>
さらに、総合的な学習の時間で地域と連携するための工夫についての質問が寄せられたことについて、小学校教員からは児童が地域で学ぶ姿が地域とのつながりを広げていることが指摘された。また、中学校教員からは学校に協力をしてくれた人材を登録し情報を共有できるようにしておくことの重要性が指摘された。
最後に、嶋野教授からまとめとして、子どもの自発性などを基盤に教育そのものの役割を考えながら、時代に応じた学習内容、方法を考えていくことが重要ではないかとの指摘があった。
<学びは全体性をもって身に付く>
宮崎活志・文部科学省初等中等教育局視学官から、催しの全体を総括し、学びは全体性をもって子どもの身に付いていくと考えられること、小、中、高等学校と発達の段階に応じた探究活動を繰り返す中で、子どもの課題認識は広まったり、深まったりしていくと考えられることが指摘された。
<全国から寄せられた取組を共有>
全国の都道府県・指定都市が作成した総合的な学習の時間の取組を紹介するポスターを会場内に掲示した。各地域1校の具体的な実践と教育委員会の支援策が分かりやすくまとめられており、中には児童生徒の作品もあり、会場が華やいだ。参加者はポスターを閲覧することで、各地域の取組状況を共有することができた。
※ このポスターは3月23日(月曜日)まで、旧文部省庁舎にある「情報ひろば(1階ラウンジ)」にて掲示しております。
<自分も受けたかった総合的な学習の時間>
参加者からのアンケートでは、教職員から「企業経営者の話から、これから求められる人間像について分かりました。そのような大人をつくっていけるのが、総合的な学習の時間であると再認識しました」、「児童生徒の「生の声」を聞けた点がよかった。総合を通じていかに自身が変容したのかがよく伝わってきた」などの感想が寄せられるほか、「総合的な学習の時間は単独のものではなく様々な教科とのつながりを考え直したいと思った」、「本校の総合は探究的なものになっていないので、計画を作り直して取り組んでいかなければならない」などの声が寄せられた。また、大学生からは「自分の夢が定まらず困っていました。自分もこういった授業を受けてきたかった」、「来年度から教員という立場になるのですが、学生時代に総合的な学習の時間を経験したことがなくイメージすることができませんでした。今日、総合はすべての教科につながる生きた学びであることが分かりました」などの感想が寄せられた。
お知らせ ■報告書の配付について 申込み先:文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程第一係 ■催しの成果の募集について |
教育課程第一係
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ファクシミリ番号:03-6734-3734
-- 登録:平成21年以前 --