Q 就学義務の猶予又は免除について、猶予・免除の事由、手続はどのようになっていますか。
A
我が国においては、全ての国民は日本国憲法第26条、教育基本法第5条により、その保護する子に普通教育を受けさせる義務を負っており、学校教育法第16条において9年の普通教育を受けさせる義務について、学校教育法第17条において就学義務について規定しています。
なお、昭和59年の国籍法の改正に伴い、重国籍者であっても、日本の国籍を有する学齢の子の保護者は、義務教育を受けさせる義務を負うことになりました。
日本国民や日本の国籍を有する学齢の子の保護者に対して、就学義務が猶予又は免除される場合とは、学校教育法第18条により、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため就学困難と認められる場合とされています。
ここでいう「病弱、発育不完全その他やむを得ない事由」については、
〇小学校及び特別支援学校における教育に耐えることができない程度、より具体的には、
例えば、
●治療又は生命・健康の維持のため療養に専念することが必要等、教育を受けることが困難又は不可能な場合
●低出生体重児等も含め、就学を控えた児童の状況を踏まえ、教育上及び医学上の見地等の総合的な観点から、小学校及び特別支援学校への就学義務を猶予・免除することが適当と判断される場合
〇児童生徒の失踪の場合、
〇帰国児童生徒の日本語の能力が養われるまでの一定期間、適当な機関で日本語の教育を受ける等日本語の能力を養うのに適当と認められる措置が講ぜられている場合、
〇重国籍者が家庭事情等から客観 的に将来外国の国籍を選択する可能性が強いと認められ、かつ、他に教育を受ける機会が確保されていると認められる事由がある場合、
といった事例が考えられます。
一方、学校教育法は日本国内において効力を有するものとされており、同法に定める就学義務も、日本国内に居住する学齢児童生徒を持つ、国内居住の日本国籍の保護者に対して課されるものと解されています。この場合、実際に学齢児童生徒や保護者が日本国内に居住しているか否かで判断することとなります。よって、
1.学齢児童生徒が保護者と一緒に国外に転出、
2.学齢児童生徒が一方の保護者と一緒に国外に転出(もう一方の保護者は国内に居住)、
3.学齢児童生徒が単独で国外に転出(保護者は国内に居住)、
といった場合については、学齢児童生徒又は保護者が国外に転出しているため、いずれの場合も保護者に就学義務は課されず、保護者の就学義務の猶予又は免除の事案とはなりません。
また、就学義務を猶予又は免除する際には、学校教育法施行規則第34条の規定に基づき、市町村教育委員会が、医師その他の者の証明書等その事由を証するに足る書類を添えた保護者からの願い出を踏まえ、教育上及び医学上の見地等の総合的な観点から、また、こども本人や保護者の意向を十分に考慮した上で、判断することとなります。
保護者からの願い出なしに市町村教育委員会独自の判断で就学義務の猶予又は免除はできないことに留意してください。
なお、病弱、発育不完全、その他やむを得ない事由に該当する場合を除き、保護者が、その保護する児童生徒を学校教育法第1条に規定する学校でない、いわゆるインターナショナルスクールに通わせたとしても、学校教育法第17条で定められた就学義務を果たしたことにはなりません。
〔参照条文〕
学校教育法(昭和22年法律第26号)
第1条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
第2条 学校は、国(国立大学法人法(平成15年法律第112号)第2条第1項に規定する国立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構を含む。以下同じ。)、地方公共団体(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第68条第1項に規定する公立大学法人(以下「公立大学法人」という。)を含む。次項及び第127条において同じ。)及び私立学校法(昭和24年法律第270号)第3条に規定する学校法人(以下「学校法人」という。)のみが、これを設置することができる。
第16条 保護者(子に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)をいう。以下同じ。)は、次条に定めるところにより、子に九年の普通教育を受けさせる義務を負う。
第17条 保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。ただし、子が、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校の課程、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部の課程を修了しないときは、満十五歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間においてこれらの課程を修了したときは、その修了した日の属する学年の終わり)までとする。
2 保護者は、子が小学校の課程、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十五歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを中学校、義務教育学校の後期課程、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部に就学させる義務を負う。
3 (略)
第18条 前条第1項又は第2項の規定によつて、保護者が就学させなければならない子(以下それぞれ「学齢児童」又は「学齢生徒」という。)で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者に対しては、市町村の教育委員会は、文部科学大臣の定めるところにより、同条第1項又は第2項の義務を猶予又は免除することができる。
学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)
第34条 学齢児童又は学齢生徒で、学校教育法第18条に掲げる事由があるときは、その保護者は、就学義務の猶予又は免除を市町村の教育委員会に願い出なければならない。この場合においては、当該市町村の教育委員会の指定する医師その他の者の証明書等その事由を証するに足る書類を添えなければならない。
〔参考通知〕
「国籍法の一部改正に伴う重国籍者の就学について(昭和59年12月6日 文部省初等中等教育局長通知)」(※国立国会図書館ホームページへリンク)
初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室