2 実践編 1 学校 (1)実施計画上のポイント

A 非行防止教室等のねらいの明確化

学校や地域の実情に応じたテーマの選択

 現在の少年をめぐる問題状況は、前述のとおり深刻な状態にある。これらの問題状況への対応という観点からは、各学校における非行防止教室等のねらいと併せて、現実の児童生徒をめぐる問題についても考慮した上で適宜テーマを選択することが有効である。
 特に昨今の少年の規範意識の低下や深刻な犯罪被害の状況にかんがみると、初発型非行や非行の前兆的な問題行動に関する意識付け、被害の類型に応じた被害防止方策を取り上げることが重要となっていることから、非行防止教室等の対象となる児童生徒の実情等も踏まえつつ、適切なテーマを選定することが有効である。

児童生徒の発達段階を踏まえた計画づくり

 非行防止教室等の実施に際しては、発達段階を踏まえた指導内容を検討し、教育課程に適切に位置付けることが重要である。また、時事的な問題に対する指導や、金銭にかかわる指導等については、指導計画の内容や具体の指導方法について、十分な検討が必要である。さらに、小学校低学年の啓発を主眼とした取組においては、就学前教育との関連にも留意し、道徳性の芽生えを図る観点から指導していくことが重要である(課題に関連する取組の例として図4参照)。

図4
図4 非行防止教室等において取り上げる課題に関連する取組(例)

B 警察等関係機関との連携

 非行防止教室等の実施に際して関係機関や外部講師等との連携を図る際には、相手方を含めた全ての関係者にとって、非行防止教室等を開催するメリットの認識を一層深めていくことが必要である。また、学校の実情や児童生徒の興味・関心などを的確につかんだ上で適切な関係機関の外部講師や指導内容・方法等を検討することが重要である(外部講師と連携した指導方法の例として図5参照)。

図5
図5 非行防止教室等における効果的な方策

 この点についての配慮が十分でなければ、発達段階上適切でない情報による悪影響や児童生徒の大人に対する不信感を与えかねない。具体的には、学校教員と外部講師が十分な打ち合わせを行ったり、学校の実態等に関する情報を積極的に提供することにより、相互理解の下に非行防止教室等を実施できる体制を構築することが重要である。このような認識が関係者の間で共有されない場合、非行防止教室効果等は限定的なものとなり、また、活動も一過性のものにとどまってしまうことが懸念される。

C 教育課程への位置付け

 非行防止教室等を学校教育において位置づける際には、その教育的効果を一層高めるため、適切に教育課程に位置付けることが望ましい。具体的な教育課程への位置付けについては、活動のねらいや内容に則して、

  • 特別活動を中核として学校生活の充実向上を図る活動の中で展開すること
  • 関係機関の講師や地域の人々との交流など、体験的な学習を重要な活動方法の一つとする総合的な学習の時間や生活科において行うこと
  • その他の教科等において現実との結びつきを深めた学習活動を行う観点から地域素材の教材化を図る中で扱うこと

 などが考えられる。また、例えば学校行事で中核となる非行防止教室等を行い、それを総合的な学習の時間につなげて継続的に追究したり、児童会活動・生徒会活動として発展させたりするなど、これらを組み合わせて位置付けることも考えられる。
 このように、各教科等のそれぞれの特質を踏まえ、非行防止教室等をどのように効果的に取り入れていくかについて検討することが必要であるが、各学校のねらいや地域的実情、学校段階や発達段階等を踏まえた系統的な指導の在り方については、本事例集に掲載している各事例等を参考にして、各学校においても、教育課程への位置付けについて常時見直しつつ実践を積み重ねていくことが必要である。(学校段階を踏まえた教育課程における位置付けとして図6参照)。
 なお、非行防止教室等の実施については、教育課程に位置付けないで行う方法もありうるため、各学校では、地域の実情に応じて適切な工夫を行うことが重要である。

図6
図6 非行防止教室等の教育課程上における位置付け

D 学校内における指導体制

 学校において非行防止教室等の充実を図るためには、全教職員の協力の下に、校内の指導体制の確立を図ることが必要である。各教職員がそれぞれの役割を認識し、外部講師の選定、保護者や地域団体・住民との調整、休業日に非行防止教室を実施する際の勤務体制の調整などを適切に行うほか、実情に応じて、非行防止教室等の企画の中核となるプロジェクトチームを組むなど、協力的な指導体制を整備することも考えられる。
 また、教職員が一体となって取り組むことが求められるとともに、校長が学校運営の方向性を明確に示し、学級や学年を超えて協力的な指導を行う体制づくりや、教職員が知恵を出し合い協力して取り組もうとする雰囲気を醸成し、自校の児童生徒の姿に照らしつつ、非行防止教室等の重要性や取組の進め方などについて共通理解を図っていくことが大切である。
 さらに、先進的な活動についての情報を積極的に収集し、それらを校内研修・研究に活用し、児童生徒が非行防止教室等を通じて学び成長する意義を十分理解し、その指導力を高めていく体制を整えることが大切である。

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初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成21年以前 --