第2章第3節 1教職員における人権尊重の理念の理解・体得

第3節   学校及び教育委員会における研修等の取組
   学校における人権教育を推進・充実させていくに当たっては、これまで述べてきたように、学校としての組織的な取組、人権教育の内容及び指導方法等が必要になるが、それと共に、教職員研修等の在り方も重要である。研修が効果的になされることによって、教職員一人一人の実践や各学校の組織的な取組も、より力強いものになる。
 教職員・学校・教育委員会はいずれも、研修等の実践が、ひとえに児童生徒のためにあることを強く意識していることが肝要である。このため、教職員においては教育委員会が実施する研修を積極的な態度で受講すると共に、教育委員会においても、教育の実情を常に考慮した施策を講じるよう努める必要がある。

   まず、教職員が人権尊重の理念について十分に認識し、児童生徒が自らの大切さが認められていることを実感できるような環境づくりに努めることが大切である。教職員は、児童生徒に直接接し指導することで、その心身の成長発達を促進し支援するという役割を担っている。
 したがって、児童生徒一人一人の大切さを強く自覚し、一人の人間として接するという態度で指導する教職員の姿勢そのものが、人権教育の重要な部分であると言える。だからこそ、教職員は、自らの言動が児童生徒の人権を侵害することのないよう常に意識をしておかなければならないのである。
 次に、教職員同士の間においても互いを尊重する態度を大切にする。例えば、指導上の課題について互いによく話し合うことができるような環境づくりに努めることが大切である。
 教職員の人権尊重の態度は、児童生徒に安心感や自信を生む。また、「教師が変われば子どもも変わる」と言われるように、常に教育活動や日常の生活場面において、言動に潜む決めつけや偏見に気付き、一人一人を大切にしているかを見抜き、点検することが重要である。このように、教職員と児童生徒との人間関係が愛情に満ち、信頼関係の上に成り立つことが必要である。
 そこで、互いの人権が尊重されているかを判断すると共に、児童生徒の心の痛みに気付くなど、児童生徒理解とそれに基づく働きかけや支援・援助を行うのに有効なカウンセリングの技法の習得等、常に研修等を通して自己研鑽を積み、自らの人権意識を見つめ直し、確かな人権感覚を身に付けることが期待される。

【参考】 「指導上のポイント」
1: 一人一人の児童生徒を深く理解する
 児童生徒が充実した学校生活を送るためには、まず、「自分のことが好き」と思う気持ち(自尊感情)を育み、学級の一員であるという所属感をもたせ、誰からも認められているという充実感を味わわせるようにすることが必要である。そのためには、教師が一人一人の児童生徒についての理解を深めることが大切である。
 児童生徒理解に当たっては、行動などの現象や結果だけで判断したり決めつけたりするのではなく、その背景や原因を正しくとらえ、児童生徒の立場になって、その内面や課題を十分に把握するように努める。その手だてとして、児童生徒と話し合うことを大切にしたり、日記や生活ノートの交換をしたりすることも考えられる。

2: 尊重し合う人間関係を育てる
 児童生徒が相互によさを認め合い、励まし合い、支え合う人間関係は、学級の基盤である。教師は、学級の人間関係の実態を的確に把握し、望ましい人間関係を育てる学級経営に努める。
 そのため、他の人の立場に立って、その人に必要なことやその人の考えや気持ちなどが分かるような想像力や共感的に理解する力を育て、誰もが尊重される学級をつくることが大切である。その手だてとして、教師や同級生と交流する機会を設けたり、児童生徒が生活の中で経験したことや感じたこと、将来目指していることなどを書く日記、生活ノートなどの指導を位置付けたりすることも考えられる。

3: 教室・言語環境を整える
 教室は児童生徒の生活の場である。教室環境には、目に見える物的なものと人的なものの他に、言語や雰囲気などがある。特に、言語環境は、あらゆる人間関係の基盤である。児童生徒や教師の何気ない言葉が、時には相手の心を傷つけ、生活への意欲を失わせてしまうことがある。また、教師の言動が児童生徒に無意識のうちに偏見や差別の芽を植え付けてしまうこともある。
 そのため、教師自らが望ましい言語活動に心がけ、学級全体の言語環境を整えることを忘れてはならない。


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