人権教育の効果を高めるためには、家庭・学校・地域が共に児童生徒を育てていくという視点に立ち、学校は「開かれた学校づくり」を進め、家庭・地域との連携を推進することが求められる。 その際、学校からの明確なメッセージ、及び地域の多様な人々の参加とそれを可能とする日常的かつ多様な参加方法に留意し、家庭・地域の力を発揮できるようにする工夫が必要である。 なお、連携に当たっては、家庭や地域の人々が人権尊重の理念について十分に認識していることが大切である。そのため、例えば、「児童生徒による取組が身近な大人の人権啓発にも資するような工夫を行う」、「学校の取組を保護者等に積極的に公表する」、又は「児童生徒と保護者が一緒になって活動に取り組む」などの工夫も効果的である。 さらに、人権教育を効果的に推進するため、各学校段階ごとの取組だけでなく、保・幼・小・中・高等学校などの一層の連携に努めることが求められる。例えば、「児童生徒の発達段階に配慮したカリキュラムを共同で研究する」、「校種を越えて授業研究を行う」などの取組を通じて、系統的・継続的な人権教育の実践に努めることが望まれる。 |
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(1) | 連携の必要性 人権教育は、人権尊重の考え方やその根拠となる憲法をはじめとした国内法等を学び、一人一人を尊重する社会の発展に寄与することが求められる。また、人権教育で身に付けたいのは、人権侵害を受けた人の心身の痛みを受けとめ、適切に改善、解決しようとする強い意志であり、改善と解決のための具体的な方法と行動を選択し実行しようとする資質や能力である。そのためには、家庭や地域社会と適切かつ積極的に連携し、人権尊重の感覚豊かな地域社会を形成する営みと歩調を合わせながら取り組むことが適切である。 |
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(2) | 家庭や地域との連携 児童生徒の生活は、学校における生活と共に家庭や地域社会において営まれている。たとえ学校で人権の重要性について学習することができたとしても、児童生徒が生活の基盤をおく家庭や地域において、学校における学習の成果を肯定的に受けとめる環境が十分に整っていなければ、人権教育の成果が、知的理解を超えて人権感覚へと結びつくことは、容易ではない。人権感覚の育成には、学校での人権学習を肯定的に受容するような家庭や地域の基盤作りが大切であり、保護者等のエンパワメントを促進することが求められる。 また、そのためには、保護者と教職員が連携して進めるPTAにおける人権教育の推進が必要である。 学校における人権教育を家庭で肯定的に理解してもらい、家庭や地域社会の協力や支援、連携を得るためには、以下のような意識的な取組が必要である。 |
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(3) | 関係諸機関との連携・協力 学校の内外を通じての多様な学習活動では、学校外の諸施設、機関等の協力を得ることが必要である。 人権教育・啓発に関する基本計画では、既に整備されている「人権教育・啓発に関する中央省庁連絡協議会」(平成12年9月25日,関係府省庁の事務次官等申合せにより設置)及び地方における「人権啓発活動ネットワーク協議会」等の活用に加えて、新たな連携の構築として、「幼稚園,小・中・高等学校などの学校教育機関及び公民館などの社会教育機関と,法務局・地方法務局,人権擁護委員などの人権擁護機関との間における連携の構築」や、「教育・啓発の中立性」に配慮しつつ、「各人権課題ごとに,関係する様々な機関」との「一層緊密な連携」をすることや、「公益法人や民間のボランティア団体,企業等」との「連携の可能性やその範囲について検討していくべきである。」ことなどが提言されている。 |
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(4) | 保、幼、小、中、高等学校等の間の協力と連携 児童生徒は、保育所、幼稚園から、小学校、中学校、高等学校へと学習の場を移しながら成長する。したがって、そのような学習者の成長過程全体を対象とした人権教育を想定し、年齢段階、学年段階での、発達段階に適した学習活動を計画することが必要であり、そのためには、各学校種間における学習計画に関する調整や相互協力、相互研修を目的とした連携が必要となる。例えば、保育所、幼稚園、小学校、中学校、高等学校間での定期的な連携協議会の開催や、合同の相互授業参観、教員研修等を行うことが望ましい。 また、例えば、「児童生徒の発達段階に配慮したカリキュラムを研究する」、「校種を越えて授業研究を行う」などの取組を通じて、系統的・継続的な人権教育の実践に努めたり、校内研究会や授業研究など教員間の交流を進める体制を整えておくことが望ましい。 義務教育である小学校、中学校における交流と連携が重要であることは言うまでもないが、人権感覚の育成が日常生活の具体的行動・行為に求められることを考えれば、児童虐待等、子育てに関わる問題など、保育所や幼稚園における段階の人権教育も重要な役割を持っており、保育所、幼稚園又は養護学校等との連携が必要である。 |
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人権教育の目的を踏まえた交流の推進が図られることによって、児童生徒の互いを思いやる感受性や社会性を伸ばし、人権尊重の精神を育てることは意義深いことである。その際、相互交流の実施に当たり、訪問と交流を計画する学校の教員が訪問・交流先となる他校種の教職員から、児童生徒の交流や体験的活動の在り方等について事前に助言や指導を得ておくことは、よりきめ細かな学習を実施するための支援となる。 |
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(5) | 連携を推進する行政による支援体制の整備 学校と家庭、地域社会、諸施設、関係諸機関と協力、連携し、校種間の連携を進め、専門的知識の習得や体験的学習、いわゆる参加体験型学習を実施し、児童生徒の人権教育を、効果的かつ適切に推進するためには、自治体や教育委員会が、「人権教育及び啓発の推進に関する法律」の趣旨に基づき、学校と教員を支援するための体制を整備することが不可欠である。 子どもの成長過程をみると、とりわけ中学校区の範囲とするところにおいて、既に児童生徒と保護者間のつながりと連携が存在し、実際に、PTAや町内会、自治会等は、中学校区をもとに形成されていることが少なくない。比較的人口規模の大きな地域においても、複数の中学校区の間で連携調整のための協議会が機能し、年間行事の連携が行われ、生徒指導や身近な問題も、中学校区の問題として取り組まれる場合が少なくない。このように、学校と家庭、地域との連携、学校間の連携は、中学校区を基本的な単位として取り組まれることも、一つの方法として考慮することが適当である。 さらに、各中学校区を広く管轄する市町村教育委員会は、このような中学校区を単位とする連携を支援する体制を、都道府県教育委員会においては、指導者の育成や研修などを総合的に推進する体制が整備されていくことが望まれる。 |
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