第1章第1節 2人権教育の目標について

   学校教育において人権教育を進めるに当たっては、人権についての知的理解を深化し、徹底させると共に、児童生徒が人権感覚を十分に身に付けるための指導を一層充実することが必要である。
 各学校において人権教育に取り組むに際しては、まず、人権に関わる概念や人権教育が目指すものについて明確にし、教職員がこれを十分に理解し、組織的・計画的に進めることが肝要である。人権教育に限らず、様々な取組を進めるためには目標を明確にすることが重要である。それによって、組織的な取組が可能となり、改善・充実のための評価の視点も明らかになるからである。しかし、「人権尊重の理念」というような人権に関わる概念は抽象的で分かりにくい、といった声もしばしば聞かれるところである。
 人権尊重の理念は、「自分の人権のみならず他者の人権についても正しく理解し、その権利の行使に伴う責任を自覚して、人権を相互に尊重し合うこと、すなわち、人権の共存の考え方ととらえる」(審議会答申)べきものとされている。このことを踏まえて、人権尊重の理念について、特に、学校教育において指導の充実が求められる人権感覚の側面に焦点を当てて児童生徒にも分かりやすい言葉で表現するならば、[自分の大切さと共に他の人の大切さを認めること]であると言うことができる。
 この[自分の大切さと共に他の人の大切さを認めること]については、そのことを単に理解するにとどまることなく、それが態度や行動に現れるようになることが求められることは言うまでもない。すなわち、一人一人の児童生徒がその発達段階に応じ、人権の意義・内容や重要性について理解し、[自分の大切さと共に他の人の大切さを認めること]ができるようになり、それが様々な場面や状況下での具体的な態度や行動に現れるとともに、人権が尊重される社会づくりに向けた行動につながるようにすることが、人権教育の目標である。
 このような人権教育の実践が、民主的な社会及び国家の形成発展に努める人間の育成、平和的な国際社会の実現に貢献できる人間の育成につながっていくものと考えられる。
 各学校においては、上記のような考え方を基本としつつ、児童生徒や学校の実態等に応じて人権教育によって達成しようとする目標を具体的に設定し主体的な取組を進めることが必要である。


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