令和7年12月26日児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の指針について(通知)

7文科初第1944号
令和7年12月26日
 

各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長
各都道府県知事
附属学校を置く各国公立大学法人学長   殿
小中高等学校を設置する学校設置会社を
所轄する構造改革特別区域法第12条
第1項の認定を受けた各地方公共団体の長

 
              文部科学省初等中等教育局長
                        望月   禎
                            
 

児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の指針について(通知)

 
 
 文部科学省においては、平成23年6月、「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について」(平成23年6月1日付け23文科初第329号文部科学省初等中等教育局長通知)により「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」を周知し、また、その後の運用において、調査委員会の中立性・公平性の確保のあり方や、背景調査により得られた情報の取扱い等に関する共通の課題も見られたこと等を踏まえ、平成26年7月、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」(以下「旧指針」という。)として改訂しており、各学校等においては、これらの指針や通知に沿って必要な対応を行っていただいているところです。
 このような中、厚生労働省・警察庁の自殺統計において、令和6年の小中高生の年間の自殺者数が529人と過去最多となる一方で、旧指針に沿った運用について、
 ・背景調査について遺族への説明が不十分であったり、調査が長期化したりしていること
 ・基本調査における共通様式が定まっていないことから、調査内容にばらつきが生じていること
 ・令和6年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、「詳細調査について、制度及び調査希望の有無について遺族に説明した件数」が全体の約7割に留まっていることや、詳細調査に移行した件数が全体の約1割に留まっていること
等の課題が指摘されてきました。
 加えて、こども基本法(令和4年法律第77号)が成立し、「こども」とは「心身の発達の過程にある者」をいうと定義されたことを踏まえ、「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の指針」(以下「新指針」という。)と名称を改め、対象の明確化を図るとともに、上記の課題の指摘等を踏まえた内容の充実を図るため、「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」での審議及び意見募集手続を経て、この度、内容の改訂を行いました。
 今回の改訂の概要及び留意事項は、下記のとおりですので、十分に御了知の上、今後、新指針に沿った、適切な御対応をお願いいたします。
 また、今般の改訂について、都道府県・指定都市教育委員会教育長にあっては、所管の学校、域内の市区町村教育委員会に対して、都道府県知事にあっては、所轄の私立学校、学校法人に対して、国公立大学法人学長にあっては、設置する附属学校に対して、構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長にあっては、認可した学校に対して、周知いただくとともに、児童生徒の自殺対策に関する取組の一層の強化を図られるよう、お願いいたします。

 

 1.改訂の概要
(1)児童生徒の自殺が起きたときの背景調査全体の流れの明確化
 一般的な背景調査の流れを明確にするため、背景調査全体のフロー図を記載。
(2)背景調査に関する平常時からの備え・児童生徒の自殺防止に係る記載の充実
 ・自殺又は自殺が疑われる死亡事案が生じた場合に、速やかな事後対応と調査が実施できるよう、学校の設置者及び学校等における平常時からの備えに係る記載を充実。
 ・児童生徒の自殺の防止等の観点から、相談体制の充実や自殺やその他の重大な危険行為の予兆を捉えた際における組織的対応の重要性について追記するとともに、自殺対策基本法の一部を改正する法律(令和7年法律第64号)により改正された自殺対策基本法(平成18年法律第85号)に規定された協議会や心の健康の保持のための健康診断の措置等について追記。
(3)児童生徒の自殺が起きたときの背景調査等に係る遺族への説明様式の作成
遺族への背景調査等に係る説明を確実に実施するため、背景調査の内容・災害共済給付・相談窓口を記載した説明様式(様式1)を作成。
(4)基本調査の様式の作成等及び遺族に対する基本調査結果の説明に係る記載の充実
 ・基本調査で実施すべき項目をまとめた様式(様式2)を作成するとともに、文部科学省及びこども家庭庁における子供の自殺に係る実態の把握のため、様式2を文部科学省に共有することを記載。
 ・文部科学省及びこども家庭庁において、基本調査の結果を子供の自殺に係る要因分析・研究にも活用することについて、様式2等を示しつつ、基本調査の実施後、遺族から同意を得ておくことを記載(様式3の4を参照)。
・学校の設置者及び学校は、基本調査の結果がまとまった段階で、様式2を用いて基本調査の結果を遺族に説明することを記載。また、詳細な説明を控えてほしい等の遺族の意向がある場合は、調査結果の概要を用いるなどの対応も考えられることを記載。
(5)遺族に対する詳細調査に係る意向確認書の作成等
 ・詳細調査について、学校の設置者及び学校の考えを伝えて、遺族の意向を確認することが必要であり、その際、電話や口頭でのやりとりに終始し、学校と遺族との情報共有が十分に図られず、詳細調査への移行が適切になされない可能性もあることから、遺族に対して詳細調査の実施に係る意向等を確認するための意向確認書(様式3)を作成
 ・学校の設置者等が詳細調査に移行すべきかどうかを判断する際の参考にするため、詳細調査に移行した例を記載。
(6)詳細調査の一部であるアンケート調査や聴き取り調査の先行実施等の明記
 ・基本調査実施中に詳細調査の一部であるアンケート調査や聴き取り調査に関する遺族の要望がある場合は、詳細調査に先行して、アンケート調査や聴き取り調査を緊急的に実施する必要があり、アンケート調査・聴き取り調査を基本調査と並行して実施することも考えられるが、詳細調査に先行して実施する場合でも、遺族の了解、児童生徒・保護者の理解・協力、心のケア体制、調査の実施体制が整っていることが必要であることを明記。
 ・基本調査実施中に、遺族から詳細調査への移行に関する要望があった場合には、学校の設置者の判断のもと、並行して詳細調査に向けて準備を進めることも考えられることを明記。
(7)体罰・不適切な指導等が背景にあると疑われる場合等の調査組織の考え方の明記
体罰・不適切な指導等が背景にあると疑われる自殺事案については、指導内容が適切であったかどうかやその指導と自殺の因果関係の判断について、客観的な視点から事実認定を行うことができる体制構築が必要であることから、学校の設置者が主体となり、第三者委員会方式での調査の実施を検討すべきであること等、調査組織の公平性・中立性を確保する必要性が高い場合の具体例を記載。
(8)詳細調査における標準的な調査項目及び詳細調査における調査結果の説明等の明記
 ・詳細調査の調査報告書に盛り込む標準的な項目や記載内容の例等を記載するとともに、事実関係の確認・整理に当たって、課題等を可能な限り網羅的に明らかにすることや、聴き取り等の内容や収集した資料等について正確性、信頼性の観点から吟味し、評価すること等を記載。
 ・自殺の原因・動機は様々かつ複合的である場合が多く、詳細調査を実施しても明らかにならない場合があることも想定されることから、調査の過程や調査によって明らかになった範囲での事実関係等を記し、それ以上のことは本調査ではわからなかったことを明記することも考えられること、事実関係が確定していないものについては断定的な表現を避けることが必要であることを記載。
 ・学校の設置者等が、遺族に対して詳細調査に係る情報提供及び調査結果の説明を適切に行うことを記載するとともに、遺族と事前に確認した調査事項について調査漏れがある場合や調査中に新たな調査すべき事項が出てきた場合等は、遺族の意向を確認した上で、調査主体又は調査組織の判断で、追加で調査を行うことが望ましいことを記載。
(9)背景調査といじめの重大事態調査との関係性の整理の追記
背景調査の実施中に「いじめにより重大な被害が生じた疑い」が認められる場合もあることを踏まえ、背景調査からいじめの重大事態調査に移行する際の注意点や求められる対応を記載。
 
2.新指針に沿った対応に係る留意事項
 新指針に沿った対応を適切に行うためには、一定の周知期間が必要であることを踏まえ、令和8年2月1日以降に発生した児童生徒の自殺事案について、新指針に沿った対応を行うこと。
令和8年1月末までに発生した事案(現時点で既に旧指針に基づいて調査が開始されている事案を含む)については、新指針に関する各自治体における周知及び研修状況や個別の調査の進捗状況等に応じて、新指針も参考としつつ、対応すること。
 なお、改訂内容、改訂に係る経緯、「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」における議論の内容等について、関係者の理解促進を図る必要があることを踏まえ、令和8年1月から2月にかけて、文部科学省主催で新指針の改訂内容等に関するオンライン説明会を実施する予定であり、新指針に沿った対応に遺漏のないよう取り組むためにも、積極的に参加いただきたいこと。
 また、令和8年1月に実施する都道府県・指定都市等生徒指導担当者連絡会議においても、新指針の改訂内容を説明する予定であり、同連絡会議の参加者におかれては、所管する学校等や域内の市区町村教育委員会に対し、説明内容の周知を図ること。
 加えて、各教育委員会等におかれては、添付資料や上記説明会及び会議における配布資料を活用し、所管の学校等に対する研修を行うよう努めること。

【添付資料】  

【参考資料】

 〇生徒指導提要(改訂版)
 

                

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

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