一時保護等が行われている児童生徒の指導要録に係る適切な対応及び児童虐待防止対策に係る対応について

27文科初第335号
平成27年7月31日

各都道府県教育委員会
各指定都市教育委員会
各都道府県知事
附属学校を置く各国立大学法人学長
小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長 殿

文部科学省初等中等教育局長
小松親次郎

一時保護等が行われている児童生徒の指導要録に係る適切な対応及び児童虐待防止対策に係る対応について(通知)

 児童虐待への対応については,「児童虐待の防止等のための学校,教育委員会等の的確な対応について」(平成22年3月24日付け21文科初第777号)(参考資料1)等を踏まえ,学校や教育委員会等において,これまでも様々な努力がなされているところですが,児童虐待の相談対応件数の増加傾向が続くなど,引き続き適切な対応が求められています。
 このような状況の下,「児童福祉法」(昭和22年法律第164号)に基づく一時保護の件数も増加しているところ,この一時保護が行われる間は学校へ通うことができなくなることがあります。加えて,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(平成13年法律第31号)及び「売春防止法」(昭和31年法律第118号)等に基づき婦人相談所による一時保護が行われている児童生徒及び婦人保護施設に保護されている児童生徒についても,これらの措置が行われる間は学校へ通うことができなくなることがあります。
 一方,近年では,例えば,児童相談所の一時保護所において,退職教員等の学習指導協力員の配置や一定の学習時間の確保等,一時保護が行われている児童の学習条件を向上させる取組も行われているところです。
 ついては,こうした状況等を踏まえ,一時保護が行われている児童生徒及び婦人保護施設に保護されている児童生徒(以下「一時保護等が行われている児童生徒」という。)の指導要録に係る適切な対応等を下記1.のとおりお示しすることとしました。

 また,関係府省庁によって「児童虐待防止対策等について」(平成26年12月26日児童虐待防止対策に関する副大臣等会議)(参考資料2)が取りまとめられており,居住実態が把握できない児童生徒への取組のほか,児童虐待の未然防止,早期発見・早期対応等のための速やかな実施に向けて取り組む主な対応策が示されています。
 これを踏まえ,学校や教育委員会等における児童虐待防止に係る対応を進める上での留意事項を下記2.のとおり整理しましたので適切な対応をお願いします。なお,居住実態が把握できない児童生徒への取組については,「居住実態が把握できない児童への対応について」(平成27年3月16日付け総行住第33号,26初初企第53号,雇児総発9316第1号)が別途通知されていますので,併せて御留意願います。

 ついては,都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対して,都道府県知事にあっては所轄の私立学校に対して,国立大学法人の長にあっては設置する附属学校に対して,株式会社立学校を認定した地方公共団体の長にあっては認可した学校に対して,これらの趣旨についての周知を図るとともに,適切な対応がなされるよう御指導をお願いします。なお,本通知に関しては,厚生労働省と協議済みであり,同省に対し,関係機関等への本通知の内容の周知方を依頼済みであることを申し添えます。

1.一時保護等が行われている児童生徒の指導要録に係る適切な対応等について

 児童相談所の一時保護所の学習環境等については,その充実に向けこれまでも学習指導協力員の配置など様々な取組が進められてきたところであるが,「児童虐待防止対策等について」において「学校と児童相談所等関係機関の連携」を推進することが示されたこと等を踏まえれば,一時保護等が行われている児童生徒の学習状況の評価等についても関係機関が連携して適切な対応を進める必要がある。
 したがって,一時保護等が行われている児童生徒の指導要録上の取扱い等について,別紙1及び別紙2によることとするので,これを踏まえて適切な対応を行うこと。
 その際,都道府県教育委員会等においては,学校における指導要録上の取扱い等について各学校の円滑な判断が行われるよう,児童相談所における相談・指導の状況等について,当該児童相談所からの情報提供を踏まえ,域内の学校に情報提供することが考えられること。また,都道府県教育委員会等において,児童相談所の求めに応じ,その学習環境を充実させる観点から,一時保護所の学習指導協力員となる者として退職教員を紹介する等の協力を行うこと。 

2.児童虐待防止対策に係る対応について

(1)学校等の間の情報共有について

 「児童虐待防止対策等について」においては,「進学・転学の際の学校等の間の情報共有」を推進することが示されているが,指導要録に記されている学習状況や出席日数,健康診断票に記されている健康の状況等は,支援が必要な幼児児童生徒を発見するに当たって重要な情報となる場合もあるものである。
 ついては,進学・転学に当たっては,法令にのっとり行うこととされている進学・転学先への文書の送付はもとより,対面,電話連絡,文書等による学校間での引継ぎの実施,学校の担当者やスクールソーシャルワーカー等によるケース会議の開催等により,支援が必要な幼児児童生徒に係る学校等の間の適切な連携を進めること。
 個人情報保護の観点からどこまで情報を引き継げるかについては,適用される関係法令に基づき各学校等が判断することとなり,一般的には,公立学校には当該学校を設置する地方公共団体の個人情報保護条例が,私立学校を設置する学校法人等には「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)及び関係条例が,国立大学法人には「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第59号)が適用されるものであること。その際,一般的には,

  • 設置者を同じくする学校間での引継ぎについては,個人情報の利用目的の範囲内であることが原則であるが,利用目的の範囲外であっても,私立学校においては,人の生命,身体等の保護のためや児童生徒の健全な育成の推進のために特に必要があり,本人の同意を得ることが困難である場合,国立大学法人の設置する学校においては,法令の定める業務の遂行に必要な範囲で行われるものであり,かつ,相当な理由がある場合は,保有個人情報の内部利用として認められるときがあること
  • 設置者を異にする学校間での引継ぎについては,個人情報の第三者提供に該当することから,本人の同意を得ることが原則であるが,私立学校においては,人の生命,身体等の保護のためや児童生徒の健全な育成の推進のために特に必要があり,本人の同意を得ることが困難である場合,国立大学法人の設置する学校においては,明らかに本人の利益になる場合や,特別な理由がある場合であれば,関係法令上,第三者提供が認められるときがあること
  • 公立学校においては,個人情報保護条例の利用目的や第三者提供に関する規定において,類似又は同趣旨の定めがなされていることがあること

等に留意した上で必要な情報共有を図ること。また,個別の案件で疑義がある場合は,関係法令を所管する行政の部局へ問い合わせることが考えられること。

(2)児童虐待等に係る研修の実施について

 「児童虐待防止対策等について」においては,「学校と児童相談所等関係機関の連携」を推進することが示されており,虐待を発見するポイントや,発見後の対応の仕方等について,教職員の理解を一層促進することが求められる。
 ついては,学校や教育委員会等においては,以下の資料等を参考にするとともに,「児童虐待の防止等のための学校,教育委員会等の的確な対応に関する状況調査結果について」(平成23年3月4日付け22初児生第65号)(参考資料3)に沿って,児童相談所の職員を講師に招くなどして,今後とも教職員に対する研修の充実に努めること。

(参考資料)
1 児童虐待の定義,関連する法律などの基礎的な知識と近年の状況については「児童虐待防止対策」(厚生労働省HPに掲載)を参照。
2 児童虐待についての学校における対応について

○ 学校生活の中における児童虐待の兆候等については「児童虐待防止と学校」(文部科学省HPに掲載)の「第3章学校生活での現れ」を参照。

○ 学校と福祉機関との役割分担や通告後の対応等については「児童虐待防止と学校」(文部科学省HPに掲載)の「第6章疑いから通告へ」を参照。

 

(3)児童虐待に係る通告についての組織的な対応等について

 「児童虐待の防止等に関する法律」(平成12年法律第82号)の第5条第1項においては,学校及びその教職員による児童虐待の早期発見の努力義務が定められており,また,「児童虐待防止対策等について」においても,学校の組織としての「適切な通告の実施」の必要性が改めて示されていることから,学校及びその教職員は法令の趣旨を理解して児童虐待に関し適切な通告を行う必要がある。
 ついては,教育委員会等においては,「児童虐待に係る速やかな通告の一層の推進について」(平成24年3月29日付け23文科初第1707号)(参考資料4)の別紙3に記載のとおり,虐待の事実が必ずしも明らかでなくとも一般の人の目から見れば主観的に児童虐待が疑われる場合は通告義務が生じることや,法の趣旨に基づくものであれば,その通告が結果として誤りであったとしても,そのことによって刑事上,民事上の責任を問われることは基本的には想定されないこと等を改めて学校に対し周知すること。  また,通告は,教育機関と福祉機関の専門性の違いを尊重しつつ両者が協働していく契機と捉え,教職員個々人の対応に加え,学校組織として関係法令に沿った適切な対応を行うよう周知すること。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課企画係

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(初等中等教育局児童生徒課企画係)

-- 登録:平成27年08月 --