21文科初第777号
平成22年3月24日
各都道府県教育委員会教育長 殿
各指定都市教委員会教育長 殿
各都道府県知事 殿
附属学校をく各国立大学法人学長 殿
文部科学大臣政務官
児童虐待の防止等については、これまでも児童虐待の早期発見・早期対応、被害を受けた児童の適切な保護等、学校等における適切な対応が図られるよう繰り返しお願いしているところですが、児童相談所における虐待相談の対応件数は年々増加しており、平成20年度には4万2千件を超えるなど依然として深刻な社会問題となっております。
このような状況を踏まえ、文部科学省、厚生労働省の合意の下、「学校及び保育所から市町村又は児童相談所への定期的な情報提供に関する指針」を作成し、示したところですが、このたび、児童虐待の防止等に当たって、上記指針の運用を含めた、学校、教育委員会等における児童虐待の早期発見・早期対応、通告後の関係機関との連携等を図る上での留意点等について下記のとおり改めて取りまとめましたので、周知します。
なお、児童虐待の防止には良好な家庭環境が大切であるため、各教育委員会における生徒指導担当と家庭教育支援担当の連携等により、保護者への支援の一層の充実に努めていただくことについても併せて御留意ください。
貴職におかれては、これらの点を踏まえ、所管の学校又は域内の市区町村の教育委員会等に対し、学校等における児童虐待の防止等のための取組がより一層適切に推進されるよう、御指導をお願いします。
学校及び学校の教職員は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努める必要があることから、以下のことに留意して取り組むこと。
1.幼児児童生徒の心身の状況の把握について(学校保健安全法第9条関係)
児童虐待の早期発見の観点から、幼児児童生徒の心身の健康に関し健康相談を行うとともに、幼児児童生徒の健康状態の日常的な観察により、その心身の状況を適切に把握すること。
2.健康診断について(学校保健安全法第13条関係)
健康診断においては、身体測定、内科検診や歯科検診を始めとする各種の検診や検査が行われることから、それらを通して身体的虐待及び保護者としての監護を著しく怠ること(いわゆるネグレクト)を早期に発見しやすい機会であることに留意すること。
児童虐待に係る通告について、児童虐待を受けたと思われる幼児児童生徒を発見した場合は、速やかに、これを市町村、児童相談所等に通告しなければならない。このため、児童虐待の疑いがある場合には、確証がないときであっても、早期対応の観点から通告を行うこと。
1.定期的な情報提供について(児童虐待防止法第13条の3関係)
児童虐待に係る通告を行った幼児児童生徒について、通告後に市町村又は児童相談所に対し、定期的な情報提供を行うときは、「学校等から市町村又は児童相談所への定期的な情報提供について(通知)」(21文科初第775号。平成22年3月24日。)を踏まえ、適切な運用に努めること。
2.緊急時の対応について(児童虐待防止法第6条第1項関係)
上記1に係る、定期的な情報提供を行っている場合であっても、学校等において、不自然な外傷、理由不明又は連絡のない欠席が続く、幼児児童生徒から虐待についての証言が得られた、帰宅を嫌がる、家庭環境の変化など、新たな児童虐待の兆候や状況の変化等を把握したときは、定期的な情報提供の期日を待つことなく、適宜適切に市町村又は児童相談所等に情報提供又は通告をすること。
必要に応じて、児童相談所長会議等へ教育委員会担当者等が出席し、また、教育委員会等が主催する各種会議への児童相談所等関係機関からの参加、協力を求めるなどして、児童虐待の防止等のために関係機関間の連携の強化に努めること。
学校の教職員が児童虐待の早期発見・早期対応等児童虐待の防止に寄与するとともに児童虐待を受けた幼児児童生徒の自立の支援等について適切に対応できるようにするため、研修等必要な措置を講ずる必要があることから、以下のことに留意して取り組むこと。
1.教職員用研修教材「児童虐待防止と学校」の活用について
学校等における児童虐待の防止等のための取組の一層の充実を図るため、平成21年5月に文部科学省が作成、配付した教職員用研修教材「児童虐待防止と学校」(CD-ROM)が適切に活用されるよう、学校等における教職員を対象とする研修の充実を図ること。
2.関係機関と連携した研修の活用について
児童虐待問題等に対応する関係機関職員の研修を実施している「子どもの虹情報研修センター(日本虐待・思春期問題情報研修センター)」において、教育委員会指導主事等を対象に実施されている児童相談所職員との合同研修等を活用するなど、関係機関と連携した研修の充実を図ること。
地方公共団体が行う、児童虐待を受けた児童がその心身に著しく重大な被害を受けた事例等の検証に参加・協力するなどして、学校の教職員が児童虐待の防止に果たすべき役割や必要な再発防止策等を明らかにするよう努めること。
また、地域の実情に応じて、学校の教職員が児童虐待の防止に果たすべき役割その他児童虐待の防止等のために必要な事項についての調査研究を実施すること。
要保護児童対策地域協議会(以下、「協議会」という。)は、平成16年の「児童福祉法の一部を改正する法律」により法的位置付け等が定められ、平成19年の「児童虐待の防止等に関する法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」により、地方公共団体に対し設置が努力義務として課されるなど、児童虐待の防止等を図る上で重要な役割を担うものとなっている。
児童虐待の防止等のためには、関係機関が児童虐待を受けていると思われる児童に関する情報や考え方を共有し、適切な連携の下で対応していくことが重要であり、学校及び学校の教職員は、児童虐待の防止並びに児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援に関する地方公共団体等の施策に協力する必要があることから、各学校、教育委員会等においては、協議会に積極的に参画するなどして、関係機関との一層の連携・協力を図り、児童虐待の防止等に努めること。
初等中等教育局児童生徒課
-- 登録:平成23年09月 --