2.職場体験 27.新潟県立村上桜ヶ丘高等学校

総合学科の特性を生かした豊かな体験活動

【活動のポイント】

 総合学科の必修科目である科目「産業社会と人間」の授業や「総合的な学習の時間」に位置づけ、あるいは特に本校に設置している商業・農業・生活福祉の各系列における体験学習として、大学・短大や職業理解を前提としたキャリア教育に係わるもの、ボランティア活動など社会奉仕に関わる体験活動、幼・小・中・高・大の交流に関わる体験活動等を組み合わせて実施する。

【活動内容】

○社会との関わり体験活動(「身近な人へのインタビュー」「職業人インタビュー」)[対象:1年生]

 「産業社会と人間」の授業の一環として、1年生全員で夏期休業中に「身近な人へのインタビュー」を、11月にはその経験を踏まえ、新潟・新発田・村上地区の100社以上の協力を得て「職業人インタビュー」を実施した。前者では、父母や兄、姉など身近な人に仕事についてインタビューし、普段は気に掛けていなかった父母や兄、姉が一生懸命働いていることに気づき、働くことに対する認識を深めることができた。
 後者では、様々な職業の実態に触れることで、将来の職業についての認識を深めることができた。事前に、訪問するための「依頼状」や訪問した後の「礼状」の作成指導を行い、事後には礼状の発送や訪問結果をまとめた体験発表会を実施した。社会の中の一員としての自覚が芽生え、責任感や規範意識の向上に役立ったようである。

○大学・短大講義体験[対象:1、2年生]

 1年生は10月、2年生は11月に県内の大学・短大から教員を招き、各人の興味に応じた専門分野の講義を「大学模擬授業」として体験する。体験講義の決定に際しては、担任による進路指導や生徒個々の事前学習が重要である。この体験を通して、普段の高校での授業では得られないより深い専門分野の知識を垣間見ることで、将来の自分自身の進路に対する関心や意欲を高めることができた。

○介護体験活動[対象:2、3年生]

 8月下旬に、生活福祉系列の2年生が知的障害者更正施設「やまやの里」を訪問し、利用者の日課に合わせて一日を一緒に過ごし、交流・介護体験を行った。訪問する前と後のイメージの変化をレポートにまとめさせたところ、今まで知的障害者と接した経験のない生徒が多く、行く前は「怖い」と思っていた生徒が多かったが、交流を通して利用者と打ち解けることができ、イメージが変わったとの感想を残した生徒が多かった。

○地域経済・ビジネスマナー講演会[対象:3年生]

 ビジネス系列の3年生を対象に、地元商工会議所や企業から講師を招き、地域経済に関する講話やビジネスマナーについての講演会を実施した。地域経済に対する視野を広め、社会生活のマナーを考えた上で、社会意識を持った進路決定ができることをねらった体験である。

【体験活動の評価の工夫と指導の改善】

 概ね以下の分野に分けて、評価や改善の工夫をしている。

(1)1年「産業社会と人間」の授業に組み込まれた体験活動(2日6時間)

 「産業社会と人間」は総合学科の1年必履修科目であるため、担当している1年次の学級担任と副担任団で「産社担当者会議」を開催し、年度当初の計画立案や実施に際する打ち合わせや検討を行っている。評価は、生徒の意欲や取組状況を感想文等で確かめながら、年度末に1年間の総合評価を出すという形で実施している。

(2)1、2年「総合的な学習の時間」に組み込まれた体験活動(2日9時間)

 本校では、「総合的な学習の時間」を各年次にLHRと連動させながら週1単位を時間板に組み入れ、「キャリア学習」を中心に実施しており、「豊かな体験活動」に関わる取組もその中に組み込まれている。そのため、計画立案や指導は各年次団の担任と副任があたっている。
評価については、担任が生徒個々の取り組む意欲や態度を中心に、年度末に1年間の総合評価という形で実施している。したがって、評価や改善の工夫についても、各年次団で前年度の反省を踏まえながら検討を加え、実施している。

(3)2、3年次のそれぞれの系列の授業に組み込まれた体験活動(11日24時間)

 それぞれの体験活動の工夫や改善は、総合学科そのものの評価や生徒たちからの授業の評価にも直結してくることとなる。したがって、各系列では年度当初の授業計画の策定の際に、前年度の反省を踏まえながら、様々な検討を加えている。

【体験活動の成果と課題】

(1)成果

 本校生徒にとって、普段の教室の授業では得られない貴重な体験となった。

  • 1 入学後早期からの職業や進路についての様々な体験活動は、その後の高校生活や、進路実現に向けた意欲につながった。
  • 2 地域の歴史や文化に触れることにより、ふるさとの自然や生活を愛し、そこで暮らすすべての人々を大切にする心が育った。
  • 3 地域に住む幼稚園児から施設に暮らすお年寄りまで幅広く交流することにより、思いやりの心や自覚、責任感が醸成された。

(2)課題

  • 1 体験活動が本校の全体の教育計画の中に十分整理されて位置づけられていないため、実践が学年や系列の個々の実践に終わっている側面もあった。
  • 2 校内委員や学校支援委員会の活動や連携がまだ不十分である。
  • 3 総合学科の特性を生かすことにより、さらに多様な体験活動が可能であり、今後も実践を積み重ね、魅力ある学校作りに役立てる必要がある。

-- 登録:平成21年以前 --