2.20.福井県勝山市立勝山中部中学校

「地域の人やものと関わりながら、豊かに表現し、自らの生き方を考える生徒の育成」

【活動のポイント】

  • 「豊かな人間性と社会性を身につけ、自分の生き方を考えることができる生徒の育成」を主な目的とし、職業や進路に関する活動と学年設定テーマの活動の二つの柱を設定している。学年設定テーマは、ひな型を示す中で生徒たちが自主的に決定しており、平成17年度当時の2年生は、「ボランティア」をテーマに活動していた。
    • 学年設定テーマは3年間継続したテーマとなるが、生徒の活動志向に応じ、年度ごとに変更する場合もある。
  • 本校では、3年間を見通した系統的な学習の積み上げと、生徒の主体性を発揮できるような工夫という二点に留意して体験活動を進めることを目指している。

【全体の指導計画(17年度当時の2年生についての3年間の計画)】

  • 遠足、修学旅行は学校行事、「立志のつどい」は特別活動、他は総合的な学習の時間として実施。

活動内容(対象:2年生)

(1)浄土寺川清掃

 本校の前を流れる浄土寺川は、多数のホタルが生息している。この川を環境悪化から守るため、28年続く伝統行事として、総合的な学習の時間を利用し、生徒会執行部が企画の中心となった全校生徒による清掃活動を実施している。

  • 活動に先立ち、生徒会執行部生徒が下見をして今年のゴミの量を調査し、クラスごとの場所割りを決めた。さらに、全校生に浄土寺川清掃の伝統やその意義について説明し、意識付けを行った。
  • クラスごとに区画分けし、作業に入った。初めはためらいがちだった生徒も、川に入ると大胆になり、衣服がぬれるのもかまわず深みにまで入って作業を進めていた。
  • 活動終了後に自己評価と感想を記入。「終わった後の達成感」、「ごみを捨てる人に対する腹立たしさ」、「自分も捨てたことがあったとの反省」、「地域の自然を豊かなままに守りたいという気持ち」などが書かれており、この活動から様々なことを学んでいることがわかる。

(2)「自ら気づき、考え、行動するボランティア学習」※1年生2学期での実践

  • 「自分の自由意志で行う」という本来のボランティアの精神を重視し、生徒の気づきや自主性を活かすボランティア活動を試みた。
  • オリエンテーションの後、身近にできるボランティアを見つけさせた。全員の考えを集約し、老人福祉、児童福祉、国際、観光、交通安全などのテーマの中から、自分がやってみたいもの、特技を生かせるものを選択させ、グループ分けをした。

【参考:1年生時の取組】

グループ 活動内容 9月21日 9月30日 10月7日 10月18日 10月26日
老人福祉 1 老人宅訪問 老人宅訪問 老人宅訪問 老人宅訪問 老人宅訪問 プレゼント・手紙作成
2 老人ホーム訪問 プレゼント・手紙作成 老人ホーム訪問 老人ホーム訪問 老人ホーム訪問 老人ホーム訪問
児童福祉 1 6年生に中学校紹介 アンケート作成 アンケート回収・集計 ビデオ撮影 ビデオ撮影 ビデオ撮影
2 保育園実習 訪問準備 紙芝居作り 保育園訪問 保育園訪問 保育園訪問
3 園児に得意なことを教える 各保育園への調査 広告作り 広告配り 園児とサッカー 保育園訪問
国際 1 募金活動 募金箱・ポスター作り 募金活動 募金活動 募金活動 募金活動
2 市内在住の外国人と交流 交流会準備 交流会準備 交流会 交流会準備 交流会
観光 観光に関する活動 博物館の噴水清掃 観光マップ作り 観光マップ作り 観光マップ作り 観光マップ作り
交通安全 交通安全の呼びかけ 呼びかけ活動 看板・ポスター作り 看板・ポスター作り 看板・ポスター作り 看板設置・ポスター掲示
  • 5回にわたり、グループで立てた計画に従って活動した。計画通り進まなかったり、グループ内で意見が分かれて計画を立て直したりしたグループもあったが、自分たちで立てた計画であるだけに、積極的な姿勢で楽しく取り組むことができた。観光グループのように、市のお祭りのボランティア募集に応じ、休日にスタッフとして地域の活動に進んで参加していく生徒たちも出てきた。
  • 活動後にお礼状を作成するとともに、実践発表会を実施した。事後の感想には、「ボランティアは初めは面倒くさいと思ったが、自分がやりたいボランティアを選んで始めたときはそんな気持ちはなくなり、作業もはかどった。」という内容が多かった。
  • 生徒の「気づき」や「主体性」を生かすボランティア活動は効率的ではないし、内容も稚拙なものにとどまることもあるが、活動を通して生徒たちが得る充足感は、教師主導で行われる場合に比べるとはるかに大きい。

体験活動の支援体制

 主として学年単位で計画・実践を行っている。また、清掃活動においては、市や警察、地域の方々に協力を依頼し、奉仕体験活動においては、生徒の自主的活動を支援するため、生徒の安全確認や本部のとりまとめなど、学年担任教員やその他の教員の体制づくりを行っている。

評価の工夫と指導の改善

 毎回の活動で使用したワークシートや個人評価カードを個人ファイルに綴じていき、活動終了時にそれらを振り返らせた上で実践発表会を開いたり、体験文集をまとめさせたりしている。教師による評価もこれらを通して行い、評価結果については、学年会や職員会で話し合い、指導改善に生かすよう努めている。

体験活動の成果と課題

1成果

  • 学年の発達段階に応じて対象や方法を変えながら、同じテーマを3年間継続することによって、そのテーマを深く、様々な角度から追求できている。
  • 確固たる趣旨がなければ、強制的な活動になりがちな「ボランティア学習」も、生徒の主体性を生かす形で実施することによって、生徒たちにより深い感動や学びを与えることができた。
  • これらの活動を通して生徒たちには、人とのふれあいや、他の人・地域の役に立つことに喜びや楽しさを感じ、様々な活動に進んで取り組もうとする心情や態度が育ってきている。

2課題

  • 伝統的な行事や長年定着した活動も、伝統や前例を継承するにとどまらず、その活動の意義を改めて考え直し、内容や方法を更に工夫していくことが必要である。

-- 登録:平成21年以前 --