学校等における児童虐待防止に向けた取組の推進について(通知)

18初児生第11号
平成18年6月5日

各都道府県教育委員会担当課長殿
各指定都市教育委員会担当課長殿
各都道府県私立学校主管課長殿
附属学校を置く各国立大学法人学長殿

文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
坪田 眞明

(印影印刷)

  児童虐待については、児童相談所への児童虐待に関する相談件数が年々増加の一途をたどっていること、重大な児童虐待事件があとを絶たないこと、及び医療的ケアが必要となるような困難な事例が増加していることなど、依然として深刻な社会問題となっております。
  その中、近年、「児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律(平成16年法律第30号。)」(以下、「改正虐待防止法」という。)及び「児童福祉法の一部を改正する法律(平成16年法律第153号。)(以下、「改正児童福祉法」という。)など児童虐待防止に関する各種法改正が行われており、特に改正虐待防止法に基づき、学校及び教職員に対しては、日頃から子ども達に接する立場及び子どもの教育的指導に当たる機関としての立場から、児童虐待の防止等のために適切な役割を果たすよう、早期発見の努力義務や関係機関への通告義務などの責務が課されております。
  以上のような背景の下に、文部科学省では、昨年4月に「学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究会議」(別紙1 学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究)に委託し、改正虐待防止法及び改正児童福祉法の施行を踏まえ、学校等における児童虐待防止のための取組みの現状と課題を探り、その対処方策を検討することを目的として、学校等における児童虐待防止に関する現状調査と国内外の取組事例を調査研究し、今回、その報告書をとりまとめましたので、別添のとおり送付します。
  貴職におかれては、本資料の内容(別紙2 「学校等における児童虐待防止に向けた取組について(報告書)」(概要)(学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究会議))及び下記の点を踏まえ、所管の学校又は域内の市区町村の教育委員会等に対し、学校及び教職員に対する法令上の義務等に関して改めて周知徹底を図るとともに、学校等における児童虐待防止のための取組がより一層適切に推進されるよう、ご指導をお願いします。

1 虐待防止法等の趣旨の徹底

  各教育委員会等においては、学校等に対して、「児童虐待の防止等に関する法律の施行について(通知)」(平成12年11月20日。文生参第352号。)及び「児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)」(平成16年8月13日。文科生第313号。)等を参考にして、特に、以下の点についての周知徹底を図ること。

(1)児童虐待の早期発見等

  改正虐待防止法上、学校及び学校の教職員は、1児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならないこと(同法第5条第1項)、2児童虐待の予防その他の児童虐待の防止並びに児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援に関する国及び地方公共団体の施策に協力するよう努めなければならないこと(同条第2項)、3児童及び保護者に対して、児童虐待の防止のための教育又は啓発に努めなければならないこと(同条第3項)などの責務が課されていること。

(2)児童虐待に係る通告

  児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならないこと(同法第6条第1項)。

2 児童虐待防止に向けた学校等における適切な対応

  各教育委員会等においては、学校等に対して、「児童虐待防止に向けた学校における適切な対応について(通知)」(平成16年1月30日。15初児生第18号。)及び「現在長期間学校を休んでいる児童生徒の状況等に関する調査結果とその対応について(通知)」(平成16年4月15日。16初児生第2号。)を参考にして、改めて、以下の点についての指導の徹底を図ること。

  (1)学校の教職員は、職務上、児童虐待を発見しやすい立場にあることを再確認し、学校生活のみならず、幼児児童生徒の日常生活面について十分な観察、注意を払いながら教育活動をする中で、児童虐待の早期発見・対応に努める必要があること。そのために、学級担任、生徒指導担当教員、養護教諭、スクールカウンセラーなど教職員等が協力して、日頃から幼児児童生徒の状況の把握に努めるとともに、幼児児童生徒がいつでも相談できる雰囲気を醸成すること。

  (2)虐待を受けた幼児児童生徒を発見した場合には、速やかに児童相談所又は福祉事務所等へ通告すること。児童虐待の疑いがある場合には、確証がないときであっても、早期発見の観点から、児童相談所等の関係機関へ連絡、相談をするなど、日頃からの連携を十分に行うこと。関係機関への通告又は相談を行った後においても、当該機関と連携して当該幼児児童生徒への必要な支援を行うこと。
  特に、学校においては、幼児児童生徒の保護者との関係が悪化することなどを懸念して通告をためらうことがないようにすること。

  (3)上記の対応に当たっては、管理職への報告、連絡及び相談を徹底するなど、学校として組織的に取り組むとともに、教育委員会への連絡、又は必要に応じて相談を行うこと。

3 教育委員会等の責務

  各教育委員会等においては、児童福祉部局等や関係機関と連携しながら、地域の実情に応じて、以下の点に関する取組の推進を図ること。

  • (1)児童虐待の予防及び早期発見並びに迅速かつ適切な児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援等を行うため、関係機関との連携の強化等のために必要な体制の整備に努めること。
    また、学校及び教育委員会は、虐待防止ネットワークに参加するとともに、特に教育委員会は、教職員等に対して、学校及び教職員等に期待されている役割や関係機関等の役割の周知に努めるなどにより、日ごろから関係機関等との連携を推進すること。
  • (2)学校の教職員が、児童虐待の早期発見・早期通告等児童虐待の防止に寄与するとともに児童虐待を受けた幼児児童生徒の自立の支援等について適切に対応できるようにするため、研修等必要な措置を講ずること。
  • (3)児童虐待の防止に資するため、幼児児童生徒の人権、児童虐待が幼児児童生徒に及ぼす影響及び児童虐待に係る通告義務等について、必要な広報その他の啓発活動に努めること。
  • (4)児童虐待の予防及び早期発見のための方策、児童虐待を受けた幼児児童生徒のケア、並びに学校の教職員等が児童虐待の防止に果たすべき役割等についての調査研究及び検証を行うこと。
  • (5)児童虐待を受けた幼児児童生徒が、その年齢及び能力に応じ充分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じること。

お問合せ先

児童生徒課 生徒指導企画係

電話番号:03‐5253‐4111(代表)(内線3055)

(児童生徒課 生徒指導企画係)

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