5.児童生徒の発達の支援

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(5) 特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する指導

 米国等においては「ギフテッド教育」として、古典的には知能指数(IQ)の高さなどを基準に領域非依存的な才能を伸長する教育が考えられてきましたが、近年ではこれに加え、領域依存的な才能を伸長する教育や、特異な才能と学習困難とを併せ持つ児童生徒[脚注1]に対する教育も含めて考える方向に変化しています。[脚注2]また、才能教育というと個人が過度に強調される場合がありますが、例えば国際水準の研究成果も現在は共同研究により生み出されることが多く、学際的な多様な才能が組み合わさることがブレイクスルーにつながることが注目されています。

 例えば、単純な課題は苦手だが複雑で高度な活動が得意な児童生徒や、対人関係は上手ではないが想像力が豊かな児童生徒、読み書きに困難を抱えているが芸術的な表現が得意な児童生徒など、多様な特徴のある児童生徒が一定割合存在します。学校内外において、このような児童生徒を含め、あらゆる他者を価値のある存在として尊重する環境を築くことが重要です。

 我が国においては、これまでもスポーツや文化などの分野で学校外において特異な才能を伸長するシステムが作られてきています。一方で、特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する教育に関し、学校において特異な才能をどのように定義し、見いだし、その能力を伸長していくのかという議論はこれまで十分に行われていない状況にあります。

 学校においては、特異な才能のある児童生徒も含め、「個別最適な学び」を通じて個々の資質・能力を育成するとともに、「協働的な学び」という視点も重視し、児童生徒同士がお互いの違いを認め合い、学び合いながら相乗効果を生み出す教育が重要です。具体的には、ICTも有効に活用しつつ、学習意欲を喚起するとともに、知的好奇心を高める発展的な学習を充実していくことや、STEAM教育など、教科等横断で実社会と関わるプロジェクト型の学びが有効に機能するのではないかと考えられます。

 また、特異な才能のある児童生徒の能力を伸ばしていくには、大学や民間団体等が担う役割が大きいと考えられます。このような学校外での学びへ児童生徒をつないでいくことや、学校においてその学習を生かし自他ともに学び合い成長する機会を設けること、学校における評価について整理を進めていくこと等が必要です。

脚注

  • [1]特異な才能と学習困難とを併せ持つ児童生徒は“2E(Twice-Exceptional)”の児童生徒と言われる。
  • [2]令和3年答申p.43,教育課程部会における審議のまとめp.16