5.児童生徒の発達の支援

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(1)発達の段階を踏まえた指導の充実

③ 高等学校

 高等学校は、義務教育機関ではないものの、既に進学率が約99%に達し、今日では中学校を卒業したほぼ全ての生徒が進学する教育機関となっています。それゆえ、高等学校には多様な入学動機や進路希望、学習経験、言語環境など、様々な背景を持つ生徒が在籍していることから、義務教育において育成された資質・能力を更に発展させながら、生徒の多様な能力・適性、興味・関心等に応じた学びを実現していくことが必要です。[脚注1]

 また、高校生の現状の一つとして、学校生活への満足度や学習意欲が中学校段階に比べて低下しており、高等学校における教育活動を、高校生を中心に据えることを改めて確認し、その学習意欲を喚起し、可能性及び能力を最大限に伸長するためのものへと転換することが急務となっています。

 高等学校の教育課程の在り方については、各学校が、全ての生徒が社会で生きていくために必要となる力を共通して身に付ける「共通性の確保」の観点と、一人一人の生徒の特性等に応じた多様な可能性を伸ばす「多様性への対応」の観点を軸としつつ、育成を目指す資質・能力を明確にし、それらを教育課程を通じて育んでいくことが重要です。このため、育成を目指す資質・能力に関する方針、教育課程の編成及び実施に関する方針、入学者の受け入れに関する方針を定め、各校における教育活動を一貫した体系的なものとすることが求められます。また、社会とつながる多様な学びを実現する観点からは、育成を目指す資質・能力と教育課程の在り方を生徒や社会と共有し、地域社会や高等教育機関等の関係機関と連携・協働した取組を進めていくことも重要です。[脚注2]

 学習指導要領では標準単位数の範囲内で合計が最も少なくなるように履修した際の必履修教科・科目の単位数の合計は35単位、生徒に卒業までに修得させる単位数は74単位以上としていますが、各高等学校ではこれらの基礎要件に加えて、それぞれの課程や学科の特色を生かした教育を行うことを考えて教育課程を編成する必要があります。また、いわゆる学年制をとる学校を含め、高等学校においては単位制が採用されていることを踏まえ、適切に教育課程を編成、実施することが望まれます。 [脚注3]

 高等学校においては、学習指導要領に定められている各教科・科目について単位数を増加・減少させたり、実態に応じて学校設定教科や学校設定科目を開設したりして、特色ある教育課程を編成することができます。また、いわゆる学校外学修として、大学等における学修等を高等学校における科目の履修とみなし、当該科目の単位を認定することも可能です。

 卒業についても、学習指導要領に示されている要件を踏まえた上で、各学校が学則等においてあらかじめ卒業までに修得すべき単位数や卒業までに修得すべき各教科・科目その他の要件を定め、それに照らして校長が認定します。

 このように高等学校については、学習指導要領上も各学校の判断で小学校・中学校よりも大幅に柔軟な教育課程を編成・実施することが可能となっており、その実態に照らして各学校の教育目標を達成することができるよう、工夫することが重要です。

 高等学校段階は、身体、生理面はもちろん、心身の全面にわたる発達が急激に進む時期です。また、興味・関心等に応じ、将来の学問や職業の専門分野の基礎・基本の学習によって、個性の一層の伸長と自律を図ることが求められています。これらを踏まえ、教育課程の編成に当たっては、生徒の一般的な発達の段階に即しながら、個々の生徒についての能力・適性、興味・関心や性格、更には進路や学習経験などの違いにも注目していくことが大切です。

 また、学習指導要領では、高等学校において学び直しのニーズが高いことを踏まえ、学習の遅れがちな生徒に対する配慮の方策について以下のとおり示しています。[脚注4]

 学習の遅れがちな生徒などについては、各教科・科目等の選択、その内容の取扱いなどについて必要な配慮を行い、生徒の実態に応じ、例えば義務教育段階の学習内容の確実な定着を図るための指導を適宜取り入れるなど、指導内容や指導方法を工夫すること。

 特に学習の遅れがちな生徒に対しては、一人一人に即した適切な指導をするため、学習内容の習熟の程度を的確に把握すること、学習の遅れがちな原因がどこにあるのか、その傾向はどの教科・科目において著しいのかなど実態を十分に把握し、各教科・科目等の選択やその内容の取扱いなどに必要な配慮を加え、個々の生徒の実態に即した指導内容・指導方法とすることが大切です。

 なお、通信制課程においても、こうした考え方は同様であり、個々の生徒について、各学校で育成を目指す資質・能力をバランスよく身に付け、学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解し、生涯にわたって能動的に学び続けることができるようにするためには、添削指導・面接指導・試験等といった通信制課程特有の教育方法を基礎としながら、学習指導要領の趣旨及び内容を踏まえ、学習指導及び学習評価の改善を図っていくことが必要です。

脚注

  • [1]令和3年答申p.49
  • [2]平成28年答申p.103
  • [3]高等学校学習指導要領(平成30年告示)第1章第4款3
  • [4]高等学校学習指導要領(平成30年告示)第1章第5款の1の(6)

関係資料等