感染症や災害の発生等の非常時にやむを得ず学校に登校できない児童生徒の学習指導について(通知)

2文科初第1733号
令和3年2月19日

各都道府県教育委員会教育長 殿
各指定都市教育委員会教育長 殿
各都道府県知事 殿
附属学校を置く各国公立大学長 殿
小中高等学校を設置する学校設置会社を
所轄する構造改革特別区域法第12条
第1項の認定を受けた各地方公共団体の長 殿

文部科学省初等中等教育局長
瀧本 寛

 

感染症や災害の発生等の非常時にやむを得ず学校に登校できない児童生徒の学習指導について(通知)


 各設置者及び学校等におきまして、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応を含め、児童生徒の学習機会の確保・充実に御尽力いただいていることに対し、感謝申し上げます。
 さて、平成31年4月の「新しい時代の初等中等教育の在り方について」の諮問を受け、令和3年1月26日に中央教育審議会において「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」が取りまとめられました。同答申においては、「「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性」として「感染症や災害の発生等を乗り越えて学びを保障する」が示されるとともに、災害や感染症等の発生などの緊急時にも教育活動の継続を可能とするためにICTの活用が極めて大きな役割を果たしうるとされています。そして、感染症や自然災害等により、臨時休業等が行われるなど、児童生徒等がやむを得ず登校できない場合においても、児童生徒等の学びの保障を着実に実施するため、制度的な措置等について検討・整理することが必要であるとされています。
 また、令和2年12月22日に規制改革推進会議において取りまとめられた「当面の規制改革の実施事項」において、災害を含めた非常時に、対面授業に相当する効果が得られるとされる状況であれば、オンラインを活用した教育を実施した場合に、特例の授業として認めるとされたところです。
 これらを踏まえ、この度、小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)、中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。)全日制・定時制課程の高等学校、特別支援学校(幼稚部を除く。)において、非常時(本通知において、学校保健安全法第19条による出席停止や第20条による臨時休業の対象となっている感染症の予防のため又は学校教育法施行規則第63条に規定する非常変災その他急迫の事情によるものをいう。)に臨時休業又は出席停止等(非常変災等児童生徒又は保護者の責任に帰すことのできない事由で欠席した場合などで、校長が出席しなくてもよいと認めた場合を含む。)により、やむを得ず学校に登校できない児童生徒に対する学習指導について、下記のとおりまとめましたのでお知らせします。

 なお、「新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休業等に伴い学校に登校できない児童生徒の学習指導について」(令和2年4月10日付け2文科初第87号初等中等教育局長通知)については本通知をもって廃止し、今後は本通知によることとします。
 本件につきまして、各都道府県教育委員会におかれては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会に対し、各指定都市教育委員会におかれては所管の学校に対し、各都道府県知事及び小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長におかれては所轄の学校及び学校法人等に対し、附属学校を置く各国公立大学長におかれてはその管下の学校に対し、周知くださいますようお願いします。

1.平常時からの準備

 学校教育は教師と児童生徒との関わり合いや児童生徒同士の関わり合い等を通じて行われるものであること。学校においてはこのことを踏まえ、非常時に臨時休業又は出席停止等により児童生徒がやむを得ず学校に登校できない場合であっても、児童生徒の学習の機会を確保することができるよう、平常時から非常時を想定した備えをしておくことが重要であること。具体的には、例えば、学校外での学習を含む児童生徒の学習習慣の確立など学びに向かう力の育成を図ることや、各学校が持っている教育課程の編成・実施に関する裁量を明確にし、学校や地域の実態に応じて責任を持って柔軟に判断できるようにするなどカリキュラム・マネジメントの充実・強化を図ること、学校と児童生徒・保護者及び地域の関係者との関係の強化など学校・家庭・地域が一体となった学校運営を展開すること等が重要であること。また、非常時に登校できない児童生徒が発生した際の学習指導に関し、あらかじめ可能な対応策等について、地域や学校、児童生徒の実情等を踏まえて検討を行い、保護者等の理解を得ておくなどの取組も必要であること。

 学校教育活動の継続に当たっては、ICTの活用が大きな役割を果たしうるものであることから、平常時から積極的なICT環境の整備とその活用を推進するとともに、非常時を想定して、例えば端末や通信環境が整っていない場合には学校に整備された端末やルータ等の貸出し・持ち帰りを積極的に行えるようにしておくこと、自宅等からの接続を試行しておくことなど、自宅等においてもICTを活用して学習を継続できるよう環境を積極的に整えることが重要であること。

2.非常時にやむを得ず学校に登校できない児童生徒に対する学習指導

(1)基本的な考え方
 感染症や災害の発生等の非常時においても、当該感染症や災害等の状況に応じて、地域や学校、児童生徒の実情等を踏まえながら、まずは学校において可能な限り感染リスクを低減させ、あるいは安全を確保した上で、学校運営の方針について保護者の理解を得ながら、早期に教育活動を再開させ、児童生徒が登校して学習できるようにすることが重要であること。

 同時に、非常時に臨時休業又は出席停止等によりやむを得ず学校に登校できない児童生徒に対しては、学習に著しい遅れが生じることのないようにするとともに、規則正しい生活習慣を維持し、学校と児童生徒との関係を継続することが重要であること。このため、感染症や災害等の状況に応じて、地域や学校、児童生徒の実情等を踏まえながら、学校において必要な措置を講じること。特に非常時において、一定の期間児童生徒がやむを得ず学校に登校できない場合などには、例えば同時双方向型のウェブ会議システムを活用するなどして、指導計画等を踏まえた教師による学習指導と学習状況の把握を行うことが重要であること。

 学習指導を行う際には、感染症や災害等の状況に応じて、地域や学校、児童生徒の実情等を踏まえながら、主たる教材である教科書に基づいて指導するとともに、教科書と併用できる教材等(例えばデジタル又はアナログの教材、オンデマンド動画、テレビ放送等)を組み合わせたり、ICT環境を活用したりして指導することが重要であること。また、課題を配信する際には児童生徒の発達の段階や学習の状況を踏まえ、適切な内容や量となるよう留意すること。

 家庭の事情等により特に配慮を要する児童生徒に対しては、ICT環境の整備のため特段の配慮措置を講じたり、地域における学習支援の取組の利用を促したり、特別に登校させたりするなどの対応をとることが必要であること。

(2)自宅等における学習の取扱い
 非常時に臨時休業又は出席停止等によりやむを得ず学校に登校できない児童生徒に対して、指導計画等を踏まえながら、教師による学習指導を行う際には、日々その状況を適宜把握し、児童生徒の学習の改善や教師の指導改善に生かすことが重要であること。また、学習の状況や成果は学校における学習評価に反映することができること。

 非常時に臨時休業又は出席停止等によりやむを得ず学校に登校できない児童生徒に対して行われた教師による学習指導が以下の要件を満たしており、児童生徒の学習状況及び成果を確認した結果、十分な学習内容の定着が見られ、再度指導する必要がないものと校長が判断したときには、当該内容を再度学校における対面指導で取り扱わないこととすることができること。

<要件>
 【1】教科等の指導計画に照らして適切に位置付くものであること。
 【2】教師が児童生徒の学習状況及び成果を適切に把握することが可能であること。

 この場合、学級全体の学習状況及び成果に鑑み再度授業において取り扱わないこととする場合であって、一部の児童生徒への学習内容の定着が不十分である場合には、別途、個別に補習を実施するなどの必要な措置を講じること。

(3)指導要録上の取扱い

 非常時に臨時休業又は出席停止等によりやむを得ず学校に登校できない児童生徒については、従前から指導要録上の出欠の扱いにおいて、登校できなかった日数は「欠席日数」としては記録しないこととされているため留意すること。

 その上で、非常時に臨時休業又は出席停止等によりやむを得ず学校に登校できない児童生徒について、以下の方法によるオンラインを活用した学習の指導(オンラインを活用した特例の授業)を実施したと校長が認める場合には、指導要録の「指導に関する記録」の別記として、本通知の別紙1から別紙4までに示す記載することが適当な事項に留意しながら、非常時にオンラインを活用して実施した特例の授業等の記録について学年ごとに作成すること。

 【1】同時双方向型のオンラインを活用した学習指導
 【2】課題の配信・提出、教師による質疑応答及び児童生徒同士の意見交換をオンラインを活用して実施する学習指導(オンデマンド動画を併用して行う学習指導等を含む)

 なお、オンラインを活用した特例の授業は非常時のやむを得ない場合の対応であり、登校再開後の学校での学習への円滑な接続に資するよう行われることが重要であること。

 このことに関し、小学校及び中学校並びに特別支援学校小学部及び中学部に関する「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」(平成31年3月29日30文科初第1845号初等中等教育局長通知。以下「平成31年改善等通知」という。)別紙1及び別紙2に、それぞれ本通知の別紙1及び別紙2のとおり記載の事項を追加し、令和3年4月1日からこれによるところとすること。
 また、高等学校及び特別支援学校高等部に関する「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」(平成22年5月11日22文科初第1号初等中等教育局長通知。以下「平成22年改善等通知」という。)別紙3に本通知の別紙4のとおり記載の事項を追加し、令和3年4月1日からこれによるところとするとともに、平成31年改善等通知別紙3に本通知の別紙3のとおり記載の事項を追加し、令和4年4月1日以降に高等学校及び特別支援学校高等部に入学する生徒(編入学による場合を除く。)について、これによるところとすること。
 ただし、特段の事情がある場合はこの限りでないこと。また、設置者の判断により、令和3年4月1日より前から指導要録に記載する事項を本通知を踏まえて追加することは妨げられないこと。

3.登校再開後の対応並びに各学年の課程の修了及び卒業の認定等

 児童生徒が登校可能となった時点で、対面により学習状況を把握し、必要に応じて、教育課程内での補充のための授業や教育課程に位置付けない補習等の措置を講じること。その際、児童生徒や教職員の負担にも配慮すること。

 なお、非常時に臨時休業を行い、学校教育法施行規則に定める標準授業時数を踏まえて編成した教育課程の授業時数を下回った場合、そのことのみをもって学校教育法施行規則に反するものとはされないこと。また、高等学校及び特別支援学校高等部において、非常時に臨時休業を行い、学習指導要領に定める標準(35単位時間の授業を1単位として計算)を踏まえて編成した教育課程の単位時間数を下回った場合であっても、弾力的に対処し、単位の修得の認定を行うことができること。

 また、非常時にやむを得ず学校に登校できない状況にあった児童生徒について、各学年の課程の修了又は卒業の認定に当たっては、弾力的に対処し、進級・進学等に不利益が生じないよう配慮すること。


〔別紙1〕小学校及び特別支援学校小学部の指導要録に記載する事項等に追加する事項(平成31年改善等通知別紙1の改正)
〔別紙2〕中学校及び特別支援学校中学部の指導要録に記載する事項等に追加する事項(平成31年改善等通知別紙2の改正)
〔別紙3〕高等学校及び特別支援学校高等部の指導要録に記載する事項等に追加する事項(平成31年改善等通知別紙3の改正)
〔別紙4〕高等学校及び特別支援学校高等部の指導要録に記載する事項等に追加する事項(平成22年改善等通知別紙3の改正)
〔参考〕各設置者における指導要録の様式の設定に当たっての検討に資するため、別添として指導要録のオンラインを活用した特例の授業等の記録の「参考様式」を示している。(PDF:47KB)PDF

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室
電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2369)

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