学校教育法等の一部を改正する法律の公布について(通知)

30文科初第496号 
平成30年6月25日 

各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長
各都道府県知事                   
附属学校を置く各国立大学法人の長
附属学校を置く各公立大学法人の理事長 殿
小中高等学校を設置する学校設置会社を
所轄する構造改革特別区域法第12条第1項
の認定を受けた各地方公共団体の長

文部科学省初等中等教育局長
髙橋 道和


学校教育法等の一部を改正する法律の公布について(通知)


  この度,学校教育法等の一部を改正する法律(平成30年法律第39号)が平成30年6月1日付けで公布され,平成31年4月1日から施行されることとなります(別添)。
  今回の法律改正の趣旨,概要及び留意事項等は下記のとおりですので,十分に御了知ください。
  また,各都道府県教育委員会におかれては,所管の学校及び域内の市町村教育委員会に対して,各指定都市教育委員会におかれては,所管の学校に対して,各都道府県知事及び小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては,所轄の学校及び学校法人等に対して,附属学校を置く各国立大学法人及び各公立大学法人の長におかれては,その管下の学校に対して,今回の法令改正の趣旨等について周知をお願いします。
  なお,今回の法律改正に伴う関係政省令の改正等については,追ってこれを行い,別途通知する予定です。



第1 改正の趣旨

 現在,小学校,中学校,高等学校等においては,文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならないこととなっている。
 今回の法律改正は,情報通信技術の進展等に鑑み,児童生徒の教育の充実を図るため必要があると認められる教育課程の一部において,また,障害のある児童生徒等の学習上の困難の程度を低減させる必要があると認められるときは,教育課程の全部又は一部において,これらの教科用図書に代えてその内容を記録した電磁的記録である教材を使用することができることとする等の措置を講ずるものである。

第2 改正の概要

1.学校教育法等の一部改正
  (1)第34条第1項に規定する教科用図書の内容を文部科学大臣の定めるところにより記録した電磁的記録である教材がある場合には,当該規定にかかわらず,文部科学大臣の定めるところにより,児童生徒の教育の充実を図るため必要があると認められる教育課程の一部において,教科用図書に代えて当該教材を使用することができることとしたこと。(第34条第2項等関係)
  (2)(1)の場合において,障害のある児童生徒等の学習上の困難の程度を低減させる必要があると認められるときは,文部科学大臣の定めるところにより,教育課程の全部又は一部において,教科用図書に代えて(1)の教材を使用することができることとしたこと。(第34条第3項等関係)
  (3)(1)及び(2)を附則第9条第1項の規定により使用する教科用図書について準用することとした。(附則第9条第2項関係) 

2.文部科学省著作教科書の出版権等に関する法律の一部改正
    文部科学省著作教科書の出版権等に関する法律(昭和24年法律第149号)の規定は,文部科学省が著作の名義を有する1.(1)の教材にも準用することとしたこと。(第17条関係) 

3.著作権法の一部改正
  (1)教科用図書に掲載された著作物は,学校教育の目的上必要と認められる限度において,1.(1)の教材に掲載し,及びその使用に伴っていずれの方法によるかを問わず利用することができることとしたこと。(第33条の2第1項関係)
  (2)(1)により教科用図書に掲載された著作物を1.(1)の教材に掲載しようとする者は,あらかじめ当該教科用図書を発行する者にその旨を通知するとともに,(1)の趣旨等を考慮して文化庁長官が定める算出方法により算出した額の補償金を著作権者に支払わなければならないこととしたこと。(第33条の2第2項関係)
  (3)文化庁長官は,(2)の算出方法を定めたときは,これを官報で告示するものとしたこと。(第33条の2第3項関係)
 
4.施行期日及び経過措置等
  (1)この法律は,平成31年4月1日から施行することとしたこと。
  (2)この法律の施行に伴う所要の経過措置について規定することとしたこと。
  (3)その他関係法律について所要の改正を行うこととしたこと。

第3 留意事項

1.教科用図書(学校教育法第34条第1項に規定する教科用図書及び附則第9条第1項の規定により使用する教科書図書をいう。以下同じ。)の内容を文部科学大臣の定めるところにより記録した電磁的記録である教材(以下「デジタル教科書」という。)について
    教科用図書とデジタル教科書は同一の内容であること。このため,例えば,動画やアニメーション等の教科用図書の内容以外の内容についてはデジタル教科書に該当せず,これまでのデジタル教材と同様に,学校教育法第34条第4項に規定する教材(以下「補助教材」という。)として扱われることとなること。

2.教科用図書を基本とし,デジタル教科書を併用することについて
    デジタル教科書については,その使用がプラスとマイナスの両面の効果・影響を持ち得ることなどから,段階的にその導入を進めていくことが適当であると考えているため,今回の法律改正では,教科用図書を基本とし,デジタル教科書を併用できることとしたこと。
    これまでは,教科用図書の内容を記録したデジタル教材を使用する場合であっても,あくまで教科用図書を使用しながら補助教材として使用する必要があったが,今回の法律改正により,例えば,一部の単元を学習する際に,教科用図書に代えてデジタル教科書のみを使用して学習することも可能となること。
    このような併用制とすることから,これまでどおり,教科用図書について採択を行い,義務教育諸学校については,教科用図書が無償給付されること。また,デジタル教科書は無償給付されないこと。
    なお,教科用図書に代えてデジタル教科書を使用する場合には,採択された教科用図書と同一内容のデジタル教科書を使用する必要があること。

3.デジタル教科書の使用について
    デジタル教科書の使用については,各学校において,児童生徒の教育の充実を図る等のため,地域や学校及び児童生徒の実態等に応じ,校長の責任の下で判断することとなること。
    教育委員会は,所管の学校における教科書以外の教材の使用について,あらかじめ,教育委員会に届け出させ,又は教育委員会の承認を受けさせることとする定を設けるものとされており(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第33条第2項),デジタル教科書も当該教材に含まれること。
    上記を含め,デジタル教科書及び特にこれと一体となった動画やアニメーション等のデジタル教材については,平成27年3月4日文科初第1257号「学校における補助教材の適切な取扱いについて(通知)」も踏まえた適正な取扱いが求められることとなること。

4.障害のある児童生徒等への配慮について
    デジタル教科書の使用により,障害のある児童生徒等については,例えば,視覚障害や発達障害のある児童生徒等が,文字の拡大,色やフォントの変更,音声読み上げ等の機能を使用することにより,教科書の内容を理解しやすくなることや,肢体不自由の児童生徒が,目的のページに容易に移ることができるといった効果が期待されること。
    しかし,少なくとも現時点では,デジタル教科書のみによって様々な障害のある児童生徒等の全てのニーズを満たすことは難しく,今後も,音声教材等が重要な役割を果たすこととなること。
    このため,これらの活用を検討する際には,教科書関係事務主管部署のみではなく,特別支援教育関係事務主管部署とも連携を図り,障害のある児童生徒等のニーズを適切に把握することが重要であること。

5.その他
    今回の法律改正に伴う省令の改正等や本年末を目途に策定を予定しているデジタル教科書の効果的な活用方法の在り方等に関するガイドラインにおいて,デジタル教科書の使用態様や使用における留意事項等を示す予定であること。

お問合せ先

初等中等教育局教科書課

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