教科書記述の内容、教育現場での問題点、改善すべき点などを把握するため現職教員並びに保護者を対象としたアンケート調査を実施する。アンケートは、小学校算数の研究対象3社の教科書を対象として行う。
「A社」「B社」「C社」のいずれかの社の教科書を使用している現職の教員。「A社」「B社」「C社」のいずれかの社の教科書を使用している児童を持つ保護者。
調査結果を見るに際しては、以下の点に留意。
各都道府県教育委員会から、調査対象の教科書を採択している地域のうち最も人口数の多い市区町村の教育委員会へアンケートを送付。
市区町村教育委員会では、採択地区で最も児童数の多い小学校の校長へアンケートを送付。
アンケートの送付のあった小学校は校長から教員、保護者に配付。
ただし、本基準に合わない場合は、各都道府県教育委員会の裁量に任せた。
また、返信方法は、教員、保護者ともに記入者個人が返信用封筒にて委嘱先であるみずほ総合研究所宛に直接送付し回収した。
本調査は、以上のような調査対象選定の過程を経ており、無作為抽出とはならないことから、集計結果を全国平均の姿と言い切ることはできない。
しかし、以上のような調査対象選定プロセスを経ることで、教育への関心の高い保護者層、全国規模での現場の教員の意見を収集することができ、本調査目的である現場教員、保護者などの意見を参考とした教科書の改善・充実に向けた検討に資する結果を得ることができた。
回答者の勤務地は省略。無回答1件を除く451件の回答を得ることができた。
図表1-1 勤務年数
回答者の勤務年数は「21年以上(46.9パーセント)」が最も多く、次いで「16年~20年(18.4パーセント)」、「1年~5年(15.0パーセント)」の順になっている。
図表1-2 中学校の教員免許の保持
中学校の教員免許の保持は(複数回答)、「社会(17.0パーセント)」が最も多く、次いで「国語(12.2パーセント)」、「数学(10.6パーセント)」の順になっている。また、回答者のうち、35.6パーセントの教員が中学校の教員免許を保持していない結果になっている。
図表1-3 算数の指導の担当学年
現在算数の指導を担当している学年(複数回答)は、「5学年(19.9パーセント)」が最も多く、次いで「3学年(18.8パーセント)」、「6学年(18.1パーセント)」の順になっている。
図表1-4 教科書会社名
算数の指導に使用している教科書は、「A社(38.1パーセント)」が最も多く、次いで「B社(36.1パーセント)」、「C社(18.8パーセント)」の順になっている。
図表1-5 算数の指導の選好度
算数の指導が好きかどうかについては、「好き(56.7パーセント)」と答えた教員が最も多く、「まあ好き(37.6パーセント)」の教員と合わせると9割以上(94.3パーセント)の教員から指導が好きだとの回答があった。
図表1-6 算数の指導のしやすさ
算数が教科として指導しやすいかについては、「まあ指導しやすい(44.9パーセント)」が最も多く、「指導しやすい(38.9パーセント)」と合わせると、83.8パーセントの教員から指導しやすいとの回答があった。
図表1-7 指導にあたって重要と考えているもの
算数の指導にあたって最も重要と考えているものは、「基礎・基本の定着(72.0パーセント)」が最も多く、次いで「多様な考えを大事にする学習(17.5パーセント)」、「個に応じた指導(8.8パーセント)」の順になっている。
また、その他の回答の内容では、「問題解決の過程を味あわせ思考の仕方を身に付けさせること」、「数学の不思議さ、芸術的美しさ、面白さをみせること」等の回答が寄せられた。
図表1-8 授業での教科書の使用方法
授業での算数の教科書の使われ方は、「単元によってはプリントを組み合わせている(45.6パーセント)」が最も多い結果になっている。「常に教科書とプリントを組み合わせている(12.2パーセント)」と合わせると、全体の57.8パーセントの教員が何らかプリントを使用して授業をおこなっている。他方、「常に教科書を中心に授業を進める」という回答も39.4パーセントとなっている。
その他の回答の内容では、「単元によって教科書をあとで使う」等の回答が寄せられた。
副教材を利用する理由(Q9-1.自由回答形式)では、「練習量を増やしたいため」、「基礎・基本の定着のため」、「習熟度別に指導しやすいため」といった回答が多く寄せられた。
図表1-9 算数の授業形態
算数の授業形態(複数回答)は、「クラス単位の一斉指導(60.2パーセント)」が最も多く、次いで「クラス単位のT・T(チーム・ティーチング)(38.3パーセント)」、「クラス単位の習熟度別指導(15.0パーセント)」の順になっている。
また、その他の回答の内容では、「少人数指導(クラス単位)」の回答が大部分を占めた。
図表1-10 教科書全般の内容の工夫や配慮の度合いについて
教科書の内容の工夫や配慮の度合いを、「図形問題」、「文章問題」、「計算問題」の3つの観点で調査を行った。尚、「十分に工夫されている」を5点、「やや工夫されている」を4点、「どちらともいえない」を3点、「やや工夫が足りない」を2点、「工夫が足りない」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。「図形問題」、「文章問題」、「計算問題」を評点別に見たのは以下のとおり。
図形問題については、「説明や記述のわかりやすさ(3.92)」が最も高く、「児童の理解度に応じた指導が行えること(3.09)」が最も低い結果になった。
文章問題については、「説明や記述のわかりやすさ(3.71)」が最も高く、「児童の理解度に応じた指導が行えること(2.97)」が最も低い結果になっており、平均の3ポイントを下回っている。
計算問題については、「説明や記述のわかりやすさ(3.90)」が最も高く、「児童の理解度に応じた指導が行えること(3.19)」が最も低い結果になった。
図表1-11 イラスト・写真等の本文との関連付けについて
イラスト・写真等の使用が本文の内容と適切に関連付けられているかについては、「まあ関連付けられている(59.1パーセント)」が最も多い結果となっている。「適切に関連付けられている(34.3パーセント)」を合わせると、ほとんどの教員(93.4パーセント)は本文の内容と関連付けられていると回答している。
図表1-12 イラスト・写真等の分量について
イラスト・写真等の分量については、「適切な分量になっている(76.0パーセント)」が最も多い結果となっている。
図表1-13 色分け・強調の効果について
重用な学習上のポイントや学習内容を明確にするための色分け・強調が効果的に用いられているかについては、「まあ効果的に用いられている(69.9パーセント)」が最も多い結果となっている。「効果的に用いられている(18.8パーセント)」と合わせると、約9割(88.7パーセント)の教員が効果的に用いられていると回答している。
図表1-13-1 色分け・強調が効果的でない理由
色分け・強調が効果的に用いられていないと答えた教員の効果的に用いられていない理由については、「不必要なものが多い(44.7パーセント)」が最も多く、次いで「必要な箇所に色分け・強調がされていない(34.0パーセント)」の順になっている。
また、その他の回答の内容では、「作成者は必要と思われていると思うが、指導者や学習者にとってやや不親切に思われる」や「児童がそれをもとに考えようとする気がしないようなものが多い」等の回答が寄せられた。
図表1-14 教科書準拠の副教材や補助教材の使用有無
教科書に準拠した副教材や補助教材の使用については、約8割(79.7パーセント)の教員が使用している結果になっている。
図表1-14-1 教科書準拠の副教材や補助教材の使用理由
教科書に準拠した副教材や補助教材の使用理由については、「教科書の練習問題の分量が少ないから(80.6パーセント)」、「教科書の練習問題が多様性に欠けるから(7.2パーセント)」の順になっている。
また、その他の回答の内容では、「基礎・基本を定着させるため」、「繰り返し練習がしやすいから」といった回答に大別された。
図表1-15 教科書の書き込みや余白の活用
教科書の書き込みや余白を授業で活用しているかについては、「活用している(83.6パーセント)」が8割を超える結果になっている。
図表1-16 自習への配慮
自習しやすいように配慮された構成になっているかについては、「まあ自習に適している(35.6パーセント)」が最も多い結果になっている。「自習に適している(3.5パーセント)」と合わせると、約4割(39.1パーセント)の教員が自習に適していると感じる傾向にあるといえる。
他方、「あまり自習に適していない(32.5パーセント)」と「自習に適していない(6.9パーセント)」を合わせると約4割(39.4パーセント)の教員が自習に適していないと回答している。
図表1-17 教科書の内容の工夫や配慮の度合いについて
現在の教科書がどの程度工夫されているか4つの項目について調査を行った。
尚、「十分に工夫されている」を5点、「やや工夫されている」を4点、「どちらともいえない」を3点、「やや工夫が足りない」を2点、「工夫が足りない」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。
評点別に見ると「「式や計算」の意味が理解できるようにすること(3.80)」が最も高く、「単元の特性に応じた工夫(3.19)」が最も低い結果になった。
意見としては、単元ごとに児童に対しての理解のさせかた、指導方法などへの意見が出ている。全体的な意見に加え、学年別に整理すれば以下のとおり。
図表1-18 学習内容を理解させることについて
児童に学習内容を理解させる上で適しているかについては、「やや適している(52.6パーセント)」が最も多い結果になっている。「適している(22.8パーセント)」と合わせると、75.4パーセントの教員が適していると回答している。
図表1-19 教科書への満足度
算数の教科書全般に関する満足度は、「まあ満足している(55.7パーセント)」が最も多い結果になっている。「満足している(9.5パーセント)」と合わせると、65.2パーセントの教員が満足と回答している。
意見としては、練習問題、定着させる問題の少なさ、多様性のなさについての意見やレイアウト面へのもの、ヒント・吹き出しが理解を助けている面がある一方、弊害もあることへの意見、発展的問題など習熟度への対応などへの意見が出ている。代表的な意見などは以下のとおり。
意見としては、イラストや写真などが理解しやすく、見やすくなっている点や付録や作業などを通した学習活動などに対しての意見などが出ている。全体的な意見に加え、学年別に整理すれば以下のとおり。
意見としては、Q22の日頃感じている問題点、改善策と同様、練習問題、定着させる問題の少なさ、多様性のなさについての意見やレイアウト面へのもの、ヒント・吹き出しが理解を助けている面がある一方、弊害もあることへの意見、発展的問題など習熟度への対応などへの意見が出ている。代表的な意見などは以下のとおり。
回答者の居住地は省略。175件の回答を得ることができた。
図表2-1 子供の学年
回答した保護者の子供の学年(複数回答)は、「4年生(33.1パーセント)」が最も多く、次いで「6年生(28.0パーセント)」、「5年生(26.3パーセント)」の順になっている。
図表2-2 教科書会社名
回答した保護者の子供の使用している教科書は、「A社(40.6パーセント)」、「B社(40.6パーセント)」が同ポイントで、次いで「C社(17.1パーセント)」の順になっている。
図表2-3 教科書の適切度
教科書の適切度について、「適している」を5点、「まあ適している」を4点、「普通」を3点、「あまり適していない」を2点、「適していない」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。
評点別に見ると個別の教科書内容については、「児童の興味・関心を引く学習内容(3.96)」が最も高く、「自宅での自習(2.75)」が最も低い結果になった。
「練習問題等の量(2.92)」、「自宅での自習(2.75)」では平均の3ポイントを下回っている。
図表2-4 保護者の教科書に対する満足度
算数の教科書全般に関する満足度は、「まあ満足している(45.1パーセント)」が最も多い結果になっている。「満足している(10.9パーセント)」と合わせると、56.0パーセントの保護者が満足と回答している。
他方、「やや不満(18.3パーセント)」、「不満(4.0パーセント)」を合わせると、22.3パーセントの保護者が不満と回答している。
意見としては、練習問題等の分量に関する意見やイラストに関する意見が出ている。全体的な意見に加え、学年別に整理すれば以下のとおり。
図表2-5 児童の教科書に対する満足度
親から子供に聞く形態での児童の教科書に対する満足度を調査した。尚、「満足していると答えた」を5点、「まあ満足していると答えた」を4点、「どちらともいえないと答えた」を3点、「やや不満と答えた」を2点、「不満と答えた」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。
評点別に見ると、どの学年も平均の3ポイントを上回っているが、「1年生(4.25)」と「2年生(4.25)」が最も高く、「6年生(3.43)」が最も低い結果になった。
学年が上がるにつれて児童の教科書に対する満足度が低い結果になっている。
意見としては、イラストに関する意見と難易度についての意見が出ている。全体的な意見に加え、学年別に整理すれば以下のとおり。
-- 登録:平成21年以前 --