第1章 8.算数資料編(アンケート結果)

第1部 調査実施概要

1.アンケート調査の目的

 教科書記述の内容、教育現場での問題点、改善すべき点などを把握するため現職教員並びに保護者を対象としたアンケート調査を実施する。アンケートは、小学校算数の研究対象3社の教科書を対象として行う。

2.アンケートの対象

(1)対象(注1)

「A社」「B社」「C社」のいずれかの社の教科書を使用している現職の教員。「A社」「B社」「C社」のいずれかの社の教科書を使用している児童を持つ保護者。

  • (注1)「対象」の教科書のうち、使用していない(または使用数が少ない)教科書がある都道府県においては、使用している教科書についてのみアンケートに協力

(2)1都道府県あたりのアンケート依頼人数

教員21名
7名(小1~6年担当の教員各1名たす1名(任意学年)イコール7名)かける3社
保護者9名
3名(PTA3名(学校長の任意選定))かける3社

3.回収結果

教員
発送数:707件、有効回答数:452件、有効回答率:63.9パーセント
保護者
発送数:303件、有効回答数:175件、有効回答率:57.8パーセント

4.調査結果を見る際の留意事項

 調査結果を見るに際しては、以下の点に留意。

(1)調査対象の特徴(流れ)

 各都道府県教育委員会から、調査対象の教科書を採択している地域のうち最も人口数の多い市区町村の教育委員会へアンケートを送付。
 市区町村教育委員会では、採択地区で最も児童数の多い小学校の校長へアンケートを送付。
 アンケートの送付のあった小学校は校長から教員、保護者に配付。
 ただし、本基準に合わない場合は、各都道府県教育委員会の裁量に任せた。
 また、返信方法は、教員、保護者ともに記入者個人が返信用封筒にて委嘱先であるみずほ総合研究所宛に直接送付し回収した。

(2)サンプルの特徴

 本調査は、以上のような調査対象選定の過程を経ており、無作為抽出とはならないことから、集計結果を全国平均の姿と言い切ることはできない。
 しかし、以上のような調査対象選定プロセスを経ることで、教育への関心の高い保護者層、全国規模での現場の教員の意見を収集することができ、本調査目的である現場教員、保護者などの意見を参考とした教科書の改善・充実に向けた検討に資する結果を得ることができた。

第2部 回答結果(算数教員)

Q1.現在、勤務している学校の都道府県名と市区町村名をご記入ください。

 回答者の勤務地は省略。無回答1件を除く451件の回答を得ることができた。

Q2.小学校での勤務年数をお選びください(ひとつだけまる)。

図表1-1 勤務年数

 回答者の勤務年数は「21年以上(46.9パーセント)」が最も多く、次いで「16年~20年(18.4パーセント)」、「1年~5年(15.0パーセント)」の順になっている。

Q3.中学校の教員免許をお持ちですか(あてはまるもの全てにまる)。

図表1-2 中学校の教員免許の保持

 中学校の教員免許の保持は(複数回答)、「社会(17.0パーセント)」が最も多く、次いで「国語(12.2パーセント)」、「数学(10.6パーセント)」の順になっている。また、回答者のうち、35.6パーセントの教員が中学校の教員免許を保持していない結果になっている。

Q4.あなたが現在算数を担当している学年をお選びください(あてはまるもの全てにまる)。

図表1-3 算数の指導の担当学年

 現在算数の指導を担当している学年(複数回答)は、「5学年(19.9パーセント)」が最も多く、次いで「3学年(18.8パーセント)」、「6学年(18.1パーセント)」の順になっている。

Q5.現在、使用している算数の教科書の会社名をご記入ください。

図表1-4 教科書会社名

 算数の指導に使用している教科書は、「A社(38.1パーセント)」が最も多く、次いで「B社(36.1パーセント)」、「C社(18.8パーセント)」の順になっている。

  • (注)国語に比べ無回答比率が高いのは(国語1.1パーセント、算数7.1パーセント)、算数が選択式ではなく自由回答形式にしたため。

Q6.算数の指導は好きですか(ひとつだけまる)。

図表1-5 算数の指導の選好度

 算数の指導が好きかどうかについては、「好き(56.7パーセント)」と答えた教員が最も多く、「まあ好き(37.6パーセント)」の教員と合わせると9割以上(94.3パーセント)の教員から指導が好きだとの回答があった。

Q7.算数は指導しやすい教科だと感じますか(ひとつだけまる)。

図表1-6 算数の指導のしやすさ

 算数が教科として指導しやすいかについては、「まあ指導しやすい(44.9パーセント)」が最も多く、「指導しやすい(38.9パーセント)」と合わせると、83.8パーセントの教員から指導しやすいとの回答があった。

Q8.算数の指導にあたって、最も重要と考えている項目は何ですか(ひとつだけまる)。

図表1-7 指導にあたって重要と考えているもの

 算数の指導にあたって最も重要と考えているものは、「基礎・基本の定着(72.0パーセント)」が最も多く、次いで「多様な考えを大事にする学習(17.5パーセント)」、「個に応じた指導(8.8パーセント)」の順になっている。
 また、その他の回答の内容では、「問題解決の過程を味あわせ思考の仕方を身に付けさせること」、「数学の不思議さ、芸術的美しさ、面白さをみせること」等の回答が寄せられた。

Q9.日頃の授業で、算数の教科書をどのように使っていますか(ひとつだけまる)。

図表1-8 授業での教科書の使用方法

 授業での算数の教科書の使われ方は、「単元によってはプリントを組み合わせている(45.6パーセント)」が最も多い結果になっている。「常に教科書とプリントを組み合わせている(12.2パーセント)」と合わせると、全体の57.8パーセントの教員が何らかプリントを使用して授業をおこなっている。他方、「常に教科書を中心に授業を進める」という回答も39.4パーセントとなっている。
 その他の回答の内容では、「単元によって教科書をあとで使う」等の回答が寄せられた。

Q9-1.Q9で2,3(プリントを組み合わせて授業を進める)を選択されたかたは、その理由を教えてください。

 副教材を利用する理由(Q9-1.自由回答形式)では、「練習量を増やしたいため」、「基礎・基本の定着のため」、「習熟度別に指導しやすいため」といった回答が多く寄せられた。

Q10.あなたの受け持っている算数の授業の形態を教えてください(あてはまるもの全てにまる)。

図表1-9 算数の授業形態

 算数の授業形態(複数回答)は、「クラス単位の一斉指導(60.2パーセント)」が最も多く、次いで「クラス単位のT・T(チーム・ティーチング)(38.3パーセント)」、「クラス単位の習熟度別指導(15.0パーセント)」の順になっている。
 また、その他の回答の内容では、「少人数指導(クラス単位)」の回答が大部分を占めた。

Q11.現在担当している学年の算数の教科書全般について、工夫や配慮をどの程度感じますか。(1)~(15)の項目にそれぞれ1つずつまるをお付けください。

図表1-10 教科書全般の内容の工夫や配慮の度合いについて

 教科書の内容の工夫や配慮の度合いを、「図形問題」、「文章問題」、「計算問題」の3つの観点で調査を行った。尚、「十分に工夫されている」を5点、「やや工夫されている」を4点、「どちらともいえない」を3点、「やや工夫が足りない」を2点、「工夫が足りない」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。「図形問題」、「文章問題」、「計算問題」を評点別に見たのは以下のとおり。
 図形問題については、「説明や記述のわかりやすさ(3.92)」が最も高く、「児童の理解度に応じた指導が行えること(3.09)」が最も低い結果になった。
 文章問題については、「説明や記述のわかりやすさ(3.71)」が最も高く、「児童の理解度に応じた指導が行えること(2.97)」が最も低い結果になっており、平均の3ポイントを下回っている。
 計算問題については、「説明や記述のわかりやすさ(3.90)」が最も高く、「児童の理解度に応じた指導が行えること(3.19)」が最も低い結果になった。

Q12.イラスト・写真等の使用は本文と適切に関連付けられていると思いますか(ひとつだけまる)。

図表1-11 イラスト・写真等の本文との関連付けについて

 イラスト・写真等の使用が本文の内容と適切に関連付けられているかについては、「まあ関連付けられている(59.1パーセント)」が最も多い結果となっている。「適切に関連付けられている(34.3パーセント)」を合わせると、ほとんどの教員(93.4パーセント)は本文の内容と関連付けられていると回答している。

Q13.使用されているイラスト・写真等の分量は適切であると思いますか(ひとつだけまる)。

図表1-12 イラスト・写真等の分量について

 イラスト・写真等の分量については、「適切な分量になっている(76.0パーセント)」が最も多い結果となっている。

Q14.重要な学習上のポイントや学習内容を明確にするための色分け・強調・吹き出し(ヒント)が、効果的に用いられていると思いますか(ひとつだけまる)。

図表1-13 色分け・強調の効果について

 重用な学習上のポイントや学習内容を明確にするための色分け・強調が効果的に用いられているかについては、「まあ効果的に用いられている(69.9パーセント)」が最も多い結果となっている。「効果的に用いられている(18.8パーセント)」と合わせると、約9割(88.7パーセント)の教員が効果的に用いられていると回答している。

Q14-1.Q14で3,4,5(どちらでもない、あまり効果的でない、効果的ではない)を選択されたかたは、その理由は何ですか(ひとつだけまる)。

図表1-13-1 色分け・強調が効果的でない理由

 色分け・強調が効果的に用いられていないと答えた教員の効果的に用いられていない理由については、「不必要なものが多い(44.7パーセント)」が最も多く、次いで「必要な箇所に色分け・強調がされていない(34.0パーセント)」の順になっている。
 また、その他の回答の内容では、「作成者は必要と思われていると思うが、指導者や学習者にとってやや不親切に思われる」や「児童がそれをもとに考えようとする気がしないようなものが多い」等の回答が寄せられた。

Q15.現在、児童の理解を深める目的で、算数の教科書に準拠した副教材や補助教材を使用していますか(ひとつだけまる)。

図表1-14 教科書準拠の副教材や補助教材の使用有無

 教科書に準拠した副教材や補助教材の使用については、約8割(79.7パーセント)の教員が使用している結果になっている。

Q15-1.副教材や補助教材を使用している理由は何ですか(ひとつだけまる)。

図表1-14-1 教科書準拠の副教材や補助教材の使用理由

 教科書に準拠した副教材や補助教材の使用理由については、「教科書の練習問題の分量が少ないから(80.6パーセント)」、「教科書の練習問題が多様性に欠けるから(7.2パーセント)」の順になっている。
 また、その他の回答の内容では、「基礎・基本を定着させるため」、「繰り返し練習がしやすいから」といった回答に大別された。

Q16.算数の教科書の書き込みや余白を、授業で活用していますか(ひとつだけまる)。

図表1-15 教科書の書き込みや余白の活用

 教科書の書き込みや余白を授業で活用しているかについては、「活用している(83.6パーセント)」が8割を超える結果になっている。

Q17.教科書は、児童が自宅で自習(予習・復習)しやすいように、配慮された構成になっていると思いますか(ひとつだけまる)。

図表1-16 自習への配慮

 自習しやすいように配慮された構成になっているかについては、「まあ自習に適している(35.6パーセント)」が最も多い結果になっている。「自習に適している(3.5パーセント)」と合わせると、約4割(39.1パーセント)の教員が自習に適していると感じる傾向にあるといえる。
 他方、「あまり自習に適していない(32.5パーセント)」と「自習に適していない(6.9パーセント)」を合わせると約4割(39.4パーセント)の教員が自習に適していないと回答している。

Q18.以下の項目に関して、現在の算数の教科書はどの程度工夫されていると感じますか。(1)~(4)の項目にそれぞれ1つずつまるをお付けください。

図表1-17 教科書の内容の工夫や配慮の度合いについて

 現在の教科書がどの程度工夫されているか4つの項目について調査を行った。
 尚、「十分に工夫されている」を5点、「やや工夫されている」を4点、「どちらともいえない」を3点、「やや工夫が足りない」を2点、「工夫が足りない」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。
 評点別に見ると「「式や計算」の意味が理解できるようにすること(3.80)」が最も高く、「単元の特性に応じた工夫(3.19)」が最も低い結果になった。

Q19.算数の授業を進めていく上で、現行の教科書の記述・説明について、困ったところ・うまく行かなかったところがあればご記入ください。

 意見としては、単元ごとに児童に対しての理解のさせかた、指導方法などへの意見が出ている。全体的な意見に加え、学年別に整理すれば以下のとおり。

(全体)

  • 時間内に指導することが難しい点
  • 実生活の場面にあっていなく指導がしにくい点

(1)1年生

  • 「ひき算」では、求残から求補へと記述が急展開しておりとまどった、減々法・減加法の説明が不足している、5以下の数からはじめるべきとの指摘があった。
  • 図形に関連する指摘としては、児童に作業をさせるのに時間内にできない、児童がうまく作業できないといった指摘があった。
  • 大きい数については、高学年への指導をにらんで最初からブロック(タイル)で指導できるようにしてほしいといった指摘があった。

(2)2年生

  • たし算、ひき算については、いきなり四角を使った式が出てくるところに児童が戸惑ったとの指摘があった。
  • 大きい数の導入については、例示でみせている写真や図の扱っている題材(ハト)や配色、影などの装飾が見づらいとの指摘があった。
  • 図形に関しては、身の回りから三角形や四角形の形をしたものを探す時、角が丸い実物が多く、これらを三角形・四角形と言っていいものか困ったとした指摘が出ている。
  • 問題設定について、扱っている場面設定などが実生活、生活実態とあっていないことなどへの指摘があった。

(3)3年生

  • 時刻と時間については、最初の単元でやるには難しいことを含んでいることやデジタル時計が多いなかでの指導が難しいといった指摘があった。
  • 表・グラフについて実際の作業を通して学ばせようとの意図はあるが、交通量調べなどは実態的に困難との指摘があった。
  • 図形に関して、実際に切り貼りをして箱を作ることなどが想定されているが、児童の工作技能レベルが追いついていないため時間がかかったり、うまく作れないという実態についての指摘があった。
  • そろばんについて、配当時間数では足りないとの指摘があった。
  • かけ算の筆算では繰り上がりの仕方を教えることの難しさなどの指摘があった。

(4)4年生

  • 分配法則などの計算の決まりを教えること、定着の確認が難しいとの指摘があった。
  • 2ケタでわるわり算の筆算での表記の仕方の指導が難しいとの指摘があった。

(5)5年生

  • 円周と円の面積については、公式の導出と理解が難しいとの指摘があった。
  • 小数、小数のかけ算、小数のわり算での位取りや筆算の仕方など指導が難しいとの指摘があった。
  • 比例の考え方のなかで、もとにする量とくらべる量の考え方の指導、取り扱っている例題を理解させることが難しいとの指摘があった。

(6)6年生

  • 分数のかけ算、わり算の計算の仕方、わり算は逆数を乗じることの説明、計算の仕方を説明する図を理解させることが難しいとの指摘があった。
  • 「比」や「比例の性質」の箇所についての指導が難しいとの指摘があった。

Q20.全体を通して、現在の算数の教科書は児童に学習内容を理解させる上で、どの程度適していると考えますか(ひとつだけまる)。

図表1-18 学習内容を理解させることについて

 児童に学習内容を理解させる上で適しているかについては、「やや適している(52.6パーセント)」が最も多い結果になっている。「適している(22.8パーセント)」と合わせると、75.4パーセントの教員が適していると回答している。

Q21.あなたが指導をする上で、現在の算数の教科書にどの程度満足していますか(ひとつだけまる)。

図表1-19 教科書への満足度

 算数の教科書全般に関する満足度は、「まあ満足している(55.7パーセント)」が最も多い結果になっている。「満足している(9.5パーセント)」と合わせると、65.2パーセントの教員が満足と回答している。

Q22.今までお答えいただいたこと以外で、現在使用している算数の教科書について、日頃感じている問題点、改善策などに関する意見をご自由にお書きください。

 意見としては、練習問題、定着させる問題の少なさ、多様性のなさについての意見やレイアウト面へのもの、ヒント・吹き出しが理解を助けている面がある一方、弊害もあることへの意見、発展的問題など習熟度への対応などへの意見が出ている。代表的な意見などは以下のとおり。

(1)練習問題などの分量・多様性

  • 定着のための問題が少なく、ドリルやプリントが必須な状況
  • 練習問題の多様性が必要
  • 文章題の量、パターンが少ない
  • 理解させる例題と練習問題のパターンが対応せず習熟が図りにくい、単元途中での理解を確かめる問題が少ない

(2)レイアウト・体裁

  • カラーを多用することで、本当のポイントがわかり難くなっている
  • 書き込み可能な欄・スペースの増加
  • 用紙が鉛筆での書き込みには不適

(3)キャラクターの活用、ヒント

  • ヒントや考え方が書きすぎており教科書を使った指導が難しい
  • ヒントとなる図やイラストがあると理解しないままに回答するので考えなくなってしまう
  • ヒントの中には苦手な児童のため、今の学習のためのポイント(前学年の関連領域)が提示するものがあってもよい

(4)習熟度別への対応

  • 発展的な課題が少ない
  • 発展的内容は単元の終わりでなく教科書の後ろにまとめて示してほしい
  • 「多様な考え」の例示は良いが理解力の低い子供を混乱させる

(5)全般的事項・その他

  • 思考力を育てるには易しすぎるものが多すぎる
  • 学習の導入部分が今の教科書構成では不足
  • 前学年の復習をする問題・ページがほしい
  • 数学的な読解力が身につけられるような内容としてほしい

Q23.現在使用している算数の教科書について、うまく工夫されていると感じる点がございましたらご自由にお書きください。

 意見としては、イラストや写真などが理解しやすく、見やすくなっている点や付録や作業などを通した学習活動などに対しての意見などが出ている。全体的な意見に加え、学年別に整理すれば以下のとおり。

(全体)

  • 書き込みのしやすさやイラスト、ヒントが学習を助ける点など
  • 式と回答例の記述型から書き込み式となって教科書を開いての学習がしやすくなった点

(1)1年生

  • 興味をひくストーリー立て、ゲーム的要素が取り込まれている点
  • 問題解決までの計算理解のための図による説明箇所
  • 書き込み、色塗り箇所の適切になっている点
  • 発展部分が充実している点
  • 加法・減法で具体物とブロックの絵が組み合わせで表現されている点
  • 繰り下がりのあるひき算で減加法による繰り返し記述がされている点

(2)2年生

  • 操作活動を多く取り入れ、そこから合理的な方法や規則を発見的に学べるように構成されている点
  • 考え方が枠取りで記述されている点
  • 図形を簡単に切り取って扱える点
  • 「かけ算」の学習でのヒントとなる表記がされている点(例えば、「九九表をみて気づくこと」など)
  • 発展問題が設定されている点(例えば「ステップ」「ジャンプ」)
  • 書き込み箇所で工夫されている点(例えば、「アトムのチャレンジコーナー」、「九九をつくろう」、「さんすうたのしいな」など)

(3)3年生

  • 「算数的な活動」の導入が工夫され、授業の進め方がわかりやすく、動きのある授業が行える点
  • 数の概念理解に図・イラストがうまく活用している点
  • 理解と定着のページが分かれている点
  • たし算・ひき算への線分図を活用されわかりやすくなっている点
  • 計算問題における数値の設定
  • 学習の定着を確認できるようになっている点(例えば「たしかめ道場」)
  • 日常生活と結びつけるような問題設定がされている点
  • 多様な考え方が示されている点(例えば、「まるまるさんの考え」)
  • ゲーム感覚で学習できるようになっている点(例えば、「おもしろチャレンジ」)
  • 学習の定着に配慮されている点(例えば、「ふりカエル」)

(4)4年生

  • かけ算は単位当たり量かける分量、わり算は全体量わる分量の概念で統一的に導入されている点
  • 欠席した児童でも、教科書をみればおおよその理解ができる構成、内容となっている点
  • つまずいた時点でのふり返りページが記述されている点
  • 吹き出しのヒントの使い方が適切である点
  • 導入時におけるゲーム的な扱いにより意欲喚起させる点(例えば「面積陣取りゲーム」)
  • 巻末の発展問題が児童の興味・関心を抱かせるように工夫されている点
  • 個別に応じた指導に配慮されている点(例えば、「面白チャレンジコーナー」)
  • 子供たちの興味を深めるように配慮されている点(例えば、「ものしりコーナー」)

(5)5年生

  • 目次で単元の系統性がわかるようになっている点
  • 自力解決できる工夫が随所にあり、児童の主体的取組、復習で活用可能な点
  • 新しい問題の解き方がめくったところに配置されている
  • 図形学習のために切り抜いて使える巻末の教材や図形カードが配置されている点
  • 図形の作図の仕方がわかりやすく図で説明されている点
  • 分数のたし算・ひき算でのタイル図による説明がされている箇所
  • 割合の問題「もとにする量とくらべる量」の関係が図式化されて表現されているところ
  • 学習の定着を確認できるようになっている点(例えば「たしかめ道場」)
  • 発展問題が充実している点や興味・関心を高める工夫がされている点(例えば、「未来へのつばさ」、「おもしろ問題にチャレンジ!」ほか)

(6)6年生

  • 単元内で扱われる文章(例題)の内容につながりを持たせている点
  • 段階を踏んで問題を発展させている点
  • どの単元にも既習した問題が提示されている点
  • 分数のかけ算・わり算で線分図とます図がどのページにも掲載されている点
  • 理解不十分な児童にとっての思考のヒントとしての「えんぴつ君」が効果的に活用されている点
  • 習熟度別、発展的な学習に関する配慮がされている点(例えば「おもしろい問題にチャレンジ」)
  • 学習の定着を確認できるようになっている点(例えば「たしかめ道場」)

Q24.今後、算数の教科書記述の改善・充実に向けて望むことがございましたらご自由にお書きください。

 意見としては、Q22の日頃感じている問題点、改善策と同様、練習問題、定着させる問題の少なさ、多様性のなさについての意見やレイアウト面へのもの、ヒント・吹き出しが理解を助けている面がある一方、弊害もあることへの意見、発展的問題など習熟度への対応などへの意見が出ている。代表的な意見などは以下のとおり。

(1)練習問題などの分量・多様性

  • 定着させる観点、基礎・基本の充実の観点からの問題数の増加
  • 多様性ある練習問題の追加
  • 計算問題、文章題の追加
  • 繰り返し練習・練習問題は別冊、補助教材で扱い、教科書では文章題を多くする
  • ドリルを買わなくて済むように計算問題を増やす

(2)レイアウト・体裁

  • 基礎・基本の徹底のための十分な説明とポイントの明確化

(3)キャラクターの活用、ヒント

  • 説明の丁寧さが自由な思考の妨げになっていることについて配慮した活用
  • 自分で考える力を伸ばすためにイラストや図解を控えめにする

(4)習熟度別への対応

  • 算数が得意な児童に向けの発展的問題の追加
  • 苦手な児童にわかりやすい構成、自習できるような構成

(5)全般的事項・その他

  • 教科書会社ごとの単元構成・配列の統一(転出入児童などへの対策)
  • 内容が簡単すぎる

第3部 回答結果(算数保護者)

Q1.現在お子さまが通っている小学校の都道府県名と市区町村名と学年をご記入ください。

 回答者の居住地は省略。175件の回答を得ることができた。

図表2-1 子供の学年

 回答した保護者の子供の学年(複数回答)は、「4年生(33.1パーセント)」が最も多く、次いで「6年生(28.0パーセント)」、「5年生(26.3パーセント)」の順になっている。

Q2.現在お子さまが使用されている算数の教科書会名をご記入ください。

図表2-2 教科書会社名

 回答した保護者の子供の使用している教科書は、「A社(40.6パーセント)」、「B社(40.6パーセント)」が同ポイントで、次いで「C社(17.1パーセント)」の順になっている。

Q3.現在お子さまが使用されている算数の教科書について、以下の点はどの程度適していると思いますか。(1)~(6)の項目についてそれぞれ1つずつまるをお付けください。

図表2-3 教科書の適切度

 教科書の適切度について、「適している」を5点、「まあ適している」を4点、「普通」を3点、「あまり適していない」を2点、「適していない」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。
 評点別に見ると個別の教科書内容については、「児童の興味・関心を引く学習内容(3.96)」が最も高く、「自宅での自習(2.75)」が最も低い結果になった。
 「練習問題等の量(2.92)」、「自宅での自習(2.75)」では平均の3ポイントを下回っている。

Q4.現在お子さまが使用されている算数の教科書にどの程度満足していますか(ひとつだけまる)。

図表2-4 保護者の教科書に対する満足度

 算数の教科書全般に関する満足度は、「まあ満足している(45.1パーセント)」が最も多い結果になっている。「満足している(10.9パーセント)」と合わせると、56.0パーセントの保護者が満足と回答している。
 他方、「やや不満(18.3パーセント)」、「不満(4.0パーセント)」を合わせると、22.3パーセントの保護者が不満と回答している。

Q5.現在、お子さまが使用されている算数の教科書をご覧になって、どのようなことでも結構ですので、ご感想やご意見をお書きください。

 意見としては、練習問題等の分量に関する意見やイラストに関する意見が出ている。全体的な意見に加え、学年別に整理すれば以下のとおり。

(全体)

  • 練習問題等の分量が少ない点
  • イラストや吹き出しが興味を引く点では評価される一方、逆に説明が少なくわかりづらくなっている点

(1)1年生

  • 教科書に問題が少ないため教科書を開く機会がない、家で学習できる練習問題などが必要
  • イラスト・写真が豊富で児童の関心・興味を引き出すことができる、飽きない工夫がされている
  • 文字離れしている子供たちにはイラストや絵が多くて見やすいが、逆に文字離れを助長させるのではないか
  • 未就学児が読む絵本のような体裁にもみえるが、ここまで易しくする必要はあるのか
  • 大事なところ、強調したいところがわかりにくい

(2)2年生

  • カラフルで子供の興味を引きそうな内容である
  • 先生の力量で理解度に差がつくような教科書になっていないか
  • 復習のために教科書は活用せず、プリントを使っているので教科書は開いていない
  • 練習問題が少ないため、ドリルと併用せざるを得ない
  • 練習問題を増やしてほしい
  • 直接記入式のため復習に使えない
  • 反復・習熟の部分が少ない
  • イラストや写真、吹き出しが多すぎるという印象であまりにも親切過ぎる

(3)3年生

  • 子供が興味・関心を持ちやすいように構成されている
  • 図、イラストがあって理解しやすい内容となっている
  • カラフルで楽しみやすい内容だと思うが、学力がついているのか不安
  • イラストや絵が多く、説明が目立たない、わかりづらい、説明が不足している
  • 練習問題がもう少し多くてもよい
  • 書き込むスペースが少し小さい
  • 算数の面白さに気づかせるような設問、コーナーなどをもっと増やしてはどうか
  • 教科書が先生の代わりとなるくらい詳しい説明、例題を使った多用な角度からの説明がほしい

(4)4年生

  • ラストや写真が使ってあって理解しやすい
  • 基礎・基本を定着させるための繰り返し学習などの練習問題が少ない
  • 例題の増加、いろいろなパターンの問題、文章題を増加してほしい
  • 自分で教科書をみても理解しやすい内容(休んだときの対応)としてほしい
  • 教科書自体は見やすく導入もしやすいが、奥深さがない
  • 色を使いすぎていて重要ポイントがわかりにくくなっている
  • わかりやすい絵本のようであり、教科書らしい格式がない、絵本・カタログのような構成で子供の理解を目指すという視点のみで作られている印象を受ける
  • 過剰なまでのイラストは子供の数学的感覚を養うことを阻むのではないか
  • 難しくてもよい

(5)5年生

  • イラストや吹き出しにより学習内容が理解しやすく解説してある
  • 練習問題が少ない、単元ごとに増加してほしい
  • 問題が実際に身近に発生する内容で作られているなど算数を身近に感じさせる工夫がされている
  • 答えに行き着くまでの説明がない
  • 学年のレベルからみて水準が低い

(6)6年生

  • 子供の興味・関心を引き出す構成、レイアウトになっている
  • イラストが幼く子供向けの内容で6年生の教科書と思えない
  • イラストやヒントではなく文章での説明を多くすべきであり、イラスト・吹き出しが多くかえって見づらい
  • 上下を分けずに関連する単元をつなげて勉強できる単元構成(立体→体積、分数の加除→乗除)としてはどうか
  • 練習問題に比して説明文の量が少ない
  • 問題の量が少ない、定着させるための問題の量が少ない

Q6.お子さま自身は、現在使用されている算数の教科書にどの程度満足していますか(お子さまの現在の学年についてまる。複数いらっしゃる場合は、それぞれ該当する学年ごとにご回答ください)。※お子さま自身にお聞きください。

図表2-5 児童の教科書に対する満足度

 親から子供に聞く形態での児童の教科書に対する満足度を調査した。尚、「満足していると答えた」を5点、「まあ満足していると答えた」を4点、「どちらともいえないと答えた」を3点、「やや不満と答えた」を2点、「不満と答えた」を1点として、3点を平均点とした加重平均を行ったものを「評点」とした。
 評点別に見ると、どの学年も平均の3ポイントを上回っているが、「1年生(4.25)」と「2年生(4.25)」が最も高く、「6年生(3.43)」が最も低い結果になった。
 学年が上がるにつれて児童の教科書に対する満足度が低い結果になっている。

Q7.お子さまは、現在使用されている算数の教科書についてどのような感想をお持ちですか。

 意見としては、イラストに関する意見と難易度についての意見が出ている。全体的な意見に加え、学年別に整理すれば以下のとおり。

(全体)

  • イラストがあってわかりやすい、楽しい点
  • もう少し難しい問題があってもよい点

(1)1年生

  • 絵がいっぱいあって楽しい
  • 教科書を切るところがあって、変わっていると思った。
  • 簡単すぎる
  • もっと難しくていい

(2)2年生

  • 絵がいっぱい使ってあって楽しい
  • 少しわかりにくいところがある
  • 最後のページに付録の工作がついていてよかった

(3)3年生

  • イラストで説明があるので、わかりやすい
  • ヒントがいっぱいあってわかりやすい
  • もっといろいろな問題を増やして欲しい
  • もう少し難しい問題があったら、もっとよかった

(4)4年生

  • 絵が多くわかりやすい
  • 問題を解く時にヒントとかも書いてあるけれど、もう少しヒントがあったほうがわかりやすい
  • もっと応用した問題を載せて欲しい

(5)5年生

  • 難しいことから簡単なことまで差がある
  • 新しく習うことに関しての説明を、もっと良く載せてほしい
  • 理解しやすい説明がほしい

(6)6年生

  • 6年生なのだから絵や写真は少なくていい
  • もっと詳しい説明がほしい
  • もう少し難しい問題も加えて間違いやすいところ、注意するところなどの解説を入れてほしい
  • 発展問題をもっと多くしてほしい

-- 登録:平成21年以前 --