教科書の採択とは、学校で使用する教科書を決定することです。その権限は、公立学校で使用される教科書については、その学校を設置する市町村や都道府県の教育委員会にあります。また、国・私立学校で使用される教科書の決定の権限は校長にあります。
採択の方法は義務教育である小学校、中学校、中等教育学校の前期課程及び盲・聾・養護学校の小・中学部の教科書については「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」によって定められています。
高等学校の教科書の採択方法については法令上、具体的な定めはありませんが、各学校の実態に即して、公立の高等学校については、採択の権限を有する所管の教育委員会が採択を行っています。
(1)発行者は、検定を経た教科書で次年度に発行しようとするものの科目・使用学年・書名・著作者名等(書目)を文部大臣に届け出ます(<1>)。文部大臣はこの届出のあった書目を一覧表にまとめて教科書目録を作成します。この教科書目録は都道府県教育委員会を通じ各学校や市町村教育委員会に送付されます(<2>)。教科書は、この目録に登載されなければ採択されません。
また、文部省では、採択の際の調査・研究に資するため新規に編集された教科書の編集趣意について各発行者の記述を集録した教科書編集趣意書を作成し、採択関係者へ送付します。
(2)発行者は採択の参考に供すため、次年度に発行する教科書の見本を都道府県教育委員会や採択権者(市町村教育委員会、国・私立学校長)に送付します(<3>)。
(3)採択の権限は既に述べたように、市町村教育委員会や学校長にありますが、適切な採択を確保するため、都道府県教育委員会は、採択の対象となる教科書について調査・研究し、採択権者に指導、助言、援助することになっています。
この調査・研究を行うにあたり、都道府県教育委員会は専門的知識を有する学校の校長及び教員、教育委員会関係者、学識経験者から構成される教科用図書選定審議会を設置します。この審議会は専門的かつ膨大な調査・研究を行うため、通常、教科ごとに数人の教員を調査員として委嘱しています。
都道府県教育委員会は、この審議会の調査・研究結果をもとに選定資料を作成し、それを採択権者に送付することにより助言を行います(<4>、<5>)。
また、都道府県教育委員会は、学校の校長及び教員、採択関係者の調査・研究のため毎年、6月から7月にかけて一定期間、 教科書展示会 を行っています。この展示会は、各都道府県が学校の教員や住民の教科書研究のために設置している教科書の常設展示場(
教科書センター)等で行われています。なお、教科書センターは昭和31年以来設置されているもので現在、全国に767箇所あります(<6>)。
(4)採択権者は、都道府県の選定資料を参考にするほか、独自に調査・研究した上で1種目につき1種類の教科書を採択します(<7>)。
なお、義務教育諸学校用教科書については、通常、4年間同一の教科書を採択することとなっています(
表1
参照)。
市町村立の小・中学校で使用される教科書の採択の権限は市町村教育委員会にありますが、無償措置法により、採択に当たっては「市若しくは郡の区域又はこれらの区域をあわせた地域」を採択地区として設定し、地区内の市町村が共同して種目ごとに同一の教科書を採択することになっています。
採択地区は、その地域内で同一の教科書を使用することが適当と考えられる地域であり、都道府県教育委員会が自然的、経済的、文化的条件を考慮して決定することとなっています。
採択の時期は、義務教育諸学校用教科書については、使用年度の前年度の8月15日までに行わなければならないこととなっています。高等学校用教科書についても、8月中に行われています。