令和 5年度教職課程認定大学等実地視察について

中央教育審議会初等中等教育分科会
教員養成部会

1.実地視察の目的

 教職課程認定大学等実地視察の目的は、教職課程認定大学実地視察規程(平成13年7月19日教員養成部会決定)及び指定教員養成機関実地視察規程(平成24年2月15日教員養成部会決定)に基づき、教員の免許状授与の所要資格を得させるための大学の課程の認定を受けた大学及び教員養成機関としての指定を受けた機関について、認定及び指定時の課程の水準が維持され、その向上に努めているかどうかを確認する。

2.概要

(1)総括的事項

○ 令和5年度は、大学及び教員養成機関の計10大学等に対して、実地視察を行った。

○ 全体として、教職課程の質を向上させるための積極的な取組を行っていることが確認できたものの、教職課程認定基準等の観点から教育課程及び教員組織等について是正すべき点のある大学等も見られた。
 

(2)個別的事項(個々の具体的評価、指摘・指導等)

1 教職課程の実施・指導体制(全学組織等)

○ 概ねどの大学等も教員養成に対する理念・構想を具現化するための全学組織、教育課程、教員組織等が整備されていることが確認できたが、一部の大学等では理念等が明確に示されていなかったため、全学的な組織、教育課程や教員組織の充実を一層努めるよう求めた。

 

2 教職課程、履修方法及びシラバスの状況

○ 多くの大学等で授業科目について、教職課程コアカリキュラムに照らして、取り扱う内容が不十分であるものや、科目名称と内容が一致していないものが散見されたため、適切な授業内容となるよう科目名称やシラバスの見直しを求めるとともに、シラバス等の内容を確認し、質保証を担保する体制が構築できるよう求めた。
 

3 教育実習の取組状況

〇 全ての大学等で、学生に対して教育実習指導が実施されていることが確認できた。

〇 大学等によって、以下のような教育実習の取組がなされていた。
  ・インターンシップ等による教育実習以前の学校現場での実習
  ・1年生からの体系的な実習に加え、海外や小規模の学校・複式学級を現場とした教育実習などの特色ある教育実習
  ・事前指導における指導案の作成・模擬授業の丁寧な指導
 

4 学生への教職指導の取組状況及び体制

○ 概ねどの大学等でも教員を目指す学生のための組織で教職指導が行われていた。

〇 大学等によって、以下のような教職指導に向けた適切な取組がなされていた。
  ・アカデミックアドバイザー制度や履修カルテの電子化等により、学生の履修状況等に応じた細かい履修指導が行われていた。
  ・教職科目において、教員として活躍する卒業生が、授業での実務内容に即したプレゼンテーションを行う等、学生の教職志向性を高め維持する取組が見られた。

 

5 教育委員会等の関係機関との連携・協働状況(学校支援ボランティア活動等の活動状況)

○ 概ねどの大学等でも教育実習等を通じて、近隣の教育委員会と積極的に交流していることが確認できた。
 

6 施設・設備(図書を含む。)の状況

〇 教職関連に関する図書について、一部の校種において関連図書が充分でない、蔵書が古く学習環境の整備がなされていない大学が見られたため、図書の充実を求めた。

〇 一方で以下のように施設・設備が充実している大学等もあった。
  ・ピア・ラーニングスペースなど学生達が自主的に学びに向かうスペース、図書、ICT機器、通信課程の専用のスタジオ等、様々な環境や施設・設備が整備されていた。
  ・アクティブラーニングの理念が全学的に浸透していることから、それを実現できるようなスペースが学内の至るところに数多く存在しており、学習環境が充実していた。
 

7 その他特記事項

○ 複数の大学において、母校実習が前提となっている大学が見られた。教育実習は遠隔地の学校や学生の母校における実習ではなく、可能な限り大学が所在する近隣の学校において実習校を確保することが望ましい。なお、やむを得ず遠隔地の学校や学生の母校における実習を行う場合においても、実習先の学校と連携し、大学が教育実習に関わる体制を構築するとともに、学生への適切な指導、公正な評価となるよう努めていただきたい。
 

3.まとめ

〇 各課程認定大学等においては、体系的に教育課程を編成し、教員免許状を取得しようとする者に対する教職指導の実施等を通じて、教職を志す学生が体系的・計画的に教職課程を履修することができるような取組が求められる。
 
〇 そのため、教職課程の運営や教職指導について、全学的に責任を持って行う体制の構築が不可欠であり、令和3年の教育職員免許法施行規則の改正により、複数の認定課程を有する大学はそれぞれの認定課程の円滑かつ効果的な実施を通じて、大学が定める教員の養成の目標を達成することができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えることとされた。これを踏まえ各大学等では全学的な連携や体制の更なる充実を進めて行くことが重要である。
 
○ さらに、施行規則の改正においては、各大学は、認定課程の教育課程、教員組織、教育実習並びに施設及び設備の状況について自ら点検・評価を行い、その結果を公表することとされている。また、令和4年12月に取りまとめられた中央教育審議会答申(「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~)においても、教職課程の不断の見直しについて言及されていることからも、本部会での実地視察における指摘事項等も十分に踏まえた自己点検等を実施し、引き続き、教職課程の水準の維持・向上に努めることを期待する。
 

令和 5年度実地視察大学一覧

<教職課程認定大学>

令和 5年10月10日

清和大学 

※2

令和 5年11月10日

法政大学

※2

令和 5年11月22日

日本工業大学

※2

令和 5年11月30日

福岡工業大学

※1

令和 5年12月 6日

太成学院大学

※1

令和 5年12月13日

高知工科大学

※1

令和 5年12月18日

岩手大学

※2

令和 6年 1月11日

静岡福祉大学

※2

令和 6年 1月17日

早稲田大学

※1

※1 実地による視察
※2 オンラインによる視察
(計9大学)

<指定教員養成機関>

令和 5年12月 7日

大阪教育福祉専門学校 

視察は実地により行った。
(計1機関)

(総計10大学等)

令和 5年度教職課程認定大学等実地視察報告書一覧

お問合せ先

総合教育政策局教育人材政策課

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(総合教育政策局教育人材政策課)