茨城県 茨城県立IT未来高等学校(R4年度は県立竜ヶ崎南高等学校、竜ヶ崎第二高等学校兼務) 小林秀明 先生

茨城県立IT未来高等学校(R4年度は県立竜ヶ崎南高等学校、竜ヶ崎第二高等学校兼務) 勤務
小林秀明 先生 高等学校教諭特別免許状 「情報」

プロフィール

埼玉大学文部技官、文部科学省メディア教育開発センター共同研究員、早稲田大学人間総合研究センター招聘研究員、都立聾学校・盲学校非常勤講師、大東文化大学文学部教育学科非常勤講師、その他多大学非常勤講師歴あり。ヒューマンコンピュータインタラクション、視覚情報処理、ICT活用、情報教育、教育用デジタルコンテンツ開発の研究に従事。数学、理科、工業の教員免許状所持。VR技術者。博士(人間科学)

現職における役職や役割

教科:情報科
科目:メディアとサービス、コンテンツ制作と発信
校務分掌:教務部、保健厚生部、渉外担当
部活動:情報デザイン部 主顧問
その他:デジタル・シティズンシップ教育推進事業 本校担当

特別免許状の授与を受けて勤務されている先生より

Q:教師を目指したきっかけや理由

A:幼少期から父が高校教員として働く姿を見て育ち、教育は常に身近な存在でした。その影響もあり、教職は自然と将来の選択肢に含まれていたと思います。大学では理工学を専攻しましたが、一度は別の道を歩むことになりました。国家公務員として働く中で、教育の持つ力を改めて感じ、再び教職を志す決意を固めました。大学院に進学しながら挑戦を続け、様々な困難を乗り越えて、特別な認定を受けて教員としての道を切り開きました。今ではその経験を活かし、生徒たちの成長に寄り添いながら、教育の現場で力を尽くしています。

Q:実際に教師として勤務してみての感想・やりがいや、採用前のイメージとの変化

A:教育現場の変化のスピードを強く実感しており、特にICT教育や情報教育の重要性が高まっていると感じます。こうした分野で自分の知識を活かし、生徒に新しい学びの機会を提供できることに大きなやりがいを感じています。デジタル化やDXの推進は、生徒たちの未来に欠かせないものであり、その実現に貢献できることは非常に意義深いです。現場には改善の余地も残されていますが、変化のスピードに対応しながら、生徒の成長を支える日々に大きな喜びを感じています。
特にデジタル化に関しては、生徒がよりスムーズに情報を得られる環境づくりに取り組みました。初任校では、時間割変更はホワイトボードに手書きされ、生徒がそれを見てクラスメートに伝えるというアナログな方法が主流でした。しかし、私はデジタル時間割の仕組みを導入し、教員が手元で時間割変更を簡単に行え、それが即座にインターネット上で確認できるようにしました。このシステムにより、生徒は欠席した場合でも翌日の時間割変更をスマートフォンなどで確認でき、スムーズに対応できるようになりました。こうした取り組みを通じて、教育現場のデジタル化が生徒の学習環境を大きく改善することを実感しています。
また、渉外部長としてPTA活動に積極的に関わり(事例1)、保護者とのコミュニケーションや協力を通じて、学校運営に対する理解を深める貴重な経験をしています。保護者との共同で行う行事や活動を通じて、地域とのつながりや生徒の支援体制を強化できることは、教育の現場において重要な役割を果たしていると感じています。

Q:前職の経験が生きていると感じるところ

A:これからの教育現場では、課題研究や探究型学習が高校生に求められ、大学入試制度も大きく変わっていく中で、それに対応できる力が不可欠です。前職で培ったプロジェクト遂行の経験や、研究に基づく問題解決力は、これからの教育においても重要なスキルです。特にICT教育や情報教育の知識を活かし、生徒が自ら考え、データを分析し、論理的にまとめる力を育成することに強い意義を感じています。(事例2)
採用時はちょうどコロナ禍の最中で、オンライン授業の実施が必要な状況でした。私は前職でインターネットを利用したオンライン講義を経験していたため、率先して高等学校でもオンライン授業の準備を行い、実際に授業を実践して同僚の先生方に共有しました。また、大学の学芸員課程を担当し、動物の骨格を3Dスキャンして3Dプリンタで博物館展示に利用したり、拡張現実(AR)環境を構築して複数人が協調しながら学習できる展示コンテンツを開発したりしました。現在の勤務校では、生徒が作成した3Dモデルを3Dプリントしたり、CG制作を行う授業を取り入れたりし、生徒の探究心や創造力を育てています。
また、高校生が小学生のプログラミング授業を支援するプロジェクト(事例3)では、大学の教育学科の学生が小学生用のプログラム授業計画を作成し、その計画を大学生がオンラインで高校生に説明しました。高校生はその内容を元に、小学生に対して授業支援を行うという高大連携プロジェクトを成功させました。こうした高大連携の取り組みは、生徒の指導力を高めるだけでなく、教育の現場に多様な学びを取り入れる貴重な機会となっています。
さらに、本校では新設校ならではの特徴を活かし、中学生向けの体験授業(事例4)が多く実施されています。中学校では技術の授業でコンピュータに触れる機会はあるものの、ITに特化した授業は少なく、本校の授業体験はIT科ならではの深い内容が特徴です。こうした環境の中で、生徒が次世代の学びに適応できるよう、変化に柔軟に対応しながらサポートできることを日々実感しています。

Q:これから特別免許状の授与を受け、教師として勤務することを目指している方々への助言やメッセージ

A:まずは、ご自身の専門分野やこれまでの経験に自信を持ってください。それらは現場で必ず活かせる大きな武器となります。教育現場は常に変化しており、特にICT教育や課題研究といった新しい学びの形が今後ますます重要になります。変化に対応しながら、生徒の成長に寄り添うことこそ、教師の大きな使命です。困難に直面することもあるかもしれませんが、その1つひとつが成長の機会です。柔軟な姿勢と常に学び続ける意欲を持ち、未来の教育に貢献する存在として、力を尽くしてください。

特別免許状を授与された先生の授業を受けた生徒より

生徒A

Q:現在の学年、または御職業

A:高校2年次(現生徒)

Q:その先生との当時のかかわり(クラス担任、教科担任、生徒(進路)指導、部活動顧問など)

A:クラス副担任、教科担任(情報科)、部活動顧問(情報デザイン部、事例5)

Q:その先生に対して持っているイメージや、「他の先生とここが違う」と感じたことなど

A:先生は、豊富な大学進学に関する知識や情報デザイン分野の専門知識をお持ちで、進路について相談する際も非常に親身になって対応してくださいます。また、授業では工夫を凝らした説明やわかりやすい指導を通して、毎日新しい学びを得ることができ、生徒一人ひとりの成長をサポートしてくださっています。

Q:その先生についての印象的なエピソードや印象に残った言葉など

A:私は大学進学を目指していますが、何から始めればいいのか全くわかりませんでした。そんな時、先生は大学の情報や進学に向けたコツ、さらには実績作りのための大会情報まで、非常に丁寧に教えてくださいました。先生は常に親身に対応してくださり、進路に関してもとても相談しやすい存在です。

生徒B

Q:現在の学年、または御職業

A:大学3年生(元生徒)

Q:その先生との当時のかかわり(クラス担任、教科担任、生徒(進路)指導、部活動顧問など)

A:進路指導

Q:その先生に対して持っているイメージや、「他の先生とここが違う」と感じたことなど

A:高校教員としての経験だけでなく、大学の現場にいたからこそ得られた知識を豊富にお持ちで、他の先生方とは異なる視点からのアドバイスをいただけたことが印象に残っています。特に、どのように自分の強みを相手に効果的にアピールし、希望する進路に進むための具体的なアドバイスをしてくださり、非常に助かりました。先生のご指導のおかげで、事前課題や準備を万全に整え、無事に希望の大学に合格することができました。

Q:その先生についての印象的なエピソードや印象に残った言葉など

A:自分の出身高校は特に理系科目に特化していたわけではありませんでしたが、先生が理系科目の知識や指導経験を持っていたおかげで、不安を抱えずに理系大学進学の準備を進めることができました。先生は元研究者としての視点を活かし、進路に関するアドバイスを丁寧に行ってくださり、安心して進路指導を受けることができました。このように、幅広い経験を持つ先生方が増えることで、学校教育により多様な視点が取り入れられ、学びの選択肢が広がると思います。

特別免許状を授与された先生の勤務先の先生より

Q:貴校における教育の特徴やアピールポイントなど

A:IT人財の育成を教育目標とする全国で唯一の情報に関する学科専科高校です。恵まれたICT環境を活用し、生徒たちはデジタルものづくりに取り組んでいます。

Q:特別免許状を授与された教師の採用に当たって期待したこと

A:高い専門性を持つ人材の確保です。また、その方のネットワークを活かし、本校の教育活動を理解し、協力してくれる方々との繋がりを広げることも期待しています。

Q:特別免許状を授与された教師を採用することで変化したことや得られた成果など

A:農業、工業、商業などの専門高校では、従来から民間企業等を経験された方が採用され、活躍されてきました。しかし、彼らは教員免許の所持が条件でしたので、その対象を広げることができ、実際に採用できたことは成果だと思います。

Q:今後、特別免許状制度や特別免許状を授与された教師に期待すること

A:今の時代ですから、一時的に教育現場で活躍し、またデジタルものづくりの最前線に戻るような動きもあって良いと思います。1つの選択肢として、学校教育を考えて欲しいです。

都道府県教育委員会の方より

Q:貴教育委員会において、特別免許状の授与に当たっての特徴や力を入れているところなど

A:社会人特別選考およびスペシャリストを対象とした特別選考の中で、高度な専門的知識又は技能を有する人物に特別免許状を授与している。

・社会人特別選考:全教科・科目対象

・スペシャリスト特別選考:ネイティブ英語教員、英語で他教科の指導が可能な教員、情報処理技術者資格を有する教員等を対象

Q:特別免許状の授与及び採用により変化したことや得られた成果など

A:全国初のIT専科高校に情報デザイン分野の専門知識を有する特別免許授与者を配置したことで、生徒が求める高いレベルの指導にも対応できている。

Q:今後、特別免許状制度や特別免許状を授与された教師に期待すること

A:優れた知識経験等を生かして、多様化する学校教育や生徒のニーズに対応すること。