まとめ-学校運営の改善に向けた教員等の研修への本報告書の活用方法-

 以上、自律的な学校経営と開かれた学校づくりを推進し、一定の成果をおさめている22校の学校運営の実践が紹介された。22校は、同じ公立学校とはいえ、それぞれのおかれた環境は当然ながら異なる。各事例校は、それぞれの所与の内外環境を把握し、分析して、その特性に応じたさまざまな創意工夫を凝らした学校運営を展開している。こうした創意工夫から、学校改善や新しい学校づくりに際しての、学校運営にかかわる有用な発想や視点、さらには手法を得ることができるであろう。
 また、それぞれの環境条件にあわせて特色ある取り組みを発案し、協力して実行している各事例校の校長、教頭、主任等の教職員の姿勢・態度や行動からは、効果的な学校運営をつくり、機動させるのに必要な学校経営者のリーダーシップや資質力量を、また事例によってはそれらを習得する方法を看取することもできるであろう。

 本報告書の22校の学校運営の実践事例を、自律的な学校経営と開かれた学校をつくり、有効に機能させるための教材や資料として、教育委員会の主催する校長・教頭や中堅層を対象とした研修会、校長会や教頭会の提供する研究会・研修会や、校内研修などにおいて、是非活用していただきたい。
 本報告書では、22校の実践事例は、1教職員間の協働づくりや校内組織の活性化に力点をおいた学校づくり(3校)、2教育課程開発・授業づくりや生徒による授業評価に力点をおいた学校づくり(5校)、3学校組織マネジメントの導入や学校自己評価システムの構築に力点をおいた学校づくり(6校)、4開かれた学校づくりや保護者・地域連携づくりに力点をおいた学校づくり(8校)に分けて提示された。学校運営に関する研修会等を企画する際に、この分類のいずれかをテーマに設定し、それに属する事例を集中的に扱えば、焦点化されてより効果的であろう。事例校は多様な取り組みを幅広く行っており、共通なものも少なくない。したがって、いずれを取り上げても、多くの有用な取り組みを知ることもできる。
 学校名、校長名、所在の地域や市町村名など事例校を特定できるものは、極力、匿名で表された。それは、各学校の運営実践の表面的な事象のみに留まらずその内実を記述することと、この種の事例紹介によくみられる効果・成果の提示で終わるのではなく、問題点や課題を明らかにすることを意図していたからであった。そのために、むしろ、教材としては、より有用なものになったと思われる。

 最後になってしまったが、本調査研究の意義を理解してくださり、きわめて多忙であるにもかかわらず、我々の訪問調査を快く受け入れてくださった各事例校の校長先生、教頭先生、教務主任等の教職員の方々に、深く感謝申し上げたい。皆様の優れた先進的取り組みが、本報告書を通じて他の学校の参考にされることにより、わが国の公立学校運営の改善に生かされることを切に願っている。また、本報告書の整理・分析が各事例校の学校運営のさらなる改善に繋がるとすれば、それは望外の喜びといわなければならない。

平成17年3月2日
学校運営改善調査研究会
代表 加治佐 哲也



 

-- 登録:平成21年以前 --