事例校の特色の概要

●教職員間の協働づくりや校内組織の活性化に力点をおいた学校づくり
校名 サブタイトル 要旨
1章 神奈川県A小学校(PDF:123KB) 「困難」をもとにした活発なコミュニケーションと臨機応変な協働 事例校では、児童の教育環境上の困難が大きいだけに、遭遇する問題を教職員が一人で抱えておけず、状況を常に全体に伝えて理解と共感を促すコミュニケーション・チャンネルが形成されていること、また多様に生じる事態に柔軟に対応できるように学年や教科等の組織に必ずしも縛られない、緩やかな教職員の分掌と協働を方向づける管理職がいること、この二点において有効な学校運営を実現している事例である。
2章 大阪府A小学校(PDF:87KB) 学校の自律的政策決定に向けた運営組織の確立と教職員の力量向上 A小学校は,従前のナベブタ型組織を見直し,学校の自律的政策決定が可能となるよう組織的工夫を重ねてきた。例えば,将来構想を視野に入れて,課題検討や企画立案を担う機動性の高い運営推進組織を独自に設置している。これらの組織運営の中で,様々な発想や経験を有する教職員各自に対して,学校運営参画意識を醸成し,校長の経営ビジョンに沿って主体的に考え,行動できる力量の形成を促している。
3章 和歌山県A高等学校(PDF:367KB) 校内組織の活性化と開かれた高大連携を通じた学校運営改善・資質能力向上 A高校では校長の対話的リーダーシップの下で,高大連携等を契機として教職員が組織的な学校改善へ取り組みつつある。高大連携では,生徒に深い学習機会を提供するだけでなく,地域住民と共に学ぶ場を設ける地域公開型が目指されている。「校長が交代しても持続する自己改善のしくみ」を目指し,既存の校内組織を教職員の自律性を重視した「ネットワーク型」へと意識的に再編・活性化している点が同校の大きな特色である。

●教育課程開発、授業づくりや生徒による授業評価に力点をおいた学校づくり
校名 サブタイトル 要旨
4章 三重県B小学校(PDF:88KB) PDCAサイクルに基づく学校組織開発 事例校では、まず「学校評価」に取り組み、学校にとって必要な「次の」課題を析出した。それは、「確かな学力づくり」であり、「授業研究」を中核に据えた学校運営に着手することとなった。しかし、その実践は単なる「授業改善」にとどまらず、学校の「組織」のありようにも変更をもたらしている。校長のきめ細かな「配慮」が生かされた「学校組織開発」事例である。
5章 和歌山県A小中学校(PDF:266KB) 山村留学と小中一貫教育による小規模校の活性化 和歌山県北部の山間部にあるK町立A小学校とA中学校は(以下A小、A中)は生徒数それぞれ21名、19名の小規模校である。過疎地域の例に漏れず児童数の減少は深刻な問題であり、学校の存続・活性化は地域にとって、その浮沈をかけた一大関心事である。こうした危機感から昭和62年度から山村留学の受け入れを始め、平成16年度は中学生19名の内6名が山村留学生でしめられている。さらに平成17年度から小中一貫教育をスタートさせるなど、小規模校の特色を生かしたユニークな学校改革の事例である。
6章 和歌山県B中学校(PDF:219KB) 生徒の授業評価を生かし、全教員で授業改善に取り組む学校改革 B中学校は、過去に生徒が荒れたことがあったが、今は落ち着いた良い学校となった。この学校の特色ある取り組みは、生徒会活動の活性化、体験学習の重視、生徒からの授業評価を取り入れた校内の授業研究、異種校・異学年との交流活動、生徒との対話活動、小学校の保護者への「学校だより」の配付である。この改革を成功に導いた要因として、1校長の学校改革の理念、2問題の生徒への厳しい対処、3授業規律の徹底、4国際交流、5教育委員会からの支援、6核となる教員の存在が考えられた。
7章 鳥取県A中学校(PDF:941KB) 総合学習づくりと研究活動を核とした学校づくり 平成11年4月に着任した前校長のリーダーシップのもとで、総合学習を中心とした教育課程開発と研究活動を通じての教職員の育成を核として、保護者・地域との関係づくり、学校自己評価システムの構築などに精力的に取り組み、保護者・地域の支持・支援を受けて、生徒の成長が図られ、ポジティブな教師文化が形成されている中学校である。前校長の転出後も、取り組みと成果は現校長のリーダーシップのもとで継続・発展している。
8章 大阪府A高等学校(PDF:375KB) 特色ある教育課程づくりによって学力と進学を保障する普通科単位制高校 多彩な選択科目を用意した教育課程を開発し、生徒指導にも力を入れることによって、生徒に学力と大学進学を保障することを目的に掲げる普通科の単位制高校である。明確な学校ビジョンを提示する校長の率先垂範のリーダーシップのもとで、「室長制」(主幹制)を組み込んだ機動的な運営組織を構築している。生徒による授業評価も取り入れている。

●学校組織マネジメントの導入や学校自己評価システムの構築に力点をおいた学校づくり
校名 サブタイトル 要旨
9章 鳥取県A小学校(PDF:1,382KB) 学校組織マネジメントの手法を取り入れた校長のリーダーシップと学校評価 A小学校の主な特色として、第一に、計画(Plan)・実施(Do)・評価(Check)・更新(Action)のマネジメント・サイクルにおいて、特に評価・更新に重きを置く学校経営、第二に、その評価・更新は、「去年よりちょっといいことをしよう」というB校長のあくまで支援的なリーダーシップ、第三に、ミッション(使命・存在意義)・マネジメントを取り入れた学校経営、そして第四に、学級経営と連動している学校評価が挙げられる。
10章 新潟県B小学校(PDF:174KB) 目標の重点化と校長によるビジョンの提示 大規模校においてもミッションを広げすぎてはならない。人的資源が多いからといってたくさんのミッションを果たそうとするのではなく、重点目標を定め、それに向けた組織編成と教職員の意識付けが必要である。教職員の意識付けに最も影響を与えるのは、校長のビジョンである。小学校長のリーダーシップはまず授業指導の力を示すことから始まる。そこで信頼を得ることにより、次に提示するビジョンが浸透するのである。
11章 広島県A小学校(PDF:335KB) 「小学校英語科」並びに「学校評価システム」の導入にみる校長の優れた組織運営能力 小学校英語科の導入に関する文部科学省の研究開発学校の指定(平成16年度)を受けたB小学校では、校長の強力なリーダーシップの下、「英語科導入」にともなう校内研修(指導)体制の整備、さらには前年度より実施されている学校評価システムの構築等において、特に刮目すべき点が認められた。それらに典型してみられる校長の優れた学校運営能力が、研究開発課題を含み当該校の教育課題に対する組織的な対応を可能としており、同時にそのことが管理職に対する構成員の信頼感、組織全体の一体感や共通認識を高める上でも有効であることが看取された。
12章 香川県S小学校(PDF:1,540KB) 組織マネジメント手法の効果的応用による学校改善 S小学校では、2002~2004年度の3年間、県より「学校の評価システムの確立に関する調査研究」の研究指定を受けたのを機に、三重県方式の組織マネジメント手法に改良を加えながら、組織内に学校評価を根付かせる試みに積極的に取組んできた。校長は、組織目標の設定や人材育成などの面でも企業等の手法に学びながら、より効果があがるアイディアを考え出し、毎年のように組織や運営手法に改良を加えながら経営改善を図っている。
13章 兵庫県B小学校(PDF:1,803KB) 学校評価システムを主軸とした学校改革 B小学校は、平成12年度に今の校長が就任して以来、学校評価システムを主軸にした学校改革を進めてきた。この学校の特色ある取り組みは、学校改善計画の実施、内部組織の運営方法の改変、「一人1研究」の推進、学校評価システムの導入、学校の情報誌の発行、複眼的評価を取り入れた通知票の導入、地域・保護者との連携による学校づくりである。これらの改革を成功に導いた要因として、1見本となる教員の存在、2学校を保護者・地域に開いたこと、3「子どもの育ち」を最優先する校長の教育理念の浸透が考えられた。
14章 宮崎県B高等学校(PDF:56KB) 組織マネジメントの発想による中・長期的展望にたった学校づくり 商業高校の将来を見据えたしっかりとしたヴィジョンのもとで、進路実績を向上させている高等学校といえる。販売実習、商品開発といった地元から評価され活動も活発に展開され、また高度資格取得のための課外指導にも力を入れ、幅広く、人材育成に取り組む学校づくりが成功している事例である。校長によって学校経営方針が明確に提示されたことが、学校を改善していこうとする雰囲気を作り出したと思われる。

●開かれた学校づくりや保護者・地域連携づくりに力点をおいた学校づくり
校名 サブタイトル 要旨
15章 京都府A小学校(PDF:588KB) 学校改善の「核」としての実践研究と「開かれた学校」を軸とした取り組み A小学校では,校長の柔軟かつ強力なリーダーシップに導かれ,実践研究の積極的推進と地域連携の両面で学校運営改善の着実な成果を挙げている。「普通の教員・普通の学校がいかに向上できるか」「学校改善には核となる研究が不可欠」という信念の下,大学研究者等とも連携しつつ情報教育研究を進めてきた。同時に,学校からの持続的な情報発信や学校評価・学校評議員の有効活用に努め,地域からの信頼を集めている。
16章 山形県A中学校(PDF:1,283KB) 地域と一体となった教育活動と学校運営 創造性にあふれ、また学校改善への積極性をもつ校長の高い力量とリーダーシップの発揮により、学校内外の組織を変革している。研究指定(起業家教育、福祉教育、命の学習)や特色ある「総合的な学習の時間」の運用、ボランティア・祭り等の地域行事への生徒・教職員の参加など、地域連携を積極的におこなうことで学校教育活動を活性化している。また、これらを可能にする学校評価システムや教育課程検討クリエーティブ・ミーティングなど、教職員の主体性を促す特色ある学校運営を展開している。
17章 京都府B中学校(PDF:325KB) 最高目標「世界でいちばん通いたい学校に」を掲げた中学校の取組 B中学校では、学校経営に関してECOという三つをポイントとして掲げている。第一に、Encourage(育成)では、意識改革を通じて、企画力と牽引力をもつ教職員を育成するための管理職のあるべき姿を示した。第二に、Challenge(挑戦)では、「たくましく生きる力の育成」という学校教育目標を達成するために、起業家(アントレプレナー)精神涵養教育を生徒に対して行なっている。第三に、Open(開く)では、徹底した「開かれた学校づくり」が推し進められている。
18章 高知県N中学校(PDF:1,362KB) 「土佐の教育改革」の原型 保護者・地域連携による学校改革 職員の共通理解や全員体制で臨むという基本姿勢を強調する、伝統的な学校運営手法がとられるN中学校。校長は組織マネジメントなどの新手法導入にはやや懐疑的であり、基本的に学年が意思形成・実施主体となる旧来型の組織運営が行われる。きめ細かな生徒指導にも、職員の全員体制で取組む。その他にも文部科学大臣賞の表彰を受けた活発なPTA活動、朝の読書、部活動など、学校の活動範囲は多岐にわたる。こうしたN中学校で現在取組まれる多様・多彩な試みのほとんどは、数年前の学校の「荒れ」への対応策として生み出されたものが、制度化されたものであった。
19章 宮崎県A中学校(PDF:64KB) 校長のリーダーシップによる地域と連携した学校づくり 地域に根ざした学校を創るという経営方針のもとに、校長自ら先頭に立って地域との連携が進められている。地域が学校を見る目も変わり、関係が密になりつつある。生徒もボランティア活動などで地域との交流を深めている。校長が、地域の関係者、教頭はじめとした教職員と積極的にコミュニケーションをとり、地域との連携を軸にした学校づくりを見事に成し遂げた事例である。
20章 北海道A工業高等学校(PDF:553KB) 外部資源の活用による専門高校改革 北海道A工業高校(以下A校)はS市郊外の工業団地に位置する伝統ある道立の工業高校である。A校は従来から、北海道の工業教育の中核的存在としてその役割を果たしてきたが、近年の産業構造の変化や進学指向の高まりの中で、その位置は不安定になりつつある。A校では、入学から進路決定を経て進学・就職に至る自己実現の探求プロセスを「キャリア教育」の視点から統合的に捉え、産学連携や高大連携を基軸とした外部資源の積極的導入により改革を試みている。本稿では、特に産学連携に重点をおきながらA校の取り組みについて紹介することにする。
21章 山形県A高等学校(PDF:1,127KB) 地域及び周辺学校との連携 校長がビジョン形成と外部との連携に努め、教頭が校内組織をまとめるという両者の学校内外におけるリーダーシップの発揮を特徴としている。キャリア教育の強化(インターンシップ就業体験学習、キャリア・カウンセリングの充実、外部講師の積極的活用等)や地域・周辺学校との交流(部活動交流、老人福祉、社会福祉等の交流、ボランティア活動、赤十字活動等)を活発化させることで生徒の自発性や積極性を促している。なかでも小学校との連携授業「小学生へのパソコン教室」は、特色ある活動の一つとして特筆できる。
22章 愛知県C高等学校(PDF:103KB) 学校改革は開かれた学校づくりとともに 「困難校」から、普通科コース制導入を軸に学校改革を進めている事例。学力の向上と生徒指導のための具体的行動について様々なアイディアを出す管理職のリーダーシップ、それを可能とする若い教職員の協働がみられた。高等学校は自動的に生徒が入ってくるわけではなく、これらの改革の過程や成果を、子ども・保護者・地域に発信し、その信頼と協力を得なければならない。高等学校改革の第一条件は開かれた学校づくりである。


 

-- 登録:平成21年以前 --