【調査研究課題名】
通信制高校生徒の不登校状態を防ぐ支援体制の構築をめざして
【調査研究成果】
[調査研究校:福井県立道守高等学校 通信制]
平成27年度からの取組みの結果,独自の支援体制を構築し,生徒が社会で自立できることを目指した実践により,以下の成果を得ることができた。
1.欠席生徒に対する初期対応による不登校状態の未然防止の取組み
教育相談係から連続欠席生徒に対して,現状を把握するためのアンケートを送付し,返送のあった生徒に対して電話での聞き取りや面談の機会を設け,必要な支援を行った。その結果,連続欠席生徒の中から登校可能となる生徒が見られるようになった。
2.教職員の意識改革によって効果的な生徒支援を目指す研究組織の立ち上げ
外部専門委員から,効果的な生徒支援を行うためには,まずは教職員の意識改革が重要であるとのアドバイスを受け,平成27年度に「グループ研究会」と「全体研究会」の2つの研究組織を立ち上げた。さらに,平成29年度には「生徒情報交換会」と「事例検討会」を設けた。その結果,以前よりも活発に意見が出るようになり,教職員全体での課題の共有が可能となるなど,独自の支援体制を構築することができた。
【調査研究課題名】
単位制の定時制高等学校におけるソーシャルワーカー支援体制の構築~単位制・定時制高等学校における生徒の社会的包摂~
【調査研究成果】
[調査研究校:静岡県立静岡中央高等学校]
1.校内組織の更なる改善と,ミニケース会議の活用促進
研究当初,キーパーソンと考えていた年次主任を特別支援教育コーディネーターとして増員したことで,情報共有がスムーズに行えるようになった。そのため,問題が複雑化しないうちに把握し,SCやSSWに相談する体制が構築された。
2.SSWの予防的活用や研修会講師としての活用
2年間の研究で,SSWの活動として,問題が顕在化してからの対応がほとんどであったことを踏まえ,研究最終年度となる今年度は,次のような予防的な活用を試みた。
(1)生徒総会を利用し,生徒に対しSSWが講話を行った。SSWの認知度も上がり,相談することに対するハードルを下げることができた。
(2)SSWに「支援プログラム」を提示してもらい,教職員からの要請を受けて,ゼミや授業において出前講座を行った。「自分を知ろう」「アンガーマネジメント」「デートDV」等をテーマに,グループワークも交えて行い,参加した生徒からも好評であった。
(3)SSWに職員研修会での講師を依頼した。機能不全により生じる家族の諸問題について,原因・あらわれ・支援方法等,具体的な事例を交えて話をされ,大いに参考になったという声が多かった。今年度は,静岡市内の定時制高校3校からの要請で,職員研修会の講師や個別相談等を行い,SSWの有効性についての認識がより深まった。
【調査研究課題名】
「つなぐ」徳島プロジェクト ~「支援・相談」でつなぐ生徒の未来~
【調査研究成果】
[調査研究校:徳島県立徳島中央高等学校,協力校:徳島県立徳島科学技術高等学校,徳島県立富岡東高等学校,徳島県立鳴門高等学校,徳島県立名西高等学校,徳島県立池田高等学校]
生徒の自己有用感の向上及び,社会的・職業的自立に向けて,ソーシャルスキル向上支援・学力向上支援等の有効性について調査研究を行い,効果の指標として,「生徒の意識等に関わる調査」平成29年度結果での自己有用感や社会参画に関わる項目「自分には良いところがある」・「人の役に立ちたい」において検証を行った。定時制課程2年での27年度から29年度の変化を見ると,「自分には良いところがある」が2ポイントの増加,「人の役に立ちたい」が22ポイント増加といずれも伸びている点が評価でき,本事業での支援・相談の効果がうかがえる。また,年度を経るごとに,支援相談員の活用,特別な支援を必要とする生徒に対する支援,就労支援,ソーシャルスキル向上支援,学力向上支援等の取組も充実・深化した。それとともに,各学校間や関係機関との連携も密になり,拠点校と協力校5校の支援・相談体制を構築できた。
【調査研究課題名】
スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーと協働し、個々の生徒のニーズに応じた支援を可能にする校内体制作り~すべての生徒に確かな学力を保障するために~
【調査研究成果】
[調査研究校:京都市立西京高等学校 定時制]
スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)と協働して,様々な「困り」を抱えた生徒に対する支援方法の確立および校内体制の構築をすることにより,適切な時期に適切な支援を実現することを目標とした。
SC・SSWとの協働についてある程度進み,またケース会議の開催システムについても一定の形ができた。
それにより,研究初年度に比べ,SCの相談件数増加やSSWと協力しての外部機関との情報交流の機会の増加,ケース会議など生徒への対応を検討する会議の件数の増加といった成果につながり,生徒の「困り」解消に取り組んできた効果は徐々にではあるが表れてきた。
今後,学校全体で効果的な支援をしていくためには,ケース会議に参加できない教職員との情報共有についてもシステム化していく必要がある。また,普遍化できるものについてはマニュアル化を図っていく。
【調査研究課題名】
広域通信制高等学校における支援・相談体制の全国展開及び本校専攻科を活用した大学編入等を可能にする進路実現への取り組み
【調査研究成果】
[調査研究校:NHK学園高等学校]
2年目となる平成29年度において,以下の通りの調査研究に取り組んだ。
1.専門知識を持った教員がチームに加わることで,多様な支援を必要とする生徒に,それぞれの専門分野から通常の学習活動場面も含めアプローチ,連携を行ない,より充実した対応を図った。
2.全国の「まなびや」を支援チームの一員としてより協働していくために,「まなびやスクールカウンセラー協働会議」を開催。本校教育相談室とまなびやスクールカウンセラーとが,より有効な連携体制づくりをすることができた。また,地域資源との連携による支援を,専任指導員を含め試行した。
3.社会体験から成長を促す,社会的なスキルを身につける,自分らしい進路を見つけるなどが可能になる。地域社会も大きなチームの一員として協働し,多様なニーズを持つ生徒への有効性を確認した。
※本成果物は、生徒個別の情報を含む部分があるため、一部のページを削除して公開しています。
【調査研究課題名】
定時制・通信制高校が可能な学習支援の構築についての調査・研究
【調査研究成果】
[調査研究校:科学技術学園高等学校]
定時制課程の「学び直しと学習意欲の回復」につながる調査研究としては,生徒個々に対応した教科別の質と量が異なるアナログ教材としてKノート,そしてデジタル教材としてタブレット端末を提供した。それを可能とした学校設定科目「総合基礎」により,教材の導入から進捗点検まで軌道に乗ったといえる。また,学校行事の運営,部活動に加え少人数による習い事クラブなど生徒自身が学校生活の1シーンで輝く場を提供することにより「学び直しと学習意欲の回復」に効果が見込まれた。
通信制課程では(1)特別に支援を要する生徒への学習教材の開発と他の教育団体との協力体制の構築,(2)特化した支援を要する生徒への学習教材の開発と学習支援体制,(3)全日制において学習の継続が困難な生徒に対する学習支援教材の提供と全通併修についての調査研究の3つを研究したが,生徒個々に応じた教材(質・量・形態)の提供の重要性を再確認することとなった。
【調査研究課題名】
通信制高等学校における多様な生徒への個別支援システムの研究・開発
【調査研究成果】
[調査研究校:星槎国際高等学校]
平成28年度のデータ入力に関する課題に関しては全国統一のフォームとシステムで記録された情報を本校基幹システムから一括入力する方式の導入を進め,更にシステム改修を行い,面談シートのブラッシュアップを図るためのマニュアルの改訂も行ったことで,重複作業の解消とより活用しやすいシステムの構築が図られ,基礎情報のデータ集計から今まで感覚的に掴んでいた各学習センターや学習センター全体の生徒像の実態把握が可能になった。
また,アンケートAからBへと移行し,面談を重ねることで得られたデータとそのアウトプット化を実装したことで,今まで以上に生徒支援・生徒相談の質の向上を図ることができた。ここまでの取り組みの結果,これまで全国20ヶ所ある学習センターにて面談力の向上を図る目的で多くの研修が行われてきたが,キャリアガイドシステムを土台に共通の様式を利用し,一定の確認内容が実施されたことから面談力の向上が高まった。
【調査研究課題名】
外部機関と連携した通信制の支援体制の構築とアセスメント方法の開発~外部機関と連携した支援体制を設計し,それをアセスメントによってより効果的な取り組みに改善する試み~
【調査研究成果】
[調査研究校:仙台白百合学園高等学校 通信制課程]
今回の調査研究では,外部機関と連携した学習プログラムを設計し,独自に開発したアセスメントを通して,参加した生徒の変化を検証した。その結果分かったことは,社会で活動する人々と行動を共にする体験活動が,特に生徒に大きな影響を与えるということである。具体的には,被災地で行われた体験活動や,路上生活者のための炊き出しボランティアなどのプログラムである。本校の生徒の多くは中学校時代に不登校の経験があり,自分の心の内側にこもりがちだった。そうした生徒にとって,積極的に社会に関わり地域に貢献する活動を行っている人々に触れる体験は新鮮であり,それは生徒の心を外側に向けさせ,視野を広げて社会への関心を高めるきっかけとなった。本校の生徒の多くは,在学中に学習意欲を取り戻し大学等に進学していくが,生徒を変化させた要因のひとつとしてあげられるのが上記のプログラムであった。このことから,不登校経験者が多い通信制高校にとって,校内での学習活動に加えて校外での社会体験活動を効果的に取り入れることは,生徒の進路意識を向上させる上で極めて有用なことを確認することができた。
【調査研究課題名】
定時制・通信制課程における生徒の自立を促す支援・相談体制の構築~「自立支援プログラム」「地域連携プログラム」の作成と実践を通して~
【調査研究成果】
[調査研究校:太平洋学園高等学校]
本校は平成27~29年度の3年間,上記の調査研究課題に取り組んできた。「自立支援プログラム」では,全職員で授業改善やLHR活動を通して基礎学力の向上と社会性を育成する活動を行った。また,スタディルームや自主講座を開設し,基礎学力やコミュニケーション力,生活のスキルを向上させるための個別支援に取り組んだ。「地域連携プログラム」では,大学との連携による学習支援やピア・サポート活動,地域との連携によるボランティア活動を行った。更に,特性や課題を有する生徒を中心に職場体験や個別の支援を行い,その過程でSSWやSCを交えた校内連携や関係機関との連携を推進した。その結果,生徒の学校適応への取り組みに加えて,卒業後の自立も見据えた支援という視点が出てきた。これらの活動により,生徒の自立を促すための本校の支援・相談体制が,ある程度構築できたと考える。これらの取り組みと成果を冊子にまとめ3月に報告会を開催し広報した。
初等中等教育局参事官(高等学校担当)付