【調査研究課題名】
ICTを活用した高等学校における遠隔教育の普及・推進
【調査研究成果】
研究2年次はシステムの稼働も比較的安定し、概ね予定通り授業を実施できたが、テレビ会議システムの機能や付帯する機材の利用度には差があった。遠隔授業は、座学のみならず、実技を伴う科目においても実施することができた。既に実施した外国語(英語)、芸術(音楽)、商業以外の教科においても遠隔授業を実施し、教科・科目・単元による遠隔授業の適不適を検証した。授業に参加した生徒については、アンケート結果から通常の授業と比較しても違和感なく参加できており、授業内容の理解度も良好であった。また、授業の他に講演会、講習会、生徒同士の交流等で活用することができた。遠隔授業を実施するにあたり、その都度、機材の調整、授業のリハーサル、生徒の机の配置の検討、打ち合わせなど、かなりの時間と人員を要している。事業終了後の恒常的な授業を考えた場合、簡便かつ少人数で遠隔授業を成立させる手立てを検討する必要がある。
[調査研究校:青森県立木造高等学校、青森県立木造高等学校深浦校舎]
【調査研究課題名】
定時制・通信制課程における支援・相談体制の構築
~外部機関の教育力を活用した学校と生徒の社会力の向上~
【調査研究成果】
本事業は(1)外部人材の活用、(2)多様な学習歴を持つ生徒への対応、(3)連携校への事業普及(県内定時制・通信制設置校5校)が柱となる。
(1)では、進路アドバイザー及びキャリアカウンセラーからの教育相談、講座、研修等により、就職の内定率や進学の合格率の向上は勿論、不合格であっても、生徒が継続して面談を依頼するなど、次に向かう意欲や姿勢の向上が見られた。(2)では、基礎学力の向上や本校に適した探究型学習を探るため、外部から2名の講師を招き研修会を実施。来年も継続して研修を行う予定である。また、関係機関の協力を仰ぎながら、本校生徒に合わせた「進路ハンドブック」を今年度完成させた。(3)では、県教委・連携校・有識者・関係機関で構成される推進会議を2回開催し、その成果を連携校等に伝えた。また、連携校には数回キャリアカウンセラーを派遣し好評を博した。
[調査研究校:山形県立霞城学園高等学校]
【調査研究課題名】
定時制・通信制課程における支援相談体制の構築
~外部機関とのネットワークづくりや重層的支援の充実を通して~
【調査研究成果】
横浜修悠館高等学校では、蓄積した情報を整理する等、諸課題の検討を重ね、平成29年度から「横浜修悠館支援データベース」の運用が可能となった。また、コーディネート機関としての支援連絡会議において、専門相談員と教職員との情報交換、共通理解を図ることができた。また、上級学校への進学を目ざす生徒への学習支援では、学校設定科目の増設等により、生徒の学習意欲を更に高め、学力伸長につながった。
厚木清南高等学校では、「専門医による相談会」を通して、新たに生徒及び家庭を医療につなげられただけでなく、すでに医療につながっている家庭にはセカンドオピニオンを提示する機会となった。また、学校独自の「支援マニュアル」の作成、従来の就職支援に加え、「手帳就労」のためのルートの整備、外国につながりのある生徒の交流機会の組織化等、研究を発展させることができた。
[調査研究校:県立横浜修悠館高等学校、県立厚木清南高等学校]
【調査研究課題名】
遠隔教育による多様な学習の支援とICTによる確かな学力の育成
【調査研究成果】
平成28年度から、総合学科を設置する2校(塩尻志学館高・蘇南高)を調査研究校に追加指定し、遠隔教育システムを導入して福祉の授業等を行った。これまでの研究を通じて専門科目を中心に実践を積み、様々な形態での協働学習が実施できるようになった。生徒たちも、距離を隔てた場所にいる生徒と関わりながらの学習を好意的にとらえており、遠隔システムを活用した授業は、主体的・対話的で深い学びを実現するための新たな学習形態として位置づけられるようになっている。
一方で、システムをとおした音声に違和感がある等の感想もあり改善すべき点も残る。授業そのものの指導計画以外に、機器配置の調整やサポート教員との打合せを十分に行い、必要に応じて対面授業を取り入れるなどして事例を蓄積し、より効率的な遠隔教育の実施に向けて研究を進めたい。
[調査研究校:長野県佐久平総合技術高等学校(浅間キャンパス・臼田キャンパス),長野県塩尻志学館高等学校,長野県蘇南高等学校]
【調査研究課題名】
単位制の定時制高等学校におけるソーシャルワーカー支援体制の構築
~単位制・定時制高等学校における生徒の社会的包摂~
【調査研究成果】
1.複数・常駐型SSWの効果的活用のための更なる校内体制の構築
特別支援教育コーディネーターを2人から4人に増員した。2人は年次主任と連携し個への対応にあたり、別の2人は学校全体に係る研修等、企画調整の役割を担うこととした。特に企画調整役の2人は、学期初め、定期テスト後、長期休暇後等、区切りとなる時期を捉えて学習面で支援が必要な生徒の情報収集を行い、一覧にしたものを全教員が共有できるようにした。それを踏まえ「生徒個々を大切に支援していくこと」をテーマにした校内研修会を企画し、SSWを講師として活用した。また、不登校気味の生徒に対しても、担任・SC・SSW・保健室等を繋ぎ、情報共有して対応することができた。
週1回勤務のSCとの連携として、SCが生徒のカウンセリングを実施している同時間帯に、SSWが保護者と面談するといった、心理的・福祉的支援をそれぞれが持つ専門性を補完し合って協働する体制も構築した。
2.ミニケース会議の実施と支援事例の積み上げ
支援対象生徒と関係性の深い者だけで対策を話し合う小規模チームでの会議を多用する方が、機動力のある対応が可能になると考えた。外部機関の担当者が加わる比較的大規模なものから、管理職とSSWのみの小規模なものまで、45回にわたるミニケース会議を実施した。それらの結果も含め、支援事例の蓄積を着実に行った。
[調査研究校:静岡県立静岡中央高等学校]
【調査研究課題名】
「つなぐ」徳島プロジェクト ~「支援・相談」でつなぐ生徒の未来~
【調査研究成果】
生徒の自己有用感の向上及び,社会的・職業的自立に向けて,ソーシャルスキル向上支援・学力向上支援等の有効性について調査研究を行った。それらの支援の複合的な取組による効果の指標として,「生徒の意識等に関わる調査」平成28年度結果での自己有用感や社会参画に関わる項目「人の役に立ちたい」において検証を行った。追跡の比較(前1年と現2年)では,「人の役に立ちたい」では全日制課程10ポイント,定時制課程9ポイントと同程度上昇している。経年の比較(1年・2年)では,定時制課程2年での「人の役に立ちたい」が20ポイント上昇と大きく伸びている点が評価でき,支援・相談の効果がうかがえる。効果の要因として,「各校の支援相談員の積極的な活用」が挙げられる。拠点校と協力校5校の支援・相談体制の確立に向け,着実な一歩となった。
[調査研究校:徳島県立徳島中央高等学校、協力校:徳島県立徳島科学技術高等学校、徳島県立富岡東高等学校、徳島県立鳴門高等学校、徳島県立名西高等学校、徳島県立池田高等学校]
【調査研究課題名】
過疎地の高校における遠隔授業の導入に関する調査研究
~総合教育センターを配信拠点とする体制の構築について~
【調査研究成果】
本県では、年間を通した授業や特別講師による授業,生徒アンケート、教職員の意見を踏まえた改善を行い、機器の整備及び通信環境を整えることができ、通年の遠隔授業であっても生徒に負担を感じさせることがなく、対面授業と同等の学習環境を構築することができた。教具(ハンディカメラやミニホワイトボード等)を組み合わせることで、グループワークなど様々な授業形態での実施が可能であった。また、学校間配信方式においても、総合教育センターからの配信と同等の環境を作ることができた。また、授業評価については、学習評価シートを作成し活用することで、適切な学習評価を行えた。さらに、考査問題の作成や採点、成績処理などの手順を確立することができた。今後、効果的な指導方法や資料提示、補助者の役割、適切な学習評価の方法等について研究を継続する。
[調査研究校:徳島県立海部高等学校]
【調査研究課題名】
遠隔教育における学校体制の構築と生徒の能動的な学習を支援する汎用的な学習指導方法の研究
【調査研究成果】
平成27年度からの本校・分校での取組に加えて、平成28年度からの小規模校間での実施を通じて、遠隔教育の推進に係る課題の把握が進んだ。調査研究校が作成した、オリジナルの遠隔教育システム使用マニュアルでは、機器の操作方法や授業経験者、サポート教員からのアドバイスなどがあり、今後の遠隔教育の普及につながるものとなっている。また、これまでの検討会議に加えて、平成28年度から、調査研究校研修会を年3回(6月、10月、1月)実施し、授業づくりやアクティブ・ラーニング型学習、学習評価などについて、情報共有することができた。さらに、発生が想定される南海トラフ地震後の高校教育の早期再開をめざした、ワーキンググループを立ち上げ、遠隔教育の可能性を探ることができた。
[調査研究校:高知追手前高等学校、高知追手前高等学校吾北分校、窪川高等学校、四万十高等学校、嶺北高等学校、岡豊高等学校]
【調査研究課題名】
定時制・通信制高校が可能な学習支援の構築についての調査・研究
【調査研究成果】
定時制課程においては、学習意欲の回復のため、2年目の試みとして次の3点での対応と観察を行った。
1.「習い事クラブ」の強化、2.各種行事を可能な範囲で生徒中心の運営、3.従来の評価の方法を検討
上記1.、2.の活動において参加したものは学校での生活に意欲を増し、学習活動にまで良い影響を与えることができるようになったが、学校全体の生徒への意欲喚起には十分なものがあったとは言えなかった。同じような例として成績評価を単純な5段階評価ではなく学習への達成度で示したものの、一定の反応はあったが、単年度ではそれが直接学習意欲への喚起につながることはなかったため、継続研究する。
通信制課程おいては、昨年度に引き続き次の3項目について調査・研究を継続した。
1.特別に支援を要する生徒、2.特化した支援を要する生徒、3.全日制において学習の継続が困難な生徒
これらの生徒は、通信制高校でなければならない理由があり、そのための可能な支援と具体策が明確になってきた。
[調査研究校:科学技術学園高等学校]
【調査研究課題名】
通信制高等学校における多様な生徒への個別支援システムの研究・開発
【調査研究成果】
生徒面談に活かせるように、生徒の入学前及び現在の状態像の情報をシステムで一元管理できるようになったことで、生徒支援・生徒相談の質の向上を図ることができた。具体的には、継続的に生徒の生活実態、興味関心、幸福感などを全国統一のフォームとシステムで記録していくことで、生徒へのアプローチの方法が共有できるようになったことが成果としてあげられる。加えて、基礎情報として、既往症や不登校歴、いじめられ歴、問題行動歴など個別の特性もシステムで共有していることから、生徒の変化をイビデンスベースで正確にとらえることができるようになった。また、進路に関しては、入学前からの情報を継続して保持できることから、生徒の成長も可視化でき、キャリア教育の充実を図ることができた。
[調査研究校:星槎国際高等学校]
【調査研究課題名】
定時制・通信制課程における生徒の自立を促す支援・相談体制の構築
~「自立支援プログラム」「地域連携プログラム」の作成と実践を通して~
【調査研究成果】
平成27年度は、生徒や学校の課題を明らかにするために実態調査やアンケート調査を行った。その結果を踏まえて、平成28年度は「自立支援プログラム」を作成し、それに基づいてさまざまな実践を行い、その成果や課題、改善点などを明らかにしていった。「自立支援プログラム」では、生徒自身の生きる力をよりはぐくむことができるよう、基礎学力の向上とソーシャルスキルの向上に取り組んだ。基礎学力では全体として分かる・主体的な活動の授業づくり、個別としてスタディルームを開設した。ソーシャルスキルでは、全体としてLHRでの特設授業、個別としてコミュニケーション講座や太平洋キッチン(料理教室)の自主講座を実施した。全体的には活動への生徒の評価も良く一定の成果があったが、学力やソーシャルスキルの定着、一部の生徒の活動への抵抗、個別の取組に参加者が少ないなどの課題が残った。
[調査研究校:太平洋学園高等学校]
【調査研究課題名】
教育の質保障を目指し小規模校が連携する遠隔授業の実証的調査研究
【調査研究成果】
平成28年度は、効果的な配信方法の工夫、機器の操作方法、想定される機器トラブルへの対処方法等を確認後、調査研究校において総合教育センター研修指導主事による模擬授業、調査研究校教員による課外授業及び遠隔システムを用いた教員研修を実施した。それぞれの取組においては、調査研究2校と総合教育センター間で遠隔システムを用いて授業研究会を行い、センター研修指導主事からの指導・助言を行った。また具体的な実施内容については、学識経験者を交えて推進事業検討会議を開催し、遠隔教育システムの利点を生かした授業形態や調査研究校間の連携の在り方等について検討し、次年度に取り組むべき事項を明確化した。さらに、先進地視察として遠隔教育サミットin青森、富山県南砺市の訪問や、調査研究校教員及びセンター研修指導主事が実際に模擬授業に取り組み、授業展開上の利点のみならず、遠隔授業における制約や留意点等についても具体的に理解を深めることができた。
[調査研究校:西和賀高等学校、岩泉高等学校]
初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室