「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」中央教育審議会第二次答申の骨子(抜粋)

平成9年6月26日

第3章 中高一貫教育

(中高一貫教育の意義と選択的導入)

 中高一貫教育には、様々な利点あるが、特に、「ゆとり」ある学校生活を送ることを可能にするということの意義は大(子どもたちは、様々な試行錯誤をしたり、体験を積み重ねること等を通じて、豊かな学習をし、個性や創造性を伸ばすことがより可能に。その中で、じっくり学ぶことを希望する子どもへの十分な指導がより可能に)。このため、中高一貫教育を享受する機会をより広く提供していくことが適当。
<利点>
1  高等学校入学者選抜の影響を受けずに「ゆとり」のある安定的な学校生活が送れること
2  6年間の計画的・継続的な教育指導が展開でき効果的な一貫した教育が可能
3  6年間にわたり生徒を継続的に把握することにより生徒の個性を伸長したり、優れた才能の発見がよりできること
4  中学校1年生から高校3年生までの異年齢集団による活動が行えることにより、社会性や豊かな人間性をより育成できること

 なお、中高一貫教育には様々な利点がある一方で、留意すべき点もあり、それらに適切に対処していくことが必要。
<留意すべき点とそれらへの対処に関する考え方>
1  受験競争の低年齢化につながることのないよう、公立学校では学力試験を行わない等、入学者を定める方法などについて適切な配慮が必要
2  受験準備に偏した教育が行われることのないよう、普通科タイプの場合には特に配慮が必要
3  心身発達の差異の大きい生徒を対象に円滑な学校運営を行うよう、日常の指導や学校運営に当たって、教員が緊密に連携し、きめ細かな配慮をしていくことが必要
4  生徒集団が長期間同一メンバーで固定されることにより学習環境になじめない生徒が生じることのないよう、「ゆとり」の中で、様々な試行錯誤をしたり、体験を積み重ねること等を通じて豊かな学習を行えるようにすることが必要。また、途中で転学を希望する生徒に対して十分に配慮していくことが必要

 中高一貫教育の導入に当たっては、子どもたちや保護者などの選択の幅を広げ、学校制度の複線化構造を進める観点から、中高一貫教育の選択的導入を行うことが適当(従来の中学校・高等学校に区分された中等教育も大きな利点や意義を持っており、中高一貫教育の利点と問題点の軽重を総合的に判断するのは子どもたちや保護者)。

 中高一貫教育の選択的導入は、地方公共団体や学校法人などの学校設置者が、自らの創意工夫によって特色ある教育を展開する裁量の範囲を拡大することに資する。

(中高一貫教育の導入の具体的な在り方)

 中高一貫教育の具体的な在り方については、学校設置者の主体的な判断を尊重することが適当。国の役割は、そのための制度上の隘路を取り除くことを含めて、制度改革を行うこと。

 中高一貫教育の実施形態については、次のような類型が考えられ、中高一貫教育の円滑な導入を図るためには、学校設置者がそのいずれも選択できるよう、所要の制度改革を行うことが必要。
1  同一の設置者が中学校・高等学校を併設する
 (a) 独立した中学校・高等学校を併設
 (b) 一つの6年制の学校(いわゆる6年制中等学校)として設置・運営
2  市町村立中学校と都道府県立高等学校を連携する

 教育内容については、「ゆとり」の中で子どもたちの個性や創造性を大いに伸ばしていくものとすべき。その類型としては、普通科タイプ、総合学科タイプ、専門学科タイプなどが考えられ、そのいずれを採るかは学校設置者の選択に委ねていくべき。ただし、普通科タイプの場合は、受験準備に偏した教育を行わないよう強く要請。

 中高一貫校においては、特色ある教育を提供していくことが望まれるが、例えば、次のような特色を6年間の一貫した軸に据えて教育活動を展開していくことが有意義。
1   体験学習を重視する学校
 ・ボランティア体験、社会体験、勤労体験、自然体験などを積極的に導入
2  地域に関する学習を重視する学校
 ・地域の歴史や文化、自然、産業を活かした指導内容、地域の人材の活用など
3  国際化に対応する教育を重視する学校
 ・コミュニケーション能力の育成、国際交流活動や国際理解教育の推進など
4  情報化に対応する教育を重視する学校
 ・インターネット等の活用、情報リテラシーや情報モラルの育成など
5  環境に関する学習を重視する学校
 ・自然体験活動の充実、環境や自然を大切にする心の育成など
6  伝統文化等の継承のための教育を重視する学校
 ・伝統工芸や伝統産業の技術の伝承、伝統技能の技の伝授、後継者の養成など
7  じっくり学びたい子どもたちの希望に応える学校
 ・個別のきめ細かな教育計画を立て子どもたちを指導。学習のつまずきを的確に把握し、基礎・基本を確実に学ばせ、じっくりと問題を克服。

 入学者を定める方法については、受験競争の低年齢化を招くことのないような適切な配慮が必要。特に、地方公共団体が設置する学校にあっては、学力試験を行わず、学校の個性や特色に応じて、抽選、面接、推薦等の多様な方法を適切に組み合わせることが適当。また、現在、学力試験を偏重する選抜や小学校教育の趣旨を逸脱した出題を行っている一部の国私立中学校に対しては、改善を要請。

 高等学校段階に進む時点での入退学等についての配慮が必要(進路変更を希望する生徒の他の高校への進学への配慮、高校段階での入学をある程度の数認めること、6年制の学校の第3年次修了者を中学校卒業者と同等に扱うことなど)

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

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