資料4‐7 PISA調査(数学的リテラシー)及びTIMSS調査(算数、数学)の結果分析と改善の方向(要旨)

1.PISA調査(数学的リテラシー)及びTIMSS調査(算数、数学)の概要

1.PISA調査

(1)数学的リテラシーの定義

1.定義

 数学的リテラシーとは、「数学が世界で果たす役割を見つけ、理解し、現在及び将来の個人の生活、職業生活、友人や家族や親族との社会生活、建設的で関心を持った思慮深い市民としての生活において確実な数学的根拠にもとづき判断を行い、数学に携わる能力」である。

2.特徴
  • 実生活で生徒が遭遇するような状況で、数学を用いて問題を解決することを重視している。
     → 教科書に見られる数学を練習することではなく、日々の活動、学校生活、職業、地域社会、理論的な場面など様々な場面で、数学的な知識、理解、技能を活用することを重視している。
  • 数学的プロセスに着目し把握しようとしている
    → 生徒が数学的な内容に取り組むのに必要な技能のまとまり。数学化のプロセスには、思考と推論、論証、コミュニケーション、モデル化、問題設定と問題解決、表現、記号による式や公式を用いた演算、テクノロジーを含む道具を用いることの8つの能力が関わっており、これらに着目し、把握しようとしている。

2.TIMSS調査

(1)調査の目的

1.目的

 初等中等教育段階における児童・生徒の算数・数学及び理科の教育到達度を国際的な尺度によって測定し、各国の教育制度、カリキュラム、指導方法、教員の資質、児童・生徒の学習環境条件等の諸要因との関係を明らかにする。

2.特徴
  • 各国で生徒が学校カリキュラムの内容をどの程度習得しているかを重視している。
    → 知識・理解に関する問題数が圧倒的に多い。

2.調査結果の分析

1.PISA調査

 平均得点との比較からは、量と不確実性の内容は、全体の中での2位グループであった。出題形式や数学的プロセスで比較すると、「量」では記述式の問題での得点が低く、「不確実性」では解釈が必要な問題での得点が低い。
 経年比較からは、自由記述形式の問題にやや低下の傾向がうかがえる。

(「量」領域)正答率がOECD平均を下回る問題数

  再現 関連付け 熟考 合計
選択肢 0(3題) 0(2題) 0(1題) 0(6題)
自由記述 0(0題) 0(0題) 0(1題) 0(1題)
求答・短答 2(6題) 1(8題) 0(1題) 3(15題)
合計 2(9題) 1(10題) 0(3題) 3(22題)

(「不確実性」領域)正答率がOECD平均を下回る問題数

  再現 関連付け 熟考 合計
選択肢 0(2題) 1(4題) 2(5題) 3(11題)
自由記述 0(1題) 1(3題) 0(1題) 1(5題)
求答・短答 1(2題) 1(2題) 0(0題) 2(4題)
合計 1(5題) 3(9題) 2(6題) 6(20題)

正答率・出題形式

  合計 出題形式
選択肢 複合選択肢 求答 短答 自由記述
前回との共通問題数 19 2 4 7 - 6
経年変化で正答率が下がった問題数 9 1 2 2 - 4
%(当該問題数/全体問題数) 47.4 50.0 50.0 28.6 - 66.7
上記のうち前回との差が5%以上の問題数 2 0 0 1 - 1
%(当該問題数/全体問題数) 10.5 0 0 14.3 - 16.7
全体問題数 84 17 11 13 22 21
OECD平均より正答率が低い問題 11 0 3 1 4 3
%(当該問題数/全体問題数) 13.1 0 27.3 7.7 18.2 14.3
上記のうちOECD平均との差が5%以上の問題数 7 0 2 1 3 1
%(当該問題数/全体問題数) 8.3 0 18.2 7.7. 13.6 4.8

2.TIMSS調査

 2003年調査の平均得点を前回(小学校については1995年調査、中学校については1999年調査)と比較すると、中学校2年の数学については有意に低下している。また、同一問題の正答率については、中学校2年の数学については有意に低下している。
 2003年調査の国際報告書で内容が公開された問題15問については、全て国際平均値を上回っている。しかし、公開問題のうち同一問題(中学校5問、小学校3問の計8題)のすべてにおいて低下しており課題がある。

(1)平均得点の変化

小学校4年
国/地域 2003年 1995年
日本 565 567 -3
国際平均値 495 517 -22
中学校2年
国/地域 2003年 1999年
日本 570 579 -9
国際平均値 467 487 -20

(2)同一問題についての平均正答率の変化

小学校4年
国/地域 算数問題数37題
2003年 1995年
日本 76.7 76.8 -0.2
国際平均値 68.8 67.9 0.9
中学校2年
国/地域 数学問題数79題
2003年 1999年
日本 66 70 -4
国際平均値 48 50 -2

(3)公表問題の結果

【小学校4年】
  問題数 国際平均値を上回った問題数 国際平均値を下回った問題数
公表問題 8題 8題 0題
うち同一問題 3題 3題 0題
【中学校2年】
  問題数 国際平均値を上回った問題数 国際平均値を下回った問題数
公表問題 7題 7題 0題
うち同一問題 5題 5題 0題

 ※ 同一問題については、前回と比べて全て低下しており、小学校4年の問題例1「分数と等しい小数を見つける」、中学校2年の問題例3「整数を分数で割る文章題を解く」など分数や小数に関わる基礎的・基本的な計算の技能、数についての感覚などと関連の深い問題での低下が目についた。

3.今後の改善の方向

 基礎的・基本的な計算技能の確実な定着や、数量・図形などの基本的な意味の理解を確実にすること。

 今回、TIMSSの公表問題では、整数の計算の技能、分数や小数にかかわって、数の大きさについての感覚が十分に身に付いていない状況もみられた。小学校低学年を中心に、具体物を用いた活動や、作業的・体験的な活動などを通して、基礎的・基本的な計算技能の確実な定着を図ることが求められる。 また、抽象的な数量、図形の基本的な意味を見いだしていく学習を進め、基本的な概念の意味を確実に理解させることが大切である。

 数学的に解釈する力や表現する力の育成を目指した指導を充実すること。

 今回、PISA調査の問題形式別の結果では、自由記述形式の問題の平均正答率が最も低かった。例えば、グラフで示されている内容を説明したり、グラフを使った説明が適切かどうか根拠を示して判断を述べたりする問題の正答率はOECD平均を下回っている。
 算数、数学において、身に付けた知識や技能を適切に活用する力をつけるためには、基本的な概念の意味を理解するとともに、与えられた状況やデータを数学的に解釈し,それに基づいて自分の考えを整理し、数学的な表現を用いて自分の考えを述べる力を育てることが大切である。

 実生活と関連付けた指導の充実を図り、数学について有用性を実感する機会を持たせること。

 今回のPISA、TIMSSの調査では、子どもたちの算数・数学に対する興味や関心等に関する調査で、国際的にみると依然低いレベルにある。このため、実生活と関連付けた指導の充実を図る必要がある。具体的には、子どもたちの生活の中にある事象を関連する算数や数学の授業の導入に取り入れたり、学習内容を生活の中にある課題の解決に活用したりする指導を工夫することが大切である。特に、生活の中の課題を数学的に解決することは、生活を合理化すると同時に、算数・数学に対する有用性を実感することにつながると考えられる。

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