資料4‐6 PISA(読解力)の結果分析と改善の方向(要旨)

1.読解力の定義等

定義

 自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力。

ねらい

 義務教育終了段階にある生徒が、文章のような「連続型テキスト」及び図表のような「非連続型テキスト」を幅広く読み、これらを広く学校内外の様々な状況に関連付けて、組み立て、展開し、意味を理解することをどの程度行えるかをみる。

特徴

  1. 理解するだけではない。
     ⇒ テキストに書かれた情報を理解するだけでなく、「解釈」し、「熟考」することを含んでいる。
  2. 読むだけではない。
     ⇒ テキストを単に読むだけでなく、テキストを利用したり、テキストに基づいて自分の意見を論じたりすることが求められている。
  3. 内容だけではない
     ⇒ テキストの内容だけでなく、構造・形式や表現法も、評価すべき対象となる。
  4. 文章だけではない。
     ⇒ テキストには、文学的文章や説明的文章などの「連続型テキスト」だけでなく、図、グラフ、表などの「非連続型テキスト」を含んでいる。

2.調査結果の分析

 2000年及び2003年調査について、正答率や無答率を基にして分析すると、全般的に課題はあるが、特に、読解のプロセスにおいては「テキストの解釈」「熟考・評価」に、出題形式においては「自由記述(論述)」に課題がある。

正答率・読解のプロセス別

  合計 読解のプロセス
熟考・評価 解釈 情報の取り出し 解釈・情報の取り出し
全体問題数 28 7 14 6 1
経年変化で正答率が下がった問題数 20 4 11 5 0
%(当該問題数/全体問題数) 71.4% 57.1% 78.6% 83.3% 0.0%
前回との差が5%以上 10 1 6 3 0
%(当該問題数/全体問題数) 35.7% 14.3% 42.9% 50.0% 0.0%
OECD平均より正答率が低い問題数 13 3 9 1 0
%(当該問題数/全体問題数) 46.4% 42.9% 64.3% 16.7% 0.0%
OECD平均との差が5%以上 6 1 5 0 0
%(当該問題数/全体問題数) 21.4% 14.3% 35.7% 0.0% 0.0%

無答率・出題形式別

  合計 出題形式
自由記述 多肢選択 多肢選択・複合 求答 短答
全体問題数 28 10 9 1 4 4
経年変化で無答率が上がった問題数 21 6 7 1 3 4
%(当該問題数/全体問題数) 75.0% 60.0% 77.8% 100.0% 75.0% 100.0%
前回との差が5%以上 6 4 0 0 0 2
%(当該問題数/全体問題数) 21.4% 40.0% 0.0% 0.0% 0.0% 50.0%
OECD平均より無答率が高い問題数 13 8 0 0 3 2
%(当該問題数/全体問題数) 46.4% 80.0% 0.0% 0.0% 75.0% 50.0%
OECD平均との差が5%以上 8 6 0 0 1 1
%(当該問題数/全体問題数) 28.6% 60.0% 0.0% 0.0% 25.0% 25.0%

3.今後の改善の方向

 教科国語を中心としつつ、各教科や総合的な学習の時間等を通じて、次のような方向で、改善の取組を行う必要がある。

1.テキストを理解・評価しながら読む力を高めること

 読む力を高めるためには、テキストを肯定的にとらえて理解する(「情報の取り出し」)だけでなく、テキストの内容や筆者の意図などを「解釈」することが必要である。さらに、そのテキストについて、内容、形式や表現、信頼性や客観性、引用や数値の正確性、論理的な思考の確かさなどを「理解・評価」したり、自分の知識や経験と関連づけて建設的に批判したりするような読み(クリティカル・リーディング)を充実することが必要である。
 特に授業の中では、なんのためにそのテキストを読むのか、読むことによってどういうことを目指すのかといった目的を明確にした指導が重要である。

2.テキストに基づいて自分の考えを書く力を高めること

 読解に当たっては、単に読んで理解するだけでなく、テキストを利用して自分の考えを書くことが求められる。テキストの内容を要約・紹介したり、再構成したり、自分の知識や経験と関連付け意味付けたり、自分の意見を書いたり、論じさせたりする機会を設けることが重要である。
 特に、「自由記述(論述)」に不慣れな生徒には、授業のまとめのときに、自分の考えを簡潔に書かせるなど日常的な授業の工夫が重要である。

3.様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会を充実すること。

 読むことについては、朝の読書の推進を含め、読書活動を推進すること。その際、文学的文章だけでなく、新聞や科学雑誌などを含め、幅広い範疇の読み物に親しめるよう、ガイダンスを充実することが求められる。
 授業の中で、自分の意見を述べたり、書いたりする機会を充実すること。その際、自分の経験や心情を叙述するだけでなく、目的や条件を明確にして自分なりの考えを述べたり、論理的・説明的な文章に対する自分なりの意見を書いたりするなどの機会を意図的に作っていくことも大切である。

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