学校改善支援事業における取組例;福岡市検証改善委員会福岡市「学び」向上総合プログラムモデル校としての取組-「日々の授業改善」プログラム及び家庭学習サポートプログラムの具体化-

福岡市立弥永小学校

本校の概要

 本校は、福岡県の北部、博多湾を囲む政令都市福岡市の最南端に位置しています。本校は、昭和45年4月に開校し、平成19年度38年目を迎えます。本校の西側には九州新幹線が通っており、市営団地と住宅地の中にある学校です。本校児童は、人なつっこく、明朗で活動的です。私ども教師は、児童に基礎・基本をしっかりと身につけさせ、豊かな心と健康な体を持つ人間になるように、日々の授業を大切にして教育活動に取り組んでいます。
弥永小学校

  • ◇ 弥永小学校が目指す児童像
    「思いやりのある子ども」「深く考える子ども」「強い子ども」
  • ◇ 弥永小学校教育目標
    心身ともに健康で豊かな人間性と自ら考え判断し、行動する実践力と創造性を身につける
  • ◇ 学級数・児童数・教員数
      1年 2年 3年 4年 5年 6年 特学 教員数
    学級数 2 2 2 2 2 2 1 13 20
    児童数 65 59 62 57 61 60 33 67

学力調査の結果に対する分析

 全国学力・学習状況調査の結果については、10月末の公表を受けて、校内の指導法工夫改善・学力向上委員会において多角的な検討を行いました。
 国語科では、5観点の能力のいずれも課題がありました。特に、「書く能力」「読む能力」については、基礎的・基本的な内容を身につけさせる必要があることが分かりました。本校児童の言語力の不十分さが、国語科のみならず、すべての教科の学習へも影響を与えていると考えられます。
 また、算数科では、特に、「知識に関する問題」における「量と測定」「数量関係」について、「活用に関する問題」における「量と測定」「図形」について、課題がありました。
 さらに、国語科・算数科いずれにおいても、全国と同様、思考力・表現力を要する「活用に関する問題」が低位であり、問題の意味を十分に理解し、筋道を立てて考え表現する能力を身につけさせる必要があることが分かりました。
 学習状況については、「勉強する時間を自分で決めて実行している」「家で学校の宿題をしている」の割合が全国に比べて低位であり、家庭学習を習慣化させる必要があることが分かりました。

福岡市「学び」向上総合プログラムと本校の取組について

(1)取組の位置づけ

 福岡市検証改善委員会は、「学力調査の結果に基づく検証改善サイクルの確立に向けた実践研究(学校改善支援促進事業-福岡市「学び」向上総合プログラム-)」を立ち上げ、本市の児童生徒の学力の向上を図るため、次の3点の支援を講じようとしました。

  • 支援1
    学力の全体的な底上げが必要な学校及び地域への支援
  • 支援2
    教科ごとの特定課題が明確であり、その解決が必要な学校及び地域への支援
  • 支援3
    家庭での学習習慣等との相関による学力課題を有する学校及び地域への支援

 これらの支援が必要な学校及び地域を、モデル校・モデル地域に指定して、学校改善支援促進事業-福岡市「学び」向上総合プログラム-を実施するとともに、その成果を全市に普及させ、現在進めている全市的な学力向上の取組を一層実効性のある取組に高めることをめざしました。
 本校は、この福岡市「学び」向上総合プログラムのモデル校・モデル地域に指定され、11月から実践研究を開始し、1定期的な学力テストの実施や授業サポーターの設置をする「日々の授業改善」プログラム  2共通教材の準備や家庭学習サポーターの設置をする家庭学習サポートプログラムに係る取組を具体化していきました。
 次の3つの仮説を検証することを実践研究の重点としました。

  • 仮説1
    検証改善委員会が指定した共通教材(家庭学習用教材)を児童生徒一人一人に準備して、学校と家庭とが連携しながら取り組ませることで、学力と学習習慣の向上を図ることができる。
  • 仮説2
    授業サポーターを設置して、授業に伴う採点・集計等の授業事務作業を支援することで、教員は、教材づくりや授業準備等による授業改善に専念でき、結果的に児童生徒の学力と学習習慣の向上を図ることができる。
  • 仮説3
    家庭学習サポーターを設置して、家庭学習に関する支援を得にくい児童生徒に対しての学習支援を行うことで、家庭学習の習慣付けがなされ、結果的に学力の向上を図ることができる。

(2)実施体制

 学校改善支援促進事業-福岡市「学び」向上総合プログラム-を実施するに当たっては、次のような実施体制をとりました。
実施体制

研究内容について

(1)「日々の授業改善」プログラムに係る取組

ア 共通教材(家庭学習教材)の活用

 本校では、漢字、計算などの基盤となる学力の充実を図るために、毎日昼休み後に10分間の「チャレンジタイム」を設定しています。また、4~6年生を対象に、授業内容の補充を行うために、月に1コマ程度、45分間の「パワーアップタイム」を設定しています。パワーアップタイムにおいては、低学年の教師とともに、学生ボランティアの活用を図り、きめ細かな指導ができました。その際、福岡市検証改善委員会から物的サポートを受けた共通教材(家庭学習教材)を積極的に活用しました。

共通教材を活用したパワーアップタイム

イ 授業サポーターの活用

 福岡市検証改善委員会から人的サポートを受けて「授業サポーター」を配置しました。授業サポーターには、各学級のドリルの採点業務、宿題点検はもとより、簡単な教材作りの補助等をしてもらいました。授業サポーターの配置によって、教師の事務量を軽減でき、授業構想や教材研究の時間を確保することにつながりました。

授業サポーターの活用(採点業務)

ウ 検証改善サイクルの確立

 本校では、小サイクル(単元単位)に加え、大サイクル(学期単位)での評価テストを計画的に実施し、検証改善サイクルを確立しようとしています。小サイクルとして、単元終了後に「単元テスト」を実施し、そのつど学年研修会において児童のつまずきを分析し、評価を行いました。さらに、大サイクルとして、各学期末に、学期全体の学習内容を網羅した、本校独自の「学期末学力実態調査」を実施しました。長期休業中に、指導法工夫改善・学力向上委員会で、その結果の分析を行い、次学期で重点化を図る内容や方法を明確にしました。平成19年度は、福岡市検証改善委員会から、物的サポートを受けて「年度末診断テスト」も2月にあわせて実施しました。4月(全国学力・学習状況調査)の結果と2月の結果を比較し、児童の学力の向上を数値的に検証することができました。

本校独自の学力実態調査 評価分布の推移(一部)

(2)家庭学習サポートプログラムに係る取組

ア 職員室前の自主学習コーナーの設置

 本校では、職員室前に机を並べ、自主学習コーナー(通称:ガンバ廊下YES!)を設置しました。これは、児童が休み時間や放課後等をつかって、学習課題(宿題を含む)を進んで仕上げることをねらいとしています。児童一人一人にポイントカードを与え、自主学習の実績が見えるようにしました。累積して10時間以上学習した児童には、認定証も渡しました。職員室前であるため、児童は、疑問点をすぐに教師に尋ねることができましたし、教師は、適宜細やかな指導や励ましができました。

午後の寺子屋でサポーターの指導を受ける児童

イ 家庭学習等支援教室の設置

 家庭学習や学校の学習につまずきがある児童を中心に、家庭学習の習慣を身につけさせるとともに、学習の補充をすることを目的として、「家庭学習等支援教室(通称:午後の寺子屋)」を設置しました。指導者(家庭学習等支援サポーター)は、退職校長2名と学生ボランティアとし、毎週火曜日15時~17時に、本校図書室を会場として実施しました。教師からみて補充が必要と思われる児童には必ず参加の促しを行いました。家庭学習等支援サポーターは、児童の疑問に応じるとともに、家庭学習の仕方等についても助言をしました。参加児童は、家庭学習課題を仕上げるとともに、算数・国語を中心に、既習の基礎的な問題に積極的に取り組むことができました。さらに、家庭での学習の習慣も身につきはじめています。

ガンバ廊下YES!で課題に取り組む児童

研究の成果と今後の課題について

(1)研究の成果

 4~6年生を対象に、「学年のはじめのころ(4月)の自分と今(3月)の自分を比べてみて」というアンケートを実施しました。設問1は学習意欲の向上、設問2は学習規律の遵守、設問3は学習内容の理解、設問4は学習習慣の形成、設問5は学習の楽しさの実感についてです。
 このアンケートの結果から、75パーセント程度の児童が自己の高まりを実感していることが分かりました。特に、学習内容の理解については、自覚の高さが読み取れました。ただし、学習習慣の形成については、現時点で二極化している傾向にあることが読み取れました。
 この結果から、福岡市「学び」向上総合プログラムにおける「日々の授業改善プログラム」及び「家庭学習サポートプログラム」に係る取組は、一定の成果があったと評価できます。
アンケートの結果

(2)今後の課題

 今後、以下のような課題が明確になりましたので、これらに焦点をあてた取組を具体化したいと考えています。

  • 一人一人の児童の学習状況を明確にし、個に応じた手だてを講じていく必要がある。
    → 個人カルテの作成と少人数指導・個別指導の一層の推進
  • 担任教師と家庭学習等支援サポーターとの連携をとり、授業と連動した家庭学習指導を行っていく必要がある。
    → 家庭学習支援連絡会の設定

-- 登録:平成21年以前 --