学校改善支援事業における取組例;岡山県検証改善委員会学校を挙げて授業研究に挑む-算数的活動の充実を図ることで、自分の考えを説明する力の育成をめざす取組-

岡山県総社市立総社中央小学校

本校の概要

 本校は、総社市のほぼ中心部に位置し、昭和55年4月に総社小学校と分離し、常盤小学校の一部を統合して開校しました。現在の校舎は昭和56年2月に移転したもので、現在は364名(平成19年7月26日現在)の児童が在籍しており、教育目標を「豊かな心をもち、たくましく生きる児童の育成」

  • 考える子…自ら進んで考え,学ぶ意欲のある子ども
  • 助け合う子…思いやりのある子ども
  • きたえる子…最後までやりとおす子ども

と定め、「知」「徳」「体」の調和のとれた児童の育成を目指して教育に取り組んでいます。

学力調査の結果に対する分析

 全国学力・学習状況調査の結果は、岡山県検証改善委員会が各学校に示した「授業改善プラン」の様式に基づいてグラフ化し、校内で分析しました。その結果、生活面では、「家の人と普段朝食、夕食を一緒に食べている」「家の人と学校での出来事について話をしている」「自分にはよいところがある」「人が困っているときは、進んで助けている」などの肯定的な回答が多く、温かな家庭に支えられて健やかに成長している様子がうかがえましたが、「学校で好きな授業がある」の肯定的な回答はやや少ない傾向が見られました。
 また、学習面では、国語に比べてやや算数に多く課題が見られ、「量と測定」の領域や数学的な考え方など思考力に課題が見られるとともに、特に「帯グラフから割合の変化の様子を読み取る」「条件を基に各曜日の代金を求めて比較する」「地図を観察して図形を見出し、面積を比較して説明する」ことなど、式やグラフを読んだり、根拠を明確にして自分の考えを説明したりする力の育成が必要であることが分かりました。

検証改善サイクル事業について

 11月に県下4会場で行われたブロック説明会でモデル校募集が始まりましたが、12月に算数を中心に取り組むモデル校として正式に委嘱を受けました。
 平成18年度まで学力向上拠点形成事業の推進校として、算数における一人一人の「分かる」という実感を大切にし、そのために一人一人の「分かり方」を考え、学習を組み立て、どの子も分かる授業を展開してきましたが、3極化の傾向が見られた本校にとって、大学教官や指導主事の継続的な支援を受けることで、課題として残ったことを改善するよい機会ととらえ、新たに研究をスタートしました。
 とは言え、モデル校事業は1月末から2月中旬までの岡山大学教育学部の平井安久准教授と岡山県総合教育センターの楠博文指導主事による3回の授業研究によって、2月25日に授業公開と研究協議を行う研究会を実施するという短期集中の取組でした。
 授業改善に集中するために、研究会の当日は学習指導案だけを用意し、研究発表は3回の授業研究の様子を収録したビデオを検証改善委員会が編集したものを上映し、運営や案内などもお任せしました。

学校改善支援促進事業に係るモデル校

 研究は、高学年部会と低学年部会の2部会を設け、それぞれ平井准教授と楠指導主事の指導を受けながら、改善の視点を定め、教材研究や模擬授業に取り組んだ結果、次のような実践を行いました。

<第4学年「変わり方」/問題解決の学習における練り上げの改善>

授業改善の視点

  •  表を見ることで2量の変わり方やきまりを見つけ、きまりをことばやしかくまるを用いたに表す活動を取り入れた授業づくりをする。
  •  根拠を明らかにしながら、自分の考えを分かりやすく説明する活動を重視した授業づくりをする。

【指導のねらい】

 表から変わり方のきまりを見つけて、しかくまるを用いた式に表すことができる。

【主な学習活動】

課題(めあて)把握

 表に整理すれば、きまりが見つけられそうだという見通しを持つ

  • 段の数につられて変わる数にはどんなものがあるかを最初に考えた上で、段の数と周りの長さの変化のきまりを考えるというめあてをつかむ。

自力解決

 段の数と周りの長さの関係を表に整理し、それらの変わり方のきまりを考える

  • 図を見て、具体的に数えて表を完成させる。
  • 矢印や数字等を書き込みながら自分の考えを整理する。
  • 見つけたかわり方のきまりについて2、3人のグループで話し合う。

全体での話し合い

 見つけたきまりについて、話し合い、考えを深める。

  • 表と関連付けて自分の見つけたきまりを説明する。
  • まだ十分でない児童の説明に続けて、付け足しや言い換えをしながら説明する。
  • 児童は自分の考えと友達の考えの類似点・相違点・補充点を考えながら聞くようにする。
  • 見つけたきまりを文章や言葉の式で表し、しかくまるの記号を用いた式に表す。

まとめ

 本時の学習で分かったことをまとめる

  • 対応関係にある2量が何かを考え、表に整理すると変わり方のきまりを見つけることができることをまとめる。

【実践上の留意点】

  •  本時は、表を見てしかくかける4イコールまるというきまりに気付くこと、すなわち、最終的には問題面を理解して「式を立てる」活動を中心とした授業づくりをする。式表現から問題場面対応させる「式を読む」活動、すなわち「なぜ4倍かという理由が分かること」は、次以降で扱うようにする。
  •  表からきまりを見つける段階では、いろいろな見方が出てくると予想されるが、いろろな見方だけの議論にならないようにする。表を見てきまりに気付き、そのきまりをしかく4イコールまるのように表現できるという展開へ進む過程を重視する。ただし、もし子どもが表ら見つけたいろいろなきまりをなんらかの基準で比較して、「段の数かける4イコール周りの長さ」いうきまりの表現が一番便利であるという考えにつながるような授業展開をすると、既知識と新しい話題とを不自然な価値観でつなげることになりかねないので注意する。
  •  方法や理由等を説明する活動を重視した授業づくりをする。具体的には、自分の考え友だちの考えとの違いを正確な表現で説明できるようにする。

<第3学年「重さ」/問題解決の学習における課題把握、練り上げの改善>

授業改善の視点

  •  子どもがめあてをつかみ、主体的に測定の仕方を考える操作的な算数的活動を取り入た授業づくりをする。
  •  なぜその方法で正しく重さの順位が決まるのかなどについて、単位の幾つ分を根拠に明し合う授業づくりをする。

【指導のねらい】

 重さを数値化する必要性や明確・的確に表すことができるよさに気付く。また、重さの比較や測定の方法について、長さの場合の直接比較、間接比較、任意単位による測定、遍単位による測定などを用いて考える。

【主な学習活動】

課題(めあて)把握

 任意単位を使えば、重さの順位を決められそうだという見通しを持つ

  • まず、天秤を使って、3匹の魚の直接比較をする。
  • 次に、5匹の魚の重さの順番も同じ方法で測定できないかを考える。
  • 教師が提示した任意単位(洗濯ばさみ、釘、クリップ(1グラム)の3種類)を見ることで、「これらを使えば魚の重さの順位決めることができそうだ」という見通しを持つ。

自力解決

 任意単位を使って測定する

  • 提示された任意単位をどのように使えば、重さの順位を決めることができるか、天秤を操作しながら考える。
  • 何を使って測定するのがよいかをグループで話し合いながら測定をする。

全体での話し合い

 なぜ、順位を決めることができたかその理由を話し合う

  • クリップ1種類で測定している例と、洗濯ばさみとクリップなど複数の単位を用いて測定している例を比較し、いずれの考えでも単位の幾つ分の考えを用いれば、重さの順位を決めることができる理由を話し合う。

まとめ

 本時の学習で分かったことをまとめる

  • 同じ重さの幾つ分を調べれば、重さの順位を正確に早く調べることが可能になることをまとめる。

【実践上の留意点】

  •  魚の数が増えると直接比較することが難しいと感じた瞬間に、準備した任意単位を提することで、任意単位の幾つ分かで量れば重さの順番を早く決めることができそうだとう見通しを持たせる。
  •  測定活動する魚の重さは、すべて整数値で作成する。また、反応例が多様になり過ぎいようにするために、教師が提示する任意単位は、3種類に限定する。
  •  グループで測定した結果を発表する際には、一つの任意単位(クリップ)のみで測定た結果と、2種類の任意単位を用いて測定した結果を取り上げ、いずれの考えもなぜ重の順番を決めることができたのかを説明させることで、同じ重さの幾つ分という考え(位の考え)を用いるよさを確かめやすくする。
  •  反応例の一部分を大きく提示するなど、比較する場所を焦点化することで、二つの考えに共通した測定のアイデアを見付けやすくする。
  •  長さやかさの学習と似ていることはないかを問い、本時に発見した測定方法は、それらと同じ考え方をしていることに気付かせる。
【板書】

研究の成果と課題について

 岡山県検証改善委員会には、本校の改善計画に対して主体性を尊重いただきながら、有益な支援を得ることができました。特に委員を交えた授業研究は、深い教材研究と指導方法の改善、教材にかかわる児童の認識の在り方などをつかむことにつながりました。また、学習指導要領の改訂で重視されている点や岡山県全体の課題と本校の課題を関連付けながら整理していただいたことで、研究の方向性が明確になり、研修意欲の向上につながりました。
 そして、根拠・理由を挙げて論理的に分かりやすく表現する力の育成のために、言葉に加えて絵や数、図、表、グラフ、式を活用して自分の考えを構想し、それらを関連付けて説明したり、図や表などを書きながら説明したり、小集団で算数的活動を通して説明したりする場を設けたりすることが有効ではないかとの感触を得ることができました。
 また、友だちの書いた図や式などを見て友だちの考えを分かろうとする力の育成のために、自分の解法、考え方との違いに着目して聞く「聞き方指導」を導入することを積み重ねることが必要ではないかということも分かり始めています。
 短期間の取組だったため、不十分な点が多く、研究成果が検証できていませんが、御教示いただいた「式や表をよむ活動」「式や表に表す活動」などを取り入れた学習を引き続き研究していきたいと考えています。

-- 登録:平成21年以前 --