学校図書館

小川 三和子さん(新宿区立津久戸小学校 司書教諭)

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『八郎』(絵本)
 斎藤 隆介/作 滝平 二郎/画
小川 三和子さん
(新宿区立津久戸小学校 司書教諭)

 今考えると、私の子ども時代は、テレビ漬け・漫画漬けの毎日だったように思う。それでも、貸本屋や学校図書館から本を借り、たまには、親も本を買ってくれた。小学校高学年の頃、漫画雑誌に少女小説が載っており、吉田としさんの「あした真奈は」をどきどきしながら読んだ記憶がある。小学生では「若草物語」(オルコット)、中学生では「車輪の下」(ヘルマン・ヘッセ)「嵐が丘」(エミリー・ブロンテ)高校生では「あゝ野麦峠」(山本茂実)「アユの話」(宮地伝三郎)などが記憶にあるが、それほど読書家ではなく、活字を読むことに対し、とても苦手意識があった。
 大学3年生の時、教員志望の私は、「自分のような子どもを作ってはいけない。」と、数名の友人と児童文学のゼミナールを始めた。国語教育の先生に顧問になっていただき、卒業論文は、文学教育がテーマだった。
 そこで出会ったのが斎藤隆介さんの絵本「八郎」である。滝平二郎さんの力強い切り絵と東北なまりの語り口にすっかりはまってしまった。東京生まれの私が語っても違和感がないのは、方言で表現しているというより、方言の語り口を借りて一つ一つの言葉を磨き上げて表現しているせいではないだろうか。
 みんなで作品について語り合った。そこで、「本当の優しさとは強さである」「本当に強い人は、本当に優しい」ということを学んだ。大男の八郎は、心優しい若者であった。心底優しい八郎は、村の子どもや人びとのために自ら山をかかえて海の中に入っていく。
 かつて、担任した児童に、身体が大きくて柔道がとても強い男の子がいた。その子は、まじめで、勉強熱心で、決して怒らず、誰に対してもとても優しい子だった。「本当に強い子は、いつも優しいんだな。」と、思った。


──子どもたちに対する読書メッセージ
 先日、学校図書館から、6年生に読んでもらいたい絵本を教室に貸し出しました。絵本は、小さな子ども向けだけでなく、高学年向けや中学生・高校生・大人向けの絵本もあります。書かれている内容・言葉での表現・絵・装丁など、丸ごと楽しんでください。
 
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-- 登録:平成21年以前 --