学校図書館

4.学校図書館の活用高度化に向けた視点と取組等

1.視点と取組

○ 以上のように、学校図書館に対しては、最近の情勢を受けた様々な教育的・社会的要請が寄せられている。こうした要請に応えるためには、学校図書館のより一層の機能の向上を図り、その活用を高度化していくことが必要となる。

○ 本会議においては、これらの新しい要請を踏まえ、学校図書館の機能とその活用に関し、今後求められる方向性を、次の6つの視点から捉えることとした。

視点1:学校図書館が中心となり、学校における読書活動を多様に展開する。

視点2:家庭や地域における読書活動推進の核として、学校図書館を活用する。

視点3:「学び方を学ぶ場」としての学校図書館の整備を進める。 

視点4:学校図書館の教員サポート機能を充実させる。

視点5:「いつでも開いている図書館、必ず誰かいる図書館」を実現し、「心の居場所」となる学校図書館づくりを進める。

視点6:放課後の学校図書館を地域の子どもたち等に開放する。

○ これらの視点に立ち、活用の高度化を進める上で、考えられる取組の例について、以下のとおり提言したい。

(1)「読書センター」機能の更なる発展

視点1.学校図書館が中心となり、学校における読書活動を多様に展開する。

〔考えられる取組の例〕
  • 異校種間・異学年間の連携等による取組を推進する(校種横断による継続的な読書指導計画の策定、上級生による読み聞かせの実施など)。
  • 読書活動を推進している地域の団体等の協力を得て、特色ある取組を展開する。
  • 中学生・高校生向けの効果的な読書指導の方法・活動プログラム等を開発する。
  • 読書の面白さを知った児童生徒に対し、さらに、読書の幅を広げる指導を行うための取組を充実させる。
  • 多様な取組事例に関する広報・情報提供を進める。

など

視点2.家庭や地域における読書活動推進の核として、学校図書館を活用する。

〔考えられる取組の例〕
  • 「読書だより」の発行、学校図書館ホームページの開設等を通じ、家庭向け・地域向けの発信を行う。
  • 例えば「子ども読書の日(4月23日)」等に合わせ、地域・家庭向けのキャンペーンやイベント等を実施する。
  • 親子貸出しの実施、親子参加による読書交流会の開催などを通じ、家庭内における読書文化の醸成を支援する。
  • 放課後開放された小学校の学校図書館で、地域の高校生が読み聞かせを行うなど、読書を通じた交流活動を展開する。
  • 「地域開放型」学校図書館の運営に関するノウハウの蓄積と普及を図る。
  • 学校図書館が窓口となって、地域の団体や公立図書館等との連携を推進する。

など

(2)「学習・情報センター」機能の更なる発展

視点3.「学び方を学ぶ場」としての学校図書館の整備を進める。

〔考えられる取組の例〕
  • 各教科等における言語活動や本を使って調べる学習等の取組を、学校図書館の活用により効果的に行う方法等について、調査研究を進める。
  • 司書教諭等による図書館利用指導の手法をさらに発展させ、児童生徒の情報活用能力を育てる効果的な指導方法を開発して、その普及を図る。
  • 情報教育と連携した学校図書館活動の効果的な取組等を開発・普及する。
  • 図書以外にも新聞、雑誌、 DVD、情報ファイル等を整備する。
  • 各種事典、図鑑、データブック、年鑑等の参考図書や郷土資料等を整備する。
  • 学校図書館の図書を使って学習を行うための参考調査室(「調べる学習室」など)を整備する。

など

視点4.学校図書館の教員サポート機能を充実させる。

〔考えられる取組の例〕
  • 教員向けのレファレンスや、授業で使う教材・資料の取寄せサービス等を実施する。
  • 地域の公共図書館や他校の学校図書館に加え、教育センターとの資源共有・物流のシステムを構築する。
  • 文部科学省、教育委員会、他の学校や各種教育研究団体等から配布される各種指導資料等の中から、重要なものを選択し、整理・保存して教員が利用できるようにする。
  • 教員が作成した指導案等の資料を蓄積し、活用できるようにする。
  • 教員用の研究スペース・設備を設ける。
  • 各教員が学校図書館を活用した授業を行う際には、司書教諭等が必要な助言を与えることのできる体制を整備する。
  • 学校図書館を活用した授業や読書活動等に関する校内研修等を主催する。

など

(3)学校図書館を活用した子どもの居場所づくり

視点5.「いつでも開いている図書館、必ず誰かいる図書館」を実現し、「心の居場所」となる学校図書館づくりを進める。

〔考えられる取組の例〕
  • 司書教諭、学校司書又はボランティアなど、大人が昼休みや放課後に常駐する体制を確立する。
  • 児童生徒による図書委員会の活動を組織化し、司書教諭等による人的体制の補充として、学校図書館運営へ主体的に参画させる。
  • 自由な読書のためのゆったりとしたスペースを設けたり、談話室を隣に設けたりする。

など

視点6.放課後の学校図書館を地域の子どもたち等に開放する。

〔考えられる取組の例〕
  • 放課後児童クラブが併設された小学校等において、地域の子ども向けの図書館開放を進める。
  • 過疎地域等におけるスクールバス通学児童生徒のために、学校図書館が放課後の活動の場を提供する。
  • 「地域開放型」学校図書館の運営に関するノウハウの蓄積と普及を図る〔再掲〕。

など

2.高度化推進に向けての留意点等

(1)学校における組織的な推進体制の整備

○ 学校図書館の活性化を図る上で、また、上記1に掲げるような活用高度化に向けた取組が効果を上げるためにも、学校全体としてのマネジメントが重要となる。

○ 学校図書館の運営や読書活動の展開に関し、校長のリーダーシップの下、学校全体で組織的に取り組む体制を整備することが求められる。

〔留意点〕

※学校図書館の重要性について共通理解を深め、司書教諭を中心に、すべての教員や学校司書等が、適切な役割分担の下、協力して、学校図書館を充実させる。

※学校の教育目標や経営方針を実現するに当たって、学校図書館をどのように位置付けるかを明確にする。そのために、学校図書館自体の活動目標を設定する。

※蔵書整備に当たっては、司書教諭等が単独で蔵書の選定を行うのでなく、他の教員等の要望も反映されるようにする(例えば、「図書選定委員会」を組織して選定する、「図書選定基準」を定めるなど)。

(2)教育委員会による条件整備・支援

ア 現状と課題

○ 各学校における学校図書館活動を推進する上で、また、上記1に掲げるような取組を進めていく上でも、教育委員会による条件整備やソフト面での支援は不可欠である。
 とりわけ、学校図書館は、子どもの様々な興味・関心、教員の幅広いニーズ等に応えながら、適切な指導やサービスを行っていかなければならず、その業務には相当の専門性が求められる。条件整備・支援に当たっては、こうした多様かつ専門的・技術的な要求にも十分対応できるだけの体制を確立していくことが重要となる。

○ 一方、学校図書館の条件整備についての現状を見れば、例えば、小・中学校等における図書整備の目標である「学校図書館図書標準」を達成した学校数は、平成18年度末現在、4割程度に止まっている(※6)。

○ また、人的体制についても、学校図書館法に基づく司書教諭の配置に関しては、12学級以上の学校ではほぼ全校で配置されているものの、配置の義務付けが猶予されている11学級以下の学校での配置率は未だ2割程度となっている(※7)。
 12学級以上の学校でも、司書教諭が、図書館業務以外にも様々な業務を抱える中で十分な機能を発揮できず、その職の存在自体が形骸化している学校も少なくないと言われる。

○ さらに、学校図書館の業務の専門性にかんがみれば、専門的な知識・技能を有する担当職員である、いわゆる「学校司書」の役割が重要となる。学校図書館担当職員については、現在、その職務内容の実態等は様々となっているが、「学校司書」として、図書の貸出、返却、目録の作成等の実務のほか、資料の選択・収集や、図書の紹介、レファレンスへの対応、図書館利用のガイダンスなど、専門性を求められる業務において大きな役割を担っている例が少なくない。
 しかしながら、とりわけ小・中学校においては、何らかの形の学校図書館担当職員を置いている小・中学校は、全体の4割未満に止まっており、その勤務形態も非常勤が中心であって、専門的な人材を確保できていない学校が未だ多くを占めている。また、高等学校については、従来より、常勤の学校図書館担当職員を置くことが一般的となっているが、学校の教育活動全体に寄与するような役割を十分果たし得ていないとの指摘もあるほか、近年では、その配置率も低下傾向にある(※8)。

イ 求められる条件整備・支援

○ 学校図書館の人的・物的体制の整備は、上のような現状を踏まえつつ、設置者たる教育委員会において責任を持って進める必要がある。各教育委員会においては、その設置する学校の学校図書館について、次のような措置を積極的に講ずることが望まれる。

〔人的体制〕

※各学校に専門的な人材による体制を確立する。
~(有資格者の配置を受けた)司書教諭の発令の促進
~「学校司書」の配置、担当職員の常勤化、非常勤職員の配置時間の充実
~司書教諭や「学校司書」の業務を支える体制の整備など
※教育委員会における指導主事等の学校図書館担当職員の体制を強化する。

〔物的体制〕

※学校図書館図書標準の達成を目指した図書整備を進め、多様な図書資料を充実させる。
※情報化の推進など、学校図書館の施設整備を充実させる。

○ さらに、都道府県・市町村の教育委員会において、「学校図書館支援センター」等に関するモデル事業の成果等も踏まえつつ、それぞれの地域の実情に応じ、例えば次のような側面から、学校図書館への支援を積極的に行う必要がある。

※地域における図書資料の資源共有を促進する。
~公立図書館による団体貸出し・学校間の相互貸借の実施、物流システムの構築とその機能強化など
※教育センターと学校図書館との連携体制を構築する。
~教育センターにおける担当部門の開設、地域の図書館ネットワークの中への教育センターの取込みなど
※研修機会を充実させ、学校図書館のスタッフ職員の資質向上や、校長等管理職の理解増進を図る。
~スタッフ職員のための研修会の開催、他校のスタッフ職員との交流の場の提供など
~学校図書館、読書活動等に関する研修の管理職研修への組入れなど
※読書ボランティア等の養成・訓練を行う。
~ボランティア団体への支援、研修会の開催など

○ なお、教育委員会が学校図書館への支援を進めるに当たり、公立図書館の資源・機能をいかに活用していくかは重要な鍵となる。公立図書館にあっては、その蔵書の貸出しだけでなく、物流の提供や研修への協力等を通じ、地域の学校に対する支援を率先的に行うことが期待される。

(3)国による調査研究とその成果等の普及

○ 国においては、学校図書館へ新たな要請に応える先導的な取組について、調査研究を実施し、そのノウハウの蓄積を進めるとともに、そこで得られた成果等を元に各学校・教育委員会等に向けた情報提供を行い、学校図書館機能の高度化に向けた取組を促進していくことが求められる。


※6 平成18年度末現在、学校図書館図書標準を達成している学校(公立)の割合は、小学校で42.0%、中学校で36.8%(「平成19年度学校図書館の現状に関する調査」文部科学省)。

※7 平成19年5月現在、12学級以上の学校(公立)における司書教諭の発令割合は、小学校で99.3%、中学校で98.9%、高等学校で97.0%であるのに対し、11学級以下の学校における発令割合は、小学校で17.4%、中学校で21.4%、高等学校で16.0%となっている(「平成19年度学校図書館の現状に関する調査」文部科学省)。

※8 学校図書館担当職員(教諭やボランティアを除く。)を配置している学校(公立)の割合は、平成19年5月現在、小学校で35.6%、中学校で35.4%となっており、配置されている職員の勤務形態については、小学校で80.8%、中学校で77.5%が非常勤となっている。高等学校(公立)については、平成17年5月時点で76.1%の学校に学校図書館担当職員が置かれていたが、平成18年5月には74.6%、平成19年5月には73.4%と低下してきている。なお、高等学校の学校図書館担当職員のうち非常勤職員の割合は、平成19年5月現在、10.4%となっている(「平成19年度学校図書館の現状に関する調査」文部科学省)。

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