○ 以上のように、学校図書館に対しては、最近の情勢を受けた様々な教育的・社会的要請が寄せられている。こうした要請に応えるためには、学校図書館のより一層の機能の向上を図り、その活用を高度化していくことが必要となる。
○ 本会議においては、これらの新しい要請を踏まえ、学校図書館の機能とその活用に関し、今後求められる方向性を、次の6つの視点から捉えることとした。
視点1:学校図書館が中心となり、学校における読書活動を多様に展開する。
視点2:家庭や地域における読書活動推進の核として、学校図書館を活用する。
視点3:「学び方を学ぶ場」としての学校図書館の整備を進める。
視点4:学校図書館の教員サポート機能を充実させる。
視点5:「いつでも開いている図書館、必ず誰かいる図書館」を実現し、「心の居場所」となる学校図書館づくりを進める。
視点6:放課後の学校図書館を地域の子どもたち等に開放する。
○ これらの視点に立ち、活用の高度化を進める上で、考えられる取組の例について、以下のとおり提言したい。
視点1.学校図書館が中心となり、学校における読書活動を多様に展開する。
など
視点2.家庭や地域における読書活動推進の核として、学校図書館を活用する。
など
視点3.「学び方を学ぶ場」としての学校図書館の整備を進める。
など
視点4.学校図書館の教員サポート機能を充実させる。
など
視点5.「いつでも開いている図書館、必ず誰かいる図書館」を実現し、「心の居場所」となる学校図書館づくりを進める。
など
視点6.放課後の学校図書館を地域の子どもたち等に開放する。
など
○ 学校図書館の活性化を図る上で、また、上記1に掲げるような活用高度化に向けた取組が効果を上げるためにも、学校全体としてのマネジメントが重要となる。
○ 学校図書館の運営や読書活動の展開に関し、校長のリーダーシップの下、学校全体で組織的に取り組む体制を整備することが求められる。
※学校図書館の重要性について共通理解を深め、司書教諭を中心に、すべての教員や学校司書等が、適切な役割分担の下、協力して、学校図書館を充実させる。
※学校の教育目標や経営方針を実現するに当たって、学校図書館をどのように位置付けるかを明確にする。そのために、学校図書館自体の活動目標を設定する。
※蔵書整備に当たっては、司書教諭等が単独で蔵書の選定を行うのでなく、他の教員等の要望も反映されるようにする(例えば、「図書選定委員会」を組織して選定する、「図書選定基準」を定めるなど)。
○ 各学校における学校図書館活動を推進する上で、また、上記1に掲げるような取組を進めていく上でも、教育委員会による条件整備やソフト面での支援は不可欠である。
とりわけ、学校図書館は、子どもの様々な興味・関心、教員の幅広いニーズ等に応えながら、適切な指導やサービスを行っていかなければならず、その業務には相当の専門性が求められる。条件整備・支援に当たっては、こうした多様かつ専門的・技術的な要求にも十分対応できるだけの体制を確立していくことが重要となる。
○ 一方、学校図書館の条件整備についての現状を見れば、例えば、小・中学校等における図書整備の目標である「学校図書館図書標準」を達成した学校数は、平成18年度末現在、4割程度に止まっている(※6)。
○ また、人的体制についても、学校図書館法に基づく司書教諭の配置に関しては、12学級以上の学校ではほぼ全校で配置されているものの、配置の義務付けが猶予されている11学級以下の学校での配置率は未だ2割程度となっている(※7)。
12学級以上の学校でも、司書教諭が、図書館業務以外にも様々な業務を抱える中で十分な機能を発揮できず、その職の存在自体が形骸化している学校も少なくないと言われる。
○ さらに、学校図書館の業務の専門性にかんがみれば、専門的な知識・技能を有する担当職員である、いわゆる「学校司書」の役割が重要となる。学校図書館担当職員については、現在、その職務内容の実態等は様々となっているが、「学校司書」として、図書の貸出、返却、目録の作成等の実務のほか、資料の選択・収集や、図書の紹介、レファレンスへの対応、図書館利用のガイダンスなど、専門性を求められる業務において大きな役割を担っている例が少なくない。
しかしながら、とりわけ小・中学校においては、何らかの形の学校図書館担当職員を置いている小・中学校は、全体の4割未満に止まっており、その勤務形態も非常勤が中心であって、専門的な人材を確保できていない学校が未だ多くを占めている。また、高等学校については、従来より、常勤の学校図書館担当職員を置くことが一般的となっているが、学校の教育活動全体に寄与するような役割を十分果たし得ていないとの指摘もあるほか、近年では、その配置率も低下傾向にある(※8)。
○ 学校図書館の人的・物的体制の整備は、上のような現状を踏まえつつ、設置者たる教育委員会において責任を持って進める必要がある。各教育委員会においては、その設置する学校の学校図書館について、次のような措置を積極的に講ずることが望まれる。
※各学校に専門的な人材による体制を確立する。
~(有資格者の配置を受けた)司書教諭の発令の促進
~「学校司書」の配置、担当職員の常勤化、非常勤職員の配置時間の充実
~司書教諭や「学校司書」の業務を支える体制の整備など
※教育委員会における指導主事等の学校図書館担当職員の体制を強化する。
※学校図書館図書標準の達成を目指した図書整備を進め、多様な図書資料を充実させる。
※情報化の推進など、学校図書館の施設整備を充実させる。
○ さらに、都道府県・市町村の教育委員会において、「学校図書館支援センター」等に関するモデル事業の成果等も踏まえつつ、それぞれの地域の実情に応じ、例えば次のような側面から、学校図書館への支援を積極的に行う必要がある。
※地域における図書資料の資源共有を促進する。
~公立図書館による団体貸出し・学校間の相互貸借の実施、物流システムの構築とその機能強化など
※教育センターと学校図書館との連携体制を構築する。
~教育センターにおける担当部門の開設、地域の図書館ネットワークの中への教育センターの取込みなど
※研修機会を充実させ、学校図書館のスタッフ職員の資質向上や、校長等管理職の理解増進を図る。
~スタッフ職員のための研修会の開催、他校のスタッフ職員との交流の場の提供など
~学校図書館、読書活動等に関する研修の管理職研修への組入れなど
※読書ボランティア等の養成・訓練を行う。
~ボランティア団体への支援、研修会の開催など
○ なお、教育委員会が学校図書館への支援を進めるに当たり、公立図書館の資源・機能をいかに活用していくかは重要な鍵となる。公立図書館にあっては、その蔵書の貸出しだけでなく、物流の提供や研修への協力等を通じ、地域の学校に対する支援を率先的に行うことが期待される。
○ 国においては、学校図書館へ新たな要請に応える先導的な取組について、調査研究を実施し、そのノウハウの蓄積を進めるとともに、そこで得られた成果等を元に各学校・教育委員会等に向けた情報提供を行い、学校図書館機能の高度化に向けた取組を促進していくことが求められる。
※6 平成18年度末現在、学校図書館図書標準を達成している学校(公立)の割合は、小学校で42.0%、中学校で36.8%(「平成19年度学校図書館の現状に関する調査」文部科学省)。
※7 平成19年5月現在、12学級以上の学校(公立)における司書教諭の発令割合は、小学校で99.3%、中学校で98.9%、高等学校で97.0%であるのに対し、11学級以下の学校における発令割合は、小学校で17.4%、中学校で21.4%、高等学校で16.0%となっている(「平成19年度学校図書館の現状に関する調査」文部科学省)。
※8 学校図書館担当職員(教諭やボランティアを除く。)を配置している学校(公立)の割合は、平成19年5月現在、小学校で35.6%、中学校で35.4%となっており、配置されている職員の勤務形態については、小学校で80.8%、中学校で77.5%が非常勤となっている。高等学校(公立)については、平成17年5月時点で76.1%の学校に学校図書館担当職員が置かれていたが、平成18年5月には74.6%、平成19年5月には73.4%と低下してきている。なお、高等学校の学校図書館担当職員のうち非常勤職員の割合は、平成19年5月現在、10.4%となっている(「平成19年度学校図書館の現状に関する調査」文部科学省)。
総合教育政策局地域学習推進課
-- 登録:平成21年以前 --