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資料7 「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」【第2次】(案)について

子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(案)【第二次】

平成20年_月

 この計画は,子どもの読書活動の推進に関する法律(平成13年法律第154号)第8条第2項の規定に基づき,国会に報告するものである。

子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画【第二次】(案)-目次-

  • 第1章 はじめに
  • 第2章 第一次基本計画期間における取組・成果と課題
    1. 第一次基本計画期間における取組・成果
    2. 第一次基本計画期間における課題
    3. 第一次基本計画策定後の子どもの読書活動を取り巻く情勢の変化
      • (1)教育基本法・学校教育法の改正
      • (2)文字・活字文化振興法の成立
      • (3)情報化社会の進展
      • (4)地方分権の進展
  • 第3章 基本的方針
    1. 子どもの自主的な読書活動の推進
    2. 家庭,地域,学校を通じた社会全体での取組の推進
    3. 子どもが読書に親しむ機会の提供と諸条件の整備・充実
    4. 子どもの読書活動に関する理解と関心の普及
  • 第4章 子どもの読書活動の効果的な推進に必要な事項
    1. 推進体制等
      • (1)国における子どもの読書活動推進体制の整備
      • (2)地域における子どもの読書活動推進体制の整備
      • (3)民間団体間の連携・協力の促進に対する支援
    2. 財政上の措置
  • 第5章 子どもの読書活動の推進のための方策
    • 家庭における子どもの読書活動の推進
      1. 子どもの読書活動の推進における家庭の役割
      2. 家庭における子どもの読書活動の推進のための取組
        • (1)家庭における理解の促進
        • (2)家庭に向けた情報提供
    • 地域における子どもの読書活動の推進
      • 【図書館】
        1. 子どもの読書活動の推進における図書館の役割
        2. 公立図書館における子どもの読書活動の推進のための取組
          • (1)「公立図書館の設置及び運営上望ましい基準」の実践
          • (2)地域の読書活動を支えるキーステーションとしての取組
            1. 読書活動に関する情報提供
            2. 公立図書館や関係機関等の間の連携・協力
            3. 学校図書館との連携・協力
        3. 子どもの読書活動の推進のための公立図書館等の機能強化
          • (1)公立図書館の整備
          • (2)公立図書館の資料,施設,設備等の整備・充実
            1. 図書等資料の整備
            2. 移動図書館車の整備
            3. 図書館の情報化
            4. 児童室等の整備
            5. 障害のある子どものための諸条件の整備・充実
          • (3)公立図書館の司書の養成・研修
            1. 司書の養成と適切な配置
            2. 司書の研修の充実
      • 【その他】
        1. 子どもの読書活動の推進における児童館の役割
        2. 子どもの読書活動の推進における大学図書館の役割
        3. 子どもの読書活動の推進における「国際子ども図書館」の役割
    • 学校等における子どもの読書活動の推進
      • 【幼稚園等】
        1. 子どもの読書活動の推進における幼稚園や保育所等の役割
        2. 幼稚園や保育所等における子どもの読書活動の推進のための取組
      • 【小・中・高等学校等】
        1. 子どもの読書活動の推進における学校の役割
        2. 学校における子どもの読書活動の推進のための取組
          • (1)児童生徒の読書習慣の確立・読書指導の充実
          • (2)障害のある子どもの読書活動の推進
          • (3)家庭・地域との連携による読書活動の推進
        3. 子どもの読書活動の推進のための学校図書館等の機能強化
          • (1)学校図書館の資料,施設,設備等の整備・充実
            1. 学校図書館資料の整備・充実
            2. 学校図書館施設・設備の整備・充実
            3. 学校図書館の情報化
          • (2)学校図書館の活用を推進していくための人的配置の推進
            1. 司書教諭の配置
            2. 学校図書館担当職員の配置
    • 民間団体の活動に対する支援
      1. 子どもの読書活動の推進における民間団体の役割
      2. 民間団体の活動に対する支援
    • 普及啓発活動
      1. 啓発広報の推進
        • (1)「子ども読書の日」を中心とした全国的な啓発広報の推進
        • (2)各種情報の収集・提供
      2. 優れた取組の奨励
        • (1)優れた取組に対する表彰等
        • (2)優良な図書の普及

第1章 はじめに

 読書活動は,「子どもが,言葉を学び,感性を磨き,表現力を高め,創造力を豊かなものにし,人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことができないもの」(子どもの読書活動の推進に関する法律第2条)であり,社会全体でその推進を図っていくことは極めて重要である。
 子どもの読書活動を推進するため,これまでも様々な取組がなされてきた。例えば,平成11年8月には,読書の持つ計り知れない価値にかんがみ,子どもの読書活動を国を挙げて支援するため,平成12年を「子ども読書年」とする旨の衆参両院の決議がなされた。平成12年1月には,国際的連携の下に子どものための図書館サービスを実施するため,国立国会図書館の支部図書館として「国際子ども図書館」が設立され,同年5月に開館した。
 さらに,国全体として子どもの読書活動を推進していくため,平成13年11月,議員立法により法案が国会に提出され,同年12月に「子どもの読書活動の推進に関する法律」(以下,「法律」という。)として公布・施行された。この法律は,子どもの読書活動の推進に関し,基本理念を定め,国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに,国が「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」を策定・公表すること,地方公共団体が「子どもの読書活動の推進に関する施策についての計画」を策定・公表すること,4月23日を「子ども読書の日」とすること等を定めることにより,施策の総合的かつ計画的な推進を図り,もって子どもの健やかな成長に資することを目的としている。
 また,法律第8条第1項の規定に基づき,平成14年8月,政府は,すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において,自主的に読書活動を行うことができるよう,積極的にそのための環境の整備を推進することを基本理念とする「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」(以下,「第一次基本計画」という。)を定め,これを国会に報告した。
 第一次基本計画期間中においては,平成17年に文字・活字文化振興法が成立したことを受けて,その後,文字・活字文化の振興に関する施策の推進も図られてきた。さらに,平成18年には約60年ぶりに教育基本法が改正され,これを受けて,平成19年には学校教育法等教育関連3法が改正されるなど,教育の基本理念にかかわる法律の改正が行われた。また,平成18年には,社会総がかりによる教育再生を目指し,教育の基本にさかのぼった改革を検討する「教育再生会議」が内閣に設置されるなど、子どもの読書活動に関連する法制備等が進んだ。
 他方,第一次基本計画期間中においては,例えば,学校における一斉読書活動の普及,公立図書館における貸出冊数の増加など,子どもの読書活動は進んだところである。しかし,依然として,小学校,中学校,高校と学校段階が進むにつれて子どもたちが読書をしなくなる傾向にある点や,地方公共団体の取組状況に大きな差が見られる点などの課題は解決されていない。さらに,平成16年と平成19年に公表されたOECD生徒の学習到達度調査により,我が国の子どもたちの読解力の向上が課題であることも明らかになった。
 このような第一次基本計画期間における諸情勢の変化や成果,課題等を検証した上で,ここに新たな「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」(以下,「本計画」という。)を定めることとする。本計画は,今後おおむね5年間にわたる施策の基本的方向と具体的な方策を明らかにするものである。なお,本計画中の数値目標は,子どもの読書活動の推進に必要と考えられる施策を行う上での取組の目安として掲げるものであり,地方公共団体に対して,数値目標の達成について特段の施策の実施を義務付けるものではない。

第2章 第一次基本計画期間における取組・成果と課題

1 第一次基本計画期間における取組・成果

 第一次基本計画期間において,以下のような取組が進んだ。

  1. 平成18年度末時点において,全都道府県において法律第9条に基づく「都道府県子ども読書活動推進計画」(以下,「都道府県推進計画」という。)が定められた。
  2. 公立図書館と連携している学校が大幅に増加した(平成14年度:45.5パーセント,平成18年度:52.5パーセント)。
  3. 平成15年度から12学級以上の学校に司書教諭が必置となり,12学級以上のほとんどの学校で発令されている。また,学校においてボランティアとの連携・協力が進み,特に,小学校におけるボランティアの活用が進んだ(平成14年度:35.2パーセント,平成18年度:69.6パーセント)。
  4. 学校図書館における図書数が増加するとともに(平成14年度から約1,550万冊増加),図書のデータベース(注1)化が進んだ(平成14年度:26.9パーセント,平成18年度:41.5パーセント)
  5. 平成14年度から平成18年度にかけて,「子どもゆめ基金」(注2)により,子どもの読書活動を支援する1,685団体への助成が行われた。

 第一次基本計画期間における成果としては,以下のようなものが挙げられる。

  1. 平成13年度,15年度に行われた教育課程実施状況調査及び19年度に行われた全国学力・学習状況調査によると,平日における読書を「全くしない」と答えた割合は,小学生・中学生いずれも減少傾向にある。特に,中学生の減少は著しく,平成13年度から19年度にかけて約17ポイントの減少となった。また,平成14年度,15年度,17年度に高校生を対象に行われた教育課程実施状況調査においても,若干の減少傾向が見られた。
  2. 公立図書館では,児童への貸出冊数が増加する(平成13年度:12,500万冊,平成16年度13,500万冊)とともに,児童の帯出者数も増加した(平成13年度:2,200万人,平成16年度:2,400万人)。児童室を有する図書館数も増加した(平成14年度:1,751館,平成17年度:1,870館)。
  3. 全校一斉の読書活動を行う学校が大幅に増加した(平成14年度:74.3パーセント,平成18年度:84.2パーセント)。また,読み聞かせや「ブックトーク」(注3)を行う学校も増加した(平成16年度:46.8パーセント,平成18年度:52.2パーセント)
  • (注1)データベース:コンピュータの磁気テープやディスクに,必要に応じて検索できるよう組織的に蓄積されたデータの集合のこと。
  • (注2)子どもゆめ基金:独立行政法人国立青少年教育振興機構に設置され,青少年教育に関する民間団体が実施する読書活動や体験活動等の振興を図る活動に対して助成金を交付。
  • (注3)ブックトーク:子どもや成人の集団を対象として,何冊かの本の内容を紹介すること。あらすじや著者紹介などを交えて,本への興味を起こさせる工夫を凝らす。

2 第一次基本計画期間における課題

 一方,第一次基本計画期間を経て,以下のような課題が見られた。
 第一に,子どもたちの読書の取組状況について,学校段階における差が生じている点である。例えば,平成15年度に行われた教育課程実施状況調査によると,平日において読書を「全くまたはほとんどしない」と答えた割合は,小学生で28.3パーセント,中学生で47.9パーセント,高校生で61.3パーセントと,学校段階が進むにつれ読書離れが進む傾向にあり,今後は,中学生・高校生といった世代の読書活動の推進が課題である。
 第二に,読書活動推進に向けた取組について,地域間の差が依然として顕著な点である。例えば,平成18年度末までに,法律第9条に基づく「市町村子ども読書活動推進計画」(以下,「市町村推進計画」という。)を策定している市町村は24パーセント,策定に向けた作業を進めている市町村は15パーセント,策定に向けた検討を進めている市町村は34パーセントである一方,いまだ策定に向けた検討に入っていない市町村が28パーセントを占めるなど,市町村推進計画の策定状況にばらつきが見られる。また,平成17年現在,市(区)町村別の公立図書館設置率は市(区)97.9パーセント,町53.9パーセント,村22.0パーセントと,小規模自治体になるにつれ,図書館の設置が遅れている状況にある。小学校一校当たりの図書費の平均額を都道府県別に比較すると,最低17.8万円から最高67.2万円(平成17年度)と約50万円の開きが見られ,地域間の差が歴然としている。
 第三に,学校図書館資料(注4)の整備が不十分な点である。学校図書館資料については,第一次基本計画策定時から改善傾向にあるものの,平成17年度末において,学校図書館図書標準(注5)の達成状況が,小学校で40.1パーセント,中学校で34.9パーセントにとどまっている。
 第四に,子どもたちの読解力の低下である。平成16年末に公表されたOECD生徒の学習到達度調査により,我が国の子どもたちの読解力が低下傾向にあることが示された。平成19年末に公表された同調査からも,引き続き読解力の向上が課題であることが明らかになった。読書習慣がある子どもほど読解力に優れている傾向にあることから,読解力の向上のため,新聞や科学雑誌なども含めた,幅広い読み物に親しむことの必要性が指摘されている。また,「読む力」は「書く力」や「考える力」にも関連しており,読書後に自分の思いや考えを話したり書いたりする取組とも併せた活動の重要性も指摘されているところである。

  • (注4)学校図書館資料:学校図書館法第2条の規定する「図書館資料」をさす。以下、同じ。
  • (注5)学校図書館図書標準:平成5年に設定された学校図書館図書整備の目標。

3 第一次基本計画策定後の子どもの読書活動を取り巻く情勢の変化

 第一次基本計画の策定からおおむね5年が経過する中で,関連法制の整備をはじめ,子どもの読書活動を取り巻く情勢は大きく変化した。そのうち,本計画の推進に当たって,留意すべき事項として以下のようなものがある。

(1)教育基本法・学校教育法の改正

 平成18年12月,我が国の教育をめぐる諸情勢の変化にかんがみ,改めて教育の基本を確立するとともに,教育の理念を明確にするため,教育基本法が改正された。新しい教育基本法においては,教育の目標の一つに,「幅広い知識と教養を身に付け,真理を求める態度を養い,豊かな情操と道徳心を培う」ことが掲げられている(第2条第1号)。さらに,義務教育として行われる普通教育の目的は,「社会において自立的に生きる基礎を培い,また,国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うこと」にあるとしている(第5条第2項)。教育の実施に関しては,新たに,家庭教育(第10条),幼児期の教育(第11条),学校・家庭・地域の連携協力(第13条)についての規定が盛り込まれた。
また,平成19年6月には,新しい教育基本法の理念を受けて,学校教育法が改正された。同法においては,義務教育として行われる普通教育の目標の一つとして,「読書に親しませ,生活に必要な国語を正しく理解し,使用する基礎的な能力を養うこと」が掲げられている(第21条)。

(2)文字・活字文化振興法の成立

 文字・活字文化は,「人類が長い歴史の中で蓄積してきた知識及び知恵の継承及び向上,豊かな人間性の涵養並びに健全な民主主義の発達に欠くことのできないもの」である(文字・活字文化振興法第1条)。このため,平成17年7月,我が国における文字・活字文化の振興に関する施策の総合的な推進を図ることを目的として,文字・活字文化振興法が成立した。同法第3条,第8条は,学校教育において,読む力,書く力及び言語力の涵養に十分配慮するよう規定している。また同法第9条は,国民の間に広く文字・活字文化についての関心と理解を深めるようにするため,10月27日を「文字・活字文化の日」と定めている。

(3)情報化社会の進展

 テレビ,ビデオ・DVD,インターネットなどの様々な情報メディア・情報媒体の発達・普及により,多様かつ大量の刺激的な情報が,簡単・瞬時に入手できるようになった。このような情報化によって利便性が向上した反面,近年,子どもたちのテレビ,インターネットサイトの見過ぎ,ゲームのやり過ぎなどに伴う文字・活字離れが懸念されているところである。

(4)地方分権の進展

 平成11年のいわゆる地方分権一括法の成立を機に本格的に始まった地方分権の流れは,平成14年6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」に始まる三位一体の改革,また市町村合併の推進などにより,大きく進展してきたところである。さらに,平成18年末に成立した「地方分権改革推進法」は,国と地方の役割分担を明確にすること,その上で,地方公共団体が自主性・自立性を高め,自らの判断と責任において行政運営をすることを目指している。
 法律第4条においては,地方公共団体は,「子どもの読書活動の推進に関する施策を策定し,及び実施する責務を有する」とされており,各地方公共団体においては,自らの判断と責任の下,このような責務を十分認識し,必要な体制の整備等に努めることが求められる。

第3章 基本的方針

 第2章において示された取組・成果と課題,情勢の変化等を踏まえ,次の基本的方針の下,子どもの読書活動の推進に取り組む。

1 子どもの自主的な読書活動の推進

読書を通じて,子どもたちは読解力や想像力,思考力,表現力等の生きる基礎力を養うとともに,多くの知識を得たり,多様な文化を理解したりすることができる。また,書籍や新聞,図鑑などの資料を読み深めることを通じて,自ら学ぶ楽しさや知る喜びを体得し,更なる知的探求心や真理を求める態度が培われる。このため,子どもが自ら読書に親しみ,進んで読書習慣を身に付けていけるよう,子どもの興味・関心を尊重しながら自主的な読書活動を推進することが重要である。
また,読書は,子どもたちが自ら考え,自ら行動し,主体的に社会の形成に参画していくために必要な知識や教養を身に付ける重要な契機となる。特に,社会が急激に変化し,複雑化していく中で,個々人が読書活動などを通じて,生涯にわたって絶えず自発的に学ぼうとする習慣を身に付けていくことは大変重要である。
このように,知的活動の基礎となる自主的な読書活動は,法律第2条や文字・活字文化振興法第1条が規定するように,人格の完成と個人の能力の伸長,主体的な社会参画を促すものとして,民主的で文化的な社会の発展に不可欠のものである。
このような観点から,国及び地方公共団体は,子どもの自主的な読書活動の重要性を踏まえて,その推進を図る。

2 家庭,地域,学校を通じた社会全体での取組の推進

 子どもの自主的な読書活動を推進するためには,家庭,地域,学校を通じた社会全体での取組が必要である。まず,子どもが読書に親しむ機会の充実に向け,それぞれが担うべき役割を果たすことはもとより,関係機関,民間団体,事業者等が緊密に連携し,相互に協力を図りつつ,取組を推進していくことが求められる。
 このような観点から,国及び地方公共団体は,家庭,地域,学校それぞれが相互に連携・協力して子どもの自主的な読書活動の推進を図るような取組を推進するとともに,必要な体制の整備に努める。

3 子どもが読書に親しむ機会の提供と諸条件の整備・充実

 乳幼児期から発達段階に応じて読書に親しめるように配慮した環境作りが重要である。
 家庭,地域,学校においては,子どもが積極的に読書活動を行う意欲を高め,進んで読書を行う態度を養い,生涯にわたる読書習慣を身に付けることができるように努めることが重要である。このため,発達段階に応じて,子ども自身が読書の楽しさを知るきっかけを作り,その読書活動を広げ,読書体験を深めるような機会を提供するとともに,そのための環境作りに努めることが肝要である。あわせて,子どもが興味を持ち,感動する本等を身近に整えることが重要である。
 このような観点から,国及び地方公共団体は,子どもの自主的な読書活動の推進に資するため,家庭,地域,学校において子どもが読書に親しむ機会の提供に努めるとともに,施設,設備その他の諸条件の整備・充実に努める。

4 子どもの読書活動に関する理解と関心の普及

 子どもの読書活動の意義や重要性について,国民の間に理解を広め、関心を高める必要がある。子どもは,大人から民話などの話を聞いたり,読書する大人の姿などに触発されたりするなどして,読書意欲を高めていく。このため,子どもに自主的な読書態度や読書習慣を身に付けさせる上で,子どもを取り巻く大人を含めて社会全体で読書活動を推進する気運を一層高めるとともに,特に,保護者,教員,保育士等子どもに身近な大人が読書活動に理解と関心を持つことが重要である。
 このような観点から,国及び地方公共団体は,子どもの自主的な読書活動を推進する社会的気運の醸成を図るため,読書活動の意義や重要性について広く普及・啓発を図るよう努める。

第4章 子どもの読書活動の効果的な推進に必要な事項

1 推進体制等

(1)国における子どもの読書活動推進体制の整備

 本計画を効果的に推進していくため,国は,関係府省庁間相互の密接な連携を図るとともに,関係機関,地方公共団体,民間団体等との連携を更に深め,方策の効果的な推進を図る。また,関係機関等の活動の円滑化を図るため,子どもの読書活動を推進するための関連情報を広く収集・提供するよう努める。

(2)地域における子どもの読書活動推進体制の整備

 法律第9条の規定により,都道府県,市町村は,それぞれ,都道府県推進計画,市町村推進計画を策定するよう努めなければならないとされている。平成18年度末現在,全都道府県において都道府県推進計画が策定されたものの,市町村推進計画の策定率は24パーセントにとどまっている。このため,未策定の市町村は,地域の実情を踏まえつつ,本計画及び都道府県推進計画を基本にして,市町村推進計画を策定するよう努める。国は,本計画期間中に,50パーセント以上の市町村において市町村推進計画が策定されるよう,都道府県及び市町村の相談に応じるなどにより取組を促していく。また,都道府県は,域内の子どもの読書活動の推進の状況等を踏まえ,必要に応じて都道府県推進計画の見直しを行う。
 あわせて,都道府県及び市町村は,本計画及び都道府県・市町村推進計画を推進するに当たり,学校,図書館その他の関係機関及び民間団体との連携・協力を図るとともに,関係者が相互に情報交換等を行うための総合的な推進体制が整備されるよう支援していく。
 さらに,地方公共団体間における各種情報の交換等が円滑に行われるよう,都道府県及び市町村は,それぞれの役割に応じ,相互の連携・協力体制の整備に努める。特に,市町村は,身近な地方公共団体としての重要な役割にかんがみ,市町村相互の連携・協力体制の整備を積極的に推進することが期待される。

(3)民間団体間の連携・協力の促進に対する支援

 民間団体が主体性を持ちつつ,相互に連携・協力を図ることは,それぞれの団体の活動内容を充実させるとともに,全体として子どもの読書活動の一層の推進に資することとなる。そこで,国及び地方公共団体は,民間団体間の連携・協力の促進を図るため,その体制の整備の推進を支援していく。

2 財政上の措置

 国は,本計画に掲げられた各種施策を実施するため,必要な財政上の措置を講ずるよう努めるとともに,地方公共団体が地域の実情に応じて自主的に実施する子どもの読書活動の推進に関する施策のための費用について,必要な財政上の措置を講ずるよう努める。
 その際,本計画に掲げられた各種施策について,目的と手段を十分見極め,最小の経費で最大の効果をあげる観点から,有効性を検証するよう努める。

第5章 子どもの読書活動の推進のための方策

家庭における子どもの読書活動の推進

1 子どもの読書活動の推進における家庭の役割

 子どもの読書習慣は日常の生活を通して形成されるものであり,読書が生活の中に位置付けられ継続して行われるよう,保護者が配慮・率先して子どもの読書活動の機会の充実及び読書活動の習慣化に積極的な役割を果たしていくことが肝要である。
 このため,家庭においては,読み聞かせをしたり,子どもと一緒に本を読んだり,図書館に出向いたりするなど,工夫して子どもが読書と出会うきっかけを作ることが重要である。また,定期的に読書の時間を設けるなどして子どもに読書の習慣付けを図ったり,読書を通じて子どもが感じたことや考えたことを話し合ったりするなど,読書に対する興味や関心を引き出すように子どもに働き掛けることが望まれる。

2 家庭における子どもの読書活動の推進のための取組

(1)家庭における理解の促進

 子どもの読書活動を促すためには,最も身近な存在である保護者が子どもと共に読書の楽しさを分かち合い,読書に親しむことが有効である。このため,図書館における保護者を対象とした講座,市町村が実施する子どもの発達段階に応じた家庭教育に関する講座,子育て支援の一環として図書館や公民館等において行われる読み聞かせ会など親子が触れ合う機会の提供を通じ,読み聞かせの楽しさや読書の重要性についての理解の促進を図る。また,幼稚園,保育所等においても,読み聞かせや読書の大切さ,意義について保護者等に対し広く普及を図る。

(2)家庭に向けた情報提供

 ウェブサイトなどにより保護者に対して家庭教育についての情報提供を行い,家庭における読み聞かせや,子どもが読書の時間を持つよう家庭で習慣付けることの重要性について理解の促進を図る。
 また,図書館で行われる読み聞かせ会など,家庭における読書活動に資する取組に関する情報を広く周知・広報することも重要である。

地域における子どもの読書活動の推進

【図書館】

1 子どもの読書活動の推進における図書館の役割

 図書館(図書館法第2条第1項に規定する「図書館」をいう。以下同じ。)において,子どもは,自分の読みたい本を豊富な図書の中から自由に選択し,読書の楽しみを知ることができる。また,自ら必要な情報を収集し,それを基に意思決定・問題解決を図るなど,読解力や情報活用能力を身に付けることができる。他方,保護者は,子どもに読ませたい本を選択したり,子どもの読書について司書等に相談することができる。
 さらに,図書館は,自ら読み聞かせ会やお話し会,子どもに薦めたい図書の展示会,保護者を対象とした読み聞かせや本の選び方・与え方の指導等を行っている。あわせて,子どもの読書活動を推進する団体・グループへの相談対応等の支援や図書館の諸活動を支援するボランティアが,必要とする知識・技術を習得するための学習の機会の提供等も行っている。
 このように,図書館は,地域における読書活動を推進する上で重要な役割を果たしている。

2 公立図書館における子どもの読書活動の推進のための取組
(1)「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」の実践

 公立図書館(図書館法第2条第2項に規定する「公立図書館」をいう。以下同じ。)においては,「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成13年文部科学省告示第132号)等を踏まえ,

  • 子どもに対するサービスの充実に資するため,必要なスペースを確保するとともに,児童・青少年用図書の収集・提供,情報通信機器の整備等,子どもの読書活動を推進するための体制の整備に努めること
  • 子どもを対象として,本に関する案内や助言を行ったり,本をめぐる意見交換の場の提供,オーサー・ビジット(注6)等の講座に取り組む等,多様な学習機会を提供すること
  • 地域に在留する外国人の子ども等に対するサービスの充実に資するため,外国語資料の収集・提供,利用案内やレファレンス・サービス(注7)等に努めること
  • 図書館ボランティアの登録者数は,平成17年現在,約7万人(平成17年度文部科学省社会教育調査)であり,希望者に読み聞かせ等の活動の場等に関する情報を提供したり,ボランティア養成のための研修を実施するなど諸条件の整備に努め,本計画期間中に10万人を目指すこと。同時に,必要な知識・技能等を有するボランティアの参加を一層促進することによって,読み聞かせ会やお話会,外国人の子どもたちへの対応等,子どもに対する図書館サービスを充実させること
    などの取組が一層推進されるよう促していく。
  • (注6)オーサー・ビジット:著名な作家が,その個性と知識・技能を発揮して,それぞれの作者ならではの講演を実施すること。
  • (注7)レファレンス・サービス:何らかの資料や情報を求めている図書館利用者に対して,図書館職員が,求められている資料や情報を提供又は提示すること。また,それに関わる業務のこと。
(2)地域の読書活動を支えるキーステーションとしての取組

1.読書活動に関する情報提供
 地域における子どもの読書活動を推進していくため,児童・青少年用図書の蔵書・貸出情報やお話し会の開催など,子どもの読書活動の機会に関する情報等を随時地域住民に提供することは重要である。このため,子どもの読書活動の推進に資するコンテンツを作成し,図書館のウェブサイトに掲載したり,メールマガジンを発行するなど,インターネットを活用した情報発信の充実を促す。特に,ウェブサイトについては,平成17年現在,全国の図書館本館数の約84パーセントに当たる1,664の図書館で開設されている(平成17年度文部科学省社会教育調査)が,本計画期間中に90パーセント以上の図書館で行われるよう促す。

2.公立図書館や関係機関等の間の連携・協力
 子どもの読書環境を整備する上で,都道府県立図書館,市町村立図書館,学校図書館その他の関係機関との間のネットワークを構築し,図書の貸借をはじめとする連携・協力や情報交換などを行うことは重要である。
 また,公立図書館を中心に,地域の読書活動推進団体,グループ,青少年団体等の関係団体,保健所・保健センター,保育所等の関係機関と連携し,地域における子どもの読書活動を推進する取組の充実に努めることも重要である。具体的には,

  • 公民館図書室や保育所,児童館(注8)等に対して図書の団体貸出しやお話し会などを実施する
  • 保健所・保健センターで実施される健診の際に,司書が絵本の選び方や読み聞かせの方法について保護者に指導する
  • 司書,保健所・保健センターの保健師,地域のボランティア等が連携・協力して,乳幼児への読み聞かせの方法等を説明しながら保護者に絵本等を手渡す「ブックスタート」運動を実施する など
    様々な機関との連携・協力が望まれる。このため,国は,これらの取組の積極的な推進を促す。
  • (注8)児童館:児童福祉法第40条に規定される児童厚生施設の一つであり,「児童に健全な遊びを与えて,その健康を増進し,又は情操をゆたかにすることを目的とする施設」のこと。

3.学校図書館との連携・協力
 公立図書館は学校図書館と連携・協力することも重要である。このため,公立図書館の図書の学校図書館への団体貸出しを促すとともに、図書館職員が学校を訪問した際や児童生徒が図書館を訪問した際に,図書館職員による読み聞かせなどの取組を促していく。
 また,図書館間での連携・協力を進めるため,児童図書等資料の相互貸借や複数の図書館で協力して行うレファレンス・サービスの実施等の取組を促していく。

3 子どもの読書活動を推進のための公立図書館等の機能強化
(1)公立図書館の整備

 平成17年現在,公立図書館を設置する市(区)町村の割合は,市(区)で97.9パーセント,町で53.9パーセント,村で22.0パーセントとなっている(平成17年度文部科学省社会教育調査)。
 地域における子どもの読書活動を推進するためには,身近なところで読書ができる環境を整備していくことが重要である。このため,「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」において,市町村は,住民に対して適切な図書館サービスを行うことができるよう,公立図書館の設置に努めることや,都道府県は,図書館未設置の町村が多く存在することを踏まえ,町村立図書館の設置及び運営に対する助言等を計画的に行うことなどが示されている。
 公立図書館が未設置の市町村は,今後,その解消に向けて,図書館の設置について積極的に取り組むことが望まれる。新たな図書館の設置が困難な場合でも,都道府県立図書館や近隣市町村との連携等による読書環境の整備が望まれる。
 既に公立図書館が設置されている市町村においても,地域の人口分布や人口構成,地形,交通網など地域の実情に応じて,分館や移動図書館車の整備,公民館図書室や各種施設の図書コーナーの整備,学校図書館の開放などにより,地域の人々が身近なところでサービスを享受できるよう,地域における読書環境の整備に努めることが望まれる。
 他方,都道府県は,未設置市町村に対して計画的に行う助言等を通じて,公立図書館が果たす役割の重要性についての理解を促すとともに,図書館設置の気運を醸成し,その整備を促していく。

(2)公立図書館の資料,施設,設備等の整備・充実

 地域における子どもの読書活動を推進する上で公立図書館が積極的な役割を果たすためには,児童・青少年用の図書館資料(注9)の充実に努めるとともに,利用者に応じた必要な施設・設備を確保することが重要である。

  • (注9)図書館資料:図書館法第3条の規定する「図書館資料」をさす。以下、同じ。

1.図書館資料の整備
 子どもの読書活動を推進していくためには,公立図書館に,住民や地域の要望を踏まえ,豊富で多様な図書館資料を整備していくことが必要である。
 公立図書館の図書館資料の整備については,地方交付税により措置されている。各地方公共団体は,公立図書館の図書館資料の計画的な整備を図るよう引き続き努める。

2.移動図書館車の整備
 移動図書館車によるサービスは,図書館から遠距離にある地域に居住する子どもの読書活動の推進に大変有効であり,図書館の重要な活動の一つである。このため,各地方公共団体は,公立図書館における移動図書館車の整備や,その運行回数,サービスポイント(注10)の拡充など,利用者の視点に立ったきめ細やかな運用に努める。

  • (注10)サービスポイント:貸出しやレファレンス・サービスなど,直接利用者に対して図書館サービスの行われる場所,あるいは図書館と利用者との接点となる施設。

3.図書館の情報化
 平成17年現在,来館者が利用できるコンピューターは,都道府県立図書館で96.8パーセント,市区町村立図書館で87.0パーセント設置されており,このうちインターネット接続コンピューターは,都道府県立図書館で79.0パーセント,市区町村立図書館で51.3パーセントとなっている。また,オンライン閲覧目録(OPAC)(注11)導入率は,都道府県立図書館では96.8パーセント,市区町村立図書館では77.0パーセントとなっている(平成17年度文部科学省社会教育調査)。
 情報化の急速な進展に対応するため,各地方公共団体は,来館者用コンピューター設置率及びオンライン閲覧目録(OPAC)の導入率について,本計画期間中に100パーセントを目指し,公立図書館の情報化に努める。

  • (注11)オンライン閲覧目録(OPAC):利用者が図書館の蔵書資料を検索するために用いるコンピューター化された目録。利用者が直接端末機からオンラインで図書館のコンピューターと接続し,蔵書データベースを検索できる。OPACは,Online Public Access Catalogの略。

4.児童室等の整備
 平成17年現在,児童室を置いている図書館の割合は,62.8パーセントである(平成17年度文部科学省社会教育調査)。国は「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」に基づき,各図書館で児童室や児童コーナーなど読み聞かせや子どもが読書を行うために必要なスペースを確保するよう,引き続き促していく。

5.障害のある子どものための諸条件の整備・充実
 障害のある子どもが自主的に読書活動を行える環境を整備することは極めて重要である。図書館等においては,例えば視覚に障害のある利用者に対して,点字刊行物及び視覚障害者用の録音物の貸出し並びに閲覧業務を行っており,録音図書を所有する公立図書館は約20パーセント,点字図書等を所有する公立図書館は約33パーセントとなっている(平成17年度文部科学省社会教育調査)。
 こうした中で,地方公共団体は,障害のある子どもについても,施設整備面での配慮,点字資料,録音資料,手話や字幕入りの映像資料等の充実,貸出し及び閲覧業務の実施や図書館利用の際の介助,対面朗読,郵送や宅配による貸出し等の推進に努める。また,「点字図書」及び「声の図書」の増刷・普及に協力する点訳・朗読奉仕員の養成を行うことなどを通じて,視覚に障害のある子どもの読書活動の推進のための条件の整備・充実に努める。

(3)公立図書館の司書の養成・研修

1.司書の養成と適切な配置
 司書は,児童図書をはじめとする図書館資料の選択・収集・提供,利用者に対する読書相談,子どもの読書活動に対する指導,ボランティア等との連携促進など,子どもの読書活動を推進する上で極めて重要な役割を担っている。
公立図書館の職員の配置については,地方交付税により措置されている。各地方公共団体は,司書の重要性についての認識を深め,適切な養成や配置に努める。

2.司書の研修の充実
 公立図書館の司書は,児童図書や児童文学に関する広範な知識,子どもの発達段階に応じた図書の選択に関する知識及び子どもの読書指導に関する知識・技術を有した上で,子どもや保護者に本の案内や助言を行うなど,積極的に利用者の相談に応じることが望まれる。さらに,幼稚園や学校に赴いて,児童生徒や教職員に読み聞かせや本の案内,図書館の利用についてのガイダンスを行うなど,学校等との連携を行うことが求められる。
 司書がこれらの役割を果たしていくために必要な専門的知識・技術を習得することができるよう,研修の充実を図っていく。

【その他】

1 子どもの読書活動の推進における児童館の役割

 児童館は,子どもに健全な遊びを与えて,その健康を増進し,又は情操を豊かにすることを目的とした施設である。児童館の図書室では,絵本等の児童図書を活用した様々な活動が行われている。中でも保護者や地域のボランティアによる読み聞かせやお話し会などの活動は,図書館における諸活動と同様,子どもが読書に親しむ契機となっており,これらの活動が一層推進されるよう促していく。

2 子どもの読書活動の推進における大学図書館の役割

 子どもの読書活動を推進する上で,地域の大学図書館が有する知見や資料を活用することは有効である。このため,大学図書館の図書資料の図書館への貸出しなど,図書館と大学図書館の連携・協力の推進を促していく。

3 子どもの読書活動の推進における「国際子ども図書館」の役割

 国立国会図書館の支部図書館として設置されている「国際子ども図書館」では,納本制度による児童図書の収集・保存,関連資料の収集・保存を行うほか,公立図書館や大学図書館に対する支援や,「学校図書館貸出セット」貸出し等の学校図書館に対する支援を行っている。
 また,図書や展示品の貸出しはもとより,電子図書館による児童図書に係る各種情報の提供,全国の図書館職員に対する講座の開設,講師の派遣等を行うとともに,情報交換の場の提供等において全館種を対象とした図書館協力を進めるなど,「児童図書のナショナルセンター」としての役割を担っている。このため,図書館や学校図書館と「国際子ども図書館」との連携・協力の推進を促していく。

学校等における子どもの読書活動の推進

【幼稚園等】

1 子どもの読書活動における幼稚園,保育所等の役割

 幼児期に読書の楽しさと出会うため,幼稚園,保育所等において,幼稚園教育要領及び保育所保育指針に示されているように,幼児が絵本や物語などに親しむ活動を積極的に行うよう,その指導の充実を促進する。あわせて,幼稚園,保育所等で行っている未就園児を対象とした子育て支援活動の中でも,読み聞かせ等を推進するとともに,保護者等に対し,読み聞かせ等の大切さや意義を広く普及する。
 また,異年齢交流において,小学生・中学生が幼稚園,保育所等の幼児に読み聞かせを行うなど,子どもが絵本等に触れる機会が多様になるよう工夫する。

2 幼稚園,保育所等における子どもの読書活動の推進のための取組

 幼稚園,保育所等においても,子どもが絵本等に親しむ機会を確保する観点から,安心して図書に触れることができるようなスペースの確保に努めるとともに,保護者,ボランティア等と連携・協力するなどして,図書の整備を図るよう促していく。また,図書館等の協力を得て,発達段階に応じた図書を選定することへの配慮も促していく。

【小・中・高等学校等】

1 子どもの読書活動の推進における学校の役割

 学校においては,従来から国語などの各教科等における学習活動を通じて,読書活動が行われてきており,子どもの読書習慣を形成していく上で,学校は大きな役割を担っている。
 新しい教育基本法の理念を受けて,平成19年5月に改正された学校教育法の第21条においては,義務教育として行われる普通教育の目標の一つとして,「読書に親しませ,生活に必要な国語を正しく理解し,使用する基礎的な能力を養うこと」が新たに規定された。
 また,子どもたちの読解力向上が課題とされる中,平成20年の学習指導要領の改訂では,各教科等における言語活動を充実することとし,引き続き学校図書館の活用を図るとともに学校における言語環境を整えることとしている。
 これら新しい教育基本法,学校教育法,学習指導要領を踏まえ,小・中・高等学校等における子どもの読書活動の推進を図ることが必要である。

2 学校における子どもの読書活動の推進のための取組
(1)児童生徒の読書習慣の確立・読書指導の充実

 小・中・高等学校の各学校段階において,児童生徒の読書に親しむ態度を育成し,読書習慣を身に付けさせることが大切である。その際,知的活動(論理や思考),コミュニケーションや感性・情緒の基盤となる言語力の育成に資する読書活動を推進することが求められる。このため,国語科を中核としつつすべての教科等を通じて,様々な文章や資料を読んだり調べたりするなど多様な読書活動を推進する。また,既に3万校を超える学校で実践されている全校一斉の読書活動や,学校での読み聞かせなどの取組を一層普及させる。さらに,学校において推薦図書コーナーを設けたり,卒業までに一定量の読書を推奨するなどの目標を設定したりすることにより,学校や家庭における読書習慣を確立するよう促していく。
 他方,各教科等を通じて学校図書館を活用した学習活動や,日々の読書指導の充実を図っていくことも重要である。このためには,司書教諭のみならずすべての教職員が連携して子どもの学習活動・読書活動を推進していくことが重要であり,各学校における校内研修や研究会などを通じた教職員間の連携を促していく。同時に,読書指導に関する研究協議や先進的な取組例の紹介などにより,教職員の意識の高揚や指導力の向上,学校図書館を活用した指導の充実に努める。
 海外の日本人学校においても,児童生徒が豊かな読書活動を体験できるよう,図書の整備や読書活動の実践事例の紹介など児童生徒の自主的な読書活動に資する取組を推進していく。

(2)障害のある子どもの読書活動の推進

 障害のある子どもが豊かな読書活動を体験できるよう,障害の状態に応じた選書や環境の工夫,視聴覚機器の活用,ボランティアによる読書支援等の優れた実践事例の紹介等により,特別支援学校における読書活動支援の推進を図る。また,視覚障害教育情報ネットワーク(注12)の活用などにより,各特別支援学校で作成した点字図書や全国の点字図書館等の点字データの相互利用,教材作成に関する情報提供等を促進する。

  • (注12)視覚障害教育情報ネットワーク:独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が運用し,インターネットで,視覚障害教育全般についての教材データ等の提供や,視覚障害関連機関の情報交換を行うサイトのこと。
(3)家庭・地域との連携による読書活動の推進

 子どもの読書活動を支援していく上で,学校が家庭・地域と連携して地域ぐるみで子どもの読書活動を推進することが重要である。平成18年5月現在,小学校の約70パーセント,中学校の約16パーセントで,保護者や地域住民によりボランティア活動が行われている。
 多様な経験を有する地域の人材の協力を得ていくことにより,児童生徒の読書に親しむ態度の育成や読書活動の推進に資する様々な活動を推進していくことが可能となる。このため、「ブックトーク」活動,学校図書館に関する広報活動,図書データベースの作成などの活動について,さらに地域のボランティア等の人材が十分に活動できるよう支援していく。
 また,地域の図書館やボランティア等と連携して,各地域で参考となるような事例の紹介・普及を図り,地域が一体となった子どもの読書活動の推進を図っていく。

3 子どもの読書活動の推進のための学校図書館等の機能強化

 学校図書館は,児童生徒の想像力を培い,学習に対する興味・関心等を呼び起こし,豊かな心をはぐくむ,自由な読書活動や読書指導の場である「読書センター」としての機能と,児童生徒の自発的,主体的な学習活動を支援し,教育課程の展開に寄与する「学習情報センター」としての機能を果たし,学校教育の中核的な役割を担うことが期待されている。特に,学校教育においては,児童生徒が自ら考え,主体的に判断し,行動できる資質や能力などの「生きる力」をはぐくむことが求められており,学校図書館には,様々な学習活動を支援する機能を果たしていくことが求められる。

(1)学校図書館の資料,施設,設備等の整備・充実

1.学校図書館資料の整備・充実
 子どもの豊かな読書経験の機会を充実していくためには,子どもの知的活動を増進し,様々な興味・関心にこたえる魅力的な学校図書館資料を整備・充実させていくことが必要である。また,各教科,特別活動,総合的な学習の時間において多様な教育活動を展開していくためにも,学校図書館資料を充実していくことが求められている。
 このことを踏まえ,平成19年度から平成23年度までを期間とする新たな学校図書館図書整備計画が策定され,公立義務教育諸学校の学校図書館資料を,情報が古くなった図書等の更新を行いつつ,約2,600万冊整備することにより,単年度200億円,5年間で総額約1,000億円の地方交付税措置が講じられることとされている。第一次基本計画期間の終了に際しても,なお,各地方公共団体における学校図書館図書標準の達成が十分でない状況を踏まえ,各地方公共団体においては,学校図書館資料の計画的な整備が図られるよう引き続き努め,学校図書館図書標準の達成を目指す。
 また,私立学校についても,図書館資料の整備が促進されるよう支援を図っていく。

2.学校書館施設・設備の整備・充実
 学校図書館施設については,読書スペースの整備が進められるよう,新増築を行う際や余裕教室等を学校図書館に改修する際に国庫補助を行っている。
 各学校における多様な読書活動の推進が図られるよう,学校図書館の施設や環境についてのモデル的な事例を紹介するとともに,各学級における読書活動を視野に入れた環境整備を促していく。

3.学校図書館の情報化
 学校図書館にコンピューターを整備し,学校図書館図書情報をデータベース化したり,他校の学校図書館や図書館等とオンライン化したりすることにより,自校の学校図書館のみならず,地域全体での図書の共同利用や各種資料の検索,多様な興味・関心にこたえる図書の整備等が可能となる。
 学校図書館にコンピューターを整備している公立学校は47.8パーセントであり,そのうち校内LAN(情報通信網)に接続している学校図書館は54.8パーセントとなっている(平成18年3月文部科学省調べ)。また,学校図書館の図書情報をデータベース化している公立学校は,小学校で37.6パーセント,中学校で38.5パーセント,高校で71.6パーセントである。
 学習指導に用いる公立学校の教育用コンピューターの整備については,従来,地方交付税措置による整備が進められており,学校図書館等への効果的な配置を進める。また,学校図書館,コンピューター教室,普通教室,特別教室等を校内LANで接続し,学校内のどこにあっても学校内外の様々な情報資源にアクセスできる環境の整備にも努める。
 また,学校のインターネット接続については,児童生徒の調べ学習などの活動を展開していく上で大きな効果があることから,従来より,地方交付税措置等による整備が進められている。超高速インターネットの接続率がおおむね100パーセントになるよう,引き続き整備を促進する。
 これらの学校図書館の情報化を推進し,他校の学校図書館や地域の図書館などとの連携を通じて,学校図書館資料の共同利用や学校を越えた相互利用の促進・普及等を図る。

(2)学校図書館の活用を推進していくための人的配置の推進

 学校図書館の運営に当たっては,校長のリーダーシップの下,司書教諭が中心となり,教員,事務職員やボランティアが連携・協力して運営し,それぞれの立場から,学校図書館の機能の充実を図っていくことが重要である。

1.司書教諭の配置
 司書教諭は,学校図書館資料の選択・収集・提供や子どもの読書活動に対する指導等を行うなど,学校図書館の運営・活用について中心的な役割を担うことから,その配置の促進を図ることが必要である。
 学校図書館法(昭和28年法律第185号)第5条及び附則第2項の規定により,平成15年度以降,12学級以上の学校(小学校,中学校,高等学校,中等教育学校,特別支援学校)に,司書教諭を必ず配置しなければならないこととされている。
 司書教諭が発令されていない学校においても有資格者の発令が促進されるよう,司書教諭の講習を引き続き進めていく。
 また,司書教諭が学校図書館の運営に十分な役割を果たすことができるよう,教職員の協力体制の確立や校務分掌上の配慮などの工夫を促すとともに,司書教諭の職務内容についての指導資料を活用し,司書教諭の役割等について理解を図る。

2.学校図書館担当事務職員の配置
 学校図書館を担当する事務職員は,司書教諭と連携・協力して,学校図書館に関する諸事務の処理に当たっている。今後,学校図書館の活用を更に充実するため,各地方公共団体における事務職員の配置の取組を紹介して,学校図書館の諸事務に当たる職員の配置を促していく。

民間団体の活動に対する支援

1 子どもの読書活動の推進における民間団体の役割

 民間団体は,子どもの読書活動に関する理解や関心を広めるとともに,子どもが読書に親しむ様々な機会を提供するなど,子どもの自主的な読書活動を推進することに大きく寄与している。例えば,全国レベルでは,読書週間等のキャンペーン,全国各地を訪問して行う読み聞かせ,フォーラムの開催,読書指導員の養成等が行われ,地域レベルでは,約5,700の自発的に組織されたグループにおいて,約8万人のボランティアが草の根的に文庫活動,読み聞かせ等を行っている。

2 民間団体の活動に対する支援

 国は,読書活動に関連するボランティアのより広範な活動を促すとともに,指導的なボランティアの育成に取り組む。また,子どもの発達段階に応じて,親子での読書活動や本のテーマや内容に沿った効果的な読書活動,読書から離れがちな中高生世代の読書活動を推進する方策に関する研究の成果を普及する。
 さらに,子どもの読書活動の推進を図る民間団体の活動をより充実させるとともに,民間団体がネットワークを構築して実施する情報交流や合同研修などの促進を図るため「子どもゆめ基金」をはじめとした助成などにより,これら民間団体の活動を支援していく。
 また,地方公共団体においては,子どもの読書活動を推進する活動で公共性が高いと認められるものについては,活動の場の確保のため,域内の公民館等の公共施設の利用に便宜を図るなど,奨励方策を講じることが期待される。

普及啓発活動

1 啓発広報の推進

(1)「子ども読書の日」を中心とした全国的な啓発広報の推進

 「子ども読書の日」(4月23日)は,「国民の間に広く子どもの読書活動についての関心と理解を深めるとともに,子どもが積極的に読書活動を行う意欲を高めるため」(法律第10条)に設けられたものである。
 このため,国及び地方公共団体は,「子ども読書の日」の趣旨にふさわしい事業を引き続き実施するよう努めるとともに,文字・活字文化についての関心と理解を深めるために設けられた「文字・活字文化の日」(10月27日)においては,その趣旨にふさわしい行事が国民の間で実施されるよう努める。
 また,国は,地方公共団体,学校,図書館,子どもの読書活動の推進に取り組む民間団体等との連携を図りながら,ポスター等の作成・配付等を通じて全国的な啓発広報を推進していく。

(2)各種情報の収集・提供

 国は,子どもの読書活動の実態や各地方公共団体,学校,図書館,民間団体等における様々な取組などに関する情報を収集する。そして,子どもの読書活動に関する情報に対して,多くの人々が容易に接し,活用することができるよう,インターネット上に子どもの読書活動の推進に関する専用のウェブサイトを開設し,関連情報を掲載するとともに,これを関係機関・団体等のウェブサイトにリンクさせて情報を広く提供するなど,啓発広報を推進する。
 また,地方公共団体や民間団体においても,このような各種情報の提供を幅広く行うことが期待される。

2 優れた取組の奨励

 国は,子どもの読書活動の推進に関し,優れた取組等を行っている者を表彰又は顕彰することにより,関係者の取組の意欲を更に高め,活動内容の充実を図るとともに,広く国民の間に子どもの読書活動についての関心と理解を深める。

(1)優れた取組に対する表彰等

 国は,子どもの読書活動を推進するため,子どもが読書に興味を持つような活動,関係者の資質向上のための活動,関係する機関や団体間の連携等において特色ある優れた実践を行っている学校,図書館,民間団体及び個人に対し表彰を行うことにより,その取組の奨励を図る。

(2)優良な図書の普及

 児童福祉法第8条第7項の規定により,社会保障審議会では,福祉文化分科会を設け,児童の福祉に資する出版物を児童福祉文化財として推薦を行っている。
 このような優良な図書は,地域における子どもの読書活動の推進を図る上で有効である。図書館,児童福祉施設,視聴覚ライブラリー等にリストを配付することで,優良な図書を家庭・地域に周知・普及していく。

お問合せ先

総合教育政策局地域学習推進課

(総合教育政策局地域学習推進課)

-- 登録:平成21年以前 --