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(議事要旨)日本語指導が必要な児童生徒を対象とした指導の在り方に関する検討会議(第4回)

1.日時

平成25年3月21日(木曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省旧文部省庁舎2階第2会議室

3.議題

審議のまとめ(案)について

指導計画について

4.出席者

委員
 佐藤委員,大藏委員,佐々木委員,鈴木委員,築樋委員,松本委員

協力者
 近田委員,三好視学官

文部科学省
 神代国際教育課長,河村課長補佐,外

5.議事要旨

【文部科学省】 (配付資料1~3及び参考資料1について説明)

【座長】 本日は,これまでの検討会議での議論を踏まえつつ,資料2の審議のまとめ(案)について中心に意見を伺い,案を固めていきたい。

【委員】 5ページの「(2)指導の対象とする児童生徒」の部分で,指導の要否の判断に関する記述があり,「特に,日本語の能力については,「聞く」「話す」「読む」「書く」それぞれの技能別に多面的な観点からの把握に努めるとともに,複数人による測定を行うことが望ましい。」とあるが,初めて日本語指導を担当する教員が日本語の能力を把握するためにどのようにすればよいか分かるよう,測定の方法について何らかの記述を盛り込むことが望ましい。

【協力者】 同じ部分について,日本語の能力は,「聞く」「話す」「読む」「書く」それぞれの技能を別々に把握するだけでなく,日本語の能力を総合的にバランスよく把握することが必要であることを踏まえた記述とすべきである。

【委員】 「『特別の教育課程』による日本語指導を行うか否かの判断は,(略)学校設置者が定める教育課程の編成基準に従い,児童生徒の教育課程の編成権限を有する校長が行うことが適当である。」としており,その次に,指導の要否を判断する際の在り方について記述されている。校長が指導の要否を判断する権限を有する旨明記することは望ましいと考えるが,校長の独力で判断することは困難であると考えられるので,例えば,校長の責任は明確にしつつも,教員による協議を踏まえて判断することが望ましいとの記述にするなど,工夫が必要ではないか。

【文部科学省】 指導の要否を校長の責任の下で行うという趣旨で記述したものであり,御指摘の通り,校長のみで校内の日本語指導が必要な児童生徒一人一人の実態を把握して指導の要否を判断することは難しいと考えている。御意見を踏まえ,修正を図りたい。

【委員】 日本語指導が必要な児童生徒の実態を把握する上では,日本語の能力はもとより,その次に記述されている「学校生活への適応状況も含めた生活・学習の状況,学習への姿勢・態度等」を把握することも大切である。日本語能力の把握の在り方について特記するのではなく,生活・学習の状況等と併せて把握することが必要であるという形で記述した方がよいのではないか。
6ページの「(3)指導者」の部分で,「日本語指導担当教員(主たる指導者)は,免許状を有する教員(常勤・非常勤講師も含む。)とする。」との記述があるが,ここでいう免許状とは,どういったものを想定しているのか。例えば,臨時免許状を有している者は想定していないのか。

【文部科学省】 児童生徒の日本語の能力を把握する際には,生活の適応状況も含めて,総合的に判断することが望ましい旨もう少し強調して記述したい。
免許状とは,教育職員免許法により授与された,実際に指導を行う学校種に相当する教員免許状のことである。普通免許状のほか,臨時免許状や特別免許状を有する教員が指導を行うことを否定するものではない。

【委員】 教育特区でバイリンガル教員を特別に採用している事例があるが,このような教員は主たる指導者として認められないのか。

【文部科学省】 仮に,臨時免許状など,免許法により授与された教員免許状を有する教員であれば,主たる指導者として認められ得る。

【委員】 審議のまとめ(案)の中で記述することは難しいかもしれないが,就学前の段階にある子供たちの日本語の能力や生活・学習の状況等をどのように把握し,「特別の教育課程」による日本語指導の指導計画の作成にどのように生かしていくのか,考えていく必要があるのではないか。

【座長】 重要な指摘であるが,審議のまとめ(案)では,義務教育段階にある日本語指導が必要な児童生徒に絞って提言を行う方が望ましいのではないか。

【文部科学省】 確かに,就学前の段階にある日本語指導が必要な子供たちを小・中学校等に円滑に受け入れ,「特別の教育課程」による日本語指導を行っていくことは大切である。例えば,「3.おわりに」の中で,就学前の段階にある日本語指導が必要な子供たちへの就学相談や就学前教育などの体制を充実させることが必要である旨追記することとしてはどうか。

【委員】 6ページの「(4)授業時数」の部分で,標準授業時数の設定に当たっての考え方の中に,「5.日常生活を送る上で十分な日本語の能力を有しており,在籍する学級での学習活動にほぼ参加できるが,定期的な支援が必要であると思われる児童生徒に対して『特別の教育課程』による日本語指導を行う場合,年間10単位時間(月1単位時間程度)の指導により十分効果があると考えられること。一方で,これを下回る指導時数で足るような児童生徒については,基本的には『入り込み指導』など各教科等の授業の中で指導上の工夫を図り,対応することが望ましく,必ずしも『特別の教育課程』を編成・実施することを要しないと考えられること」とある。年間10単位時間の指導により「十分効果がある」とまでは言い難いので,「一定の効果がある」としてはどうか。また,年間10単位時間を下回る授業時数で足るような児童生徒については,全て「入り込み指導」で対応すればよい,と誤解されるのは望ましくない。「入り込み指導」の位置付けについては,7ページの「(Ⅴ)指導の形態及び場所」の部分でも記述がないので,何らかの記述を考える必要があるのではないか。

【文部科学省】 御意見のとおり,「一定の効果がある」と修正したい。「入り込み指導」については,授業時数の設定に当たっての考え方のところでは言及せず,「(5)指導の形態及び場所」の部分で位置付けについて記述することとするなど,工夫したい。

【委員】 児童生徒の在籍する学校の校長が「特別の教育課程」の編成権限を有するとした場合,日本語指導の体制が十分に整っていない地域などでは,学校にとって負担となるのではないのか。例えば,教育委員会の位置付けについては記述しないのか。

【文部科学省】 教育委員会は公立学校の設置者であり,「特別の教育課程」の編成・実施に当たっての最終的な責任者である。例えば,5ページに「学校設置者が定める教育課程の編成基準に従い,児童生徒の教育課程の編成権限を有する校長が行うことが適当である。」との記述をしているほか,9ページの「(指導計画の作成について)」の中で,「『特別の教育課程』による日本語指導を行う場合は,児童生徒の在籍する学校において指導計画を作成し,学校設置者に届出を行うものとすることが望ましいと考える。」との記述を盛り込んでいる。このほか,学校設置者には,指導に必要な教員の配置なども含め,学校における指導体制の整備を支援していただくことになる。

【委員】 指導計画を学校設置者に届け出る制度とすることにより,学校設置者が学校で行う「特別の教育課程」による日本語指導についてチェックするとのことだが,指導者が確保できない等の理由で,日本語の能力が不十分な児童生徒が在籍しているにもかかわらず,「特別の教育課程」による日本語指導を行わないこととする学校については,設置者によるチェックが全く入らないことになるのではないか。

【文部科学省】 重要な指摘である。日本語指導に係る「特別の教育課程」の編成・実施を認める新たな制度が施行された際には,各学校において,日本語指導が必要な全ての児童生徒に対して,「特別の教育課程」を編成・実施することができるよう,十分な周知を図るなどして,教育現場における体制整備を支援していく必要がある。

【委員】 9ページにおいて,「指導計画に盛り込むべき事項(案)」が示されているが,児童生徒の個人情報についてどこまで記載することとすべきか慎重に検討したい。

【座長】 児童生徒に関する情報がないと,十分な指導ができない面もある。学校において情報を適切に管理することが大切である。

【協力者】 5ページの「(2)指導の対象となる児童生徒」の部分で,「海外にルーツを持つ児童生徒等」との記述がある。また,9ページの「学校内で作成する指導計画(個別の指導計画)」のうち,「児童生徒に関する記録」の中に盛り込むべき事項としても,「ルーツのある国名」とある。「ルーツ」という表現は曖昧な印象を与え得るので,明記しない方がよいのではないか。

【座長】 日本語指導が必要な児童生徒については,例えば,保護者双方の国籍が異なる場合や,児童生徒の国籍と出身国とが異なる場合などもあり,児童生徒の実態を把握する上で,国籍や家庭内で使用する言語だけでは捉え切れない側面もある。他方で,文部科学省に設置された検討会議として公表する審議のまとめの中で,「ルーツ」という表現を用いることが適切かどうかについては検討が必要である。例えば,「指導計画に盛り込むべき事項(案)」のところでは,「国籍等」と表記することとしてはどうか。

【文部科学省】 事務局としても,5ページからは「ルーツ」という表現を削除してもよいのではないかと考えている。「指導計画に盛り込むべき事項(案)」での書き方については,座長の提案も踏まえ,何らかの工夫をしたい。

【協力者】 9ページに,「(略)各計画は,校長の方針の下に,児童生徒の在籍学級担任と日本語指導担当教員が連携して作成するものとし,」との記述があり,指導計画の作成はあくまでも学校の教員が責任を持って行い,児童生徒の個人情報を適切に管理するという点が担保されているのでよいと思う。しかしながら,指導補助者も指導計画の内容については一定程度理解しておく必要がある。学校が児童生徒の個人情報を適切に管理しつつも,指導補助者に対して,必要な範囲内で,指導計画の内容の一部を適宜情報提供していくことが求められる。

【文部科学省】 児童生徒の個人情報の管理を徹底しつつ,学校が指導補助者に対してどこまで指導計画に関する情報を共有すべきかについては,研修等においても周知を図っていく必要があると考えている。

【協力者】 資料3の1ページに,「『特別の教育課程』による日本語指導を行う児童生徒の日本語の能力に応じた指導内容例」の資料があるが,指導内容は,児童生徒の実態に応じて適宜変えていく必要があるものであり,「指導計画の目安」通りに単純に指導内容を切り替えるものではないことを強調する必要がある。

【委員】 9~10ページの「(学習評価の実施について)」の部分の記述はやや細かい印象を持つ。学習評価の実施に関する責任の所在を明確にするのみにとどめ,具体的な在り方までは踏み込まず,学校現場の裁量に委ねる余地を残した方がよいのではないか。

【文部科学省】 ある程度具体的に書くべきか,もう少し簡潔に書くこととするかについては,他の委員からも御意見を伺いたい。

【協力者】 学習評価については,現時点で詳細を明記することは困難であると考える。

【委員】 ある程度詳細に記述することによって,地域や学校において日本語指導に携わる関係者が具体的なイメージを描き,制度施行に向けた準備に着手しやすい面もあると考える。一方で,詳細に書くことによって,教育現場の裁量に委ねるべき部分を縛ってしまうことがあっては望ましくない。
10ページの「個人内評価」という文言は,ややわかりにくいのではないか。また,中学校に在籍する日本語指導が必要な生徒が高等学校等への進学を希望するケースに配慮し,調査書に関する記述も盛り込まれていること自体は有り難いが,高等学校等において受け入れる際に,調査書の記述も踏まえて対応してもらえるかどうかは課題である。中学校における学習評価については,高校入試を念頭に置き,相対評価にならざるを得ない面もあるため,日本語指導が必要な生徒が高い評定を得ることが困難となり,希望する進路につながらないケースも多い。また,「特別の教育課程」による日本語指導を実施し,実態を踏まえて適切な学習評価を行った児童生徒と,「特別の教育課程」を編成せず,在籍学級の中で支援を受けているような児童生徒との間で学習評価の公平性が担保されないのではないかという懸念がある。

【座長】 学習評価や進路に係る記述を具体的に盛り込むことによって,高等学校も含めた教育現場に対して,制度を着実に実施していこうというメッセージとなり得る可能性もあると考える。

【委員】 10ページの通知表(通信簿)に関する記述の中で,児童生徒一人一人に対する日本語指導の状況について,保護者にわかりやすく伝え,理解を求めるべき旨の記述が盛り込まれているが,「特別の教育課程」を編成して日本語指導を行うことができるとする新たな制度が始まることについて,保護者にも周知を図ることが必要である旨の記述を盛り込んでほしい。

【協力者】 教育現場において,「特別の教育課程」による日本語指導を着実に実施してもらうためには,実際の指導に資する資料についても今後示していく必要があるだろう。また,当該指導の実施を支えるサポート体制を構築していくことも必要である。指導者の研修を充実させていくことも必要だが,研修では把握できない様々な悩みや課題がある。指導者に対する巡回指導も含めたサポート体制が有効ではないか。

【委員】 日本語指導の実践が少ない市町村では,サポート体制を速やかに整備することが困難な場合もあり得るため,都道府県においても,市町村や学校からの問合せや相談に応じる体制を充実させることが求められる。

【座長】 11ページの「3.おわりに」の中に,「支援員の活用も含めた指導体制の整備を図るなど,」との記述はあるものの,「特別の教育課程」による日本語指導を実施するための人的配置に関する記述が弱いのではないか。

○審議のまとめ(案)について,年度末まで各委員・協力者の意見を受け付けた後,座長預かりとし,新年度に公表する方向で作業することについて提案し,了承を得た。

○今後のスケジュールについて,資料4に基づき事務局より説明がなされ、閉会。

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総合教育政策局国際教育課

-- 登録:平成25年05月 --