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(議事要旨)日本語指導が必要な児童生徒を対象とした指導の在り方に関する検討会議(第2回)

1.日時

平成24年7月31日(火曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省東館6階2会議室
(東京都千代田区霞が関3-2-2 中央合同庁舎第7号館東館6階)

3.議題

日本語指導が必要な児童生徒に対する「特別の教育課程」の在り方について

4.出席者

委員
 佐藤座長,臼井委員,大蔵委員,佐々木委員,鈴木委員,築樋委員,松本委員
協力者
 近田委員,三好視学官
文部科学省
 中井国際教育課長,関課長補佐 外

5.議事要旨

【1】「公立学校における日本語指導の在り方に関する調査」の調査結果について

【座長】 まず,「公立学校における日本語指導の在り方に関する調査」の結果について,事務局から説明を頂きたい。

【文部科学省】 (配付資料1について説明)

【座長】 各都道府県に対して行った調査の結果,「特別の教育課程」により日本語指導を行う意向を持っている都道府県が17。また,日本語指導補助者の要件について,特に初期指導においては教員免許取得者以外にも拡大すべきとの意見が多かった。その他,今後の議論で必要なことも本資料に多く出ている。

【委員】 問い2の「特別の教育課程」たる日本語指導を行えることとなったにも関わらず,実際に行わない理由として,「指導員の確保,指導カリキュラム,評価方法などの環境整備が不十分」を選択した都道府県が多いが,その内訳が分かれば教えてほしい。

【文部科学省】 「教員や支援員など,人的な加配がなければ難しい」,「指導法,評価方法の整理が必要」という意見が多い。他に「指導力の不足」,「教室等の施設整備の不足」,「指導計画の作成など教員への負担が大きい」などの意見がある。中でも担当教員の確保に関する意見が多い。

【委員】 人員確保とその適正配置に関する意見が多いということが分かった。


【2】日本語指導が必要な児童生徒に対する「特別の教育課程」の在り方について

(1)指導者,指導の形態,指導の場所について
【文部科学省】 (配付資料2 P.1~4について説明)

【座長】 「特別の教育課程」による日本語指導は,学校教育の中で授業として行うということであり,主たる指導者は教員であるべきではないかという議論があった。指導補助者については「日本語指導や教科学習指導の補助」「母語による通訳・翻訳等の支援」という具体的な定義があったが,いかがか。

【委員】 日本語指導が必要な児童生徒の受入れが全く初めての学校や地域は,その指導・支援についてよく分からないのではないか。場合によっては教員よりも,指導補助者の方が指導・支援について理解している場合もあるのではないか。このような場合,教員が特別の教育課程を編成し,実際の指導を指導補助者が行うということはあり得るのではないか。

【文部科学省】 今のような場合も含め,必ず授業に教員が入っていることを要件とするべきなのではないか。

【座長】 学校という教育の場で指導する場合,教員が教育内容に責任を負うことになると思う。主たる指導者は教員であるということは前回の会議でも確認されたが,実際の指導の場では様々なケースが考えられるので,それらを想定して議論したい。

【委員】 資料2の3ページで日本語指導の形態の例が示されている。たとえ「指導計画」に従って指導を行っていても,教室に教員がいない状態で,指導補助者のみで日本語指導を行っている場合は,「特別な教育課程」として認められないということか。

【文部科学省】 そのとおりである。

【委員】 最初に全体で一斉授業を行った後,小グループや別の教室に分かれて指導を行うことは,「特別な教育課程」として認められるか。

【文部科学省】 事務局の提案としては「特別の教育課程」として認める際には教員が主な指導者として指導を行うこととしたいと考えている。教室を分けた場合,その教員の目が児童生徒に行き届くのかどうかということが課題になる。

【委員】 指導計画を共有しているという前提の上,10分~20分程度グループに分かれて,教員と指導補助者が分担して指導を行うということは想定できないか。

【協力者】 初期適応指導では,子供たちの心理的な面への配慮により,個別又は小グループに分かれての指導も必要となる場合もある。

【委員】 その場における指導の責任がどこにあるのかという話であろう。指導補助者に責任を負わせるわけにはいかない。

【座長】 実際は多様である指導の場面を,パターン化して示すのは困難である。「特別な教育課程」として認める際の,教員に関する必要な要件について確認する方がよい。教員が指導すること,指導全体のマネージメントをすることだと理解してよいか。

【文部科学省】 そのとおりである。

【委員】 現在は,指導補助者のみで指導に当たり,「特別の教育課程」として認めない形で指導を行っているところが多い。対象児童生徒をセンター校に集めることも難しい場合,市町村が指導員を採用している現実がある。「特別の教育課程」として日本語指導を行う場合,必ず教員が入ることが大切だと理解しているが,指導補助者のみで「特別の教育課程」として認められない場合,予算措置はされるのか。また指導補助者に対して臨時の免許が出されるのか。
  また大前提として,日本語指導が必要な子供は「特別の教育課程」による日本語指導を受けることができるのか,指導の要件を満たすことが難しいため実施しないという判断につながらないのか。

【文部科学省】 「特別の教育課程」による指導を行う教員は,常勤・非常勤講師も含み,確保しやすくしたい。予算については,今回の制度化がすぐに予算確保につながるものではないので,予算獲得には今後も努力が必要である。
  次に,全員が受けられるのかどうかということについて,「特別な教育課程」による指導が十分に行われるために,今後,研修の機会についても考えたい。

【協力者】 主な指導者を教員にすることは大事だが,教員以外の方が指導を行っているという現実に配慮しないと現場では受け入れられないだろう。移行期間が相当かかると思われるので,そこに至るまでの長期的な見通しが大事ではないか。
  現在日本語指導が必要な児童・生徒の在籍人数が5人未満の学校が全国で約8割を占める。対象児童生徒が少数地域の子供たちの学びを保障するためにも,「特別の教育課程」の要件に沿う指導体制を示していく必要があるのではないか。

【文部科学省】 「特別の教育課程」は,実施することができるというものであるため,学校の判断によって実施しないという選択肢もある。日本語指導が必要な児童生徒が在籍する場合,「特別の教育課程」による日本語指導が行いやすくするために,学校現場の実態を踏まえた制度設計が必要である。
  また通常の教育課程の中で日本語指導を行っている場合,積極的にそうしている場合と,手が回らなくて結果的にそうなっている場合とがある。通常の教育課程の中で指導を行っている場合も,指導計画に準ずるものを作成するなどして取り組むことは考えられる。

【座長】 制度化に当たって,何が課題か議論したい。
  人材や予算の確保が課題としてあげられたが,これは日本語指導が必要な全ての児童生徒が指導を受けられるようにするための体制整備にもつながる。また,実際に運用していくために,どういうことをすればいいのかということを検討することが大事である。
  また,指導場所については原則各学校に設置されている教室としたい。他校への通級なども難しい場合は一定の条件の下,教育委員会が設置要綱を作成するなどして定めるところにより,学校外でもできるようにしてはどうかという提案である。一定の条件というのは,指導者として教員を配置すること以外に,何か考えられるだろうか。

【文部科学省】 主な指導者を教員とするほか,指導の内容,指導時数の1単位あたり時間,指導計画の作成及び設置者への届出等が考えられる。

【座長】 資料1の調査結果によると公民館や国際センターで実施しているケースがある。

【委員】 通常,教室数が不足する場合はプレハブなどで対応する。教育課程に位置付け,教員が指導する以上,日本語指導のための教室を確保することが望ましいことを明示していただきたい。

【委員】 より多くの子供が通いやすい場所に教室を設置するため,意図的に学校以外の公共の施設を選んでいる場合もある。地域の実態に応じて,このようなケースは認めるべきではないか。

【委員】 学校以外の場所での指導を認めない,ということではない。実態として難しいのは承知しているが,空き教室がないために指導ができないということにならないよう,教室の確保が望ましいということである。

【文部科学省】 指導場所の要件については,「特別の教育課程」による日本語指導を行うための教室の確保という点と,地理的条件など教育現場の実態に配慮した教室の設置という点との両方が分かるように示す方向で検討したい。

(2)指導計画の必要性及びその在り方について
【文部科学省】 (配付資料2 P.5~10について説明)

【座長】 「特別の教育課程」による日本語指導を制度化する上で,指導計画の作成は一番大事な点ではないか。詳細は今後具体的に検討することとしたいが,今日は,指導計画をどういうものとして考えるか,その大枠について検討したい。また,指導計画に入れるべき項目,目標と計画に関する事務局案についても議論したい。さらに,指導計画の作成が学校現場の中で可能なのかということも議論していただきたい。計画作成に追われて指導に手が回らないということがあっては本末転倒である。

【委員】 ある地域では,「入り込み」指導や,研修を受けたボランティアを放課後に週1~2回程度派遣するという方法をとっている。教員が指導を行うことを「特別の教育課程」の要件とした場合に,教員確保が困難なため「取り出し」指導は行わず,放課後にのみ教員が指導を行う場合,それは「特別の教育課程」として認められるのか。

【文部科学省】 放課後であっても,教員が指導を行うなど要件を満たしていれば,「特別の教育課程」として認めることができるという方向で検討したい。ただし,次回の会議で検討予定の標準時数の設定とも関係する。また。放課後の指導時数については,児童生徒への負担も考慮する必要がある。

【委員】 「特別の教育課程」による日本語指導を行う上では,計画や系統性の有無などが関係する。放課後に教員が行っている指導は,定期考査や進学対策も含め,教科の補習的な内容が多く,指導計画は立てにくい。

【委員】 「特別の教育課程」による日本語指導を行うには,指導計画を立て教育委員会に届け出ることが前提となると思うが,一方で教育委員会にも提出された指導計画を点検する力が求められる。

【文部科学省】 教育委員会に届出をすることは,手続上必要であるということ以外に,日本語指導が必要な児童生徒への教育について,教育委員会として把握する点からも必要であろう。教員や教育委員会の指導主事が,余り日本語教育の経験がない場合に,指導計画の作成や点検の参考となるようなポイントを示すことも検討していきたい。

【座長】 「特別な教育課程」による日本語指導を行う際の,教育委員会の役割について,どのような義務が生じるのかなどの確認が必要ではないか。
指導計画についても,教育委員会に提出することが目的ではない。本来,日本語指導が必要な子供に対する教育をどうするか,という視点からの作成が大事である。

【委員】 現在でも教育委員会では,特別支援教育に関する指導計画について点検している。教育委員会に学校現場の様子を知らせるためにも,何らかの形でチェックするシステムをとることが必要だろう。

【委員】 計画を出すことより,授業に力を注(そそ)げるようにするべきである。教育委員会が現場を知るということでは,実際に学校訪問をすることが必要である。その上で,例えば教育委員会に提出する指導計画は,10くらいのパターンから選ぶような形で大まかに作成するようにし,一方現場では詳細な指導計画を作成することが大事ではないか。いずれにしても指導計画のモデルは示した方が良い。

【協力者】 学校現場の負担を考慮し,教員が幾つも書類を作成しなくてもよいような工夫が必要である。

【委員】 「特別の教育課程」として実施するからには,学校の負担増には配慮しながらも,教育委員会が,指導計画とそれに基づく指導内容を確認し,指導することが大事であろう。また,学校長は「特別の教育課程」の編成に全責任を負い,説明責任を負うものだと考える。
  専門外の人にも分かるように,初期指導についてや,学習言語についてのCan-Doリストが作成できると指導計画を立てやすい。また,子供の生育歴などの情報を共有するために,プロフィールを記載する欄が必要ではないか。

【委員】 今回制度化しようとする「特別の教育課程」は,対象児童生徒が少ない地域にどこまで有効かというところがポイントである。県への加配が1人の地域や,一人の加配教員が1週間に9つの学校を巡回する地域などでは,市町村の教育委員会だけでなく,場合によっては都道府県の規模でコーディネーターを置くなど,工夫が必要である。

【協力者】 原則,個別の指導計画を作るということが大事であろう。個別に目標を設定することで評価にもつながる。

【座長】 次回の議題となるが,「特別の教育課程」による日本語指導の実施には,どれくらいの時間数で,どのくらいの日本語能力の子供を,どの程度まで育てるかということを例として示す必要があるだろう。また教員の,指導計画を書く力の育成をどう図るかということも大事な観点である。また現在文部科学省の事業で開発中の「日本語能力の測定方法」とも関連した話である。まずは,「特別の教育課程」を編成するに当たって参考となるように,目標と具体的な内容が示せればよいのではないか。

○最後に,今後のスケジュールについて事務局より提案がなされ,閉会。

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総合教育政策局国際教育課

-- 登録:平成24年12月 --