職場体験を効果的かつ円滑に推進していくためには、次代を担う子どもたちを社会全体で育てるという気運を醸成し、学校の取組に対する地域における企業や事業所、商工会議所等の経済団体やハローワーク等の関係行政機関、PTA、青年会議所、ロータリークラブやライオンズクラブ等関係団体等の理解と協力が不可欠である。このため、国、各教育委員会においては、職場体験を支援するため、学校外の教育資源を有効に活用する様々な施策やシステムづくりに取り組んでいくことが求められる。
平成15年6月に文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣、経済財政政策担当大臣により取りまとめられた「若者自立・挑戦プラン」においては、「インターンシップについて、単位認定の促進、期間の多様化などにより内容を充実し、体験的な活動の実施の拡大を図る。また、各省が連携して、国・地方の各レベルで関係者による連絡・推進協議会を設置するなど推進体制を強化する」とされたところである。さらに、平成16年12月には内閣官房長官を加えた関係5閣僚により「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」が取りまとめられ、学校段階からのキャリア教育の推進に当たっては、学校、労働局、ハローワーク、経営者協会や商工会議所等による地域レベルの協議の場を設けるなど、関係機関等の連携・協力による支援システムづくりに取り組むことが提言されている。これらを踏まえ、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の各省において、キャリア教育関連事業の実施における関係機関との連携・協力を一層推進することとし、各都道府県等にもその趣旨を周知したところである。今後、国レベルのみならず、地方レベルにおいても、関係諸機関・団体との連携・協力のもと、職場体験をはじめとするキャリア教育の円滑な推進が強く望まれる。
また、関係行政機関においては、どのようなキャリア教育に係る施策を実施しているのか、あるいは相談する場合の窓口はどこかなど、積極的な情報提供を行うことが必要であり、都道府県や市区町村においてはこれらの情報を積極的に活用していくことが必要である。
担当府省 | 主な事業 |
---|---|
文部科学省 |
|
厚生労働省 |
|
経済産業省 |
|
内閣府 |
|
都道府県・指定都市教育委員会においては関係機関と連携し、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、内閣府などが実施する各種事業に関し、情報提供や情報交換を行う場、あるいは受入事業所の開拓・確保のための実施時期・期間の調整など職場体験を推進するための協議の場を積極的に設けることが望まれる。具体的には、文部科学省の実施するキャリア教育実践プロジェクトにおけるキャリア・スタート・ウィーク支援会議(都道府県レベルにおける設置)は、職場体験を推進するための協議の場として設置されるものであり、都道府県・指定都市教育委員会は、この支援会議において中心的な役割を果たすとともに、学校現場における混乱を避けるという観点からも、関係府省が実施するキャリア教育関連事業のコーディネーターとしての役割を積極的に果たすことが求められる。また、都道府県教育委員会においては、市区町村教育委員会に対し、国が実施する施策及びその趣旨等を十分に理解した上で、少なくとも各種情報を停滞させることなく周知することが重要である。
市区町村教育委員会においては、広報啓発活動などを通じて地域ぐるみで職場体験を実施する気運を醸成するために、学校、PTA、ハローワーク、商工会議所、商店会や農協等により構成される職場体験を実施するためのより具体的な協議や情報交換、職場開拓などを行う場を設けるなど、効率的なシステムづくりに積極的に取り組んでいただきたい。その意味で、キャリア教育実践プロジェクトにおけるキャリア・スタート・ウィーク実行委員会(市区町村レベルにおける設置)は、職場体験を実施するための地域と密着した実効性のある協議の場であり、この実行委員会において市区町村教育委員会は、中心的な役割を果たし、都道府県教育委員会との緊密な連携の下に、関係府省が実施するキャリア教育関連事業の学校現場における展開に際し、指導・助言を行い、また、コーディネーターとしての役割を積極的に果たすことが求められる。また、その際には、市区町村における観光課、産業課や商工課等の各関係部署と連携し、各学校に対し、都道府県教育委員会から提供された国が実施する施策等に関する各種情報を十分に理解した上で各学校に周知を行い、各学校で円滑に職場体験が実施できるよう具体的に指導・助言することが重要である。
職場体験の効果的かつ効率的な実施を図るとともに、次代を担う子どもたちを社会全体で育てるという気運を醸成するためには、職場体験の必要性や意義、教育的効果を地域住民一人一人が共通認識し、各自が積極的に参加することが必要である。具体的には、地域住民一人一人が職場体験を実施しているという意識を持ち、実際に職場体験を行っている生徒とふれあったり、生徒を見守るなど地域が一体となって職場体験を支援することが豊かな学習の場や機会を創造していくことにつながる。
そして、こうした地域が一体となった職場体験を実施するためには、計画段階から受入事業所等や保護者、地域住民などの声を反映させる協議の場が必要である。さらには、このような体制を構築するために、たとえば、事前・事後指導の際に受入事業所の方や学校評議員など地域住民や保護者を学校に招き、職業講話を行ったり、職場体験の意義について事前に説明することなどが極めて有効な手段である。
年々職場体験の実施率が増加する一方、学校間で職場体験の実施時期を調整できなかったりすることによる受入事業所等の確保をめぐる競合が課題になっている地域も出てきている。
現状では、受入事業所等の開拓を各学校や生徒自らが行っているところが多いが、職場体験をより円滑に実施し、地域社会全体で子どもを育てるという気運を醸成するため、学校、関係機関、地域社会が一体となった地域ぐるみでの取組を進めることが大切である。このため、都道府県レベルにおいて、職場体験を受け入れる事業所、企業等を確保するために、都道府県教育委員会、労働局、経済産業局、経営者協会、商工会議所等関係諸機関・関係経済団体等による連携を図る場として協議会を設けるなど、円滑なシステムづくりを行ったり、職場体験の成功事例などを域内の市区町村や学校に積極的に情報提供することなどが求められる。
また、同時に都道府県レベルだけではなく、市区町村レベルにおいては、市区町村教育委員会、ハローワーク等の関係行政機関、商工会議所等の経済団体、PTA、自治会等地域の関係団体等の協力を得て、職場体験を推進するための協議会を設けるなど、地域のシステムづくりを進めることが必要である。協議会の役割は、受入事業所等の確保及びリストの作成、関係諸機関間の調整や学校間の実施時期の調整等を行うなど、職場体験を効果的・効率的に推進していくことである。
さらに、平成16年11月に日本経済団体連合会及び日本商工会議所からキャリア・スタート・ウィークの積極的受入などキャリア教育の推進に協力する旨の提言がなされた。また、地域における組織的な取組として学校への講師派遣や職場体験の受入可能な企業名、連絡先等を一覧にしたリストを作成し、教育委員会を始め域内の全中学校に配布するなど積極的に協力している団体がすでに見受けられることから、各地域における今後の積極的な連携・協力がより一層期待されるところである。
なお、体験先の一覧等を作成する際には、個人情報の取扱について配慮することが必要である。
-- 登録:平成21年以前 --