学校施設の防犯対策に係る点検・改善マニュアル作成の取組に関する調査研究 報告書 第2章 点検・改善マニュアルの調査分析2-2

2.学校及び地方公共団体等がすでに作成している点検・改善マニュアルの調査分析

2‐2 事例紹介

 ここでは、第3章に示す点検・改善マニュアルの作成に関して、収集した事例の中から参考となる視点についてわかりやすく工夫されたものを抜粋して紹介する。

参考となる視点 地方公共団体名・学校名
(1)ソフトとハードの両面での取組を総合的に整理している 千葉市教育委員会
(2)点検すべき項目・内容をわかりやすく整理している 神奈川県教育委員会
(3)各学校で取組を進める際の参考となる事例を紹介している 横浜市教育委員会
(4)ITを活用して安全対策評価システムを作成している 草津市教育委員会
(5)個々の学校の実情に応じて市内全体を計画的に改善整備している 横浜市教育委員会
(6)日常的な施設・設備の安全点検の中に防犯点検を位置づけている 橋本市立境原小学校
(7)点検・評価の基本的な考え方と手順を示している 雲南市立三刀屋小学校
(8)点検事項ごとに複数の担当者を定めている 雲南市立三刀屋小学校
(9)防犯施設の整備目標を明確にしている 雲南市立三刀屋小学校

(1)ソフトとハードの両面での取組を総合的に整理している

千葉市教育委員会(千葉県)

 市内の学校防犯に対する取組をより強化するとともに、各学校が独自の緊急対応マニュアルを作成・活用することを目的として「緊急対応マニュアル(参考例)」を作成している。
 ここでは、日常的な取組に係る基本的事項や方針を明示しており、実態に合わせた体制づくり、定期的な安全管理、安全教育の推進及び研修等のソフト面での取組が挙げられるとともに、施設面についても「定期的な安全点検」として、校舎内外の破損箇所の点検及び修理修繕、危険箇所や死角の対応、避難経路の確認等、定期的な安全点検が位置づけられている。

千葉市教育委員会の「緊急対応マニュアル(参考例)」より(千葉市立海浜打瀬小学校の提出資料)
 千葉市教育委員会の「緊急対応マニュアル(参考例)」より(千葉市立海浜打瀬小学校の提出資料)

(2)点検すべき項目・内容をわかりやすく整理している

神奈川県教育委員会(神奈川県)

 県内の市町村教育委員会、県立学校及び各小中学校でそれぞれの実態に即したマニュアルの作成を推進するために「学校の安全管理マニュアル作成のための手引き」を作成している。ここでは「日常的な点検項目の参考例示」として、施設面・ソフト面の両面の点検項目とその配慮事項等を、児童・生徒の学校活動に対応させて整理している。
 具体的な実施内容も併せて記されており、教職員にとってわかりやすいものとなっている。

 神奈川県教育委員会の「日常的な点検項目の参考例示」等を参考資料P.102~104に掲載。

神奈川県教育委員会「学校の安全管理マニュアル作成のための手引き」より
 神奈川県教育委員会「学校の安全管理マニュアル作成のための手引き」より

(3)各学校で取組を進める際の参考となる事例を紹介している

横浜市教育委員会(神奈川県)

 横浜市では、学校の安全管理を進める上で重要となる基本的事項(施設管理、教職員の対応、児童生徒への指導、保護者、地域・関係機関との連携等)の全般を示したものとして「学校の防犯マニュアル」を作成している。
 この中では、取組のきっかけや関係者間で行なうべきことの共通イメージづくり、また、対策立案の参考として具体的な事例を紹介している。
 また、単に事例を紹介するだけでなく、そのねらいや効果等を解説として加えており、具体的なイメージづくりや効果的な防犯対策を検討するにあたって、より有効な情報となっている。

横浜市教育委員会「学校の防犯マニュアル」より
 横浜市教育委員会「学校の防犯マニュアル」より

(4)ITを活用して安全対策評価システムを作成している

草津市教育委員会(滋賀県)

 学校における不審者侵入等の防犯、自然災害、交通安全、緊急時の対応など学校現場で想定される危機管理に関する対策を多面的に評価する「学校安全対策評価システム」を兵庫教育大学と連携して作成し、CD‐ROMとして市内の学校に配付している。
 システムを起動させると点検項目や安全点検実施状況等の現状のチェックリストが画面上に表示され、該当箇所にチェックをするとともに、未実施である場合にはその理由等を記入していくと、最後に結果の一覧及びそれに対する評価が表示される。改善が必要な事項については具体的な対策例も表示される。
 なお、入力した内容はパソコン上で保存することもできるようになっている。

草津市教育委員会の「学校安全対策評価システム」より(イメージ図)
 草津市教育委員会の「学校安全対策評価システム」より(イメージ図)

(5)個々の学校の実情に応じて市内全体を計画的に改善整備している

横浜市教育委員会(神奈川県)

 横浜市の各学校では、教育委員会が作成した「学校の防犯マニュアル」(前述、P.37)に基づいて、年2回「学校安全チェックリスト」による防犯対策の実施状況の点検を行っている。
 教育委員会において、これらの結果を基に個々の学校の実情に即した計画的な予算配分を行ない、施設・設備の改善を図っている。
 「学校安全チェックリスト」は、横浜市内のすべての学校で活用できるよう幅広な内容となっている。

横浜市教育委員会「学校の防犯マニュアル」より
 横浜市教育委員会「学校の防犯マニュアル」より

 横浜市教育委員会の「学校安全チェックリスト」を参考資料P.105~107に掲載。

(6)日常的な施設・設備の安全点検の中に防犯点検を位置づけている

橋本市立境原小学校(和歌山県)

 学級数7学級 児童数114人 教職員数16人

(取組の内容)
 安全点検のチェックリストとして「安全点検表」を作成しており、毎月第1月曜日を施設・設備の安全点検日と決め、担当者がこの安全点検表により点検を行っている。
 「安全点検表」には、学校施設の防犯設備に関する点検事項が、施設設備の維持管理に関する点検項目と同じフォーマットで組み込まれているので、場所ごとに点検を同時に行うことができる。また、点検の結果、不備がある場合は該当箇所の現状と改善策を記入するようにしており、点検から改善までの一連の対応の完結化・迅速化が図られている。

境原小学校の「安全点検表」より
 境原小学校の「安全点検表」より

(7)点検・評価の基本的な考え方と手順を示している

雲南市立三刀屋小学校(島根県)

学級数16学級 児童数306人 教職員数28人
(取組の内容)
 学校の防犯施設の点検マニュアルとして「学校防犯施設・設備の整備マニュアル」を作成しており、マニュアルの冒頭で基本的な考え方や改善手順を明確にしている。
 点検を実施するに当たって、まず自校の現状を調査し、次に自校の望ましい姿(整備目標)を明確化したうえで、問題点の抽出を行なっている。また、避難訓練等の結果や、関係機関の助言等を改善計画の作成に役立てることや、改善策を緊急度に応じて3段階で計画するといった取組全体の手順を明確に定めている。
 フローチャートを用いて最終目標までの手順を整理して示すことで、点検・評価を実施する関係者の共通理解・共有化を可能としている。

三刀屋小学校の「学校防犯施設・設備の整備マニュアル」より
 三刀屋小学校の「学校防犯施設・設備の整備マニュアル」より

(8)点検事項ごとに複数の担当者を定めている

雲南市立三刀屋小学校(島根県)

 「学校防犯施設・設備の整備マニュアル」(前述、P.36)の中の施設・設備の点検において、チェックの観点ごとに点検実施担当者と主任をそれぞれ定めており、責任の明確化を図っている。
 また、点検事項ごとに複数の担当者で点検を実施することで、点検漏れの防止と多角的視点での点検を可能としている。

三刀屋小学校の「学校防犯施設・設備の整備マニュアル」より
 三刀屋小学校の「学校防犯施設・設備の整備マニュアル」より

(9)施設設備の整備目標を明確にしている

 雲南市立三刀屋小学校(島根県)

 学校の「望ましい姿」をあらかじめ設定し、実際に点検で使用するチェックカード(「学校防犯施設・設備の整備マニュアル」(前述、P.36,38)の一部)の中に点検項目と併せて示すことにより、関係者間で目標の共有化・共通理解を図っている。
 また、このチェックカードは、点検のみならず問題箇所に対する改善点も記入するようになっており、点検から改善まで一連の対応の完結化・迅速化が図られている。

三刀屋小学校の「学校防犯施設・設備の整備マニュアル」より
 三刀屋小学校の「学校防犯施設・設備の整備マニュアル」より

 雲南市立三刀屋小学校の「防犯施設・設備チェックカード」を参考資料P.108~111に掲載。

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大臣官房文教施設企画部施設企画課

(大臣官房文教施設企画部施設企画課)

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