松江市立母衣小学校は、明治6年に開校した第4大学区第1中学区17番小学校を前身とする長い歴史をもつ小学校である。平成16年度の校舎整備に伴って、「エコスクール」「バリアフリー」「地域コミュニティの拠点」「防災・防犯」を柱にして建て替えを行った。
太陽光発電、風力発電、雨水利用のほか、島根県産の杉を利用した机・いすを教材としてたエコ教育を行っている。また、バリアフリー対応としては、教室とベランダの段差解消のほか、玄関部分に点字ブロックや点字案内板を設置している。
一方、地域のコミュニティ拠点としては、地域に開放されたギャラリーやコンサートホールを備えた地域交流室を整備している。防犯の視点からは、児童・生徒の昇降口に隣接して校長室を設け、両空間の間に大きな窓を設置して子供たちの様子が把握できる工夫をしている。
このほか、複数のクラスルームは隣接したオープンスペースと連続しており、内装に島根県産の木材を多用することで、木のぬくもりが感じられるインテリア空間を実現している。今後も、地域やPTAとともに木製家具を市内に広めることを検討している。
普通教室用の机・いすは、島根県産の杉を使って県外の製作所で作成されたものである。天板の大きさは、縦65センチメートル×横45センチメートルであり、新JIS規格に対応している。机の天板の高さは、49センチメートル、58センチメートル、67センチメートルの3種類を用意し、これらに厚さ3センチメートルの高さ調整材を1枚ないし2枚、脚部下端に垂直方向にボルトジョイントすることで、最低49センチメートルから最高73センチメートルの9段階の高さ調整を可能にしている。いすの座面高は、28センチメートル、34センチメートル、40センチメートルの3種類を用意し、これらに厚さ2センチメートルの高さ調整材を1枚ないし2枚、脚部下端に垂直方向にボルトジョイントすることで、最低28センチメートルから最高44センチメートルの9段階の高さ調整を可能にしている。
結果的に、机・いすともに、新JIS規格の高さ間隔の1/2の間隔できめ細かく高さ設定をすることが可能である。高さ調整材を加えることによる重量の増加が心配されるが、調整材は小型であるため、思ったよりは重さを感じない。背もたれはR形状になっており、座面も尻とのフィット感を考慮した加工がされているため、座り心地も良好なものとなっている。
新しい机・いすの導入は、島根県の「平成16年度木を活かしたまちづくり支援事業」の補助を受けて、校舎整備と一体に行われた。
導入に際しては、導入校の管理職・教員・事務職員、PTA役員、教育委員会の担当職員から構成される検討委員会を設置した。家具の選定に際しては、材質・材料、能力・強度、規格・寸法、適合審査等を規定した購入規格書を作成した。規格書には、軽量化のために「机の重量は8キログラム、いすの重量は4.5キログラム以下であること」、児童の姿勢維持のために「座面は座りやすく加工してあり、背もたれはR形状であること」、児童の安全管理のために「座面方向からの釘・ビス等による固定は不可であること」、「分別廃棄が可能なこと」などが細かく規定されている。この規格書の作成にあたっては、木製家具を既に導入した県内の小学校への視察のほか、他の市町村の購入規格書等を参考にした。
島根県産の木製家具は、「森を守るための間伐の大切さ」を考えるエコ教育の教材としても活用されている。児童・生徒からは「木の温かみを感じる」「座り心地がよい」といった感想がある。
高さ調節は、学期はじめに教員が児童の成長にあわせて調節している。
木製家具でありながら、座り心地がよいこと、軽量であること、高さ調節に伴うゆるみがないことが長所として挙げられる。
机の天板が柔らかくて傷つきやすいが、天板の上にデスクマットを敷くことで対応している。
![]() 校舎全景 |
![]() 太陽光発電の様子を示すパネル |
![]() 雨水を利用した池 |
![]() 県の補助事業を活用したことを示す表記 |
![]() オープンスペース |
![]() 3種類の机・いす:机・いすともに大・中・小の3段階があり、 色分けした小さなプレートを幕板に添付して識別している。 |
![]() いすの座面形状:座面はゆるく後傾させ、 表面には尻とのフィット感を高める加工がされている。 |
![]() 机の上に敷かれたデスクマット |
![]() 脚部の高さ調整材:机の脚部下端に高さ調整材を1枚追加した状態。 |
文教施設企画部施設企画課
-- 登録:平成21年以前 --