2 防犯対策に係る基本的な考え方

「学校施設の防犯対策に関する調査研究報告書」(平成16年9月)第1章から抜粋

(1)地域に開かれた学校施設とその防犯対策の在り方

原則

児童生徒等の安全をまず第一に確保すること。

必要な視点

  • 関係者が防犯意識を高め、具体的な防犯対策により安全性を確保した上で、地域住民が利用・協力しやすい学校施設づくりを推進。
  • 児童生徒等の生活・学習の場であるとともに公共施設としての役割もあることから、ゆとりや潤いといったデザイン上の工夫も重要。
     地域に開かれた学校施設とは、不審者に対して何の備えもなく空間が開かれていることを意味するものではない。児童生徒等の安全をまず第一に確保しつつ開かれた学校施設づくりを推進していくことが重要である。

(2)学校施設における防犯対策の視点

 学校施設における防犯対策については、個々の学校の実情に応じて計画することが重要である。諸外国の学校施設における防犯に係る対応状況や防犯環境設計(注)の考え方を踏まえ、各学校において、まずは次の対策を計画的に講じることが重要である。

1.来訪者を確認できる施設計画

 外部からの来訪者を確認でき、不審者の侵入を抑止することのできる施設計画が重要である。このためには、門の設置場所や構造に留意すること、正門や通用門を見通せる位置に職員室や事務室等の管理諸室を配置すること、外部からの出入りを適確に管理するために来訪者応対用の受付を設置すること等が大切である。

2.視認性や領域性を重視した施設計画

 学校施設の防犯性を確保するため、敷地内や建物内及び外部からの見通しが確保され、死角となる場所がなくなるよう計画することが大切である。さらに、どの範囲を何によってどう守るかという領域性に留意した施設計画が必要とされる。門・囲障の設置や防犯監視システムの導入等により、物理的かつ視覚的にも守るべき範囲を明確化する計画が望ましい。

3.通報システムの各教室等への導入

 児童生徒等や教職員の安全を守るためには、不審者の侵入防止だけではなく、万が一侵入された場合の対応が不可欠である。このため、緊急事態発生時に、校内各教室・スペース、校長室、職員室、事務室相互間や、警察、消防への連絡等を迅速に行うための通報システムを各学校へ導入することが大切である。これは、地震等の災害時にも必要な設備であり、具体的には、普通教室や特別教室等へのインターホンや電話の設置、校内通報システムの整備等が望まれる。

(注)防犯環境設計とは

 物理的環境設計による犯罪防止の手法。
 諸外国では、CPTED:Crime Prevention Through Environmental Designと呼ばれており、接近・侵入の制御、視認性の確保、領域性の強化の3点が主な基本原則とされる。

(3)既存学校施設の防犯対策の推進

 学校施設の防犯対策については、新築、増築、改築、改造等の大規模な施設整備を行う際だけではなく、特に既存の学校施設については、施設の現状について点検・評価を行い、必要な予防措置を計画的に講じていくことが重要である。また、このことは、関係者が学校安全に関する意識を維持していく上でも有効である。
 点検・評価は、地方公共団体等の学校の設置者が、各学校の教職員とともに、必要に応じ保護者、地域の関係機関・団体、建築や防犯に関する専門家等の協力の下に実施することが有効である。

表1‐3‐1 点検・評価手順の例

【STEP1】図面等による点検・評価

  • 校舎等の配置図、平面図、防災関係資料、敷地周辺地図等を準備。
    1. 門、出入口、主な動線等の確認
       正門や通用門、校舎等の出入口、地域住民への開放部分等の位置、児童生徒・教職員・関係業者・来訪者等の主な動線を確認。
    2. 守るべきものの確認
       児童生徒等(特に幼児や低学年児童、障害児等)の居場所や窃盗対象となりうるもの、放火対象となりうるもの等の場所を確認。
    3. 侵入経路と避難経路の確認
       敷地及び校舎等における犯罪企図者の侵入口と侵入経路を想定するとともに、児童生徒等の避難経路を確認。
    4. 「人の目」のある場所の確認
       時間帯に留意しつつ、教職員等の居場所とそこから見える範囲(可視領域)、学校周囲の居住者等の所在と可視領域について確認。

【STEP2】現場における点検・評価

  • STEP1で点検した図面を持って、現場で施設の現状を点検・評価。
    1. 門・囲障等の点検
       門や校舎の出入口等の施錠装置、塀・柵等の囲障の構造、付近の見通しと「人の目」の所在等を点検。
    2. 想定される侵入経路の点検
       時間帯に留意しつつ、想定される侵入経路とその周囲における「人の目」の所在、繁茂した樹木や建物等による死角等を点検。
    3. 管理諸室等からの見通しの点検
       校長室、職員室、事務室等の管理諸室の窓ガラスとそこからの可視領域、防犯カメラを設置している場合の撮影範囲やモニター画像を点検。
    4. 夜間の出入口と外部照明の点検
       夜間における校舎等の出入口と動線、外部照明の位置と照度を点検。

【STEP3】シミュレーションにおける点検・評価

  • 様々な状況を想定した防犯訓練等のシミュレーションを行い、防犯対策上の改善方法を検討。
    1. 侵入事件を想定した防犯訓練等の実施
       侵入事件を想定した防犯訓練等を実施し、不審者の発見・通報、校内の情報伝達、児童生徒等の避難誘導や所在・安全の確認方法等について点検。
    2. 問題箇所の抽出と改善方法の検討
       点検結果を踏まえて、現状の施設の問題箇所と防犯対策の問題点を抽出するとともに、すぐに改善すべき課題と中長期的な課題を整理し、具体的な改善方法を検討。

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