【当事者参画】教育活動も兼ねた当事者参画
横浜国立大学教育学部附属横浜小学校・横浜中学校
(ダイバーシティ戦略推進本部 D&I 教育研究実践センター)
横浜小学校・横浜中学校では、施設改修の基本設計を進めるに当たり、教育活動の一環としてワークショップを実施しました。ワークショップでは、児童生徒が誰もが過ごしやすい学校について考え、発表することや当事者の声を聞くこと等で、障害への理解を深めました。
当事者参画を活用すると、障害当事者などのニーズを確認するだけでなく、学校施設のバリアフリー化を教材として児童生徒の障害への理解等の促進にもつなげることが可能です。
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横浜小学校
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横浜中学校
当事者参画の実施方針・位置づけ
- 横浜国立大学では、2023年3月に大学の理念を改訂する際に「多様性」という概念を追加し、4月に「D&I教育研究実践センター」を設立した。
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本センターにおいて、「共生社会の実現を担う次世代育成プロジェクト」を推進しており、本プロジェクトの課題の一つとして、学校施設のバリアフリー化等の教育環境の充実を挙げている。
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バリアフリー改修の基本的な計画策定に当たっての基本方針(施設改修のコンセプト)には、当事者である児童生徒が自分たちの学校をどのような学校にしたいのかという、子供たちの思いや意見、アイディアを尊重し、できる限り取り入れていくことを目指した。また、これは同時に、子供たちが自らの学校を捉えなおすとともに、障害のある人など多様な人々との共生・協働について考え探究する機会と捉えた。
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このようにして改修された校舎は、単に物理的障壁が解消されただけに留まらず、学校全体として子供たちの豊かな学びを生み出し、多様な人々が共生し、安全・安心に生活することができる「空間」となることが期待されるところであり、また最終的に、そうした「空間」づくりを目指している。
- 校舎の改修にかかる取り組みは、公益財団法人日本財団の助成を受けて実施した。
当事者参画の方法
- ワークショップを開催した。
当事者の人選
- 横浜国立大学の附属学校である横浜小学校・横浜中学校の児童生徒に参加してもらった。
- 横浜小学校においては、発達段階等を考慮し、第4学年、第5学年の児童を対象として参加希望を募り、約50人の児童が参加した(対象児童の約4分の1にあたる児童の参加)。
- 横浜中学校においては生徒会の役員等約40人の生徒が参加した。
- 車いすを使用している教員も参加した。
ファシリテーターの人選
- 本プロジェクトを推進しているD&I教育研究実践センターの大学教員がファシリテーターを務めた。
当事者参画の実施時期
- 基本設計の策定に当たっての基本方針(施設改修のコンセプト)の作成前にワークショップを実施した。
- ワークショップ実施と並行して、建設コンサルタント、附属学校教員、施設整備について知見のある大学教員・職員、バリアフリーに知見がある大学教員等の関係者や専門家によるワーキンググループで検討を行い、基本設計を策定した。
当事者参画に用いた資料
- 児童生徒等への事前アンケート、ワークショップ用ワークシート、障害当事者のインタビュー動画(児童生徒の視聴用)をD&I教育研究実践センターが用意した。
- 児童生徒は事前アンケートへの回答、ワークシートへの記入を経て、学校改修のコンセプト、イメージ、アイディア等を発表した。
当事者参画の内容
- 横浜小学校においては3回、横浜中学校においては4回にわたって実施した。
- 児童生徒に学校を歩き回って不便なところを見つけてもらったり、障害の有無に関わらず誰もが過ごしやすい学校について考えてもらい、ポスターセッション形式で発表した。
- 車いすを使用している教員もワークショップに参加し、児童生徒に助言を行った。また、児童生徒に、肢体不自由以外の障害についても理解を深めてもらうため、障害当事者へのインタビュー動画を作成し、視聴してもらった。
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小学校でのワークショップの様子
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中学校でのワークショップの様子
参画後の意見調整
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多様性を尊重する大学の理念に基づくバリアフリー化改修と並行して、児童生徒によるワークショップを実施し、インクルーシブな社会について学ぶ機会とした。ワークショップで出た声を尊重し、小学校では、多目的トイレの改修、段差の解消、水道の蛇口をひねる方式からレバー形式への変更を実施した。
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設置された多目的トイレ 改修前(倉庫)
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設置された多目的トイレ 改修後
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段差解消(左 改修前、右 改修後)
- 中学校では、ワークショップでも意見のあった、廊下の途中にあった階段を解消する工事、教室の扉の間口を広げる改修、多目的トイレの新設、誰もが安心して過ごせる共生空間の整備を実施した。
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段差解消 改修前
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段差解消 改修後
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扉の改修 改修前
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扉の改修 改修後(2枚扉を3枚扉にすることで開口幅を広げる)
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誰もが安心して過ごせる共生空間
ワークショップによる児童生徒の意識の変化
- 障害のある人をはじめとした多様な人々の存在を改めて認識し、そうした人々との共生・協働の在り方について探究し、自らの考えを深めていくことができた。
- ワークショップでは、児童生徒に対して、障害のある人のみが過ごしやすいのではなく、ある人も、ない人も、自分も、使いやすい学校にするにはどうすれば良いかを考えるよう何度も伝えた。
- それにより、自分も学校のこういうところが使いにくいと思っていたという声が上がるようになり、「では、障害ある人も使いやすくするためにはどうすればいいか?」というように考えを深めることができた。
その他
- 小学校は令和7年度入試からダイバーシティ推進枠(インクルーシブ)を設けており、配慮が必要な児童生徒については、受験段階から必要な配慮についてヒアリングを行っている。また、合格後にも、保護者、学校、D&I教育研究実践センターで、入学後の学校生活における配慮や支援について話し合う場を持っている。
